サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2010.07.26
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テーマ: 古典の日(312)
カテゴリ: 文学
 このところ四苦八苦しながら、ようやく「藤裏葉」のおしゃべりを終えたという感じなのですが、もともと私が思い描いていた話の中味に比べて、どうも消化不良の感じがしないでもない。で、それの由って来たる理由が、引き続く「若菜」以降のおしゃべりをどういうふうにするかということと、おおいに関係しているらしいことはすでに触れました。
 というわけで、このままスルスルと安直に「若菜」の帖に入って行かずに、ここで逡巡している理由をもう少し整理して、自分のための覚え書きのようなかたちで、記しておこうと思っているのです。

 そもそもこのシリーズをこんなに長々と続けることになったのは、今どきの私にとって「源氏物語」というのが、どんな意味を持っているのか?古今東西の古典の中でも、おそらく空前の輝きを放っているらしいこの古典を、さまざまな権威的あるいは通俗的な雑音を出来るだけ外して、1000年後の日本にいる私がナマで読んだ場合、気取って言うならどんな響きを奏でて来るのか?それを知ってみたいということがあったのでした。
 というわけで、初めの「源氏1000年 その1.」では、初読の印象を忘れないうちに書き記しておこう、というつもりで始めたのが、どうもそれではとてもその印象を言い尽せないないな、という感じが強くなったのです。で、その根ざすところが、結局現代訳で読むことのもどかしさにあるような気もし、実際のところ紫式部はどのように書いているのか、というのが気になって、原文をパラグラフにして拾いだしたのが「シリーズ その二」、その前段が「葵」の後半と「賢木」という、この物語中でももっとも彼女の筆つきの冴えた部分の一つだったので、おおいにここは納得がいったのですが、それは同時にこの話が際限なく長くなりそうだ、ということも意味していたのです。
 その時もあれこれ逡巡したのですが、そのまま話し続ける魅力のほうがはるかに強くて、結局そのあとは逐帖ごとにしゃべる、ということになってしまいました。

 で、それと同時に原文のパラグラフとともに、円地さんの現代訳を載せていたのを、途中でヘタな自分の読みで掲げることに変更しました。一つには他人の訳をそのまま写すというのが、結構しんどいというのと、そして何よりも自分のおしゃべりに他人の訳を使うというは、よほど考え方とか感性がフィットしていないと、ちょっと失礼じゃないか、ということがあったのです。
 ところが実際にそれをすすめて行くうちに、口語訳作業の魅力というか、なぜ今どき名だたる文学者や学者や、さては一般の人たちが、こうも次々と口語訳を試みられるのか、その一端を私なりに知ることとなりました。これも何度も言いましたが、要はそこには「創作の模倣」という歓びがあるのではないか?ということなのです。
 逐字的に原文を読んでいけば、自ずと紫式部本人の高揚した感覚というのは、訳者の感受性に乗り移ってくるわけで、それを今どきの言葉に置き換えるという作業には、たぶん擬似的な創造の歓びの感覚があるのではないか?当然その読みかたには、それぞれの読み手が聞き取った創造者の声が響いているわけです。
 断っておきますが、これは何も現代訳されている方々を、皮肉っているわけではありません。しかるべき感性をもった今どきの人たちに、それをさせずに置かないような、この古典の到達した創造性の高みを言っているのです。早い話、同じような歓びが他の昔物語ではたして喚起されるのか、ちょっと考えてごらんなさい。



― つづく ―





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Last updated  2010.07.26 14:02:53
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
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