サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2015.01.21
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共時的記憶

 それは一言でいえば、その時間帯を通過している時の感覚を、文字どおり「昨日のことのように、ありありと思い起こすことができる」ということなのではないか?ただし、そうした言わば「共時的記憶」を共有する人たちというのは、明らかに有限なので、早い話、地球の裏側での「大破局」では、同じような仕方で「昨日のことのように」記憶を思い起こすことは、(倫理的な話はさておき)私たちにはできない。「スマトラ島沖大地震」や「四川大地震」「ハイチ大地震」の同時刻の記憶を、呼び起こすことはできないのです。

 しかしここで大事なのは、地球の裏側の出来事であるにも拘らず、「共時的記憶」を刻印される場合が時にあるというのも、これまた事実なのだということです。2001年の9.11同時多発テロは、まさしくそうした事例で、アメリカでの事件であるにも拘らず、私たちは「その時の記憶」を(その居た場所、匂いまで含めて)、「思い起こすことができる」。
 「そりゃ、メディアの同時中継の威力だろう」と言われそうですが、もちろんそれはあるにせよ、私の場合それは「阪神淡路大震災」の午前6時半ごろのニュース映像と、不思議なほど重なるのです。9.11の第一報は、日本では確か午後10時ごろだったと思いますが、WTCの一棟がすでに燃え上がり、まさしく中継映像の中で、第二棟に旅客機が激突したのでした。この時の記憶を、私は「その時居た場所、匂い」まで、抱き合わせで思い起こさざるを得ない。それは「神戸」の時と共通する、手も足も出ない「無力感」と「浮遊感」をともなった感覚として、「昨日のことのように」ありありと蘇るのです。

 繰り返しになりますが「神戸」の場合、京都でも現実に経験したことない揺れに遭い、なお余震の脅威(現に午前7時半ごろ、強い余震がありましたね)にさらされていたわけで、まさしく「身の危険」を感じていたわけですが、9.11は違う。であるにも拘らず、同じような記憶として蘇るというのは、結局「今そこに、現に傷つき死に瀕した人たちが大勢いて、この先間違いなく膨大な死者が出るだろう。で、それに対して何もできない、手も足も出ない」という浮遊感覚は、現実の危険とは関係なく、たぶん倫理的範疇をはるかに超えた、生き物の「生理的な脅威の感覚」から来ていたのだろうと思うのです。
 こうした一種「生物的脅威」をともなった記憶というのは、日常とは異なった形で蓄積されるのではないか?表向きの記憶の裏に、言わば「生理的な痛み」がともなっている時、人はそれをいつでも「昨日のことのように」ありありと思い起こすことになる。で、これが現実の被災者とか犠牲者の家族であった場合、その記憶はたんに「昨日のことのように、想起される」のではなく、容易に改変されない刻印として釘付けされてしまう。現実に災厄に遭った人たちの「時間は停止する」のです。

 父が戦争の話をする時、私は子供心に誇大妄想的な「想像力」をかき立てられたものですが、よく考えてみれば、父の戦争体験というのは、その96年の人生のうち応召からわずか2年ほどに過ぎません。大岡昇平も山本七平も、たぶん似たようなものでしょう。であるにも拘らず、この人たちにとって「戦争」とは、いつでも「昨日のことのように」思い起こせる記憶として刻印されている。言うまでもなく、それは具体的に強い「生物的脅威」をともなっていたからです。
 私たちはもちろん戦争の記憶を呼び起こすことはできないのですが、その「記憶の刻印のなされ方」の部分については、上にみたような自分自身の「共時的記憶」を呼び起こすことによって、ある程度想像することが出来るのではないか?
 戦時の記憶は(京都や大阪、サイパンや沖縄、東京や名古屋、広島、長崎などで)、それぞれ別個に、ごく個別的な仕方で体験されているにも拘らず、その時間帯を通過した人たちには、その時をいつでも思い起こせる「共通記憶」がある。で、同じことは「阪神淡路大震災」や「東日本大震災」でも、たぶんあるのだろう。そしてそれは、その後の子供たちには「共通記憶」としては、絶対刻印され得ないものだということなのです。





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Last updated  2015.01.21 12:48:58
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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