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新橋演舞場3月新派公演『三婆』平成元年の春、金融業の社長を務める武市浩蔵が急逝妻である武市松子は目黒の豪邸で一人暮らしを始めるそこへ、妾だった北里駒代と、義妹の武市タキが転がり込んできた!浩蔵の逝去により会社は倒産、そのあおりを受けて、駒代とタキが住む家は借金返済のために差し押さえられてしまったのだ思いがけず同じ屋根の下で一緒に暮らすこととなった本妻・妾・小姑…顔を合わすたびに言い争いは耐えない泣いて、笑って、闘って…三人の女が巻き起こす大騒動!果たしてその結末は!?(公演あらすじより)「三婆」は、有吉佐和子氏の原作をもとに、昭和48年に舞台化されて以来、度々上演を重ねている傑作喜劇自分も過去に、今は無き芸術座で、池内淳子氏・加藤治子氏・渡辺美佐子氏と言う顔触れで観劇したことがある遺産相続、高齢化社会と、取り扱っている題材は現代にも通ずる話で、その風刺の効いた内容は長い年月を経ても色褪せることはないこの作品の見所は、なんといっても本妻・妾・小姑という女三人の闘いその張り合う姿は、どこか痛々しく、そして物悲しいそんな泥臭い展開を期待していたのだが、今回の新派で上演された「三婆」は時代設定を現代に置き換え、さらには登場人物も増えていて、また一味違ったまるでホームドラマのような作品に仕上がっていたそれはそれでいいのだが、話を膨らませたことによって、印象が散漫になった感は否めないまた、無理にドタバタ喜劇に仕上げようとしていて、ちょっと忙しなく思えた老いることの哀しみ、残酷さを見せつけられるので、自分の老後を重ねて見てしまい、観劇中は辛辣な気分になってしまうけれども、三婆を演じる水谷八重子氏、波野久里子氏、朝丘雪路氏という芸達者なお三方のパワフルさに圧倒され、観終わった後は、不思議と晴れ晴れとしたものが残っているのだった新橋演舞場3月新派公演『三婆』3月5日(金)~3月25日(木)まで出演/武市松子…水谷八重子/北里駒代…波乃久里子/武市タキ…朝丘雪路/園田文江…中田喜子/エリザベス・藤野・はるみ…藤田朋子/二宮三郎兵衛…安井昌二/川田則子…中島唱子 ほか
2010年03月19日
今日は楽しみにしていた劇団☆新感線の作品を観劇ほんと人気があって、チケットは毎回完売入手困難なんだけれど、なんとかプレビュー公演をGET!プレビュー公演とは、本演開幕日の前に行われるリハーサル的な試験公演のことをさすなので、チケット代金は若干ながら通常よりも低く設定されるプレビュー公演だからといって、完成度の低いモノを見せられるわけではないだろうから、その事に関してはあまり問題視していなかったと言うわけで、初日にさきがけて楽しんじゃいます!2010年劇団☆新感線30周年興行・春『薔薇とサムライ』それはとびっきりおもしれえ女だった…左の眼を覆う黒い眼帯弱きを助け、強きをくじく男以上の男前疾風のようにエメラルド色の地中海を駆け抜ける女海賊その名を“アンヌ・ザ・トルネード”だが眼帯で隠された左の眼には驚くべき秘密があった瞳に浮かぶ光…それは亡き国王と同じ黄金色の光の輪…てこたァあの女海賊の正体は!?国王亡きあと権力を欲しいままにする大宰相とその娘黄金色の瞳の輝きに王家復活の希望を託す将軍とその妻そして新女王の美しさに魅入られた隣国の王子黄金色の瞳に、次々と人間が群がる果たして誰が味方で誰が敵か日本を遠く離れたイベリア半島の一小国コルドニア王国を舞台に繰り広げられる大活劇!(公演あらすじより)いやァ…今回も面白かった!!劇団☆新感線の舞台はいくつか観てきたけど、ほんと期待を裏切らないいや、ある意味良い意味で期待を裏切ってくれる生バンドの屋台骨が舞台上に組まれている関係上、舞台に奥行きがなくて、手狭な感じがしたんだけれど、そこはうまくスクリーンと連携して、巧みに魅せてくれたなんといっても、古田新太氏演じる石川五右衛門のキャラクターは魅力的天海祐希氏も負けじと存在感をアピール女海賊の颯爽ぶりは、宝塚を彷彿とさせる主演を張るこのお二方が八面六臂の大活躍で舞台をグイグイ引っ張っていく共演者の方々もそれぞれが個性光るアクの強いキャラばかりなかでも特出していたのは、隣国の王子“シャルル”を演じた浦井健治氏浦井氏は自分のなかでは優等生というイメージがあったので、本作品で見せたコメディエンヌぶりにはただただ驚かされた自分が個人的に好きな役者である高田聖子氏も大活躍!どちらかというと、聖子氏の軽妙な演技を見たい自分としては、今回は嫌味な役を演じていたので、ちょっと物足りなさを感じていたけれども、やっぱりというか、さすがというか、ラストシーンでやってくれましたあんな露な姿になるなんて…あまりにもインパクトありすぎて、脳裏に焼きついてしまったほど女優魂、しかと見せていただきました二転三転と先の見えない展開はとってもスピーディーラストには、予想もしなかった意外な結末が用意されているグイグイ世界観に引っ張り込まれ、気づけばアッ!と言う間に終わってしまった感じ何もかもがパワフル!ほんと、凄い!大いに楽しんで、大満足で帰路につくのであった2010年劇団☆新感線30周年興行・春『薔薇とサムライ』赤坂ACTシアター3月18日(木)~4月18日(日)まで出演/石川五右衛門…古田新太/アンヌ・ザ・トルネード…天海祐希/シャルル・ド・ボスコーニュ…浦井健治/ラカーム・デ・ブライボン…藤木孝/デスペラード豹之進…山本太郎/ポニー・デ・ブライボン…神田沙也加/エリザベッタ…森奈みはる/バルバ・ネグロ…橋本じゅん/マローネ…高田聖子/ガファス・デ・ナルビオッソ…粟根まこと ほか
2010年03月16日
今日は久しぶりに母を誘って、親子揃って観劇明治座3月公演・小林幸子特別公演『かあちゃん/’10 華麗なる幸子の世界』「かあちゃん」ここは下町の定食屋2人の子供を抱え、女手ひとつで定食屋を切り盛りするかあちゃん明るく、元気に、たくましく、いつも笑顔のかあちゃんの涙と笑いに溢れた心温まる物語「’10 華麗なる幸子の世界」“幸子ワールド”へようこそ見どころ満載!数々のヒット曲と紅白歌合戦の衣裳で、華やかにお届けするステージ!!今回たまたまチケットを2枚譲っていただき、母を誘ったすると、どうだろう母からは意外な反応が返ってきた舞台にも演歌にも興味が無い母が、大いに喜んでいるのであるなんでも数日前に、今回の舞台の様子を取り上げたワイドショーを母は偶然見ていたのだそうそれで、「小林幸子の紅白歌合戦の衣装が見られるのね」と、興味を示していたのだ楽しそうにしている母とは裏腹に、自分はといえば、あまり気乗りがしないでいたこんなことを言っては失礼かもしれないが、小林幸子氏に興味があるわけではないので、母が喜ぶのなら…と、今回はお伴する腹積もりでいた劇場に着くなり、度肝を抜かれたなんと、巨大な小林幸子像がロビーで出迎えてくれたのである今回の芝居のシチュエーションに合わせているのか、割烹着姿をしている観劇が趣味なので、度々訪れている明治座も、内装が小林幸子仕様になっていて、ちょっとしたテーマパークのよう気乗りがしなかった自分も、なんだかワクワクしてしまい、すっかりペースに乗せられてしまった舞台は、芝居とショーの二部構成まずはお芝居「かあちゃん」戦争の記憶がまだ新しい東京下町を舞台に、女手ひとつで頑張るかあちゃんの物語生き別れになった息子の存在、莫大な借金の肩代わり、新しい恋の予感、愛息の死と、次々と身の上に降りかかる問題…それでも持ち前の明るさから気丈に振舞う最後はハッピーエンドで大団円!あまりにもご都合主義な展開ではあるが、笑って泣けて心温まるお話そんな物語を観終えた母は涙を流していた母はあまり涙を見せない人なんだけれど、自分も女手ひとつで頑張ってきただけに重なり合う部分もあり、胸に詰まるものがあったのだろうさてさて、二部はショー「’10 華麗なる幸子の世界」歌謡ショーということで、何回か着替えて、歌うだけ…と思っていたのだが、これが大間違い巨大なスクリーンを駆使して、ダイナミックな世界観が繰り広げられる新しい曲を中心に往年のヒット曲「もしかして」などで構成されたショーは、中国、ニューヨーク、さらには幻想的な海の底と、1曲終わるごとに、シチュエーションも衣裳も変わっていくはてまた、リフトに乗って3階席の高さまで上がったりと、お客様を楽しませることを第一に考えたエンターティナー振りを発揮!途中ではイリュージョンも組み込まれていて、これが小林幸子の華麗なる世界なんだ…と、煌びやかなステージにただただ面食らったかと思えば、着物姿で名曲「雪椿」「おもいで酒」をしっとりと聞かせるなど、構成にメリハリが効いているそして、ショーのラストを飾るのは去年の年末の紅白歌合戦で使用した衣裳(セット?)あいにく自分は紅白歌合戦を見ていないのだが、今回は“メガ幸子”と呼ばれているそう設置に時間を要するのか、スタンバイが完了する間は、その衣裳ができるまでの道のりをドキュメンタリー形式でスクリーンに映し出していたなんだか期待感を煽るような大袈裟な演出が、心をくすぐる逸る気持ちを抑えていると、ようやく舞台上に紅白歌合戦の衣装“メガ幸子”が登場した率直な意見を言わせてもらうと、想像していたより意外と小じんまりしていたひょっとしたら、舞台のサイズに合わせるために、小さくしたのかもしれないけれども凄い!!初めて見たけれど、迫力があるこれはやっぱり衣裳じゃなくて、セットだよ今回の観劇、あまり気乗りしないでいた自分も、佳作の芝居、楽しめるショーだったこともあり、終わってみればあっと言う間のひとときだった母も大いに楽しんだ様子母の喜ぶ顔が見れて、息子は幸せです小林幸子さん、素敵なひとときをありがとうござました明治座3月・小林幸子特別公演『かあちゃん/’10 華麗なる幸子の世界』3月2日(火)~27日(土)まで出演/上田好子…小林幸子/順吉…左とん平/フミ…松金よね子/熊田熊吉…穂積隆信/高杉…曽我廼家文童/健太…小宮孝泰 ほか
2010年03月12日
舞台を観るのが好きとはいえ、観劇のチケット代は高いので、そう手当たり次第観るというわけにはいかない観たいものを厳選する観劇する作品を選ぶポイントは2つ自分が好きな、または興味がある役者さんが出演しているか舞台の内容が面白そうかこのどちらかの条件を満たしていれば、お金と時間に余裕があれば観劇する今日観る作品は、実は観劇するか迷いに迷ったと言うのも、興味がある役者の方が出演されるのだが、作品の内容があまりにも自分には興味がないものだったのである公演のチラシを見る限りでは、言葉は悪いが、あきらかに退屈なものになりそうそれでも役者の方の演技が見られれば…との思いで観劇することにした雨が降るなか、座・高円寺という劇場に足を運んだ『禿の女歌手』ハゲも歌もありませんスミス氏夫婦の家にマーティン氏夫婦が訪れますナンセンス溢れる会話の途中に消防隊長が現れます驚いた女中メアリィが詩を捧げますヒ、ヒ、ヒ、ハ、ゲ、ノ、オン、ナ、カシュ(公演チラシより)2009年度は、不条理劇の巨匠イヨネスコ生誕100周年にあたるそれを記念して上演されることになったのが、『禿の女歌手』ロンドン郊外の典型的なイギリス人家庭を描いた“馬鹿げていて滑稽なナンセンス会話劇”この不条理劇、とにかく訳が解らない何が解らないのかが解らないん?言っている意味わからないかつまりは、どう理解したらいいのか、どう見たらいいのか、どう楽しめばいいのか…それが解らない要は、この作品の世界観を自分が受け入れることができないのだ不条理…その語源には「馬鹿げた・滑稽な」という意味があるそう確かに舞台上で繰り広げられる会話は、不条理な世界で溢れかえっているところが不条理すぎて、逆に白けてしまったこのナンセンスな世界を楽しむことができない自分が、一番のナンセンスなのかもしれない劇団青年座イヨネスコ上演委員会『禿の女歌手』座・高円寺3月3日(水)~7日(日)まで出演/スミス氏…西川明/スミス夫人…山口果林/マーティン氏…堀越大史/マーティン夫人…執行佐智子 ほか
2010年03月06日
知人の方に誘われて、「TEPCO・1万人コンサート」なるものを観るために日本武道館に足を運んだこの催し、なんと無料で観ることができるのだそう但し、チケットは事前応募による完全招待制抽選に当選しなければならないのだその招待客数、ペア3500組(7000人!)凄い人数である仕事では今まで何度か訪れたことがある日本武道館客の立場としては初めて中に入ると、その広さ、さらには観客の多さに驚かされたこのコンサートには、アマチュア合唱団約3000名が参加しているその方々と招待された観客を合わせると、催しの冠にもなっている1万人になるというわけ雑然としたざわめきのなか、自分はというと、独特の空間が物珍しいこともあって、視線を忙しなく動かしながら開演時間を待っていた平成元年にスタートした「TEPCO・1万人コンサート」今年で18回目を迎える今回の作品は、古くから伝わる安寿と厨子王の物語をなかにし礼氏が新解釈で書き下ろしたもの『真説・山椒太夫~愛と永遠の絆』安寿と厨子王の師弟は、遠国に行ったきりの父を訪ね、母と乳母と共に旅に出るやがて、人さらいを働く山賊が横行している辺りを通りかかる山賊の頭目・山椒太夫は錬金術師であり、そのための人足を集めていた四人は用心に用心を重ねるのだが、山賊たちの巧みな罠にかかり、母と乳母は行方知れずとなり、師弟は山賊の頭目のもとに連れていかれるそれから師弟の苦難の日々がはじまるところが、山椒太夫は安寿と厨子王の実の父親であり、姉弟の苦難は「魂の錬金術」として、父が与えた試練であった大団円、安寿の死をも厭わぬ犠牲と厨子王の勇気によって姉弟、母、そして山椒太夫は黄金の刻を迎えるはたして、その黄金の刻とはどのような瞬間なのであろうか…(公演あらすじより)世界劇とは、ドイツのカルル・オルフ氏が提唱した詩(言葉)と音楽、人体の動き(主に舞踏)が一体となり、ひとつの世界を創り出す総合舞台芸術のことこの“世界劇 黄金の刻”では、宙乗りをはじめとする大掛かりな舞台装置、豪華絢爛な衣装、現代のテクノロジーを駆使した照明、音響が作品の世界感を巧みに創り上げる役者が演じ、ソリストが歌い、ダンサーが踊り、舞踏家が舞う…世界劇ならではのダイナミックで、幻想かつパワフルな舞台座席は2階席遥か前方にある舞台を見下ろすような位置当然のことながら、演者たちの表情を窺い知ることはできない声と、その方が醸し出す雰囲気で、「あぁ…あの人だ」と判別できるぐらいけれども、舞台全体を見渡すことができるので、世界劇という、この作品が持つ世界観は十分堪能することができた作品は、なかなか壮大なテーマを取り扱っているセリフをソリストの方々が謳いあげるので、物語がうまく理解できなかったり、作品的にちょっと難しいところもあるのだが、ドラマティックな展開にグイグイと引き込まれる里見浩太朗氏、佐久間良子氏をはじめとする名立たる俳優の方々の演技は勿論のこと、舞踏家、ダンサー達の踊り、3千人で構成された合唱団による合唱、太鼓の演奏、宙乗り、レーザー光線による照明など、様々な演出によって視覚・聴覚が刺激されるとにかく凄い!!その一言に尽きると思うたった一日だけ、しかも1回限りの舞台の為だけにこれだけの贅を極めるのだから、ただただ凄いとしか言いようがないはじめての世界劇ダイナミックな迫力に圧倒され、荘厳な世界観に魅せられた機会があったら、是非また観てみたいけれども、抽選なんだよね…TEPCO・1万人コンサート 18th世界劇 黄金の刻『真説・山椒太夫~愛と永遠の絆』出演/山椒太夫…里見浩太朗/芳乃…佐久間良子/安寿…高島礼子/厨子王…尾上右近/小萩…松原智恵子/山岡太夫…林与一/鏡の大王…麿赤兒/闇の魔王…ダレン・リー ほか
2010年02月27日
過酷な運命に翻弄されながらも己の信じる道を歩み続けた天璋院篤姫2008年にNHK大河ドラマで放送され、大きな反響を呼んだその作品、宮尾登美子原作『天璋院篤姫』が明治座で舞台化された明治座2月公演『天璋院篤姫』薩摩・島津家から徳川十三代将軍・家定の正室となった篤姫その聡明さから大奥はもとより表の政治にも影響を及ぼす存在となっていく夫・家定とのあまりにも短い夫婦関係、公武合体により降嫁してきた和宮との嫁姑の確執など、様々な苦悩を乗り越えながらも、ひたすら前に歩み続ける篤姫徳川三百年の崩壊という歴史の渦の中を生き抜いた篤姫と、篤姫をめぐる人々の姿を壮大に描く華麗な歴史絵巻(作品紹介より)大河ドラマにハマッたわけでもなく、さして篤姫に関心があるわけでもない自分けれども、舞台を通して見た篤姫のその波乱に満ちた生涯は、強く惹きつけられるものを感じた次々と襲いかかる試練の数々…それでも決して屈することなく、己の信念を貫き通す生き様は、生ぬるい自分に対するメッセージのように受け取れ、“このままではいけない…”と自分のなかで何かが弾けたような気がした篤姫が度々口にする言葉「女の道は、前へ進むしかない、引き返すのは恥でございます」女に限らず、男も前へ進むしかないのである天璋院篤姫を演じた内山理名氏をはじめ、共演者には芸達者なベテランから若手実力派といった多彩な顔触れが揃った今回の作品篤姫の生涯を3時間弱にまとめているので、若干忙しない印象は否めないが、歴史に疎く関心もさほど寄せていない自分でも十分に楽しめた明治座2月公演『天璋院篤姫』2月4日(木)~24日(水)まで出演/天璋院篤姫…内山理名/島津斉彬…西岡徳馬/皇女和宮…遠野あすか/しの…小林綾子/本寿院・お幸の方(2役)…秋野暢子/滝山…高橋かおり/勝海舟…国広富之/幾島…香寿たつき/徳川家定…今拓哉/庭田嗣子…山田スミ子 ほか
2010年02月20日
歌舞伎座には、“一幕見席”というものがある通常歌舞伎の公演は、昼の部・夜の部に分かれていて、3~4つの演目で構成されている一幕見席というのは文字通り、そのうちの一幕だけ観られる席のこと料金は演目により異なるが、大体1000円前後と、気軽に歌舞伎の世界を楽しむにはもってこいの席座席数は90、立見数60、合計150名の定員制切符は、歌舞伎座正面入口の脇にある一幕見専用窓口で販売となるが、当日売りのみで、販売開始時間は開演時間により異なる自分は、その一幕見の切符を買い求める為に列に並んでいた販売開始時間より早めに劇場に到着すると、まだ数人しかいなかったなので、ちょっと時間を潰して頃合いを見計らってから戻ってきたのだが、既に三十人ほどの人が並んでいた列の最後尾につくとき、係りの人に「立ち見になりますが…」と言われたが、それでも構わないと思ったどうしても観ておきたい演目だったからであるいかにも歌舞伎座に通い詰めているような風貌をした男性、それから歌舞伎には縁遠いような若い女性、仕事帰りと思われるスーツ姿の男女、外国人の方など、実に多種多彩な人たちが列に並んでいる時間になると、専用の窓口で切符を購入1400円で2時間程歌舞伎を鑑賞できるのだから、安いものである一幕見の客は、4階席まで直接通ずる階段をあがっていく通常の入口とは異なる専用の階段なので、歌舞伎座のロビーや売店などは利用することができないある意味、隔離されているといっても等しい雰囲気ある歌舞伎座の内装を見ながら、4階席に到着丁度休憩中ということもあって、劇場内は賑々しい状態にあった一幕見席は完全入替制ではあるが、引き続き次の幕を観る場合にはそちらの観客が優先されるなので、最後の演目から一幕見する場合は、大抵立ち見になってしまうようだ今日は自分を含め、30人ほどの人が立ち見となっていた席は4階席天上がすぐ上にあるようなところそこから眺める舞台ははるか前方斜め下にあり、見下ろす感じ歌舞伎座は、今回で2回目これから観るのは、中村勘三郎氏主演の『籠釣瓶花街酔醒』江戸中期の時代、江戸の吉原で実際に起きた事件を題材にしたもので、歌舞伎座でも度々上演されている演目自分がこの作品の存在を知ったのは去年のこと「カゴツルベ」「籠釣瓶 吉原百人斬り」という作品を観劇し、そのドラマチックな展開に釘付けになり、是非歌舞伎版も観てみたいと思っていたそんなときに、2月に公演があることを知ったけれども、歌舞伎座は今年の4月をもって取り壊されるということもあり、チケットを入手するのは困難そこで、一幕見で観ようと考えたのだった『籠釣瓶花街酔醒』野州佐野の絹商人・佐野次郎左衛門は、江戸吉原で道中姿の花魁・八ツ橋を見染め、通い詰めたあげく身請けしようとするところが、八ツ橋は情夫の繁山栄之丞に責められ、満座のなかで次郎左衛門に愛想づかしをする悲憤で故郷へと帰った次郎左衛門、数ヵ月後にふたたび吉原へ現れたその目的は…4階席から見下ろす舞台はやはり遠い分かっていても遠い自分の視力では、役者の方の声を聞いて、「あの人なんだぁ…」と判別するのがやっとそれに覚悟していたとはいえ、2時間近くの立ち見はやはり疲れる役者がぼんやりとしか見えないから、作品の雰囲気、歌舞伎座の空間を楽しんだ肝心の作品はというと、解り易い展開なので、歌舞伎に関して何の知識も無い自分が観ていても飽きることはなかったけれども、テンポがゆっくりとしているというか、間延びした印象は拭えないこれが近い席での観賞なら、役者の方々の表情や所作などが分かって、また違った印象を受けるのかもしれないが、4階席で作品の雰囲気を味わっていた自分としては、どこか物足りなさを感じずにはいられなかった気軽に、そして手軽に歌舞伎を楽しむことができる一幕見席はじめて体験したけれど、面白かった以前から観てみたかった演目も観ることができ、楽しいひとときを過ごしたのであった歌舞伎座さよなら公演二月大歌舞伎・夜の部『籠釣瓶花街酔醒』2月1日(月)~25日(木)まで出演/佐野次郎左衛門…中村勘三郎/兵庫屋八ツ橋…坂東玉三郎/繁山栄之丞…片岡仁左衛門/立花屋長兵衛…片岡我當/治六…中村勘太郎/立花屋おきつ…片岡秀太郎/兵庫屋九重…中村魁春/釣鐘権八…坂東彌十郎 ほか
2010年02月16日
今日は、近代演劇の創始者であるイプセン原作の「ヨーン・ガブリエル・ボルクマン」の翻訳劇を観劇『ジョン・ガブリエルと呼ばれた男』人生は愛すること憎むことそして夢見ること生涯ひとつのものを奪い合う双子の姉妹頂点を目指しすべてを失った男と、どんな夢も愛もこれまで手に入れることなく生きてきた男誰もが嘘がつけない誰もが一切譲らない人生をかけた辛辣な言葉の刃が次々と繰り出される…(公演あらすじより)かなり難しいいや、自分の読解能力が追いつけていないだけなのかもしれない話の流れは掴めているところが、作品から何を感じとればいいのかが分からないだから、ただただいくつもの場面が自分の前をスーッと通り過ぎていくけれども決して退屈ではなかったむしろ惹きつけられていた出演者は4人だけ仲代達矢氏、十朱幸代氏、大空眞弓氏、米倉斎加年氏という錚々たる顔触れ姉と妹、男とその友人、夫と愛人、夫と妻…それぞれの対決という構成になっているのだが、愛と憎しみをぶつけ合う言葉の応酬、気迫の籠もった演技、張り詰めた空気は、静けさのなかにも情念の炎が激しく燃え盛っていて、息が詰まる思いをしたぐらい特に、仲代氏は存在そのものが神懸かっていて、ただただ圧倒されたこの作品、自分にとっては、内容云々というよりも、役者の方々に魅せられた作品だった舞台『ジョン・ガブリエルと呼ばれた男』世田谷パブリックシアター2月12日(金)~21日(日)まで出演/ジョン・ガブリエル・ボルクマン…仲代達矢/エルラ…十朱幸代/グンヒル…大空眞弓/フォルダル…米倉斎加年
2010年02月13日
観劇のために新宿へ初めて訪れる紀伊國屋ホール古びているというか、なかなか歴史を感じさせる空間は、ほぼ満席の状態観る前から否応にも期待感が高まるシス・カンパニー公演『えれがんす』シンクロナイズド・スイミング界の開拓者フィギュア・スケート界の重鎮高得点をたたき出してきた鬼コーチたちの、点数のつけられないひそやかな日々我が身に幸運をもたらすのはどっちか!?(公演チラシより)題名といい、ポスターといい、どんな作品なのかまったく想像つかないそんな状態だったので、幕開きの渡辺えり氏と木野花氏によるコテコテの漫才には面食らった?????一体どういう作品なんだろ?シンクロ、そしてフィギュア・スケートの鬼コーチとして名を馳せた真紀子とあい子は、持ち前のキャラクターから漫才師として第二の人生を歩む初めこそ順調な出だしだったものの次第に翳りが見え始め、新たな人生を模索するあい子はスポーツクラブの経営に乗り出したが、失敗物件は裁判所によって差し押さえられ、明け渡しを命じられていたその最後の夜、スポーツクラブに、親友の真紀子、あい子の妹・れい子、スポーツライターの宮らが一堂に介す宮が連れてきた一人の青年、原悦太郎その青年から、女三人は驚愕の真実を突きつけられるのであった…人付き合いをしていくうえで、本音ばかりをぶつけることはなかなかできないやはり言葉を選ぶし、そこには当然のことながら遠慮もある親友、兄弟…親しい間柄ならなんでも容易く言えそうな気もするが、逆に、だからこそ言えない場合もある昔は華々しい日々を送っていただけに、今の状態が惨めで情けないその苛立ちをついつい周囲に向けてしまう本当は素直になりたいのに、意固地ゆえかなかなか素直になれない大人たち人間の弱さ、脆さを思い知らされた作品この作品では、とにかく渡辺えり氏のパワフルさが、自分のなかで印象に残った声の通りの良さはバツグン!役柄のせいかもしれないが、どこか憎めない愛すべきキャラクターで、すっかりファンになってしまったクスッと笑って、ホロッと泣く…生きているとほんと色々なことがあるけれど、前向きな気持ちになれる作品を観終わったあとには、自分の心のなかに一筋の明るい陽が差し込むのであったシス・カンパニー公演『えれがんす』紀伊國屋ホール1月29日(金)~2月14日(日)まで出演/鶴岡真紀子…渡辺えり/川上あい子…木野花/川上れい子…梅沢昌代…/宮優…八嶋智人/原悦太郎…中村倫也/イ・スミン…コ・スヒ
2010年02月05日
今日は母を誘って観劇『友情 秋桜のバラード』“あなたに友達はいますか?”“あなたは友達に何をしてあげられますか?”命の大切さ、生きることの素晴らしさ、友情の尊さ、本当の勇気とは…白血病の少女と、クラスメイト達の友情の物語「友情~秋桜のバラード」は、演劇を通して骨髄移植についてのPRを行っている作品平成11年11月の第1回公演から数えて11年目、再演を重ね、上演回数は357回を数えている今年は銀座博品館劇場にて、1月から2ヶ月にわたって公演物語の中心となる生徒役はダブルキャスト、教師や両親といった大人の役は4つのグループに分かれて公演を行う自分は、宮下裕治氏が教師役を務める、2組バージョンを観劇白血病治療のため、北海道から転校してきた島崎あゆみある日、クラスの問題児である森山信一と口論となり、あゆみはナイフを向けられたしかし、あゆみは毅然とした態度で、こう言った「死ぬことなんて怖くない。どうせ私はあと1年か2年で死ぬんだから!」動揺する信一とクラスメートそこで初めて、担任教師の野本が皆へ、あゆみが白血病であることを告げる月日は流れ、薬の副作用であゆみの頭髪はすべて抜け落ちてしまうそのことで、人との交わりを拒み始めるあゆみ見舞いに来てくれた級友とも顔を合わせることはなかったそんな折、クラスメートはあゆみを励まそうと、中学最後の夏休み、三浦半島への旅行を計画するはじめは渋るあゆみだったが、参加することにけれども、やはり髪の毛のことが気になって、なかなか素直に楽しむことができないそんなあゆみを見た信一は、あゆみ一人を残して、クラスメイトを集めてどこかへ行ってしまう戻ってきた皆が取った意外な行動とは…!?テーマは重々しいが、とにかく若者達が溌剌とした演技を見せてくれるので、場が重くなることがあまりない副作用で髪が抜け落ちてしまったあゆみを気遣い、男子女子問わずクラスメート全員が丸坊主になる…この作品の見せ場といっていいほどのシーンでは、思わず涙が零れてしまった友情っていいね…演じる役者さんたちは、役作りのために、実際に頭を丸めているのだそういやはや、作品に対する意気込みを見せつけられました若者達を中心に舞台は進んでいくのだが、要所要所でベテランの俳優の方々が作品を支える今回が初舞台となる宮下裕治氏は、どこか堅さを感じさせるものの、実直な教師を好演あゆみの母を演じた新井晴み氏は、娘をやさしく包みこむような母の情愛を巧みに表現し、涙を誘った中学生が抱える心の闇として、人種差別や義父による性的虐待など、悲劇性を強調するような話を詰め込みすぎている感は否めない作品も“死”という悲しい結末を迎えるわけだが、観終わったあとは、不思議と暗い気持ちにはならなかったとにかく生徒達の前向きな気持ちが作品全体から伝わってきたからなのかもしれない終演後は、生徒役の子たちがロビーでお客さんをお見送り頭を下げての「ありがとうございました!」という言葉が、実に清々しかったそんななか、我が母は、生徒役の一人の少女の頭を撫でていたどうやら皆が鬘をつけていると思っていたらしく、それを母は確認したかったようだ何してるんだか… 骨髄移植についてのPRを行っている作品だけあって、芝居を観ながら、知識も得ることができるなかなか勉強になったただ残念なことに、驚くほど客席の空席が目立った半分も埋まっていなかったような気がする友情、命の尊さ、骨髄移植と、メッセージ性の強い作品なだけに、より多くの人に観ていただきたい愛のヒューマン劇場『友情 秋桜のバラード』2組バージョン銀座博品館劇場1月19日(火)~2月1日(月)まで出演/野本信吾…宮下裕治/島崎悦子…新井晴み/島崎保…天宮良/森山正一…伊吹剛/森山勝江…三浦リカ/島崎あゆみ…佐藤葵/森山信一…藤村直樹/川井光雄…つまみ枝豆 ほか
2010年01月29日
今日は観劇1968年アカデミー賞三部門に輝き、またブロードウェイでも繰り返し上演されてきた歴史ドラマの名作『冬のライオン』ヘンリー二世と王妃、その三人の息子、愛人、フランス王を絡め、崩壊した家族の人間模様が浮き彫りにされてゆく西ヨーロッパに強大な国を築いたイングランド国王ヘンリー二世地方領主にすぎなかったヘンリーは、フランス王妃だったエレノアを妻に迎えることで広大な領地を手に入れ、その地位と権力を手に入れていたそして1183年のクリスマス・イヴヘンリー二世は後継者問題に決着をつけようと一族を召集した王の寵愛を失い、幽閉の身となっている王妃エレノアと王位を狙う三人の息子たち地位と権力を賭けての一族の愛憎をめぐる駆け引き…そこに、奪われた領土を取り戻そうと機会を窺うフランス国王フィリップ二世と、その異母姉でヘンリー二世の愛情を一身に受ける皇女アレーの思惑が錯綜する誰を愛し、誰を信じ、誰が裏切るのか?(公演あらすじより)ただでさえ歴史に疎い自分果たして作品を理解できるのだろうか?あらすじを読むかぎりでは、かなり難解な話のよう自分でチケットを取っておきながら、あまり気乗りのしない観劇ムードでいたところがどうだろういざ幕が上がると、グイグイと作品の世界観に引き込まれた地位と権力をめぐる後継者争い誰が味方で、誰が敵か?誰と組めば自分は得をするのか?夫と妻、親と子、兄弟、男と女、それぞれの愛、そして裏切り…それぞれの思惑が複雑に絡み合い、二転三転とめまぐるしく攻守が入れ替わる展開の読めないストーリーに釘付け出演者が7人と少ないながらも、それぞれの役者の方がしっかりと役に息づいていて、とても見応えがあったなかでも、主要な役を演じる平幹二朗氏と麻実れい氏の存在感には圧倒される特に麻実氏昨年、「ストーン夫人のローマの春」という舞台で初めて出演作品を観たのだが、醸し出される独特の雰囲気にすっかり呑みこまれたセリフの言い回し、立ち居振る舞い…今回も一挙手一投足、ついつい眼で追ってしまった結局のところ、この作品はどんな結末を迎えたのだろう?主人公の選択した答えは、自分にはちょっと理解できないものだったそもそも一端の男が、一国の主の思想を理解しようというのが無理な話なのかもしれない幹の会+リリックプロデュース公演『冬のライオン』東京グローブ座1月15日(金)~1月24日(日)まで出演/ヘンリー二世…平幹二朗/エレノア・オヴ・アキテーヌ…麻実れい/リチャード…三浦浩一/ジョン…小林十市/ジェフリー…廣田高志/アレー・カペー…高橋礼恵/フィリップ・カペー…城全能成
2010年01月22日
今年初の観劇『ANJIN イングリッシュサムライ』シェイクスピアの時代のイギリスと、徳川家康の時代の日本をまたにかけた男がいたその男の名は、ウィリアム・アダムズ=三浦按針英国人船乗り、のちに日本史上ただひとりの青い目のサムライその激動の人生と、徳川家康、宣教師、割拠する戦国武将たち、外国人商人たちとの交流と葛藤を描く大歴史劇(公演ポスターより)勉強嫌いだったので、とにかく歴史に疎い自分ちょっと難しくないかな?と思ったが、この作品を通して、三浦按針という人物像に興味を持ったこともあって、惹きこまれるようにして観劇した歴史的背景が分かっていれば、尚一層楽しめたかもしれない今回の作品は一部英語のセリフがあるので、字幕が表示される舞台中央の上部、それから上手下手の両端それぞれに電光掲示板が取り付けられているまず字幕でセリフの意味を理解し、それから舞台に視線を移すので、どうも作品に集中することができないそれと、自分はかなり下手寄りの座席で観劇したのだが、視界に入る電光掲示板と舞台の位置関係の収まりがいまいち悪く、終始視線をキョロキョロ左右に動かしっぱなしそのせいもあってか、観終わったあとすごく疲れた…この作品、とにかく凄い!何と言ったらいいのだろう重厚というか、格式が高いというか…観る者を寄せつけない張り詰めた空気のようなものが舞台には漂っているそれは、実話を基にしているという重みもあるが、なんといっても出演者の方々の迫真のこもった演技があったからこそ成しえた業かもしれない徳川家康を演じた市村正親氏の圧倒的な存在感と迫真の演技母国と日本国の狭間で揺れる三浦按針を巧みに演じたオーウェン・ティール氏欲望のままに生きる淀殿を凄みある演技で魅せた床嶋佳子氏役者の方々それぞれが役に生きていて、その時代の一片を垣間見たような錯覚を覚えるほど、見事に舞台上という限られた空間のなかで世界観を作り上げていたそんななか、特に印象に残ったのは、藤原竜也氏宣教師という役どころで、セリフの殆どが英語なのだが、見事なまでに流暢に披露気迫のこもった演技に、役者魂を見たような気がした歴史の渦のなかに呑みこまれ、運命を弄ばれた人々辿り着いたその結末は、哀しく、あまりにも切ない時代という言葉で簡単に片付けることは、決して出来ない事実長い年月を経た今、自分は何を思うのか?難しいことはわからないけれど、ただただ切なさだけが胸をギュッと強く締めつけていた舞台『ANJIN イングリッシュサムライ』天王洲銀河劇場2009年12月10日(木)~2010年1月18日(月)まで出演/徳川家康…市村正親/ウィリアム・アダムズ(三浦按針)…オーウェン・ティール/宣教師ドメニコ…藤原竜也/徳川秀忠…高橋和也/淀殿…床嶋佳子/島津義弘…植本潤/本多正純…小林勝也 ほか
2010年01月06日
今日は12月31日大晦日2009年最後の日仕事納めの日毎年なら、この日は年末の疲れが溜まりに溜まって疲労困憊状態なのだが、なぜか心は弾んでいたと言うのも、今日は夜から観劇するからだ大晦日に観劇?そう、年末は仕事の段取りが読めないし、かなり疲れるので、余程のことが無い限り予定は入れないけれども、たまたま観たかった芝居を観る機会が巡ってきただいぶ悩んだのだが、舞台の開演時間が夜20時という遅い時間だというので、無理に組んでしまったおかげさまでというか、この不況下の煽りを食ってか、最後の日はとくに忙しさに追われることもなく、無事に今年一年の仕事を終えることができた一息つく間もなく、そのまま劇場へ雑然とした渋谷の街をすり抜けるようにして行くと、なんとか開演前に間に合うことができたここで、ようやく肩の荷が下りたあとは純粋に舞台を楽しみますBunkamura20周年記念企画・シアターコクーン・オンレパートリー2009『東京月光魔曲』活気と猥雑さに満ち溢れた震災後のモダン都市・東京を舞台に、美しくも妖しげな姉と弟、田舎から上京したての兄弟、うだつのあがらない私立探偵と事務員、売れない探偵小説家、双子の兄弟、動物園の爬虫類研究者とその妻、カフェーやレビューを取り巻く人々など、多彩な人物が複雑に交錯し、スリリングな駆け引きを繰り広げる一大心理活劇(公演パンフレットより)日露戦争中の朝鮮半島で起きた、一人の兵士の死その哀しい出来事から二十五年の月日が流れ…謎の死を遂げた兵士の子供は、美しい娘と、頼もしい青年へと成長していたその胸のうちに秘めたるは、亡き父親を死に至らしめた者たちへの復讐…関東大震災から復興を果たし、華やかな賑わいを見せる東京その世界観が、舞台上に巧みに表現されている舞台の盆がグルグルと回るなかで、出演者一堂が歌い上げる「東京ラプソディ」なんとも賑々しいオープニングに、否が応でも期待感が高まる父を殺めた者達への姉弟の復讐譚なのかと思いきや?物語は想像もつかない意外な展開を見せる妻が夫を残忍な方法で殺すというショッキングな報道が、世間を賑わしていたたまたまその事件に出くわした私立探偵の一之蔵は、すべての事件の背景に、ある一人の女性の存在があることに気づくその女性こそ、父の死の真相を探る針生澄子だった過去の過ちを葬り去り、今現在は成功を収めている男たちに近づく澄子と薫の師弟事件の匂いを嗅ぎ、その動向に注目する私立探偵姉弟は、亡き父の復讐を果たすことができるのか?姉が関係を持った男たちの相次ぐ死の真相は?謎はますます深まるばかり…さらには一見すると無関係のように思える東京という街に逞しくも強かに生きる人々が、複雑に交錯し、絡み合っていく復讐、淫靡、エロス、愛憎、誘惑、嫉妬、残忍、悲哀、謎解き…そのなかにはユーモラスもあり、めくるめく世界観は、まさに自分好み最初から最後まで、存分に楽しませてもらったただひとつ言わせてもらうならば、一連の事件の真相は明かされず、思わせぶりな展開で終幕してしまうので、なんだかスッキリとしない結末はそれぞれの想像に任せるということだろうか自分の貧相な想像力では、この結末、うまくまとめることができないんだけれど…多彩な顔触れが揃った、今回の出演者の方々それぞれのキャラクターというか個性には存在感があった優しくて姉想いの弟を演じた瑛太氏淡々とした振る舞いのなかに、薫という人物像を巧みに表現それだけに、胸に秘めたる屈折した感情を吐露するくだりでは迫力があり、圧倒された物語のキーパーソンとも言うべき、姉の澄子を演じた松雪泰子氏美貌も手伝い、その佇まいからしてミステリアス弟には優しい顔だけを見せる一方で、裏では数々の男性と関係を持ち続けるそんな二面性が、弟をあらぬ方向へと導くキッカケとなってしまうのだが…結局のところ、この澄子は一体どんな女性だったのだろうか?何をしたかったのだろう?心理状態がイマイチ自分には理解できなかった愛に飢えて、愛を乞うていたということだけはわかったいや、もしかしてそれが全てだったのだろうか?田舎から上京し、次第に都会の色に染められ汚れていく兄を演じたユースケ・サンタマリア氏バラエティー番組でのおちゃらけなイメージしか抱いていなかったので、真面目に演技していてビックリ!騙され痛い目に遭い、最後には可愛がっていた弟にまで裏切られ、寂しく去っていく姿は、なんとも切なかったこの作品で、個人的にツボだった方は、探偵の事務員を演じた犬山イヌコ氏誰しもが腹に一物を抱えている登場人物のなかで、自分の気持ちをストレートにぶつけ、またそのキャラクターゆえか笑いも提供してくれて、殺伐とした世界のなかで一服の清涼剤となった公演時間が3時間30分強と、割と長めなのだが、作品にのめりこんでいたこともあって、瞬く間に終わった感じ今年最後の夜、大好きな芝居を観て、楽しく過ごすことができたさてさて、只今の時刻23時30分過ぎ…本日は大晦日ということもあり、今日の公演は特別に、これからカウントダウンを行うスペシャルバージョンとなっているというわけで、劇場で新年を迎えます初めてのことだから、ちょっとワクワク…Bunkamura20周年記念企画シアターコクーン・オンレパートリー2009『東京月光魔曲』12月15日(火)~1月10日(日)まで出演/針生薫…瑛太/針生澄子…松雪泰子/八木太郎…ユースケ・サンタマリア/大曽根千とせ…伊藤蘭/一之蔵始…橋本さとし/相馬竹三・賢三(2役)…山崎一/夜口航路…大倉孝二/小町安子…犬山イヌコ/大曽根初彦…大鷹明良/八木次郎…長谷川朝晴 ほか
2009年12月31日
今年最後の休みあとは、大晦日まで怒濤のような忙しさが、自分のことを待ち構えているそのことを考えたら、今日一日はゆっくりとしたいところけれどもやりたいことがあるやらなければならないこともあるあれやこれやと考えを張り巡らすだけで、結局は何一つとして満足に解決していないう~ん…どうしたらいいんだろ!?そんななか、昼間は観劇の予定今年はどれぐらい舞台を観たかな?40作品は観たこれ、たぶん今までで一番多かったような気がする観劇を止めたら、お金も貯まるだろうし、自分の時間も少しは出来るんだろうけれど…好きだから止められないだろうね2009年の観劇納めは、宝塚歌劇月組公演『ラストプレイ―祈りのように/Heat On Beat!』本作品は、月組男役トップスター、瀬奈じゅん氏の退団公演別にファンというわけでもないのだが、最後の勇姿は観ておきたいと思った「ラストプレイ―祈りのように」孤児院で育った青年・アリステアは、ピアノの英才教育を受け世界的コンテストに参加するまでに成長したしかし、ストレスと重圧から、最終選考の演奏中に失神してしまうそのことがトラウマとなり、二度とピアノを弾かなくなるそんな彼が、裏社会に生きる男・ムーアと出会ったことから事件に巻き込まれ、すべての記憶を失ってしまう…トラウマを抱え、記憶まで失ってしまったアリステアが、自らの意思で生きる道を見つけ出すまでを、男同士の友情を軸に、彼に心を寄せる女性たちの想いを散りばめ描いたミュージカル「Heat On Beat!」永遠につながる一瞬一瞬をきざみ続けるリズムそれは生きる喜び、愛の祈り、夢への憧れを刻みながら、永遠に熱く燃え上がる炎に似てまばゆい音楽の根底にあるリズムの持つエネルギーをショーアップした作品(公演あらすじより)宝塚歌劇は、花・雪・星・宙と、各組には男役と娘役それぞれに主演を張るトップスターが居るが、なぜか月組だけ今現在娘役トップが居ないどういう理由があってのことなのかは知らないが、トップコンビの画が見られないというのは、何か物足りないというか、やはり淋しいものを感じるけれども、今回の芝居「ラストプレイ」に関していえば、娘役トップ不在というものが功を奏していたように思えた瀬奈じゅん氏演じるアリステアと、次期月組男役トップスターの霧矢大夢氏演じるムーアの二人の関係が羨ましく思えるぐらい、男同士の友情が描かれていてなかなか良かった宝塚といえば、自分は芝居よりもショーを楽しみにしているあの煌びやかな世界は、宝塚独特のもの「Heat On Beat!」は、とくかくエネルギッシュな作品ショー全体を通して、自分のお気に入りのシーンを見つけることはできなかったのだが、華やかな世界を思う存分楽しませてもらった舞台の緞帳が下り、夢の世界から現実に引き戻される瞬間この落差の激しいこと帰ったら、やることやんないとね今年最後の休日なんだから、有意義に使わないと!宝塚歌劇月組公演『ラストプレイ―祈りのように/Heat On Beat!』東京宝塚劇場11月27日(金)~12月27日(日)まで主演/瀬奈じゅん/霧矢大夢/遼河はるひ/城咲あい/未沙のえる ほか
2009年12月25日
渋谷駅から程近くにある、渋谷セルリアンタワーそのビルの地下二階に“セルリアンタワー能楽堂”がある今回初めて訪れるのだが、建物のなかは、おおよそ能楽堂などあるような雰囲気はまったくないけれども、たしかに、そこに能楽堂は存在した天井の高い、ホテルの宴会場のような一室に、スッポリと収まっているなんだか変な感じではあるが、普段居慣れない場所にいるせいか、それとも独特なものなのか、なにか張り詰めたような凛とした空気を全身で感じていたなぜ能楽堂に来たのか?能を観にきたわけではない今日一日だけ行われる作品の為だ名作語り『高野聖』山中の秘境で、若き修行僧が出会った妖しくも美しい女その女の正体とは?魔界と現実が交錯する旅僧の不思議な経験を描いた泉鏡花の代表作その作品の構成・演出を務めたのは、歌舞伎役者の中村翫雀氏主演は佳那晃子氏最近ブラウン管で姿を見ないな?と思っていたら、それもその筈佳那氏は“ネフローゼ症候群”という病にかかり、近年、病気療養のため女優業をしばらく休んでいたのだそうその病も無事全快して、今回の作品が女優復帰第一作となる名作語りということで、椅子に腰掛けたままの朗読劇をイメージしていたのだが、身振り手振りや動きが入るので、シーンの情景が浮かびやすい泉鏡花独特の妖しげな世界、小鼓と笛の優雅な音色も手伝って、非日常の空間に引き摺りこまれるとはいえ、やはり物語の全部を理解するのは難しい聴き慣れない言葉の数々…手元には用語解説があるのだが、頭に入れるのは難しいそれと、自分の想像力が足りないこともあって、言葉を受け止めることができず、右から左へと流れていくやはり、作品のことを知らないと、置いてけぼりを喰らうけれども、この作品が持つ世界観だけは肌で感じることができた久しぶりの女優業となった佳那氏お姿を拝見する限りは、なんらブランクを感じさせないいくつかの役どころを、巧みに演じ分けていた若き修行僧を演じた山口馬木也氏は、着物姿もキマッていて、口跡もよく、素晴らしかったすごく静かで、あまり変化が見られないこの作品日頃の睡眠不足も祟ってか、睡魔が襲ってくるけれども、なんせ能楽堂は明るいままましてや自分は前の方の列“寝ちゃダメ…”というプレッシャーから、集中して観るんだけれど、かえってそれが自分を追い詰めていく白状します何度か睡魔に屈してしまいましたごめんなさいでも言い訳するわけじゃないけど、他のお客様も結構眠りの世界へ誘われている人多かったきっと心地良い世界観なのだろう名作語り『高野聖』セルリアンタワー能楽堂12月19日(土)出演/佳那晃子/山口馬木也/小西良太郎
2009年12月19日
今日はお誘いを受け、「歌舞伎ルネサンス」なる舞台を観劇歌舞伎ルネサンスとは何か?わかりやすく馴染みやすい歌舞伎の公演を主眼に、平成20年度からスタート“高尚で敷居の高いお芝居”“限られた人達だけが演じることの出来る特別な伝統芸能”というイメージを払拭すべく、本来あるべき“一般大衆のためのエンターテイメント”である歌舞伎を、訓練した者なら誰でも演じることのできるものとし、歌舞伎ファンにはもちろん、数多くのお客様に楽しんで頂けるような芝居を創り上げていくそれが「歌舞伎ルネサンス公演」(引用抜粋)要約すると「歌舞伎ルネサンス」は、歌舞伎役者が演じない歌舞伎出演者の顔触れのなかには女性の方もいる歌舞伎という常識から考えると、まさに型破りな作品なのである2008年から始まった「歌舞伎ルネサンス」は公演を重ね、今回は第5弾となるその作品は『加賀見山旧錦絵(かがみやま こきょうのにしきえ)』辛抱強さと激しさを併せ持つ誇り高き中老尾上、お初の主人思いの健気な情味と強さ、敵役・岩藤の貫禄と凄み…奥女中の仇討ち事件の顛末を描いた人気狂言豪華絢爛!美しくも哀しい女達の物語三人の女の生きざま、とくとご覧くだされ(公演チラシより)結果から言うと、題材が面白いこともあって、なかなか楽しめたセリフ回しから化粧、衣裳にいたるまで歌舞伎の世界そのもの女性が歌舞伎の舞台に立っていても、女性が女形を演じるわけだから何ら違和感は感じないただ、本来の歌舞伎役者の方々と比べると、どうしても芸が身に沁みついていないというか、言葉は悪いが上辺だけを懸命になぞっているような印象を受け、重さや凄み、迫力といったものが欠けていたような気がしたけれども逆に、そういう意味では、敷居の高さを感じさせない、気軽に楽しめる世界観だったように思う主演の朝丘雪路氏はひたすらに耐える役どころだったが、その存在感はさすが敵役を演じた浅利香津代氏の憎々しさは見事竜小太郎氏は、今回の作品では唯一男性で女形を演じたのだが、女形を得意とする俳優さんだけあって、所作は女性が演じる以上に女性らしかった「歌舞伎ルネサンス」わかりやすく…ということはさておき、馴染みやすい…という点では、確かに感じることができた歌舞伎ルネサンス・第五弾『加賀見山旧錦絵』12月 都内数箇所で巡演出演/尾上…朝丘雪路/岩藤…浅利香津代/お初…竜小太郎 ほか
2009年12月18日
寒いから着こんでも、電車に乗ると暖房が効いていて暑い思いをすることがある今日は時間が無くて駅まで駆け足で行ったもんだから、電車のなかで一人汗だくそのせいかなんだか気分が悪くなってきたので、時間無いのに途中下車することに…冷たい風に晒されたら治まりました今日は観劇明治座12月公演『最後の忠臣蔵』吉良上野介を討ち果たし、主君の仇を報じた大石内蔵助を筆頭とする四十七士討ち入りの状況や浪士たちの働きぶりを正確に伝えるため、また残された家族や浅野家の元家臣たちの行く末を案じた大石内蔵助は、ある決断を下すそれは、赤穂浪士たちのなかでも一番身分の低い寺坂吉右衛門に託された世間からの誤解、政争の駆け引きに翻弄されながらも、ただ一心に内蔵助の想いを果たすために旅を続ける吉右衛門彼の献身はやがて、残された元赤穂浪士の家族たちの運命に大きな影響を与えることとなる…その男の務めは、討ち入りが最後ではなかった…死ぬことを許されず密命に生きた男、寺坂吉右衛門「忠臣蔵」を新たな視点で描く感動の人間ドラマ(公演あらすじより引用抜粋)劇場に向かう途中に体調を崩してしまうというロスタイムが生じたので、席に着いたときにはすでに舞台の幕は上がっていたでも、ほんの数分ね…場面は、いきなり吉良邸の討ち入りから舞台の冒頭から忠臣蔵最大の見せ場!そう、この物語は討ち入り後が描かれているのである討ち入りの様子を克明に伝える為、残された赤穂浪士たちの家族の暮らしぶりを見守るよう、大石内蔵助に任命された寺坂吉右衛門切腹から逃げ出した…と人々からは揶揄され、また命を狙われるなど、その旅は過酷で、死ぬよりも辛いそれでもなお吉右衛門は、忠誠心だけを糧にして務めを全うする主演を務める中村梅雀氏が醸し出す雰囲気と、寺坂吉右衛門の役柄が実にうまく合っている出番が少ないながらも存在感を十分出した大石内蔵助を演じる西郷輝彦氏をはじめ、原田龍二氏、田村亮氏、櫻井淳子氏といった共演者の方々が、手堅い演技で脇を支えるそれ故に、かなり渋い仕上がり題材が題材だけに、ちょっと堅苦しい印象を受けたいくつかのエピソードを抜粋して話は進んでいくのだが、上演時間の関係もあってか、きれいにまとめ過ぎているというか、淡々とした展開が続き、自分的には何か物足りなさのようなものを感じる物語は、ようやく終幕近くになって動きを見せる吉良邸討ち入り前夜に突如姿をくらました、同志・瀬尾孫左衛門と吉右衛門の16年ぶりの再会なぜ孫左衛門は討ち入りに参加しなかったのか?裏切られた想いが強い吉右衛門は、孫左衛門を問い詰めるその訳は、大石内蔵助にあったそう、彼もまた、吉右衛門同様に内蔵助から直々に密命を受け、悩み苦しみながら、今日まで生きてきていたのだ死ぬことを許されず、辛い思いをしながら生きてきたのは自分ひとりだけではなかった最後の最後に謎が解けてようやくスッキリしたのだが、疑問に思うところも…それは、なぜそこまでして内蔵助の忠誠心に従ったのかということ内蔵助亡き後、16年という歳月が流れているというのに不思議でならないもしかしたら、忠誠心というものが薄れつつある今の世の中だからこそ、理解できないのかもしれない死してなおも存在感を示し続けた内蔵助図らずとも彼らの運命を弄んだ大石内蔵助は、ずいぶんと罪作りな人だと言うか、これ実話なのだろうか?忠臣蔵という題材ひとつとっても、作品によって色々な見解や脚色があるから分からないけれども、討ち入り後の物語という点では、コンセプト通り新たな視点の忠臣蔵だった明治座12月公演『最後の忠臣蔵』12月2日(水)~24日(木)まで出演/寺坂吉右衛門…中村梅雀/大石内蔵助…西郷輝彦/瀬尾孫左衛門…原田龍二/進藤源四郎…田村亮/お槙…櫻井淳子/大石りく…長谷川稀世/可音…渋谷飛鳥/仙石久尚…青山良彦 ほか
2009年12月12日
秋も深まり、銀杏並木のスポットとして有名な神宮外苑は、大勢の人で賑わっていた散ってしまった銀杏の葉に埋めつくされた歩道は、まるで黄金色の絨毯のようその道を一歩一歩踏みしめ向かったのは、神宮にある日本青年館宝塚歌劇を観劇する為である宝塚の公演が行われる東京の劇場と言えば、有楽町にある東京宝塚劇場が一般的だが、若手スター等が主役として公演を張る場合、一回り小さな劇場でおこなわれる日本青年館大ホールは、度々宝塚の公演が行われている場所なのだ今日観劇するのは、宝塚歌劇雪組公演・バウ人情噺『雪景色』吹く風に流され惑う雪模様心に積もる小噺三つ(公演ポスターより)今回の作品は、オムニバス・ロマンとして三つの作品で構成されている第一幕は『愛ふたつ』上方落語「小間物屋小四郎」をベースに、一つの勘違いから始まる抱腹絶倒の人情喜劇第二幕は『花かんざし』愛する人のために、自己を犠牲にしてまでも生きようとする若者の姿を描いた心温まる人情劇第三幕は『夢のなごり』同じ女性を愛してしまった平家の落人兄弟の苦悩を描く舞踊劇一幕目の『愛ふたつ』果たして、落語と宝塚は合うのか?と思いながら観劇したのだが、これが意外や意外上方独特の言葉遣いをモノに出来ていないのか、演者たちのセリフにやや不慣れな印象を受けたが、落語をベースにしているだけあって、話がしっかりとしていて、とても楽しめたまったく先の読めない展開に、意外な結末…ヤラレタ!見事にオチ決まってますあぁ…そうか!これ、落語だもんねいやいや、面白かった!落語の世界を舞台化するの、いいねただ、これをわざわざ宝塚でやる意味があるのかどうかと考えたら、ちょっと疑問に思うところだけど…二幕目の『花かんざし』人が人を思いやる気持ち…優しさと温かさに満ち溢れた作品ではあるのだが、一幕目が喜劇で勢いに乗っていただけに、作品の世界観にちょっと堅苦しさのようなものを覚えた高揚していたムードが、ここで削がれてしまった三幕目の『夢のなごり』舞踊劇と謳っているのだが、歴史に疎い自分としては物語の設定が全く解らず、消化不良のまま終わった今回の作品で主演を張ったのは、雪組の若手男役、早霧せいな氏と沙央くらま氏の二人若手と云いつつも、舞台映えはするし、見ていて頼もしかった通常の組公演とは違い、若手で編成された公演メンバーそんななかで、専科から特別出演した汝鳥伶氏、雪組組長の飛鳥裕氏などベテラン勢がしっかりと脇を固め、存在感を示していた自分的には一幕目の作品が良かっただけに、作品が変わる度に従い、どんどん尻すぼみしていった感じ3作品ともカラーが違うので、色々な面を垣間見ることができたという点では良かったけれど…まだまだ冬の訪れには早いけれど、宝塚の「雪景色」楽しみました宝塚歌劇雪組公演バウ人情噺『雪景色』日本青年館大ホール12月4日(金)~10日(木)まで出演/早霧せいな/沙央くらま/舞羽美海 ほか
2009年12月04日
今日はミュージカルを観劇『HONK!』英国ローレンス・オリヴィエ賞、最優秀ミュージカル賞受賞作品世界各国で幅広い年齢層に支持されている、アンデルセン原作「みにくいアヒルの子」をベースにしたヒューマニティ溢れる感動のミュージカル(公演紹介より)この作品は、出演者の顔触れを変えつつ、今までに幾度か上演されてきた作品今回は近畿地方を中心に回る地方巡演しかし、東京は今日の夜1回だけ公演が行われるというので、たまたま都合が合ったので、観劇することにした「HONK!」は、大人から子供まで楽しめるミュージカルとの触れ込みだったが、ほんと楽しめた童話を元にしているだけあって、ストーリーはしっかりとしているし、この作品が訴えたいメッセージも明白に表現されている動物たちの世界の話ではあるが、内容的には我々人間に通ずるものがあったアヒル、猫、白鳥、雁、鶏、カエル…演者の方々は様々な動物に扮するそれぞれの愛すべきキャラクターは皆個性的衣裳やセットも含め、ポップな世界は見ていて楽しいし、なんとも微笑ましいけれども、ちょっと自分のイマジネーションを膨らませることも必要動物を演ずるといっても、着ぐるみを着ているわけではないあくまでも抽象的なので、この世界観に入り込もうとしないと、どうも冷めてしまい、置いてけぼりを喰ってしまう色々とツッコミどころもあるが、ここは素直に純粋に楽しみたい主役のアヒルの母親を演じるのは岡まゆみ氏女優さんというイメージしか持っていなかったが、劇団四季出身というだけあって、歌唱力はなかなか金髪にアヒルをイメージした衣裳の姿がとってもキュートだった歌は勿論のこと、ダンスやコミカルな演技など、意外な一面を垣間見た感じちなみに、題名の「HONK!(ホンク)」とは、白鳥の鳴き声を表したものへぇ~勉強になりましたそういえば、みにくいアヒル(実は白鳥)を演じていた役者さんが、何度も「ホ~ンク!」と叫んでいたっけミュージカル『HONK!』シアター101011月28日(土)のみ出演/アイーダ…岡まゆみ/アグリィ…木村昴/キャット…野沢聡/モリーン…紫とも ほか
2009年11月28日
坂東三津五郎氏、八千草薫氏、森光子氏という豪華な顔触れが揃った舞台『晩秋』観たい舞台なのだが、1ヶ月公演はすべて午前の部のみ休みがギリギリにならないと決まらない自分は、チケットを取ることもできず、観劇を諦めていたけれども、千秋楽になって、ようやく観劇できることになった明治座11月公演『晩秋』都内の大学病院に勤める医師・鳴海春彦は、数十年ぶりに小学校の恩師・上原清子の訪問を受け、共に生まれ故郷である登美島を訪れるが、そこで清子に異変が…昔の記憶が薄れていくことに不安を覚えていた清子は、その記憶がなくなる前に、春彦に伝えておかねばならないことがあった…瀬戸内海の美しい小島を舞台に描かれる恋模様、親子の情愛、師弟の絆せめて思い出だけは抱えたままで…人生の晩秋を迎えた時、人はなにを思い、求めるのか―(公演あらすじより)ドラマティックなタイトルバック、その後起きるであろう波乱を予想させる音楽、作品全体から醸し出される雰囲気など、舞台なんだけれど、どこか昔懐かしい映画を観ているような感じ一人の女性が、数十年もの間隠しとおしてきた真実とは?その運命の悪戯によって人生を翻弄されてきた人々は、突きつけられた真実をどう受け止めたらいいのか?回想シーンを交え、親子二代にまたがる物語を、名立たる俳優たちが演じる坂東氏は、さすがは歌舞伎役者だけあって、口跡は明瞭何事にも生真面目すぎる男と、無骨な男という対照的な親子の役どころを、一人二役で巧みに演じ分けていたこんな言葉は適切でないのかもしれないが、八千草氏はほんと可愛らしい今から十年ぐらい前に舞台を観て以来だが、とても素敵にお歳を重ねられている今回は、記憶を失うことに不安を覚えるとともに、ある重大な秘密を長年胸に仕舞い込んでいることに苦悩しているという難しい役どころ一身に背負っていたものを吐露する件は、息苦しく感じる程その思いがこちらにまで伝わってきて、観る者の心を揺さぶる女優で初めて国民栄誉賞を受賞し森氏今回はそれを記念しての特別出演1幕のラストで、進駐軍相手に歌を歌う歌手として登場和装でジャズを披露する森氏が舞台に登場するだけで、客席からはざわめきが…その存在感だけで客を魅了するそれにしても、あまりの身体の線の細さにビックリしてしまった3幕の後半で再び登場するのだが、計算しているのかしていないのか分からないような飄々とした演技で、客席を賑わせる色んな意味で、ほんとすごい女優さんです作品は冒頭部分からすごく惹きつけられるものがあったのだけれど、終わってみれば、すべて綺麗事で片付けられてしまい、ちょっと出来すぎの感は否めなかった偶然の偶然が重なるラストの展開は、あまりにも都合が良すぎるが、それもご愛嬌か重たいテーマを取り扱ってはいるものの、登場人物たちの人が人を思う気持ち、労りが溢れていて、観終わってみれば、不思議と温かい気持ちと優しさが残っていた誰しもに訪れる老い…舞台の登場人物たちは、それぞれが新たに前向きに人生を歩みだした自分が人生の晩秋を迎えた時は、一体なにを思い、求めるのだろうか今はちょっと想像ができない明治座11月公演『晩秋』11月3日(火)~27日(金)まで出演/鳴海春彦・鳴海勝彦(二役)…坂東三津五郎/上原清子…八千草薫/樋口志津子…森光子(国民栄誉賞受賞記念特別出演)/鈴木佐奈子…中田喜子/鳴海源吉…米倉斎加年/島村清子…星野真里/鳴海由佳・鳴海志津子(二役)…馬渕英俚可 ほか
2009年11月27日
今日は母を誘って、一緒に舞台を観劇と言っても自分は仕事なので、17時に浅草公会堂のまえで待ち合わせ急いで仕事を片付けて車を走らせると、なんとか約束の時間に間に合うことができたところが母の姿が見えない浅草公会堂のまえは、凄い人だかりそのなかで捜すのはなかなか難儀母は携帯電話を持っていないので、こんなときはヤキモキしてしまう暫く辺りをキョロキョロしていたら、母から声を掛けてきた背が高いから目立ったってそやね周りは中高年の方ばかりで、確かに自分は頭一つ分は出てたから目立っていたかもしれない何はともあれ、無事に落ち合えてよかったちょっとしたご縁で、今回舞台に出演している俳優さんからお声を掛けていただいていたので、厚かましいとは思いつつも楽屋見舞いに伺った「開演30分前ならいいですよ」との事だったが、本番を控えた舞台裏はなんだか慌しい様子で、空気が張り詰めている通常の劇場であるならば、主要な役者さんは一人で楽屋を使用するのだが、浅草公会堂は楽屋が少ないようで、男優の方は全員が一つの大きな部屋に収められていた扉を開けて顔を覗かせた瞬間、間近にいらっしゃった有名な俳優さんと視線が合ったテレビで見慣れている方を前にして、緊張してしまった自分なんとか平常心を装ってお声を掛けるしばらく通路で待っていると、俳優さんが楽屋から出てきたそのお顔を拝見してビックリ!だって、バッチリ舞台メイクしてるんだもんッ!!男の人も化粧すると変わるねぇこう言ったらなんだが、想像していた以上に男前だった…手ぶらで伺うのはさすがに失礼かと、ちょっとした差し入れを持参していったら、お返しに手拭いをいただいたしかも母と自分に一つずつ本番前のお忙しいなか、どうもお邪魔しました早々に楽屋から退散すると、開演までまだ少し時間があったので、公会堂の傍にある甘味処に入った風格漂う店構え母はあんみつ自分はクリームあんみつを注文親子揃ってあんみつを食べるだなんて、なんかほのぼのとしていていいねゆったりとしたひとときと、素朴で優しい甘さに、心が和んださてさて、今日観る舞台は「おしん」1983年から1年間にわたりNHK連続テレビ小説で放映されて大きな話題となった作品で、今回はおしんの少女時代に焦点を絞っている『おしん~少女編』人を信じ、そして、耐え忍ぶ…幼いながらも奉公に出されたおしん貧しさと闘い、様々な試練にも負けず、懸命に生きるなかで、たくさんの出会いや別れを通して成長する子供時代を、今回は装いも新たに舞台化去年の7月、新橋演舞場で「おしん」の公演があり、自分はそれを観劇したそのときおしんの幼少時代を演じた少女二人が、今回もWキャストで務める話の展開は、多少の演出の変更はあるものの、基本的には昨年見た内容とほぼ変わらないただし、昨年の公演はおしんの青春時代までが描かれていたのに対し、今回は少女時代で終わってしまうので、「これでお終いなの?」と、観終わったあとに物足りなさを感じてしまったとはいえ、おしんを演じる少女の演技の上手さには目を瞠るものがある数々の困難にも耐える姿は、見ているこちらまでも辛くなるほど演技と解っていても、その健気な姿に胸を打たれたのであった平成21年全国特別公演『おしん 少女編』11月1日(日)~12月1日(火)まで全国巡演出演/おしん…佐々木麻緒・諸星すみれ(Wキャスト)/加賀屋くに…淡島千景/ふじ…音無美紀子/俊作…勝野洋/作造…斎藤暁/清太郎…堤大二郎/定次…佐藤輝 ほか
2009年11月09日
東京の観光地として有名な浅草今日は日曜日ということもあって、仲見世通りは沢山の人で賑わっているその人混みを縫うようにして行き着いたのは、浅草公会堂お芝居を見物します劇団若獅子公演『籠釣瓶 吉原百人斬り』顔面に大きな痣をもつ男幸せになりたいと願うその若者が、吉原で一人の遊女と出会ったことから運命が狂いだす偽りの愛に見た、哀しみと凄惨に塗れた末路とは…この作品は、江戸中期の時代、江戸の大遊郭・吉原で野州の百姓佐野次郎衛門が実際に起こした事件を元にしている即死者38人、重軽傷者90余人と伝えられ、当時の大事件であったその事件を題材に、歌舞伎「籠釣瓶花街酔醒」、新国劇「花の吉原百人斬り」といった作品が誕生し、度々上演されている今回の舞台『籠釣瓶 吉原百人斬り』は、それらの作品を元に新たに脚色された今年の3月、青山劇場で関ジャニ∞のメンバーの一人である安田章大氏が座長を務めた「カゴツルベ」という作品を観劇したその作品がとても面白かったので、同じ題材を扱っている本作品を観ようと思ったのが観劇のキッカケところが結果的には、話しの元が同じでも、演出や役者陣、展開などによって、こうも受ける印象が違うのか…と思った劇団若獅子による「籠釣瓶」は、とにかく硬い印象を受けたこの劇団が舞台上に醸し出す空気がそう思わせるのかもしれない役者陣の顔触れがかなり年配という事もあって、一人ひとりの芝居には味や重みがある演技に落ち着きがあり、見ていて安心感はあるものの、如何せん華やかさが足りない物語の主人公・佐野次郎衛門は青年という設定でありながら、演じるのは還暦を過ぎた笠原章氏その青年が恋する遊女役を演じる女優さんはお世辞にも美しいとはいえないし、所作も不慣れな様子役のうえで説得力が感じられないところに、肝心の二人の関係も十分に描かれていないため、観ていてどこか空々しいそれでも、“吉原百人斬り”というくらいだから、最後の殺陣に期待していたのだが、これも肩透かしを喰らった愛するものの裏切りを知り、狂気に満ちた笠原氏の気迫は感じられるところが迫力がない見せてはいるけど、魅せてはいないのだ人を斬りつけたとき、嘘でもいいから効果音があれば盛り上がるものを、まったくの無音なので場に緊迫感が生まれないラストの殺陣は折角の見せ場であるもののスピーディーさに欠け、最後の最後まで自分のなかで盛り上がることはなかった堅実ではあるものの作りが硬かったせいか、観終わったあとには、ドッと疲労感を感じるのであった劇団若獅子公演 錦秋公演『籠釣瓶 吉原百人斬り』浅草公会堂10月31日(土)~11月3日(火)まで出演/次郎左衛門・新三郎(二役)…笠原章/お辰…淡路恵子/お源…光本幸子/勇五郎…中田博久/おせい…南條瑞江/岩橋太夫…中條響子/玉鶴…仁科仁美 ほか
2009年11月01日
今日は、本日初日を迎えた花組芝居『ナイルの死神』を観劇言わずと知れた、推理作家アガサ・クリスティの名作「ナイル殺人事件」を舞台化したものである大富豪の娘ケイ・リッジウェイは、無一文の青年サイモン・モスティンと結婚したばかりだが彼は元々ケイの親友ジャクリーンの婚約者だった新婚旅行をナイル河の遊覧船で楽しむ二人の前に、突然ジャクリーンが現れる言い争いの末に、ジャクリーンがサイモンの脚を撃ち抜いた夜、ケイが射殺死体で発見されるそして事件の秘密を握るメイドのルイーズも銃弾に倒れ…一体誰が?犯人探しに疑心暗鬼になる乗客たち一番疑わしい人物には完璧なアリバイが!密室状態の遊覧船…犯人は船内のなかにいる!!(公演あらすじより)この公演は 【KABUKI―IZUM】という冠がついているかつて一瞬だけ存在した“洋装歌舞伎”をヒントに、歌舞伎の流れのなかで翻訳劇に挑戦するそれが、花組芝居の新しい試みであるKABUKI―IZUMなのだそう結果としては、花組芝居ならではの世界観が十分出ていて楽しめた小道具や衣裳など、毎回遊び心溢れるセンスも心をくすぐるただ、舞台化粧だけはどうなのかな?と思った物語の主要人物であるサイモンを演じた役者さんは歌舞伎特有の水化粧で白塗りに隈取をしていて、明らかに顔だけが浮いている歌舞伎というものにこだわってのものなのかもしれないが、違和感を覚えた今回は推理劇前半部分は人物紹介や人間関係を構築していく展開が続くせいか、やや単調で間延びした感ありようやく第一の事件が発生すると、そこからはスピーディーに話は運ばれていく一体誰が犯人なのか?一癖も二癖もある乗客たち観ている自分にはサッパリわからないただ、事件を推理するペンファザー司祭が遺留品から事件解決の糸口を見出したとき、自分も事件のからくりが解けた我ながら推理力あるな…と、ちょっとだけ鼻高々犯人は、やっぱりあの人ですかサスペンスドラマさながら、犯行の再現シーンが行われるのだが、犯人はミスを犯していて、舞台にはしっかりと犯人を示すヒントが提示されていたのだ舞台を観ていながら、その事に全く気づいていなかった自分悔しい…まんまとヤラレました事件の全貌が明らかにされ、ドラマチックなラストを迎えるような予感がありながらも、あっさりとした終幕に少々物足りなさを覚えたけれども、推理劇を、花組芝居を楽しんだ自分なのであった花組芝居KABUKI―ISM 其の壱『ナイルの死神』俳優座劇場10月23日(金)~11月1日(日)まで出演/ジャクリーン・ドゥ・セヴェラック…加納幸和/ペンファザー司祭…原川浩明/サイモン・モスティン…小林大介/ケイ・モスティン…八代進一/ドクトル・ベスナー…水下きよし/スミス…桂憲一/クリスティーナ・グラント…大井靖彦/ミス・フォリオ=フルクス…秋葉陽司/ルイーズ…北沢洋 ほか
2009年10月23日
忙しいとは言いつつも、観たい舞台があればなんとか都合をつけている今日も仕事を終えると、観劇のために渋谷へ今回の作品も観劇を楽しみにしていた一つである“ねずみの三銃士”第2回企画公演『印獣』「印税生活してみませんか?」そう書かれた招待状を手に山奥の洋館に集められた3人の作家仕事の内容は、自らを大女優と名乗る長津田麗子の自叙伝「芸能生活45周年を記念して出版したい」とのことしかし、長津田麗子という女優の存在など誰も知らない初めは断ったものの、監禁されたうえに高額の報酬に魅せられ、半ば嫌々ながらも唯一の資料を元に麗子の半生をでっち上げていく3人は、なぜ長津田麗子から指名されたのか?長津田麗子の狙いとは?自叙伝が出来上がるにつれ、意外な真実が浮き彫りにされていく…(公演あらすじより引用抜粋)公演のチラシには、“今年度最高の「え~~~~っ!?」が聞こえるかも”なんて書かれていたが、それは嘘ではなかった度肝を抜かれた何にって!?それは、本作品の主演を務めた三田佳子氏今までにない役どころに挑んだのだまず冒頭の登場シーンからしてインパクト大!ドレスに身を包み、歌いだしたかと思いきや、ラップ、さらにはギャグまでかますそれをいかにも真面目そうな表情で顔色ひとつ変えずに演じるものだから、なんとも可笑しい三田氏からは到底想像もできないパフォーマンスに、ビックリというか唖然…それからも、ランドセルを背負った少女、剣劇役者、戦隊ヒーローの悪役の着ぐるみ人形を着て客席を歩いたりと、七変化を披露まだそこまではなんとか見られるが、訳のわからないアドリブ演技を強要されたり、はてまたは後輩の役者さんからメガホンで頭を幾度も殴られたりと、舞台上の三田氏はいじくられっぱなし初めこそは意外な姿に目を見張っていた自分も、懸命に必死に演じようとする三田氏の姿が気の毒のように思えてきてしまったとはいえ、やはりラストのスポットライトを一身に浴びての堂々たる佇まいは大女優の貫録色々な意味で女優・三田佳子の女優魂を魅せつけられた舞台となった“ねずみの三銃士”こと、生瀬勝久氏、古田新太氏、池田成志氏は、監禁される作家という役どころ次第に追いつめられていく心理の過程が実に巧みに表現されていて、観ているこちらにまで緊迫感が伝わってくる狂気に走る岡田義徳氏、意味不明な言語を操る上地春奈氏も役のうえで魅力ある個性を発揮していて、少ない出演者ながらも、濃密な世界観を作り上げていた「印獣」の脚本を手掛けたのは、宮藤官九郎氏ドラマ・映画・舞台と数々の話題作を世に送り出している方だ今作品は展開がまったく読めず、次第に明らかにされていく真実の積み重ねに唸り、全てが繋がったラストには、その巧みな構成に見事にやられた一人の女の激動の人生、追いつめられていく人々の混乱と崩壊…なかなか重たい内容で観終わったあとにズッシリとしたものが自分の心のなかに残ったが、とっても見応えのある作品だったPARCOプロデュース“ねずみの三銃士”第2回企画公演『印獣~ああ言えば女優、こう言えば大女優』PARCO劇場10月13日(火)~11月8日(日)まで出演/長津田麗子…三田佳子/飛竜一斗…生瀬勝久/浜名大介…古田新太/上原卓也…池田成志/児島…岡田義徳/上地…上地春奈
2009年10月20日
今日は、ちょっと変わったタイトルの舞台を観劇『ガス人間第1号』ガス中毒による連続自殺事件命を絶った4人には共通点があった謎に包まれた怪事件を追う刑事と、その恋人の週刊誌記者は、ある一人の女性歌手が事件に関与していると睨むが…半世紀の時を越えて甦る、日本SF映画史上不朽の名作!決して結ばれないそれでもあなたを愛している―(公演チラシより)「ガス人間第1号」は、三橋達也氏、八千草薫氏、土屋嘉男氏らの出演で1960年に東宝特撮映画として公開された「ゴジラ」と並んで空想科学特撮映画の最高峰とされている作品を、今回は舞台化元となっている作品を知らない自分は、物語の想像がまったくつかないタイトル、特撮映画をどうやって舞台化するのか、楽しみにしていた率直な感想としては、なかなか面白い作品に仕上がっていたガス人間という不気味な存在にもかかわらず、おどろおどろしさが舞台から伝わってこなかったのが少々物足りなかったが、ガス人間という異質な人間の魅せ方はうまく出来ていたと思う特に刑事を襲うシーンなどは、どういうからくりなんだろう?と興味津々普通の若者がなぜガス人間になってしまったのか?一応納得のいく説明付けはされるものの、その背景が十分に描かれていないために、ガス人間として生きる男のドラマ性がなんとも薄いガス人間と女性歌手との関係性も、しっかり掘り下げられていたら、より深い作品に仕上がっていたように思うとはいえ、破滅的なラストへと向かうあたりはボルテージも上がり、愛と哀しみに包まれた最後のシーンでは涙が静かに頬を伝ったと、静かな余韻に浸っているのも束の間、物語はそこでは終わらない最後の最後に用意されていたどんでん返しその事実を告げられたとき、恐怖で身震いを覚えた衝撃のラスト!これから一体どうなるんだ!?こんな時、ドラマだと危機一髪というところで助けが入るんだけど…と思ったら、思わせぶりなところで幕は下りてしまったさっきまでの悲しみを打ち消すかのごとく、残ったのは後味の悪さだけけれどもこの結末の捻り方、なかなか秀逸で自分的には好きシアタークリエ10月公演『ガス人間第1号』10月3日(土)~31日(土)まで出演/橋本(ガス人間)…高橋一生/藤田千代…中村中/岡本賢治…伊原剛志/甲野京子…中山エミリ/久子…水野久美/盲目の老人…三谷昇/紋太…後藤ひろひと/田宮…山里亮太 ほか
2009年10月15日
今日は楽しみにしていたお芝居を観劇劇団☆新感線・いのうえ歌舞伎『蛮幽鬼』祈りとは救いの道か、それとも破滅の河か―遠い昔…各地の豪族支配から、ようやく一つの政権が出来上がりつつある島国・鳳来の国にまつわる物語鳳来の国の若者四人は、国をまとめる精神的支柱として果拿の国の国教“蛮教”を学ぶために留学していたその中のひとりが暗殺され、同行の伊達土門が無実の罪により監獄島に幽閉されてしまう仲間の音津空麿と稀浮名が罠に嵌めたのだ10年の歳月が流れ、脱出を図るために着々と準備していた土門は、同じく幽閉されていたサジと名乗る男と出会い、共に脱獄する長い年月を経た今でも復讐の炎が消え失せることのない土門は、別人になりすまして鳳来の国へと戻り、裏切った仲間へ、そして愛する人へ壮絶なる復讐劇を開始する…(公演あらすじより)劇団☆新感線の舞台を観るのは、これが三度目過去に「五右衛門ロック」と「蜉蝣峠」を観劇したが、両作品とも自分好みの世界観だったので、「蛮幽鬼」も否応なしに期待感が高まる今回の作品は、お馴染みの顔触れに加え、上川隆也氏、堺雅人氏、稲森いずみ氏、早乙女太一氏という多彩な顔触れを揃えての公演とにかく展開がスピーディー映像に比べると、どうしても舞台は制限があるが、そこはうまく処理していて、スクリーンなどを巧みに使用めくるめく展開で、観る者をグイグイ物語の世界に引き摺りこんでいく「蛮幽鬼」は復讐がテーマということもあり、陰謀、策略、愛憎、欲望といった血生臭い感情が渦巻いている背景には国の権力争いがあり、ちょっと堅苦しく感じることもあったが、意外な展開、さらには留学生暗殺に隠された驚愕の真相など、物語がとても凝っていて、最初から最後まであっと言う間に駆け抜けていく仲間に裏切られ、愛する人にも裏切られ、復讐することにだけ生きる望みを見出せなかった男、伊達土門そのなかでは苦悩や葛藤が生まれ、虚しさを覚え、度々自分を見失いかけてしまうそれでも、復讐という強い信念があるからこそ、最後まで我が道を貫き通すそんな難しい役どころを、主演の上川隆也氏が見事に演じきっていた特に心の動揺をわずかに垣間見せるあたりなど秀逸復讐というものに翻弄されながらも真っ直ぐに生き抜いた姿勢に、強く胸を打たれたサジと名乗る謎の男を演じるのは堺雅人氏殺し屋の役どころなのだが、なぜかつねにニコニコしていて笑顔を絶やさないそういうキャラクター設定なので仕方ないのかもしれないが、得体の知れない不気味さは出ているものの、いささか浮いているような気がした土門の許嫁の美古都役は稲森いずみ氏とにかく美しく、舞台に登場するたびに場面が華やかになる華だけではなく、業も備えていて、変わり果ててしまった愛する人をまえに苦悩する姿は、こちらまで胸が苦しくなるほどそれだけに、さまざまな弊害を乗り越えて最後に見せた姿に、本来の人間が持つ強さというものを見たような気がした大衆演劇の世界から綺羅星のごとく登場した早乙女太一は、優雅な舞や、殺陣を披露基礎がしっかりしているだけに、立ち振る舞いはとても見栄えがして、若いのに…とついつい感心毎回個性的なクセのある演技をする高田聖子氏は今回も健在で、妙なカタコトの日本語を巧みに使い、客席から笑いを誘っていた「蛮幽鬼」という舞台に関わるすべての持ち回りが見事に融合して、上質のエンターテイメント作品として仕上がっていた劇団☆新感線、今回も期待を裏切ることなく、魅せてくれました!それにしても、切ないラストだったなぁ…バッグに入りきらないほどの特大サイズのパンフレットを脇に抱え、切ない結末の余韻に浸りながら夜の街を歩いています新橋演舞場10月公演劇団☆新感線二〇〇九秋興行いのうえ歌舞伎『蛮幽鬼』9月30日(水)~10月27日(火)まで出演/伊達土門…上川隆也/サジ…堺雅人/京兼美古都…稲森いずみ/刀衣…早乙女太一/稀古道…橋本じゅん/ペナン…高田聖子/音津空麿…粟根まこと/稀浮名…山内圭哉/遊日蔵人…山本亨/京兼惜春…千葉哲也 ほか
2009年10月13日
今春のことDIAMOND☆DOGSの公演をたまたま観る機会があったその時初めて存在を知ったのだが、華麗なるパフォーマンスにすっかり魅せられたその彼らの舞台が銀座博品館劇場で行われていることを知り、仕事帰りに足を運んだ『美しき背徳 Beautiful Magic』“血という絆が暴く心の闇…”カモメたちが悲しく哭き、教会の鐘が寂しく響く海風が光る崖に建つ古い洋館に、一人の男から生まれた九人の男たちが「背徳」という時を経て集まったそこには“死”という“秘密”があり、“運命”という“愛”があり、“想い”という“憎しみ”がある謎に包まれた美しき男たちの心の闇を探る壮絶な闘いが今、始まろうとしている雪降りしきる函館の街に織りなすビューティフル・マジック…それは、背徳…(公演あらすじより)今回の舞台は、彼らの持ち味である踊りと歌は封印した、ストレートプレイ演技の経験は多くはないとの事だったが、さすがは表現者だけあって、なかなかの演技っぷりそれぞれのキャラクターに明確な違いが出ていて、役に説得力があるそれにしても、物語の内容が重い本妻の息子に呼び出されて、13年ぶりに洋館に集まった9人の男たち皆の共通点は、父親が同じだということその父親は、13年前に莫大な財産を残して不審な死を遂げていた当初は自殺と思われていたが、実は殺人で、その犯人がこのなかにいるという洋館に呼び出されたのは、父親殺しの犯人を見つける為だったのである一体誰が!?それぞれが抱える心の闇が暴かれていくなか、疑心暗鬼に陥り、理性を失い、そしてついには愛憎と欲とが絡んだ醜い争いと発展していく9人の異母兄弟というおぞましい設定もさることながら、父親殺しの犯人探しという主題が軸になっているので、つねに誰かを疑い、そして責めるの繰り返し誰しもが覗かれたくない心の奥底に沈めている暗部を、無理矢理えぐり出して白日の下に晒すそして、そこには莫大な遺産も絡み、人間の愚かさ、醜さが浮き彫りになる生きていると、綺麗事ばかりでは済まされない人間の業をまざまざと見せつけられると、いつしか自分のなかに潜んでいる背徳の心も炙り出され、自分も一緒になって責め立てられているような錯覚を覚えた周りが追い詰め、自分自身が己を追い詰め、自分を見失った者たちが次々と命を落としていく…とてつもなく長く感じられる夜…見ているこちらまで息が詰まるしかし、その終焉はふいに訪れる衝撃の真実が明らかになるラストは、ちょっと理屈っぽくて、いまいち理解するのが難しかったそんな自分を置いてけぼりにするかのように、幕は下りたかなり後味は悪い…が、舞台はここで終わらなかったカーテンコール…出演者全員によるダンスと歌のシーンが用意されていた作品の内容とは打って変わって、明るいナンバーしかし、今の今まで重く暗い内容の舞台を観ていただけに、自分の気持ちはどうもうまく切り替わらないとはいえ、あのまま沈んだ気分で帰るよりかはいいお芝居もいいが、やはりこういったショー的要素の方が、DIAMOND☆DOGSの皆さんは魅力的だなぁ…と思うのであったDIAMOND☆DOGSACTシリーズ vol.2DRAMAPLAY『美しき背徳~Beautiful Magic』博品館劇場9月27日(日)~10月4日(日)まで出演/加々美玲於…東山義久/加々美悠平…岩崎大/水村心…森新吾/威島真樹…小寺利光/峰拓海…原知宏/リド…中塚皓平/加々美美宇…咲山類/志倉涼…TAKA/水村音…加藤良輔
2009年10月02日
今日は母を誘って、お芝居見物母の好きな俳優さんのひとりである、松村雄基氏が出演している舞台を観るために新橋演舞場へ新派公演『おんなの家』東京・神楽坂にある炉ばた焼の店“花舎”は、先代が亡くなった後、莫大な相続税に頭を抱えていたそれでも、先代の四女・桐子、夫に先立たれて実家に舞い戻った三女・葵、若くして亡くなった次女・あやめの娘さくらの女三人で頑張って切り盛りし、彼女たちの人柄から店は馴染み客で繁盛しているしかし、多額すぎる相続税はとても払いきれるものではなく、“花舎”の存続は危ぶまれていた…そこへ、長女・梅が、夫に浮気をされて離婚したと二十数年ぶりに帰ってきたから、さあ大変!泣いたり、笑ったり、怒ったり、大忙しの毎日はたして、“花舎”と女たちの未来はどうなることやら…(公演あらすじより)劇団新派といえば、堅苦しいというか、言葉は悪いが古臭いイメージが自分のなかであったなので、今まで観劇することはなかったその劇団新派と、ホームドラマの名手である橋田壽賀子氏の世界観はどうもうまく結びつかないけれども、観劇してみると、これが意外とうまく噛み合っていたそれもこれも、最大の功績は、四女を演じた沢田雅美氏ではないだろうか橋田壽賀子作品にはお馴染みの女優さんだけあって、沢田氏が舞台に登場するだけで、もうカラーは橋田色に染まっている喜怒哀楽を軽快かつ巧みに表現し、脇でありながらも、役柄のせいもあってか、しっかりと作品の主導権を握る新派を代表する女優の水谷八重子氏と、波乃久里子氏は、それぞれの持ち味をマイペースに演じている沢田氏が弾けているだけに、両氏のやや堅苦しい印象は拭えないが、その生真面目さがかえって面白さを生んでいたこの三姉妹、思った以上に意外と良いトリオである相続税をめぐる炉ばた焼屋の存続問題を中心に、毎夜来店する謎の男に恋する長女と四女、不動産屋との恋を育む三女、亡き次女の娘の結婚問題と、ラブロマンスが絡んでくる舞台は終始、色々なトラブルによって泣いて笑ってのドタバタ劇が展開され、その度に繰り広げられる三姉妹の丁々発止のやり取りが小気味よく、実に面白い物語は、大団円で収まるかと思いきや、ほろ苦い結末も用意されていて、色々な意味で今後を期待させる形で幕は下りる酸いも甘いもある綺麗事では済ませないところに、現実味・親近感を覚えた喜怒哀楽がギュッと詰まった芝居三姉妹の明るさや逞しさ、人間臭さや生真面目さを通して、生きるということに対してのパワーを貰ったどんな苦境に立たされても、前向きに人生楽しむぐらいの余裕がないと駄目だね一緒に観劇した母も大いに楽しんだようでよかったほのぼのと温かい気持ちを胸に、母とともに帰路につくのであった新橋演舞場9月・新派公演『おんなの家』9月1日(火)~20日(日)まで出演/花村梅…水谷八重子/花村葵…波野久里子/花村桐子…沢田雅美/前川一作…井上順/笠井…松村雄基 ほか
2009年09月11日
夜からは、めぐろパーシモンホールで行われる、向田邦子生誕80年記念の舞台『きんぎょの夢~With of Fish』を観劇母を早くに亡くし、二人の妹の母代わりをつとめてきた長女・砂子生活のために仕方なく始めた小料理屋で、客として来た殿村良介と恋に落ちてしまうしかし、殿村には妻がいた!周囲から聞こえてくるのは、殿村の妻の悪妻ぶりと夫婦の不仲いつしか砂子は、殿村との結婚を真剣に夢見るようになる…妻と愛人、姉と妹、父と娘、男と女それぞれに事情を抱えた肉親・他人同士が複雑に絡み合う生まれる対立、明らかになる真実、そして和解…世間から望まれぬ形でしか、砂子の幸せは訪れないのだろうか?(公演あらすじより引用抜粋)人間誰しもが、大なり小なり良い夢を頭のなかで思い描きながら生きている夢は生きていくうえでの糧になっているのかもしれないだからといって、不倫を肯定するような内容はどうだろうか不倫相手の妻を一人だけ悪者にして、周囲の人間が不倫の恋を応援するという展開は、ちょっと理解しがたいそのせいか、いまいち観ていても作品の世界観に馴染むことができなかったそれでいて、最終的には、自分が不倫の恋を貫くことによって傷ついている人がいることを知った主人公が身を引いて、夫婦は元通りになるという結末?????一体、今まではなんだったの?って感じあっさりとしすぎていて、それでいて物足りない幕切れ何もかもが中途半端な感じがして、自分のなかではかなり消化不良の作品だったまた、公演が行われた“めぐろパーシモンホール・大ホール”は、とにかく広い自分は2階席での観劇だったのだが、そこから見える舞台は遥か前方であるこじんまりとした作品に、この会場はあまりにも広すぎたように思う現に、2階席は400人近く収容できる客席数なのだが、観客は30人足らず1階席がどうだったかは知らないが、あまりの空席にただただ驚いた舞台向田邦子生誕80年記念『きんぎょの夢 ~With of Fish』めぐろパーシモンホール(大ホール)9月3日(木)~6日(日)まで出演/柿沢砂子…紺野美沙子/殿村良介…風間トオル/柿沢加代子…藤谷美紀/殿村みつ子…西川峰子/沢本かおり…瀬戸内美八/松沼桃…遠藤久美子 ほか
2009年09月05日
なんだかここのところ、週末は舞台ばかり観ている気がする興味があったり観たい舞台がそれだけあるってことか今日も昼と夜とで2つ観劇まずは、下北沢の本多劇場にて公演中の舞台『骨唄』~骨、咲キ乱レテ風車…~母ちゃん死ぬやろ父ちゃん死ぬやろそのうち自分も死ぬやろ骨残るやろ土に還るやろそしたら骨の奴、唄いよるんじゃ今度はまともな肉つけてくれっち笑いながら唄うんじゃ仕方ねえな、骨は肉選べけんな福岡県千坊村その村には奇妙な風習があった亡骸を海の見える山に埋め、風車を海の方向にさす死人の骨を再び掘り起こすと、その骨に彫刻をして持ち続ける母の死と妹のある事故をきっかけに、姉と妹は父のもとを離れ、お互いバラバラに暮らすことに…18年後―妹が行方不明だと知らされた姉は、再び故郷に足を踏み入れたそこから新たな親子三人の運命が動き出す…(公演チラシより)客席につくと、舞台いっぱいに飾られた風車に目がいったその風車は風を受けて、カサカサ…と物悲しい音を立てて回っているトム・プロジェクトプロデュースの作品を観るのは、これが2度目前回は、同じ下北沢にあるザ・スズナリという小さな劇場で『鬼灯町鬼灯通り三丁目』という舞台を観たそのときの公演は、舞台いっぱいに鬼灯(ほおずき)が飾られていたことを思い出したその作品がとても面白かったので、今回の作品も観劇しようと思ったのであるなので、風車の乾いた音を聞きながら、自分のなかでは否応なしに期待は高まるのであった物心ついた頃から、身勝手すぎる父に嫌悪感を抱いていた長女の薫母親の死をきっかけに、姉妹は別々の親戚に引き取られたそれから18年の月日が流れ…二度と故郷に戻ってくるつもりはなかったのに、妹の栞が行方不明という報せを親戚から受け、薫は再び生まれ故郷の地を踏む久しぶりの再会ではあったが、昔とちっとも変わっていない頑固一徹な父とは衝突を繰り返すばかり故郷に戻ってきていた妹をなんとか連れ戻そうとする薫だが、妹は頑なに拒否し、父の跡を継いで骨の彫物師になると言い張る断固反対する薫だが、妹の意志は固いそんななか、時折栞が奇妙な行動を取るようになるそのことに対して、父の源吾は口を噤むばかりで、何かを隠している様子一体、妹の身に何が起きているのか?その衝撃の真実が明かされたとき、親子三人はどのようにして現実と向き合い、家族再生の道を辿るのかいや~凄い!期待どおり、いや期待以上の面白さだった作品独特の世界観もさることながら、3人の役者の方々の演技が実に見事高橋長英氏の無骨ながらも情愛を滲ませる父親、富樫真氏の緩急自在の演技、新妻聖子氏の美声、そして正気と狂気の迫真の演技…それぞれが実に魅力的で、ぐいぐいと作品の中に引きずり込まれたようやく家族の絆を取り戻せたかと思った矢先に待ち構えていたのは、あまりにも切なくて悲しい結末風車が一斉に周り、紙吹雪が舞台一面に舞う神々しいまでの衝撃のラストシーンを迎えたとき、自分の身体のなかに熱いものが全身を駆け巡り、目からは止めどなく大粒の涙が零れ落ちた悲しいというか、感動というか、なんとも一言では言い表すことのできない感情が流させた涙だったたとえいがみ合っていても、離れ離れになっていても、親と子、兄弟は見えない固い絆で結ばれている家族の絆、家族の在り方というものについて、深く深く考えさせれた舞台だったトム・プロジェクト プロデュース『骨唄』本多劇場9月3日(木)~9月6日(日)まで出演/村野源吾…高橋長英/村野栞…新妻聖子/村野薫…富樫真
2009年09月05日
昭和54年4月から約半年間にわたって放映されたドラマ『俺たちは天使だ!』主演は、沖雅也氏、渡辺篤史氏、柴田恭兵氏、神田正輝氏貧乏探偵事務所の活躍を描いたアクションコメディードラマ自分は、勿論タイムリーな世代ではないので、DVDで観てその世界観にハマったそして今年の夏から、『俺たちは天使だ!』の30年後を描く続編『俺たちは天使だ! NO ANGEL NO LUCK』が放映されている昔の作品のイメージが強いのと、放送時間が夜中ということもあり、自分は見てはいないけれども、ドラマと同じキャストで同作品の舞台が公演されるというので、観劇することにした『俺たちは天使だ! NO ANGEL NO LUCK~地球滅亡30分前!』ひょんな事から麻生探偵事務所を引き継ぐ事となった元刑事の乾京介経営はうまくいかず、ジリ貧状態そんなある日、近所のおばさんから迷い猫の飼い主探しの依頼を受ける気乗りしない京介だったが、渋々承諾するしかし、その猫の飼い主探しが、思いも寄らぬ事態を引き起こすこととなる!この世の危機を救うため…運が悪けりゃ死ぬだけさ!新・麻生探偵事務所のメンバーたちが贈るアクション・コメディ!!チケットを見せて劇場に入ると、おもむろに箱を突き出された!?訳もわからぬまま箱に手を入れると、缶バッジが入っていたなんでも初日から先着2000名様に限り、缶バッジがプレゼントされているのだと言うで、自分が引き当てたのは主人公である“CAP”可愛いやんッ!まず使うことはないだろうけれど、タダで貰えるのはちょっと嬉しいさてさて、麻生探偵事務所のメンバーを演じるのは、若手イケメン俳優というだけあって、劇場は若い女性ばかりなんだか場違いな感じでも、客席についてビックリ!だって半分もお客さん入ってないんだよ?こんなにガラガラな劇場の空間も久しぶりかもしれないイケメン俳優で、しかも現在放送中のドラマの舞台化なのに、なんでこんなに動員が悪いんだろ?って、自分が心配することじゃないか物語は、ドラマから一年前に遡った設定主人公が3人のメンバーと出会い、協力し合って依頼を解決するという最初のエピソードが描かれているその仕事というのが、一匹の猫の飼い主探し本作品のサブタイトルは“地球滅亡30分前!”飼い主探しから、一体どうなったら地球滅亡というスケールの大きな話になるのだろうか?と、思いながら観ていたら、予想もつかぬ意外な展開を迎え、まさに地球滅亡の危機という事態に陥ってしまう果たして、どうなってしまうのか!?かなり強引な展開に、「ありえないでしょ!」とツッコミどころは満載!舞台上で繰り広げられている作品から、どことなく漂うチープな感じと相まって、アクション・コメディとして結構楽しませてくれた当時、藤波弁護士役でドラマに出演していた小野寺昭氏が、30年越しに同じ役で登場(映像出演)したり、番組の主題歌でもある「男達のメロディー」が流れると、懐かしさを感じずにはいられなかったどうしても昔の作品と比べてしまうのだが、思い入れが強い好きな作品だけに、若手俳優の4人が演じる『俺たちは天使だ!』は、少々物足りなさを感じてしまうけれども、このチームはチームで、魅力的だったのは確か毎週放送中のドラマを見てみたくなった終演後、劇場を出るとき、なぜかカップラーメンを1つ貰った日清『麺職人』なんで!?藤波弁護士が無類のカップラーメン好きという、キャラクター設定が関係しているのだろうか?それとも、この作品のスポンサーさんなのかな?よく分からないけれど、観劇してカップラーメンを貰うだなんて変な感じそういえば、観劇前には缶バッジも貰ったっけ…小さなことだけれど、なんだか得した気分舞台『俺たちは天使だ! NO ANGEL NO LUCK~地球滅亡30分前!』池袋サンシャイン劇場8月26日(水)~9月6日(日)まで出演/乾京介…渋江譲二/当麻優希…鎌苅健太/弦巻剛…藤田玲/若林時宗…山本匠馬/加賀美由紀彦…載寧龍二/藤波昭彦…小野寺昭(映像出演) ほか
2009年08月30日
今日観劇するのは、なんとも変わった作品名の舞台その名も『斎藤幸子』名前の画数が悪い女“斎藤幸子”周囲の人々をも巻き込む、その波乱に満ちた人生とは!?この夏、必見!笑って笑って、ちょっぴり泣けて、心が元気になる物語ユニークで多彩なキャストでお届けする、ハートフルコメディの決定版!舞台は東京月島母を早くに亡くした斎藤幸子は、姉と父の3人暮らし父の洋介は、もんじゃ屋を営みながら男手ひとつで娘を育ててきたそんなある日、幸子は、飼っていた毒蛙に攻撃され、生死をさ迷うそこから、幸子の転落人生は始った…不本意な初恋、妻子ある男性との駆け落ち、紆余曲折あって女実業家になったかと思えば、今度は詐欺士の共犯疑惑!?幸子の周囲にはつねに不幸の影がつきまとうこれは、名前の字画が悪いせいなのか!?運命の悪戯に翻弄される幸子、そして幸子に振り回されながらも、彼女を応援し温かく見守る周囲の人々の心温まる物語とにかく面白かった!!登場人物ひとりひとりのキャラクターが実に活きているそれぞれが一癖も二癖もある強烈な個性の持ち主けれども、その個性が不思議とぶつかり合うことなく、舞台上では見事に融合されている個性豊かな俳優陣が集まったこのカンパニーだからこそ成せた業なのかもしれない子供に名前をつけるとき、画数を参考にする場合もあるけれども、良い名前をつけたからといって、必ずしも順風満帆な人生を送れるとは限らない生きていれば、色々なことがあるのは当然であるだから、たとえ名前の画数が悪いからと言って、それが不幸な人生になるわけではない自分の心持ち次第でどうにでもなるのだ人の優しさ、そして温かさに沢山触れて、満たされた気分で劇場を後にしたあぁ…この優しい気持ち、しばらく消えませんように…パルコ・プロデュース『斎藤幸子』ル テアトル銀座8月14日(金)~8月30日(日)まで出演/斎藤幸子…斎藤由貴/澤渡桂一…粟根まこと/斎藤洋介…きたろう/吉田勝江…千葉雅子/矢口美奈子…明星真由美/坂本卓也…中山祐一朗/富山和夫…松村武/山崎正光…柳家喬太郎 ほか
2009年08月29日
埼玉県の戸田市で舞台を観終えると、急いで電車に乗って、渋谷に移動した今日は、これから夜も舞台を観るのである一日に2作品観るのは正直疲れるのだが、観たい舞台が重なっていたので、こんなスケジュールになってしまったシス・カンパニー公演『怪談 牡丹燈籠』げに恐ろしきは怪談話か、おぞましき人の業か…絡み合う愛憎と因果が生む恐怖を、妖しく灯る“牡丹燈籠”が照らし出す「四谷怪談」「番町皿屋敷」に並んで、有名な怪談話の『牡丹燈籠』基は明治時代に人気を博した初代・三遊亭円朝による創作落語今回上演するのは、その落語を劇作家・大西信行氏が、文学座・杉村春子氏に請われて戯曲化した作品1974年に文学座で初演されて以降、歌舞伎など芝居のジャンルを問わずして繰り返し上演されている演目である去年、花組芝居で上演された『怪談 牡丹燈籠』を観劇して、それがなかなか面白かったので、演目に惹かれて観劇しようと思った有名な怪談話とはいえ、その内容を詳しく知らない自分としては、花組芝居で観たものを想像していたしかし、これがちょっと違ったのである基本的なエピソードは変わらないのだが、花組芝居版では、お露の父である飯島平左衛門に仕える草履取りの孝助という人物が話の主軸になっているところ、今回の舞台では、伴蔵・お峰夫婦に焦点が置かれていた題材一つにしても、アレンジすることによって、こうも印象が変わるのか…と、興味深く観た伴蔵・お峰夫婦を演ずるのは、段田安則氏と伊藤蘭氏気の弱い亭主と気の強い女房の夫婦像を巧みに演じていた丁々発止の台詞の応酬にただただ圧倒される己の欲の皮を突っ張らせて、ひょんなことから大金を得た夫婦貧しい暮らしからようやく脱却し、夢にまで見た豊かな暮らしを送るものの、なぜか心は満たされない懐は温かくなれども、心は寂しくなるばかり幸せとは何なのか…考えさせられる他人を踏み台にしてまで掴んだ幸福欲が欲を生み、抜け出せない底なし沼の深みに嵌っていく欲望に駆られるがままに生き抜いたところで、結局は誰一人として幸福を手にすることはできなかったラスト、人間の浅はかさが鮮やかに浮き彫りになる本当に恐ろしくて醜いのは、幽霊なんかじゃない生身の人間なのだ怪談にというよりも、人間の強欲さに薄ら寒さを覚えるのであったシス・カンパニー公演『怪談 牡丹燈籠』Bunkamura シアターコクーン8月6日(木)~8月31日(月)まで出演/伴蔵…段田安則/お峰…伊藤蘭/お国…秋山菜津子/宮野辺源次郎…千葉哲也/萩原新三郎…瑛太/お露…柴本幸/乳母お米・お六…梅沢昌代/三遊亭円朝…森本健介 ほか
2009年08月22日
本日初日を迎える舞台『恋桜』約1ヵ月半かけて、北は青森から、南は鹿児島まで地方を巡演する都合がつけば観たいと思っていた作品だったので、今日、東京から一番近い公演会場である、埼玉県の戸田市文化会館へと足を運んだ『恋桜』華やかなりし往時の東京は下谷花柳界を舞台に、三人の芸者の三通りの恋が織り成す人生模様(公演チラシより)三人の芸者を演ずるのは、多岐川裕美氏、中田喜子氏、仁科亜季子氏着物姿がなんとも艶やか芸者でありながら置屋の主人でもある八重次は芯の強い女性、売れっ子芸者なのに守銭奴(ケチ)な梅竜、芸より恋に生きる妹芸者の照葉三人の性格付けが見事にそれぞれの女優さんに嵌っていて、役が実に活き活きとしているそんな大輪の花が咲き競うなかで、梅竜の旦那を演じる名高達男氏も、抑えた演技のなかに素敵な紳士像を巧みに滲ませていた物語は、三人の芸者各々が抱える恋模様を中心に展開されていく幼い少女時代から秘めたる恋、愛する人が帰ってくるのを待ち続ける恋、愛し合う二人の成就しがたい恋それぞれが紆余曲折、すったもんだの末、自分なりの答えを見出し、明日への新たな第一歩を踏み出していく成就する恋もあれば、叶わぬ恋もある辛いこと、悲しいこと、苦しいこと…生きていると色々なことがあるけれど、生きていれば幸せはやって来る人生捨てたもんじゃない!そんな前向きな気分にさせてくれた舞台心温まる作品を観て、なんとも清々しい気分で会場を後にするのだった平成二十一年度松竹特別公演『恋桜』8月22日(土)~10月4日(日)まで日本全国各地を巡演出演/八重次…多岐川裕美/梅竜…中田喜子/照葉…仁科亜季子/谷川俊次…名高達男 ほか
2009年08月22日
毎年8月に公演がある、五大路子ひとり芝居『横浜ローザ~赤い靴の娼婦の伝説』今年も13日から16日までの4日間、横浜赤レンガ倉庫で公演が行われる横浜のとある雑居ビルの7階エレベーターホールその廊下の一隅にいつからか住みついた一人の老女彼女は「横浜ローザ」の名で知られた外国人専門の娼婦だ昔こそ華やいだ暮らしを送っていたものの、今はやむなく雑居ビルのエレベーターガールとして、酔客の僅かなチップで飢えをしのぐ毎日だった忍び寄る老いの孤独と死の恐怖、眠れぬ一夜いたずらに救急車を呼んでは寂しさを紛らわせているそんな彼女が問わず語りに激白する涙と屈辱の人生は、そのまま日本の戦後史であった…(公演あらましより引用抜粋)「横浜ローザ」という作品に出会ったのは、三年前の夏うまく言葉では言い表すことのできない、とても激しい衝撃を受けたそれからは、公演が行われる際は見るようにしているところが、毎年の事なのだが、この時期は、自分は仕事がとても忙しい去年はなんとか時間を無理矢理空けて都合をつけたのだが、今年はどうしても無理だったなので観劇は泣く泣く諦めていたのだが、急遽今日仕事がキャンセルになり、偶然にも自由の身となったので、横浜へと足を向けた横浜は今年開港150周年を迎え、街では色々なイベントが催されている今は夏休みということもあり、みなとみらいの地区は大勢の家族連れやカップルで賑わっていた公演が行われる横浜赤レンガ倉庫は、大好きなスポットの1ついつ訪れても、旅愁を誘う今日は快晴空を見上げれば青々とした空が広がっている歩いていると、うっすらと汗が滲んでくるが、海から時折潮風が吹き、とても心地がいい当日券があるかどうか分からなかったが、幸いにも桟敷席なら空いているとのことで、チケットを確保することができた席は舞台正面の前から2列目!中途半端な低さの席で、しかも背もたれがないのが辛いところだが、舞台を間近で観ることができるのなら、それも苦にならない1996年の初演から、今年で14年目を迎えた「横浜ローザ」自分としては、三年目三回目の観劇である五大氏の代表作とも言うべき作品なだけに、終始気迫が籠もっていて、まぎれもなく横浜ローザとして舞台上で息づいている戦争によって自分の人生を大きく狂わされた一人の女性運命を呪いながらも、時代の流れに必死になってしがみつき、逞しく生きたその姿は、眩しいまでに輝きを放つ“生きる”ということの素晴らしさ、過酷さ、残酷さがストレートなまでに自分の心に突き刺さった折りしも、観劇した今日8月15日は、終戦記念日終戦から64年が経ち、今では戦争を知らない世代の方が多くなったそのことが幸なのか、不幸なのか戦争を題材にした舞台を観終えたばかりのせいもあってか、青空の下でのんびりとした空気に包まれていると、なんだか居た堪れない思いでいっぱいになっていた戦争の悲劇は語り継がれていくべきものなのかそれとも忘れられるべきものなのか平和色に染まった休日で賑わう人々とは相反して、なんともいえない苦々しい思いで横浜の街を去るのであった五大路子ひとり芝居『横浜ローザ~赤い靴の娼婦の伝説』横浜赤レンガ倉庫1号館8月13日(木)~16日(日)まで
2009年08月15日
なんの脈略も無く、たまたま、ある若手の役者の方のブログを覗いていたそこには、舞台稽古で役作りに苦しんでいることが切々と綴られていたそんな飾り気の無い人間味に溢れた一面を見た自分は、その役者さんの事が気になり、出演する舞台を観てみようとチケットを手配した観劇日当日劇場の最寄り駅である恵比寿駅の駅前広場には、大きな櫓が組まれていて、多くの浴衣姿の人で溢れかえっていたどうやら盆踊りらしい夏だもんねぇ…と、賑々しい祭囃子を背にして、公演が行われる恵比寿エコー劇場へと向かったspace shuttle show 第一回公演『シブヤ×アキバ~カノジョはボクの青い鳥』秋葉原のライブスペースライブ中、突如停電してしまう数秒後に電気がついたとき、ステージからアイドルが消えていた…!ボクのカノジョが消えたオレのカノジョが消えたその時から、アキバ系の僕たちと、絶対関わる事なんて無いと思っていたシブヤ系の彼らとの、消えてしまった彼女を探す夏が始まった…(公演チラシより引用抜粋)この舞台、3日間で5回公演と、公演回数が少ないしかも、そのうちの4公演が既にチケット完売舞台に出演される方々は、誰ひとり自分の知らない役者さんばかりなのだが、かなり人気のある舞台のようだそんなわけで、チケットが残り僅かだった今日初日に観劇することになった予約してゲットしたのは1番前の列の席!小さな劇場なので、舞台は間近こんなすぐ傍で舞台を観ることに、自分としては気恥ずかしさは隠せなかったさてさて、舞台はというと、正直言って殆ど期待していなかったのだが、これが自分の期待を良い意味で鮮やかに裏切ってくれて、とても面白い作品だったなんといってもストーリー展開が面白い消えたアイドルを探すというメインのストーリーを主軸に、愛や友情、苦悩といった青春の群像が織り込まれ、肝心の謎解きもさまざまな伏線が張られていて、それら一つ一つがラストに向かって結びついていく物語は二転、三転、大ドンデン返しが用意されていて、その息もつかせぬ展開に唸ってしまったほどその作品を作り出す役者さんたちは、二十代を中心とした若いカンパニーこの作品で初舞台を踏むという人が多いようで、通常より長く稽古期間が設けられたなかには、舞台慣れしていないことと、初日というせいもあってか、演技に硬さが見られる人も見受けたが、全体的には若さと熱意で押し切ったという感じ特に、渋谷の不良集団のチームリーダーを演じた矢崎広氏の熱い男っぷりは、男の自分が見ても惚れてしまうほど気迫に満ちた演技で、作品全体をグイグイ引っ張っていった対する秋葉原のオタク集団のリーダーを務める佐藤考哲氏も、これはこれで見事に優男を怪演肉食系と草食系の相反する二人の男の身体を張った対決は見応えがあったちなみに、この舞台を観るキッカケとなった、役作りに悩んでいることをブログで明かしていた役者さんはというと、しっかりと登場人物の一人として舞台上に息づいていた演じる役所が自分の性格とは相反するキャラクターなのか、時折素の表情を覗かせてしまうところが、なんだか微笑ましかったとにかく役者の方々の若々しいパワーが漲っていた作品若いっていいな…若いって素晴らしいそんなことを思ってしまう自分は、歳をとった証拠だねspace shuttle show 第一回公演『シブヤ×アキバ~カノジョはボクの青い鳥』恵比寿エコー劇場7月31日(金)~8月2日(日)出演/エージ…矢崎広/リヒト…佐藤考哲/エリ…小花/ケンジ…矢ケ崎一樹 ほか
2009年07月31日
今日は、お芝居『瞼の母ラプソディ』を観劇半年後に町長選を控えた北関東のとある町秋の文化祭行事の目玉として予定されていた芝居「瞼の母」が、主演俳優の急病で公演間近にして突然のキャンセルになったから、さあ大変!何しろ急な話なので、代わりの劇団も見つからず、完売したチケットは、既に町の予算として使っているために今更払い戻すこともできないそこで企画課の課長が連れてきたのは、美しい女形の二人近くの温泉街に巡業にきた旅回りの役者だ旅役者の二人は、文化祭と公演初日が重なるので、文化祭に出演することはできないが、市民が出演者となる「瞼の母」の稽古をすることを提案する初めは戸惑う連中だったが、こうなったらやるしかない!果たして素人ばかりの舞台は、三日間で幕を開けられるのだろうか…(公演あらすじより一部引用抜粋)公演が行われるのは、新宿歌舞伎町にある大久保公園シアターパーク新宿区では、誰もが安心して楽しめる町づくり“歌舞伎町ルネッサンス”に取り組み、歌舞伎町再生に向けた文化創造の拠点として、大衆文化、演劇文化を発信その精神を受けて誕生したのが、テント劇場の大久保公園シアターパークなのである何しろ、本来が劇場として建てられたものではないので不便な点は多いトイレは公園内にある仮設のものを使用客席はパイプ椅子なので、長時間座っていると、ちょっと辛い観客からしてみれば、舞台を見る環境としては必ずしもいいとは言えないが、それは出演者の方々にとっても同じようなことが言える出演者の方がラジオ番組で語っていたのだが、出演者の方が使用する楽屋はテントを使用していたのだそうしかし、さすがに夏場の公演だと暑いので、主要の俳優さんは、冷房が効くプレハブ小屋を建てていただいたのことそんな環境のなか、スタッフの方々は汗だくになって陰で支えているのだとかご苦労様です歌舞伎町の繁華街から抜けて、ちょっと歩くと、フェンスで囲まれた公園というにはちょっと寂しい敷地のなかに、大きなテント張りのその劇場はあったけれども、中に入ってみると、これが思っていた以上に広くてビックリ座席はパイプ椅子ではあるが、客席は適度な傾斜になっているので、後ろの席でも舞台を見渡すことができる冷房も完備されていて、意外としっかりとした劇場のようだ客席の両脇、そして舞台上には、胡蝶蘭や花篭といった、出演者の方々への祝いの花で埋め尽くされていて、なんとも華やいだ雰囲気に包まれていたそれにしてもお客さんが少ない劇場の場所がちょっと分かりづらかったので時間に余裕を持ったせいか、開演の20分前には到着してしまったのだが、一向にお客さんが入ってくる気配はないそうこうしているうちに開演5分前を知らせるアナウンス客席は3分の1も埋まっておらず、お客さんは中央の前のほうにしか居ない自分はというと、サイドの一番前の席だったのだが、当然のことながら横一列どころか、後ろも誰も居ないなんで、こんなにお客さん入っていないんだろ?名の知れた俳優の方々が出演する舞台なのに…こんなガラガラの客席って初めてだよこれだと演じる方も遣り甲斐がないんじゃないだろうか?異様なまでに空いている客席を見て、そんなことを思っていると、舞台は始まった芝居は、町長選に名乗りをあげている二人の候補者の対立、そして急遽素人によって演じられることになった「瞼の母」と、ドタバタとした展開しかしながら、どちらもエピソードの一つとして盛り込まれているだけで、丁寧には描かれていないので、いささか消化不良気味この作品において主軸に置かれているのは、物語後半になって明かされる、素人に稽古をつけることになった旅役者の出生の秘密その出生の秘密には、現市長の妻が絡んでいたのだ市長の妻には、過去に産んだばかりの子供を捨てた過去がある話をきいていると、どうやらその捨てた子供が、今目の前にいる旅役者のようなのだ市長の妻と、旅役者…十数年ぶりの再会まるで「瞼の母」を地でいくような展開であるしかし、そこにはさらなる真実が隠されていた!芝居に集中して見ているんだけれど、これがテント劇場というだけあって、外の音が筒抜け外は雨が降っているのだが、時折激しく降るようで、テントに激しく叩きつけられる雨音が響くさらには、幾度となく聞こえる救急車のサイレンの音そういえば、ここに来る前に、近くに大きな病院があったっけとにかくありとあらゆる雑音が終始聞こえてくるのだが、それらが芝居を邪魔しないから不思議であるまるで効果音のひとつとして、作品にリアリティを加えているのであるさてさて舞台だが、ストーリもそうだし、旅役者を追っかけしている中年女性たちのわざとらしい演技が煩くて、全体的にかなり荒削りな感があるのは否めないそんななかで、主演を務める浅茅陽子氏の演技が光っていた我が子かもしれない子を前にして、名乗るに名乗れない心の葛藤を見事に演じていた旅役者を演じたのは、松川小祐司氏、松川翔也氏二人は実際の兄弟で、18歳と15歳という年齢大衆演劇の新星として期待されている舞台では、初めとラストに女形に扮して舞いを披露するのだが、これが色っぽいのなんのって金髪に染めたりしていて、素顔は今時の若い子と分かっていながらも、その艶姿にすっかり見惚れてしまったなんだかんだ色々な事があっても、舞台は最終的には強引に丸く収めて、気づけばハッピーエンド作品からはかなりチープな匂いが漂っていたが、それがテント劇場の雰囲気と相まって、独特の世界観を築き上げていた終演後には、役者の方々がお客様をお見送りするサービスありそのなかで、小祐司氏と翔也氏は「ありがとうございました」と、お客様ひとりひとりと握手していた勿論自分も握手してもらったんだけれど、なんだろね?この妙な胸騒ぎは…相手は若い男の子なのに、ドキドキしてる…だって、ほんと綺麗なんだもんッちょっと惚れそう舞台『瞼の母ラプソディ』新宿歌舞伎町 大久保公園シアターパーク7月16日(木)~27日(月)まで出演/岩下照代…浅茅陽子/相田和歌子…沢田亜矢子/岩下幸三…佐藤蛾次郎/酒井節子…石井苗子/松本静江…榛名由梨/燕千寿…胡蝶/夏木丈一郎…松川小祐司/秋山光治…松川翔也 ほか
2009年07月24日
天王洲銀河劇場で公演中のブロードウェイ・ミュージカル『スペリング・ビー』第25回パットナム郡英単語スペリング大会地方予選全国大会への出場権を競い合う、性格も年齢も家庭環境も、抱える悩みもそれぞれ違う少年と少女が6人勝つのはたったひとりそれはボク?それともアイツ?勝敗の行方より、もっと大切なことそれは、とても、とても、素敵なはじまり…(公演チラシより)ちょっと気になる女優さんが出演しているので、観劇することにしたのだが、正直言ってあまり作品には期待していなかったところが、その期待は良い意味で裏切られて、とても楽しくて面白いミュージカルだった物語の舞台となっている“スペリング大会”の競技内容は、出題される英単語の綴りを間違えることなく言っていくというもの例えば、“Flower(花)”なら、「F・L・O・W・E・R」という具合に、声に出して解答する言い間違えると失格最終的に勝ち残った人物が優勝となるそんな、スペリング大会というもの自体あることを初めて知った自分としては、果たしてこの英単語を言っていくだけの大会がミュージカルの題材として成り立つのかいささか疑問に思っていたけれども、さすがはブロードウェイ・ミュージカル明るく賑やかな歌やダンスのナンバーが随所に盛り込まれていて、構成が実に巧み幼いながらもそれぞれに悩みや苦しみを抱えていて、大会優勝を目指すという単純なストーリーのなかに、人間ドラマが展開されて作品に奥行きが出た勝者は1人だけだから、当然のことながらそのなかには勝つ者もいれば負ける者もいるけれども、この作品のなかでの敗者は、決してめげてはいないむしろ負けたことによって色々なものを得て、前向きになっているのだ人生勝ち負けがすべてじゃないそんな人生の教訓を学んだような気がした今回の舞台は、出演者の方々皆さんが実に見事に役にハマッている大会出場者の6人の子供たちを演じるのは、藤井隆氏、新妻聖子氏、梶原善氏、高田聖子氏、坂元健児氏、風花舞氏皆さんそれぞれいいお歳を召しているが、堂々と少年少女を演じている服装や喋り方、身振り手振りなどで巧みに表現しているのだが、どうしてもビジュアル的には無理があるのでは?という方もいるが、不思議と違和感を感じさせないのは、その役者の方の力量なのだろうとにかく、それぞれの役者さんは、一癖も二癖もある個性ある役柄を演じている藤井氏の小生意気さ、新妻氏の健気さ、梶原氏の無邪気さ、自分でも自虐ネタにしてしまうほど7歳の少女を演じる高田氏、いかにも子供っぽい振る舞いの坂元氏、風花氏の鼻持ちならない高飛車な態度皆が皆、カラーが違って個性が光る対して、大人を演じる方々も負けてはいない大会の司会を務める安寿氏は、物語の要ともいうべき役柄で、抑えてはいるもののその存在感は抜群!アドリブも巧みで、巧者ぶりが光っていた出題者の村井氏は安定感ある演技、カウンセラー役の今井氏は大きな包容力と、ベテランの方々が舞台をしっかりと引き締めていたとにかく楽しい舞台なのだが、この作品には面白い趣向が用意されているそれは、観客の方で希望者がいれば、舞台上に立ち、6人の役者さん達に混じってスペリング大会に参加できるというもの自分が観劇した回は、4人の女性が名乗り出て、参加していた舞台進行中は、ただ椅子に腰掛けているのではなく、6人の役者さんに混じって時には軽いダンスを促されて身振り手振りで踊ったりと、かなりのいじられよう当然のことながら、スペリング大会の設定なので、舞台中央に立ち、出題された問題に解答しなければならない正解すればそのまま舞台に残れるが、間違えれば客席に戻ることになるけれども、素人さんに出される問題は、考えなくても答えられるような簡単なものと思いきや、いきなり難しい問題が出されたり、お客さんも一緒になって大盛り上がり素人さんは、最終的には1幕が終わるまでには全員落とされる設定になっているんだけれど、素人の方が紛れ込んでいることによって、舞台と客席が一体になっている感じがあって、その雰囲気がすっごくよかったできれば、自分も舞台に上がりたいくらいだって、ほんとに楽しそうなんだもんッ!これは思い出になるでしょでも、ネックが1つそれは、自分は英語が全くダメだということ学生の頃の英語の成績は、教師が呆れるほど最悪だったからねアルファベット26文字を言えないぐらいだったから…そんな自分が舞台に上がったら恥かくだけだもんねなので、自重しましたいや、思いがけずに素敵な作品に巡り合えて、ほんと得した気分「観る」というよりは「楽しむ」ミュージカルだった終演後には、出演者の方々(村井氏、、安寿氏、風花氏)によるアフタートークもあり、なんだかお腹いっぱい満足して帰路につくのであったブロードウェイ・ミュージカル『スペリング・ビー』天王洲銀河劇場7月17日(金)~8月2日(日)まで出演/ウィリアム・バーフェイ…藤井隆/オリーブ・オストロフスキー…新妻聖子/リーフ・コニーベア…梶原善/ローゲン・シュワルツァンドグルーベニア…高田聖子/チップ・トレンティーノ…坂元健児/マーシー・パーク…風花舞/ロナ・リサ・ペレッティ…安寿ミラ/ミッチ・マホーニー…今井清隆/ダグラス・パンチ…村井国夫
2009年07月23日
仕事を終えると、観劇の為に東銀座まで車を飛ばした今日観る作品は、新橋演舞場にて公演中の『ガブリエル・シャネル』ファッション界に燦然と輝き続ける巨星ガブリエル・シャネルその栄光と、挫折と、愛情の物語…ファッションデザイナー、ガブリエル・シャネルの波乱の人生を、ミュージカル仕立てにした作品激動の時代のなかで、自分の思うがままに奔放に生きた彼女の生涯を3時間弱にまとめているので、駆け足で進んでいく感じは否めないまた、現代や過去を行ったり来たりするので、場面構成がちょっと複雑のように思えたとはいえ、その限られた時間のなかで、シャネルの複雑な生い立ち、夢、希望、成功、挫折、晩年の寂しさといったエピソードがうまくまとめられていて、彼女の揺るぎない信念と前向きな生きざまには大いに感銘を受けたシャネルのことを知らない自分でも、シャネル初の香水“No.5”が誕生する秘話や、大企業として成長したシャネルが労働者のストライキによりビジネスを閉鎖するシーンなど、有名なエピソードが登場するので、彼女について殆ど知識が無い自分でも、楽しめることができたタイトル・ロールのガブリエル・シャネルを演じるのは大地真央氏やんちゃな幼少時代から、晩年までを一人で見事に演じきる恋に仕事にと、全盛期が華々しい人生だっただけに、晩年の末路はあまりにも寂しく、その人生の悲哀感が大地氏の身体から滲み出ていて、見ていてなんとも切なかったいくつかある歌のシーンも、さすがはミュージカル界の第一線で活躍されている方だけあって、見事特にラストシーンで歌い上げる「私のスタイル」は秀逸で、自分の身体のなかに熱いものが迸った大地氏の女優魂を見せつけられたような気がしたシャネルが心を寄せる男性、アーサー・カペルを演じるのは今井翼氏“タッキー&翼”で人気が高いジャニーズのタレントさんで、彼がお目当てなのか、劇場には沢山の若い女性が観劇していたさてさて、こんな事を言ったら失礼かもしれないが、正直言って、大地氏の相手役に今井氏はちょっと若すぎるのでは?と思ったのだが、舞台を観ていて、一切そんな違和感は無かった大地氏が若々しいことは勿論なのだが、それ以上に今井氏が大人っぽくてビックリ!立ち居振る舞いやセリフ回しなど実に堂々としていて、見ていて実に頼もしかった他の共演者の方々も実に華やかな顔触れ高橋惠子氏は、その場にいるだけで華やかな雰囲気を醸し出す葛山信吾氏は物語の進行を務める狂言回し的な役どころを見事に担い、新境地を見せた升毅氏は、女性に裏切られた途端に掌を返す嫌な男性という損な役回りなのだが、その嫌味っぷりのなかにどこか憎めないところもあって、男の悲哀さを巧みに覗かせていた音楽のナンバーもどれも良く、ほんと素敵な作品だったガブリエル・シャネルの晩年は寂しく、どんなに成功を収めても、最後に待っているものは悲壮感だけなのか?と思ってしまうと、なんだか生きていく望みが失われてしまうような気がするそれでも、彼女の信念を貫き通した人生を垣間見たことによって、自分も生きることに対して少しは希望の光のようなものが見えたことは事実である自分には、ガブリエル・シャネルのような信念は無い大きな夢や希望も特にはないけれども、自分は生きている決してつまらない人生を送ってはいない一日一日大事に生きるある意味、“懸命に生きる”ということが自分の信念なのかもしれない新橋演舞場7月公演『ガブリエル・シャネル』7月3日(金)~27日(月)まで出演/ガブリエル・シャネル…大地真央/アーサー・カペル…今井翼/ミシア・セール…高橋惠子/エドワール…葛山信吾/エチエンヌ・バルサン…升毅/アドリエンヌ…彩輝なお/ディミトリー大公…平岳大/セール…ジェームス小野田/アントワネット…華城季帆 ほか
2009年07月16日
今日は、Bunkamuraシアターコクーンにて上演中の舞台『桜姫』を観劇鶴屋南北の名作「桜姫東文章」を、今の時代に書き換えて現代劇にしたもの副題に“清玄阿闍梨改始於南米版(せいげんあじゃりあらためなおしなんべいばん)”とあるように、南米あたりの国が舞台となっている南米と思しき土地…時と場所の定まらぬ世界を彷徨いながら、運命の女・マリアに導かれるように堕ちていくセルゲイとゴンザレス二人の男の運命の変転を、人間の生と死を巡る寓話へと昇華するスケールの大きな作品(公演パンフレットより)さてさて、自分が今日観劇するのは、ベンチシートと呼ばれる席今回の公演は通常と違い、舞台が変則に組まれているので、座席の配置も特殊なのだ劇場のロビーに張り出された座席表を見ると、自分の席は舞台の真横に位置しているその図を頼りに、座席を探す普段では立ち入ることができない舞台袖を通り抜けると、舞台上に座席は組まれていた前の方の座席を何列か潰し、前にせり出すように組まれた仮設舞台派手な極彩色に塗りたくられたその舞台を挟むようにして、真向かいにも同じ形状の座席が組まれている座席は割りと高い位置に組まれているので、真横から舞台を見下ろす感じなかなか斬新な角度からの観劇となりそうそういえば、このベンチシートの座席は“可動式”と聞いている席が動くってどういう意味なのだろう?と、疑問に思っていたのだが、その謎は、開演してから数分後に解けたなんと、芝居の最中、座席がノロノロと動き出したのであるそれまでは、舞台を真横に観る形だったのだが、客席が90度回転し、真向かいにあった客席とドッキング舞台を真後ろから観るスタイルとなったお、面白いッ!!客席が動くだなんて初めてだよそれにしても、すごい景観だなぁ…舞台を真後ろから観ている訳だから、舞台上で繰り広がられる世界の向こうには、沢山の観客の姿が見えるつまりは、自分が舞台に立って、お客さんに観られているような錯覚を覚えるのだいやあ…これは、なかなか味わえない光景たくさんのお客さんの眼があるから、はじめは舞台に集中できなかったのだが、次第にそれも慣れてくると、気にならなくなっていった自分は、この作品の基である「桜姫東文章」は知らないまったく知識を持たずに観劇したのだが、話の展開が複雑で、ちょっと分かりづらい休憩時にパンフレットを購入し、書かれていた粗筋に眼を通したのだが、それでも理解するのは難しいただ、人間の業、残酷さといった、鶴屋南北の世界の匂いだけは、ほんの少しだが嗅ぎとった作品云々よりも、その独特の世界観を楽しんだ出演者の顔触れは、実に豪華大竹しのぶ氏、中村勘三郎氏、古田新太氏と、芸達者な方々ばかりただただ、強烈に放たれるオーラに圧倒されながら、その演技に魅了されるそれから、劇中では度々役者さんたちによる生演奏が入るのだが、その旋律が素敵で、とても印象に残った舞台真後ろからの観劇では、どうしても死角が生じるけれども、舞台を囲うような客席に配慮してか、演出が工夫されているので、その点はあまり不利だとは思わないむしろ、変わった視点から観ることができたので、この可動式のベンチシートでの観劇でヨカッタと思うぐらいただ、役者の方々が舞台を出たり捌けたりする際、客席の下を通るのだが、その度に客席が小刻みに揺れるのが、どうも慣れなかった舞台もラストに差し掛かると、再び客席が動き始める90度回転し、座席は再び元の位置に戻った話の内容をいまいち理解していない自分なので、どう解釈したらよいのか分からないまま結末を迎えるなかなか奥が深い作品のようです率直に言って、作品というよりも、劇場の空間に生じる空気を楽しんだ感じカーテンコールは万来の拍手束の間の夢から覚めて現実に引き戻されるこの瞬間は、時が止まってほしいと、いつも思う名残惜しい気持ちで、演者の方々を拍手で送る舞台から捌けるとき、中村勘三郎氏が、こちらに視線を配ってくださり、「ありがとうございました」と、頭を下げる姿勢に、えらく感動する自分なのであったBunkamura20周年記念企画シアターコクーン・オンレパートリー2009『桜姫 清玄阿闍梨改始於南米版』シアターコクーン6月7日(日)~30日(火)まで出演/マリア…大竹しのぶ/ゴンザレス…中村勘三郎/ココージオ…古田新太/墓守など…笹野高史/セルゲイ…白井晃/イヴァ…秋山菜津子 ほか
2009年06月20日
明治座で、毎年のように公演されている『梅沢武生劇団・梅沢富美男・前川清特別公演』歌手の前川清氏のファンである母は、この舞台をとても楽しみにしている今年は、良い席を確保できたので、公演のチケットを母の日のプレゼントとしたあの爆笑コンビが、またまた明治座を席巻します!息の合った掛け合いが見事なお芝居に、魅惑の歌声のオンステージ、舞台でしか聞けない裏話満載の座長口上に、百花繚乱の衣装をまとい妖艶で艶やかな女形の舞踊ショー、さらには巨大怪獣が一挙集結する壮大なステージはまさに圧巻!パワフルで、ダイナミックな舞台に是非ご期待ください(公演チラシより)3階席までほぼ満員の客席いかにこの公演が人気があるか見せつけられた瞬間そんななか、前から2列目の中央寄りの席を確保できたのは、ほんとラッキーだった開演を待ちわびる観客のざわめきに包まれながら、幕が上がるのを待った一つ目の演目は、お芝居『忠臣蔵迷々伝―大笑い 宝の入り婿』主君の仇である吉良上野介を討ち果たす想いを胸に生きる赤穂藩士たちを描いた作品要所要所で笑いを取りながらも、締めるところは締めるメリハリの効いた展開でもねぇ…下ネタはどうかなぁ?しかも、今回はかなり際どいものだったあまりにも表現がストレートすぎるので、閉口してしまったほどでも、客席は大きな笑いに包まれている中年女性は下ネタが好きなのかな?それにしても、前川氏、全然舞台に登場してこないようやく出番が来たのは、開演してから50分ほど過ぎたころ待ちに待った瞬間である大石内蔵助演ずる前川氏が舞台に登場すると、一気に舞台が明るい雰囲気に包まれた梅沢武生劇団の方たちも、それぞれ役を務めているのだが、こういっては失礼かもしれないが、いまいち華が足りないなので、前川氏が登場して、ようやく役者が揃ったという感じ前川氏は、セリフを忘れた素振りをして、独特のテンポで芝居の流れを狂わしていくその前川氏と、流れを正そうとする梅沢富美男氏の丁々発止のやり取りが実に面白い一つ一つのセリフに、客席が沸く演目は変われど、毎回このパターンなのだが、2人の絶妙なやり取りは、マンネリと思いつつもいつ見ても面白いしっかし、今回の作品の終わり方は酷かった「えっ?これで終わりなの?」というのが、率直な感想まるで尻切れトンボのように、物語はぶった切られてしまい、なんとも不完全燃焼花道に取り残された前川氏も、富美男氏に向かって、「この芝居、どうやって終わらせるの?」と、まるで自分の意見を代弁するかのようなセリフを吐くそこからは、出番が少ない(約1時間10分の作品で、正味10分弱の出番)だのと、物語に関係なく愚痴り始める前川氏その度に客席は沸くもしかして、これも狙いのひとつなのかな?なんだか、そう思えてきた結局は、前川氏のペースに乗せられたまま、最後は曖昧にされてしまった作品に上質なものを求めているわけではないが、せめて起承転結がしっかりとした作品を観たい去年の公演の演目『浪花の恋の物語』も中身のない話だったが、今回も残念な演目だった芝居が残念だった分、二部の歌謡ショーは大いに満喫することができた「長崎は今日も雨だった」「東京砂漠」「そして神戸」「中の島ブルース」と、往年のヒット曲や最新曲を披露横で観ている母も、前川氏の歌声に夢見心地のようだ客席から手を振られると、ひとつひとつ返していく前川氏の姿勢に、温かな人柄を感じる自分であった歌謡ショーは、富美男氏の唯一のヒット曲である「夢芝居」も披露される短い曲なのだが、これまた何度聴いても痺れる歌である歌謡ショーのあとは、座長口上たしか去年舞台を観たとき、大病(癌)を患い、“舞台に立つのはこれが最後”などと言っていたが、その大病も手術が無事成功し、再び舞台に立てることの喜びを語られていた座長の梅沢武生氏、かなりお痩せになられたようですが、お元気そうで何よりですそして、最後は舞踊ショー「華の舞踊絵巻」、それから「黄金伝説~大怪獣勢揃い」と続いていくお芝居では毎回冴えない人物を演じる富美男氏だが、舞踊ショーで見せる女形姿は、まるで別人のようその美しさは、客席から大きな溜息が漏れるほど色気溢れる姿に、自分はすっかり魅せられてしまったどうやったら、こんなに綺麗に化けることができるのだろうか?不思議でしかたない富美男氏が出演する以外のシーンは、毎回のことながらインパクトに欠けるなんだか、場繋ぎといった感じ笑いを誘うようなシーン(尻出し)など、毎回似たような構成というのもマンネリ気味変に下品なものを見せるのではなく、たまには座員の方々の正統派の舞踊も見てみたいと思うショーのなかで、ちょっと驚いた場面があったそれは、舞台中央、黒い着物を着た芸者さんがセリ上がってきたときのことその後ろ姿を見て、自分はてっきり富美男氏だとばかり思っていたきっとお客さんもそう思っていたに違いないその証拠に、振り返って、その芸者さんが白塗りをした前川氏だと分かったとき、客席からは笑いと大きなどよめきが巻き起こったからだ!!!!!これには、ほんと驚いた後ろ姿だけじゃ、人は判断はできないね前川氏の芸者は、なかなかのものだった富美男氏と張り合うところなんて、いじらしさ全開!コメディアンぶりを発揮していたラストは、富美男氏の宙吊りあり、色々な怪獣が登場しての華やかなフィナーレ客席に紙吹雪が舞ったりと、賑やかなうちに終幕毎年毎年同じような内容なんだけれど、今年も楽しませてもらった母も大いに楽しんだようで、ヨカッタ、ヨカッタでもね、母が“前川氏の出番が少ない…”と言っていたそれは自分も同感今回の公演、前川氏の出番ほんと少なかったなぁなんだか、毎年毎年、出番が減っていっているような気がするこの舞台は、前川氏目当てで観にきているようなものなので、物足りなさは否めない以前は、芝居にも舞踊ショーにも、もっと出演していたのに…まぁそれでも、母の満足そうな顔を見ることができただけで、自分は十分です出演者の皆さん、素敵なひと時をありがとうございました明治座6月公演『梅沢武生劇団・梅沢富美男・前川清特別公演』5月29日(金)~6月29日(月)まで出演/梅沢武生/梅沢富美男/前川清/梅沢武生劇団
2009年06月19日
今日は宝塚歌劇・宙組公演を観劇『薔薇に降る雨/Amour それは…』宙組主演コンビを務める、大和悠河氏、陽月華氏の退団公演であるミュージカル・ロマン「薔薇に降る雨」元将校の男、社交界の薔薇と評される女再会した2人には、かつて叶えられない恋があった…互いの想いを伝えられないまま、運命に翻弄される男と女の大人のラブロマンスロマンチック・レビュー「Amour それは…」伝統的な宝塚レビューの華やかさで、愛と人生の生きる歓びや哀愁を描く美しい色調、甘い香りと詩情が魅力のロマンチック・レビュー(公演チラシより)宝塚の舞台を初めて見たのが1998年だから、もうかれこれ10年ちかく経つ観始めた当初は、“世の中にはこんな世界もあるんだ…“と、その煌びやかな世界に、すっかり虜になってしまった年月を経った今でも、その夢の世界は健在昔こそ夢中にはならないものの、やはり客席に座ると、ちょっと胸が躍る宝塚の舞台というと、ショーを楽しみにしているので、正直言って芝居には期待していないのだが、今回の「薔薇に降る雨」は観終わったあとに爽やかな余韻が残る素敵な作品だった大人のラブロマンスの作品を演じるのに、主演の大和氏はちょっと若々しくて、包容力や渋さといった大人の魅力が欲しいだが、そんな弱点を補うほど、ビジュアルが美しいほんと王子様といった感じカッコええわァ男の自分でも惚れ惚れする相手役の陽月氏とのコンビもあっていて、紆余曲折を乗り越えてハッピーエンドを迎える展開は、退団公演に相応しい作品となったショー「Amour それは…」は、主題歌が古めかしく感じたが、このロマンチック・レビュー特有の美しい色調は、いつ観ても飽きることはない下級生たちによるロケットダンス、主演コンビのデュエットダンス、大階段を使ってのパレードと、定番なシーンが組み込まれた構成なのだが、いつ観てもワクワクする宝塚ってスゴイね男の自分でさえも、つかのまでも華やかな夢を見ることができるのだから幕が下りても、なんだか夢見心地のまま、劇場を後にする自分であった宝塚歌劇宙組公演『薔薇に降る雨/Amour それは…』東京宝塚劇場6月5日(金)~7月5日(日)まで主演/大和悠河/陽月華/蘭寿とむ/北翔海莉/悠未ひろ/美羽あさひ ほか
2009年06月12日
今日初日を迎えた、ブロードウェイミュージカル『GLORY DAYS』友情なのか、愛なのかあの頃の僕らには、わからなかった…高校卒業以来1年ぶりの再会にはしゃぐ4人しかし、無邪気にじゃれあった高校時代には想像もつかなかった仲間の変化を目の当たりにし、かつての「Glory Days」には戻れないことを知った4人は、大人への一歩をどう踏み出すのか(公演あらすじより引用抜粋)実は、ちょっと疑問に思うことがあったそれは、チケットに書かれていた一文“別途当日1ドリンク代として500円が必要となります”?????これどういう意味?普通、観劇するときって、客席内は飲食禁止なんだけれど、OKということ?よくわからないまま、仕事を終えると、公演が行われる新宿FACEという会場に足を運んだ昨年末に閉館となった新宿コマ劇場のすぐ傍の雑居ビルのなかに、目指すところはあったエレベーターであがり、目的の階に到着すると、初日を祝う花がロビーに所狭しと飾られていたちょっと狭いせいか、圧迫感を感じるチケットの半券をもぎられると、次にドリンク代として500円を徴収され、引換券のような小さなカードを渡されたこの券を持って、ドリンクコーナーに行き、自分の好きな飲み物を頼むという仕組みこれって、強制的に飲み物を買わせる必要あるのかなぁ?なんて思いながら、飲み物を購入するための列に並ぶジュースやビールなど、いくつか選べるようだったが、自分はメロンソーダをチョイスはい、ここでもメロンでしたヘナヘナのビニールカップに注がれたメロンソーダを片手にウロウロロビーのような場所はあるものの狭いので、仕方無しに客席に新宿FACEという場所は、格闘技なども行われる多目的ホールで、そもそも舞台専用の会場というわけではないので、客席はパイプ椅子上演時間は、休憩無しで2時間弱こりゃ絶対お尻痛くなるでしょと、覚悟して腰掛けたそれにしても、ジュース持たされても困るよなぁずっと手に持っているわけにもいかないし、かといって足元に置いて、万が一蹴飛ばして溢したりでもしたら、周りにも迷惑をかけるしかたないので、たいして喉も渇いていないのに、開演前に残らず飲み干してしまったさてさて、ミュージカル『GLORY DAYS』は、若手4人の俳優による青春群像劇それぞれの役者さんは歌手であったり、ミュージカルで活躍されているだけあって、歌唱は安定していて、聴かせてくれるしかし如何せん、言葉とメロディーがうまく噛み合っていないのか、畳み掛けるように歌うシーンも多々あり、歌詞の内容が自分のもとまで届いてこない理解しようと必死になって耳を傾けるのだが、逆に言葉だけを追っていると、話の全体が掴めないなので、かなり集中して見ていたので、疲れてしまったこんな思いをしているのは自分だけかな?物語は、高校時代に仲良しだった4人が、1年ぶりに再会したことから始まる1年という月日の流れは、それぞれに様々な変化をもたらした胸の内に抱えるそれぞれの悩みが、仲間内に微妙な空気をもたらすもうあの頃には戻れない…焦り、妬み、嘘、裏切り…さまざまな感情が諸刃の刃となり、互いを傷つけあう若気の至りともいうべき、後先を考えないその無鉄砲さ甘酸っぱくて、そしてほろ苦いそれが青春なのだろうか舞台を見ていたら、自分も似たようなことしてたなぁ…と、遠い昔の青春時代のことが蘇ってきた平気で人を傷つけたし、その逆で傷つけられたりもしたその時は勢いに任せて生きていたからねそんなわけで、舞台で繰り広げられているものが、まるで自分の生き様を映しているかのような錯覚を覚えて、なんともいえない甘く切なく苦い想いが胸の内に宿った青春…いい響きだね若い頃は色んな感情に押し潰されそうだったけれど、今にして思えば、毎日が輝いていたGLORY DAYS意味は“輝かしい日々”かな?まさしく、自分の青春はGLORY DAYSだったブロードウェイミュージカル『GLORY DAYS』新宿FACE6月11日(木)~25日(木)まで出演/ウィリアム・レヴィンソン…西島隆弘/スキップ・トーマス…伊礼彼方/アンディ・スコット…良知真次/ジャック・モイヤー…洸平
2009年06月11日
今日は夜から、青山劇場にて公演中の舞台『喜劇 日本映画頂上決戦~銀幕の掟をぶっとばせ!』を観劇これ、かなり期待しているのだなんといっても出演者が豪華!伊東四朗氏、三宅裕司氏、渡辺正行氏、ラサール石井氏、小倉久寛氏、春風亭昇太氏、東貴博氏、そして演歌歌手の小林幸子氏に、ベテラン女優の中村メイコ氏と、実に多彩な顔触れ芸達者な人達がこれほどまで一堂に会する舞台が面白くないわけがないでしょ幸運にもかなり前の列のしかもど真ん中の席を確保することができたので、否応無しにも期待と興奮は高ぶるのであった話は、日本映画黄金期俳優やスタッフは契約映画会社以外の仕事が出来ないという「五社協定」を軸にして、対立する二つの映画会社のスターの争奪をめぐる欲にまみれたドタバタの大騒動展開は強引さが多々見られ、荒削りな部分もあるのだが、とにかく出演者の方々の個性でグイグイと物語を引っ張っていくそれぞれの方はアクが強く、自分の持ち味をこれでもかといわんばかりに前面に出してくるのだが、不思議とお互いの芸を邪魔することがない客を泣かせることより、笑わせることのほうが難しいというが、とにかく最初から最後まで、客席からは笑いが絶えない自分も舞台を見てあまり笑うことはないのだが、笑わせてもらっただって、卑怯な手で笑いを取るんだもんッ!だいぶご高齢と思われる伊東四朗氏の笑いのセンスはまだまだ健在三宅氏と小倉氏の息の合ったコンビっぷりは、安定感があるそして、その昔“コント赤信号”というお笑いグループを組んでいた渡辺氏、ラサール氏、小宮氏の3人が今回の舞台では一堂に会しているので、往年のコントを再現するなど、とにかく全編を通して多くの笑いが盛り込まれているそんな顔触れのなかで、演歌歌手の小林氏も堂々と渡り歩いて、コメディエンヌ振りを意外にも発揮していたご自身でも座長公演をされているだけあって芝居心もあるし、劇中では歌を披露するシーンもあり、サービス満点!でもね、自分のなかではちょっと期待しているところがあった小林氏といえば紅白歌合戦でのド派手な衣裳(装置?)が有名だから今回の舞台でも?と、思ったのだが、まさかね…でも、そのまさかだった!物語のラスト、大団円を迎えて、なぜか小林氏が煌びやかなドレスに身を包んで、往年のヒット曲「もしかしてPART2」を劇中に合わせた替え歌で熱唱小林氏の背後に小さな風車のようなものが回り、ちょっとスケールは小さいけれどそれなりに雰囲気を満喫できたと思いきや、舞台がセリあがって小林氏がどんどん上へと上がっていく?????すると、なぜかモンペ姿の小林氏を模った巨大なセットが、ゆっくりと舞台にセリ上がってきたその大きさ、舞台の高さとほぼ同じぐらいで、かなりの迫力!『すっげェェェェェェ』心のなかでこれを期待していたとはいえ、あまりの迫力に開いた口が塞がらなかったひとり興奮冷めやらぬなか、モンペ姿のダンサーの皆さんが、小林氏の歌に合わせて息の合ったダンスを見せ、華やかなうちに幕は閉じた出演者一同が揃ったカーテンコールでは、舞台のセットでも使用している小林氏の巨大な像の話題に…「今年の紅白歌合戦に使用しては?」との問いに、小林氏はただただ苦笑するのみ「舞台が終わったら、廃棄処分するんですよ」と言うと、小林氏が意外なことを口にしたなんと、小林氏の故郷でもある新潟県にそのまま寄贈するとのこと詳しいことはまだ未定のようなのだが、新潟県の新たなシンボル?になるようですいやいや、それにしてもほんとてんこ盛りの舞台だったお話的には薄っぺらい内容なんだけれど、この際そんな野暮なことは言いっこなしとにかく率直に楽しませてもらいました!伊東四朗一座・熱海五郎一座 合同公演『喜劇 日本映画頂上決戦~銀幕の掟をぶっとばせ!~』青山劇場5月16日(土)~30日(土)まで出演/伊東四朗/三宅裕司/小林幸子/中村メイコ/渡辺正行/ラサール石井/小宮孝泰/小倉久寛/春風亭昇太/東貴博/伊東孝明 ほか
2009年05月29日
世田谷パブリックシアターで公演中の舞台『江戸の青空』を観劇あの文七が、五十両もの大金を芝浜で落としてしまったからさあ大変!人気落語の登場人物が入り乱れてのメタフィクションな大騒動お人好しで見栄っ張りの江戸っ子たちが繰り広げる人情コメディーどうぞ最後までお付き合いのほどを(公演チラシより)「芝浜」「文七元結」「御神酒徳利」「井戸の茶碗」「柳田格之進」といった、いくつもの名作落語を絡み合わせて1つの物語としてまとめている自分は落語はまったく解らないのだが、素直に楽しめた名作落語ということで、エピソードの一つ一つが面白いし、それらの話が実にうまく絡み合っているからだ大金を落として落胆する者、大金を拾って舞い上がる者、大金に振り回される者、大金のせいであらぬ疑いをかけられる者…50両という大金をめぐって、悲喜交々の人生模様が描かれている舞台に登場する人物たちは皆、生きることに不器用だが、心根が優しく義理と人情を大事にしているそんな人びとは愛おしく、人間の温かみがじんわりと伝わってきた人が人を思いやるという優しさに包まれたせいか、観ていてとても気分が良くなった主演の西岡徳馬氏をはじめ、どの役者さんも役にピッタリはまっている特に、須藤理彩氏のはじけっぷり、吉田鋼太郎氏の軽妙洒脱さ、松永玲子氏の飄々とした演技が強く印象に残ったアドリブなのか計算されているのかわからない演技が多々あり、演じている役者さん達がすごく楽しまれていて、その空気が客席のこちらにまで伝わってくるこの舞台と客席に隔たりが無い感じ、好きだな巧みな話の展開、役者さんの好演もあり、舞台からは江戸の匂いをプンプン感じる自分であった今日の夜の公演は、本公演終演後に、出演者の方々によるアフタートークがあった参加したのは、須藤氏、吉田氏、植本潤氏、柳家花緑氏、戸次重幸氏、蘭香レア氏、もう一人の方はお名前を失念、の7人植本氏の司会進行のもと、進められていくまだ初日の幕が開いて4日目ということもあってか、舞台の思い出の話しになってもあまり盛り上がらずそこで、なぜか「無人島に一つだけ調味料を持っていくとしたら?」という舞台とは全く関係のない話題に…醤油、マヨネーズ、酢、ゆず胡椒…と挙がっていくなか、柳家氏が答えたのは「いちごジャム」かなり意表を突いた回答でしたさらには、「カレーライスに欠かせない具は?」と、これまたどうでもいいような話題に…きのこ、じゃが芋、チキン、こま切れの肉…と続いて、またしても柳家氏が珍答を披露「具ではないけど、カレーライスには味噌汁が欠かせない」と言ったのだいちごジャムに続いて、共演者の方からブーイングのようなざわめきが起こったのは言うまでもない柳家氏、噺家さんだけに、笑いを取りに行ったのだろうか?と、なんだか世間話のような展開でアフタートークは終了舞台だけでなく、役者さんの素顔も垣間見ることができて、二度美味しい観劇となった北九州芸術劇場Produce『江戸の青空―Keep On Shackin』世田谷パブリックシアター5月24日(日)~6月7日(日)まで出演/柳田格之進…西岡徳馬/お久…須藤理彩/千代田卜斎…吉田鋼太郎/くず屋清兵衛…中村まこと/山坂転太…植本潤/おさき…松永玲子/萬屋源兵衛…松尾貴史/善六…柳家花緑/勝五郎…戸次重幸/文七…小西遼生/お兼…蘭香レア/お絹…いとうあいこ ほか
2009年05月27日
今日は夜から、天王洲銀河劇場にて舞台『きらめく星座』を観劇浅草の小さなレコード店「オデオン堂」に暮らす人びと音楽をこよなく愛する彼らのもとへ、戦争という時代の流れが押し寄せてきた家族を愛し、隣人を愛する人びとが、夜空きらめく星座に願いをかけるとき、“生命の奇蹟”がゆっくりと浮かび上がる(公演あらすじより)戦争という暗い時代背景が影を落としながらも、登場人物が明るく前向きに懸命に生きようとする姿が描かれているので、不思議と陰惨さは感じられないしかし、その明るさがあるからこそ、人々が抱えるそれぞれの苦しみや悲しみが鮮明に浮き彫りにされているどう足掻こうとも、時代という大きな波に呑み込まれ、決して幸せとはいえない展開を迎えるラストに、生きることの無情さを抱くそれでも、現実を受け止めて、生きていかなければならないどんなときにも、どんなことがあっても、明るく前向きに生きることができれば、その人生は輝いてみえるということが、舞台を通して自分の胸に響いた劇中のなかでのセリフのひとつ「生きていることが奇蹟」この言葉に、自分は深く深く感銘を受けた考えてみれば、自分がこの世に生まれたのも、今日までこうして生きてこられたのも、奇蹟としかいいようがないそう考えると、生きるということがどれだけ素晴らしいことなのか思えてきた生きていると辛いことや哀しいことは沢山あるけれども、楽しいことも沢山ある人生には可能性が秘められているだからこそ、人は人生を歩む当たり前のことを当たり前と思わず、感謝の気持ちを忘れずに、日々大切に過ごしていきたいそうすれば、平凡ながらも自ずと自分の人生も輝いてみえるはず主演の愛華みれ氏の、明るく元気な母親を好演そのおおらかさは、作品全体を優しく包み込んでいるその他の出演者の方々も、それぞれの役を手堅く演じていて、作品のなかで活きていた人間の温かさ、優しさが溢れた舞台「きらめく星座」は、自分の人生を見つめなおすきっかけを与えてくれた作品だった天王洲銀河劇場5月公演『きらめく星座』5月6日(水)~24日(日)まで出演/小笠原ふじ…愛華みれ/小笠原正一…阿部力/小笠原みさを…前田亜季/竹田慶介…木場勝己/小笠原源次郎…相島一之/小笠原信吉…久保酎吉/権藤三郎…八十田勇一 ほか
2009年05月23日
ジャニーズ事務所のアイドルグループ・NEWSのメンバーの一人、加藤成亮氏主演の舞台を観劇するために、東京グローブ座へアイドルが主演だから、劇場はファンの女性ばかりなんだろうなぁ…と覚悟はしていたが、やっぱりこの独特の空間は、何度経験してもかなり居心地悪い『SEMINAR―セミナー』ある夏の早朝イタリア・フィレンツェ郊外のセミナーハウスにある美しい庭の噴水で、一人の青年が倒れていた彼の名はローレンアメリカの大学生で、メディチ家についての特別授業を受けるためイタリアに来ていた同じセミナーに参加していた5人の学生と、1人の助教授は彼の姿に言葉を失う誰が、あるいは何が、彼を追いつめたのか…危険な香りのする若者の人生の核心に迫るイタリアへの旅そして謎を解く“セミナー”がはじまる…(公演紹介より引用抜粋)舞台は、かなり理屈っぽいセリフが並べられる大学のセミナーという設定なので、ルネサンス時代を学ぶための講義の内容も訳が分からず、自分の頭のなかはチンプンカンプン!?すごく難しい硬派は作品といった感じそのなかで、一人の青年が一石投じた波紋が周囲を巻き込む渦となり、それぞれの登場人物が抱えている悩みがどんどん浮き彫りにされていく自分の思っていること、感情を相手にストレートにぶつけてしまう青年・ローレンローレンが言っていることは正当で、何も間違ってはいないしかし、良かれと思ってしていることでも、相手にとっては有り難迷惑なこともある悪気はないのだが、不器用な性格が災いしてか、相手には悪意に取られてしまうそんな些細な繰り返しのなかで、次第に人間関係に亀裂が生じ始めてしまう人の気持ちを考えない心無い仕打ち人間が人間を傷つけ、陥れるそして、自分がしてしまった事の重大さを知り、後悔するなんて人間は愚かで、そして残酷な生き物なのだろうか人間の醜い部分を見せつけられ、胸が締め付けられる息苦しい思いをしながら、舞台を観ていた主演を務めた加藤成亮氏は、難しい役所でありながらも、等身大の青年を熱演つねに張り詰めていて、どこか陰を感じさせる男を巧みに演じていた特に、ラストの、本水を使用した噴水にびしょ濡れになりながら薬を呷る、悲しみと絶望に打ちひしがれた表情が真に迫っていて、自分の感情は激しく揺さぶられたかっこよくて、頭も賢くて、演技も上手いだなんて、天は二物どころか、たくさん与えるんだねその他のセミナーの若者たちも、それぞれのキャラクターが活きていて、若さゆえの溌剌さ、未熟さが溢れていて、作品に活力を与えているそして助教授役を務めた賀来千香子氏が安定した演技で魅せ、舞台に厚みを加えていた賀来氏、細身でスラッとしていて、スタイルよかったなぁ…結局のところ、彼は何に追いつめられたのだろうか?様々な要因はあるものの、最終的には自分自身に追いつめられてしまったのではないだろうか自分に厳しいことは必要であるしかしながら、自分のことは自分自身が労わってあげないといけない胸の内に秘めたる苦しみや悲しみは、他の誰でもない自分自身が一番知っているのだからこの作品、難しい作品なのだが、観終わったあとに、かなり苦味が強い余韻を引き摺るローレンという青年の生き様には、多少なり自分と似ている部分がある彼の姿に自分を重ね合わせて、彼の視点に立って舞台を観ていたからだろう自分らしく生きるということそれが、果たして正しいのかそのことを痛感させられた舞台だった舞台『SEMINAR―セミナー』東京グローブ座5月17日(火)~6月3日(水)まで出演/ローレン…加藤成亮/ハンナ…加藤夏希/グレチェン…賀来千香子/ジェイソン…中村倫也/テス…安藤聖/ミッシー…田畑亜弥/パトリック…上口耕平
2009年05月19日
歌舞伎座さよなら公演『五月大歌舞伎』自分が観る夜の部は、4つの演目を上演する近松門左衛門作の『恋湊博多諷』、清元の舞踊『夕立』、心温まる佳品『神田ばやし』、華麗な舞踊劇『鴛鴦襖恋睦』途中何度かの休憩を挟みながら、終演まで5時間弱という、とてもボリュームのある構成となっている人生初の歌舞伎鑑賞の作品は『恋湊博多諷(こいみなと はかたのひとふし』毛剃九右衛門が持ち主である船に乗り合わせた小松屋宗七ふとしたきっかけから、毛剃たちが密貿易の悪行を働いていることを感づいてしまった宗七は、口封じのために海に突き落とされてしまうところは変わって、博多の郭九死に一生を得た宗七は、恋仲の小女郎と再会を果たす何としても宗七と一緒になりたい小女郎は、自分の馴染みの客に金策を頼むことにし、宗七とその馴染み客を引き合わせるところがその馴染みの客という男の顔を見て、宗七は驚くその男とは、自分を海に突き落とした毛剃だったのだ…(公演チラシより引用抜粋)さてさて、肝心の舞台だが…?????やはりセリフが独特の言葉なので、何を言っているのかさっぱり分からない耳にすんなりと言葉は入ってくるのだが、それを現代風に訳す力を自分は持ち合わせていないのだだからといって、作品から置いてけぼりを喰っているわけではないチラシや公演の粗筋を読んで、物語の内容はある程度頭に入っているし、近松門左衛門の作品はなかなか劇的な展開が繰り広げられて引き込まれるものがあるだから、“こんなこと言ってるんだろうなぁ…”と、一人勝手に解釈言葉が理解できなくとも、舞台を観ていれば、なんとなくは分かるものであるあくまでも、なんとな~くね名優でもある市川團十郎氏や坂田藤十郎氏が要所要所でキメると、客席から、「成田屋!」「山城屋!」という掛け声が威勢よく飛ぶそれを聞いて、あぁ…歌舞伎っぽいなぁ…と、歌舞伎独特の空間に一人酔いしれるそれと、歌舞伎の舞台は実に独特で、裏方さんが堂々と舞台上に登場するのが面白い全身を黒い衣裳に身を包んだ黒子さんや、小道具を渡したり早替えなどをサポートする介添の人歩く音やミエを切るときの効果音を出すための“ツケ打ち”と呼ばれる人など、歌舞伎役者だけではなく、様々な人たちが舞台を彩る作品を楽しむと言うよりも、歌舞伎の雰囲気を楽しんだだからこそか、退屈知らずで、あっと言う間に時間は過ぎていった1つ目の演目が終わると、30分間の休憩客席を見渡すと、皆弁当を広げているようなので、自分も広げることにした劇場に入る前に、隣の弁当屋で買ってきたのは、ぎんざ日乃出の“あけぼの”海老やサーモンといった小さな手まり寿司などが入った、可愛らしいお弁当である食欲が旺盛ではない自分には、これぐらいの大きさが丁度いい普段あまり口にしない煮物や山菜、鳥の照焼きなど、雰囲気に飲み込まれているせいか、美味しくいただいた舞台観て、弁当食べて…なんかね、自分なりに歌舞伎鑑賞を満喫しています清元の舞踊『夕立』は、申し訳ないがところどころで眠気を誘われてしまった『神田ばやし』は、無くなったお金の騒動のなか、疑われた優男をめぐっての心温まる作品市川海老蔵氏がのらりくらりとしたハッキリしない男を演じているのだが、勇ましいイメージを抱いている自分としては、少々物足りなさを感じてしまった3つ目の演目が終わると、ここで25分間の休憩が入ったさきほどの長い休憩のときは、お弁当を食べただけで終わってしまったので、この休憩時間を利用して、歌舞伎座を探索することにした劇場内には、食堂はもちろんのこと、甘味処など、いくつかのお店が入っているまた、お土産も充実していて、舞台写真や手拭いなどといった歌舞伎に関連したものから、櫛などの和装小物、菓子に煎餅、和菓子、地方の名産品など、色々なものが取り揃っているその数々のお土産目当てに、休憩時間ともなると、大勢の観客で賑わうそんななかに揉まれていると、劇場の中に居ることを忘れてしまいそうになる劇場の壁には、歴代の名優たちの写真が飾られていたり、歴史的建造物を見て回るだけでも興味深いものがあるが、お店など色々と見所は沢山あって、あっと言う間に休憩時間は経ってしまったいやぁ…歌舞伎座って面白い!大人たちが喜ぶ玉手箱って感じ初めて来たけれど、この空間好きだなぁさて、夜の部最後の演目は『鴛鴦襖恋睦(おしのふすま こいのむつごと)』殺された鴛鴦が、その恨み重なる思いから化けて出る舞踊劇市川海老蔵氏、尾上菊之助氏、尾上松緑氏の華も実力も備えた若手3人が演じる長唄、常磐津と、独特のテンポのせいか、これまた、うつらうつらと眠気に誘われてしまうが、後半になって目が覚めた着物から、鴛鴦の羽を描いたような鮮やかな衣裳への早替わり舞台上で繰り広げられた、見事なまでのその華麗な技は実に見事だったこうして、初めての歌舞伎鑑賞は終わった劇場を出たのは、21時過ぎ正味5時間弱という時間ではあったが、まったくその長さを感じることは無かった正直言って、歌舞伎の台詞は、何を言っているのかわからない平坦な場面が続くと、眠くもなるやはり、何の知識も持っていないと歌舞伎は難しいしかしながら、決して退屈ではなかった難しいし、眠くもなるのに、こんな感想を持つとは自分でも意外きっと、見るものすべてが新鮮に映ったからだろう初めて覗いた歌舞伎は、とっても興味深い世界だった歌舞伎に惹かれたのか?いや、この歌舞伎座という空間に漂う独特の雰囲気に惹かれたのだろう機会があったら、是非また、この歌舞伎座で歌舞伎を観てみたいと思った歌舞伎座さよなら公演『五月大歌舞伎』5月2日(土)~26日(火)まで夜の部演目…恋湊博多諷/夕立/神田ばやし/鴛鴦襖恋睦出演/市川團十郎/尾上菊五郎/坂田藤十郎/坂東三津五郎/市川海老蔵/尾上菊之助/尾上松緑 ほか
2009年05月16日
今日は密かに期待していた舞台を観劇Bunkamura20周年記念企画『雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた』かつて、日本海に沿った小さな都市に一瞬の光芒を放って消えた幻の少女歌劇団があった…少女歌劇団の復活に向けて、熱い想いを抱えて再び集結する女たちその再会を支える男たちそして、残酷なほど生命力に溢れた若者たち詩的な台詞で登場人物たちの哀愁とユーモアが陰影鮮やかに浮かび上がる美しく過激に、ノスタルジックで闘争的に、魂を揺さぶる名作が鮮烈に蘇る!!(公演チラシより引用抜粋)この作品は、1982年に日生劇場にて淡島千景氏主演で上演されたものの再演作品の内容が面白そうだったし、個性的な役者さんが集結したので、観劇する日をとても楽しみにしていたのである30年以上前、空襲により歌劇団が消滅した事実を受け入れられず、未だゴールデンコンビと言われていた相手役の男役トップスター・弥生俊を待ち続ける、歌劇団の名花と呼ばれた風吹景子彼女を軸に物語は進んでいくこの風吹景子を演じる三田和代氏の演技がとにかく素晴らしい空襲のショックで精神が病んでしまっている役どころなのだが、現実と夢の世界を行き来する女性を声色などを用いて、少女のように可愛らしく、ときには傲慢な女性と、実に巧みに演じ切っているこの作品の主役は風吹景子なのでは?と思ったほど石楠花少女歌劇団の熱狂的なファンだった新村をはじめとする紳士たちは、新聞記事で劇団員を再結集させることに成功し、「ロミオとジュリエット」の公演を実現させるために尽力をあげる滑稽なことに懸命になっている大人たちを理解することができず、軽蔑の眼差しを送っていた若者たちも、何かに取り憑かれたかのようにして次第にその世界観に惹かれていく物事は順調に進められていくように思われたが、その裏側では、人々の思惑や悲しみが大きな渦を巻いていた様々な人間関係が浮き彫りになるにつれ、謎に満ちた展開となっていく物語がどんどんと盛り上がっていくなかで、ラストは思いもよらぬ結末を迎えてしまう正直言って、唐突なその展開に呆然としてしまった劇中、“ロミオとジュリエット”の台詞が随所に散りばめられているが、ラストシーンも、まるでロミオとジュリエットの結末に擬えたかのようになっているのだ折角トップスターだった二人は、長い年月を経てようやく再会を果たせたというのに、なぜそのような選択肢を選んでしまったのか再会をしてしまったがゆえに、心に閊えていた箍がはずれてしまったのだろうかもしかしたら、老いという厳しい現実を突きつけられるなか、幸福の絶頂のなかでいつまでも輝き続けることを望んだのかもしれないと、舞台を観て、自分なりの解釈をしてみたところが、ラストで、「自分の歌を歌え!」と叫びながら、激しく踊り狂っての幕切れシーンだけは、一体何を訴えたいのか、自分の頭ではどうにもこうにも理解することができず、最後の最後で不完全燃焼になってしまい、作品の世界観から取り残されてしまったその激しくも強いメッセージ性をどう受け止めていいのか自分にはわからなかったが、何か突き動かされるものを感じ取ったことだけは確かであるあ!それから、ウエンツ瑛士氏の女装姿!とっても似合っていたけれど、なんで女装になる必要があったのかな?しかも2幕の間ずっと、長い髪の毛の鬘に白いワンピース姿で、カーテンコールの挨拶のときも女装のまま…ある意味、この作品のなかで、それが一番強烈に自分の記憶にインプットされたBunkamura20周年記念企画シアターコクーン・オンレパートリー2009『雨の夏、三十人のジュリエットが還ってきた』5月6日(水)~30日(土)まで出演/弥生俊…鳳蘭/風吹景子…三田和代/新村久…古谷一行/弥生理恵…真琴つばさ/北村次郎…ウエンツ瑛士/加納夏子…中川安奈/直江津沙織…毬谷友子/坪田英次郎…磯部勉/畑米八…石井愃一/六角始…山本龍二/北村英一…横田栄司 ほか
2009年05月12日
今日は、暖かいというよりも、なんだか暑いジャケットを羽織っているんだけれど、歩いているだけで、額にうっすらと汗が滲んでくるそんな夏を思わせるような陽気のなか向かったのは、日比谷にある日生劇場本日初日を迎えた舞台『赤い城 黒い砂』を観劇します親友であった二人が一人の女を巡り、争い、奪い合う!愛憎、憎しみ、嫉妬、欲、プライド…人間が生まれながらにして持つ様々な業が複雑に絡み合い、やがて三人は荒れ狂う運命に引きずり込まれていく!(公演チラシより)シェイクスピアの幻の名作「二人の貴公子」を大胆にアレンジしたという作品ところどころに、いかにもシェイクスピアらしい台詞回しが出てきたが、物語自体はとても分かりやすい展開だった広大な草原の領地をめぐり、絶えず戦争を繰り返している、赤い国と黒い国黒い国で“黒い国の獅子”と謳われる二人の英雄が、敵対する赤い国の王女に出会ったことから、運命が傾き始める舞台では、二つの国の終わることない争いを軸に、私欲、愛欲、利欲と、人間たちのさまざまな強欲が描かれている怒り、憎悪、嫉妬、陰謀、絶望…嘆き、苦しみ、哀しみ…地を這うようなねっとりとした感情が渦巻く夢も希望もない話の展開に、少々食傷気味というのも、ドラマチックな内容ではあるのだが、良くも悪くも、まとまりすぎているように感じたのであるそれゆえに、安定して見てはいられるものの、ハラハラもドキドキもしないので、ただただ人間の強欲さを見せつけられている気がして、お腹がいっぱいになってしまった感情を内に秘めた片岡愛之助氏、その反対に感情を剥き出しにする中村獅童氏根本的には同じ匂いを持ちながらも、相反する性格の二人の男を両氏は巧みに演じたそして、今回の舞台で、特に存在が際立っていたのは、赤い国の王女を演じた黒木メイサ氏抜群のスタイルなので、立ち振る舞いがとにかく映える男勝りで勇敢な姿は、頼もしいかぎり男臭い世界観のなかで、綺羅星のごとく輝き、堂々と渡り合っていた“なぜ闘うのか”“なぜ愛するのか”“なぜ憎むのか”物語のラストで、嘆くように吐かれるセリフ我が欲を満たすために取った行動が、あまりにも皮肉な顛末を迎えることとなってしまっただけに、深く深く胸に響いたほんと、なぜ人は闘うのだろうなぜ、人は憎しむのだろう人間に“欲”というものが付きまとう限り、仕方のないことなのかもしれない日生劇場4月公演『赤い城 黒い砂』4月11日(土)~26日(日)まで出演/ジンク…片岡愛之助/カタリ…中村獅童/ナジャ…黒木メイサ/クジャ王…中山仁/牢番の娘ココ…南沢奈央/カイナ…馬渕英理可/武器商人モト…中嶋しゅう/牢番ヨム…田口守 ほか
2009年04月11日
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