サリエリの独り言日記

サリエリの独り言日記

2017.06.07
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カテゴリ: エレクトーンの日
ロバート・ワイズ

 要はフォードやワイラーのように、映画作家として一貫したイメージが描きにくい、というところがあるのではないか?巨匠といわれる映画監督には、多かれ少なかれ残す作品にもこだわりがあって、成功してからは自身のイメージを壊すようなものは作らない。しかしワイズは大成してからも、自身のスタイルにあまりこだわりがなかったようです。そのあたりの構えかたは、あるいはC・イーストウッドとちょっと似ているのかもしれません。

 まあそれはさておき、先の「プロローグ」のシーンに話が戻りますが、ニューヨーク下町のチンピラたちのいかにもあざとい身振りが、そのまま見事なダンスシーンに流れ込んでいく。今でこそニューヨークでも東京でも、しかるべきところではストリートダンスは、不思議でも何でもないのでしょうが、1960年代初めごろには世界のどこにも見られなかった光景でしょう。
 ワイズは野外ロケでのダンスにこだわったに違いない。初めからスタジオ撮影なら劇場版の引き写しになってしまうからです。人は不思議なもので、観劇に行くときは、それなりの装いをして行く。何も正装して行くということじゃなくて、心の構えをあらかじめ「日常とは変化させて出かける」ということです。それに比べれば、映画はよほどカジュアル化して日常のテンポに近くなっていますが、その感覚でこの非日常の世界の誘い込むわけにはいかない、というところがあったのかもしれません。
 それが結果として、驚くほど細部にこだわった冒頭のシーンになったのではないか?普通に人や車が行き来し子供たちが遊んでいる風景の中で唐突にダンスが始まり、観る側は知らず夢(非現実)の世界に誘い込まれる。私たちは現実(と思っている)の風景の中に、非現実な光景がふっと嵌入してくると、軽い惑乱を起すものです。脳がその認知機能に軽い錯乱を起すからでしょう。

 大事なことは、優れた芸術には映画に限らず、美術でも音楽でも文学でも、こうした「惑乱」の瞬間が必ずあるということで、それを人は例えば「夢」と言ったり「幻惑」とか「遊離感」と表現したりするのでしょう。面白いのはそういう瞬間というのは、享受する側だけじゃなくて表現者自体にも生じるものらしいということです。ピアノやヴァイオリンの奏者が演奏中に、自身の出している音を「高みから(あるいは別のところから)聴いている別の自分の存在感」をありありと感じるとき、我が身は自身が動かしているのではなく、他の「何ものか」に動かされているのです。
 じつは「幻惑」とか「遊離感」を味わわせるしかけというのは、今どき(というか都市社会)では結構あちこちにあるので、早い話USJに行けば、かなり手軽にそういう体験ができる。映画などもCGや3D画像の進展で、ごく気軽にそういう画像を作りだせてしまうので、私たちの脳は慣れっこになってしまって、かえってそういう感覚に鈍感になっているのかもしれません。

 「ウェストサイド」の時代はもちろんそれ以前の映画では、それこそチープな撮影技術しかなかったので、「夢」を実現するには大がかりな準備と、製作者の巨大な想像力が必要でした。そこで思い出すのが(また話がふくらみますが)、同じような「幻惑」や「遊離感」を味わわせてくれた映画として、前にも触れましたが、私はJ・コクトーの「 オルフェ 」〈1950年〉をあげたいのです。

 同じことは「ウェストサイド」にも言えるので、それこそ手間のかかる野外ロケをあえて敢行することによって、「夢」への飛翔を可能にしたのです。「オルフェ」の非世界への転換の合図は、たぶん二人のオートバイに乗った警官だと思いますが(これ死神の使いなんですよね)、「ウェストサイド」の場合、それはたぶんバスケットボールでしょう。ジェット団がバスケットボールを手にした瞬間、人の動きはダンスにジャンプしているのです。





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Last updated  2017.06.07 17:20:53
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TNサリエリ @ Re[1]:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) ナガノさんへ  コメントいただき、ありが…
ナガノ@ Re:Kyoto Tachibana High School Green Band 10.(09/07) 2年遅れで、この文章を読んで泣けてしまっ…
TNサリエリ@ ふたたび、コメントありがとうございます。 cocolateさんへ 私自身、彼女の演奏に刺激…
cocolate@ Re:エレクトーンというガラパゴス 1.(06/17) 再びおじゃまします。 826askaさんのYouT…
cocolateさんへ@ コメントありがとうございます。 三年ほど前に826asukaさんのことを知り、…

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