主演は大泉洋さん。観ようと思ったきっかけも大泉洋さん。
だけど、出演者全員がまるごと主演のような、平たく言うと「ワンチーム」。スクリーン上の一人ひとりから作品への強烈な思い入れがビシビシと伝わってくる映画だった。
とにかく最初から最後まで、ただひたすら胸を打たれ続けて、何度も何度も涙腺が緩くなった。
なかでも特筆したいのは、幼少期を演じた子役の皆さん。
名前がわかるのは坪井佳美(よしみ)ちゃんを演じた鈴木結和(ゆうわ)ちゃんだけだけど、坪井三姉妹も、病院で佳美ちゃんと同室になった女の子も、誰もが一所懸命で、可愛くて、愛おしくて、素敵だった。
結和ちゃんの静かでしっかり者の雰囲気は、福本莉子さんに丸ごと引き継がれていて、映画の中の坪井佳美さんは、ちっちゃい頃から最期まで、しっかりとひとりの佳美さんだった。
大泉洋が演じた坪井宣政のモデルとなった社長さんは、きっとものすごく真っすぐで、相当強引で、強気な人だったのだろうな、と思った。
世の中の役に立つものは、それを切実に、そして愚直に追い求め続けている人からしか生まれてこない。いくら頭が良くても、アドバイザーとかコンサルタントとか、そういう立ち位置からはリスクを取らない耳障りが良いだけの言葉しか出てこない。わかりきってることだけど、そんなことも改めて感じた。
私事ながら、街なかで急に心臓が止まって救急車で運ばれた6年前の記憶が、映画を観ながらリアルに蘇った。
搬送先で受けた手術は「経皮的冠動脈ステント留置術」。
手首から入れたカテーテルで胸の冠動脈までステントを運び、そのステントをバルーンで膨らませて、詰まった血管を広げる手術だった。
映画に出てくるカテーテルには鼓動があったので別ものだと思うけど、スクリーンから「心臓」、「カテーテル」、「バルーン」など、そういう言葉が聞こえる度に、当時、全力で僕の命を救ってくれた、たくさんの皆さんの姿が浮かんできた。
その姿がまた、劇中の人たちの真摯な姿と重なって、さらに胸が熱くなった。
封切り3日目の日曜の朝。通常料金の日だったせいか、映画館はそれほど混んでいなかった。
ゆったり観られたのは良かったけれど、この映画はもっともっとたくさんの人に観てほしい。
ものすごくそう思う映画だった。
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