雨がしずかに降る日には
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「浅き川も深く渡れ」この言葉は、星野道夫さんが小学校の卒業文集に寄せた言葉だそうです。千葉県市川市というから、決して自然に囲まれたところで育ったわけではないと思うのですがたった12歳の少年が、どうしてこんな言葉を紡ぎ出せたのでしょうか。色んな解釈の出来る言葉ですよね?浅く、簡単に渡れる川が目の前にあり、とっとと先に進むために飛び越えてゆく人もいる。けれど、その浅き川にも目を凝らしてみれば、あらゆるものの発見がある。目の前にあるものを簡単に見過ごしていては、自分にとってとても大きな糧になることさえ、見逃してしまうかもしれない。渡ることが目的なのではなくて、渡ること、その中にあることが大切なものなのだ、という解釈をしてみました。写真展では、写真の横に1行ないし、2、3行の短い言葉がプレートに刻まれていました。それは、星野さんがアラスカにいたときに書いていた日記の中から抜粋したものだそうです。その中にある言葉です。「最後に意味をもつのは、結果ではなく、過ごしてしまった、かけがえのないその時間である」「浅き川も深く渡る」というその心はずっと変わらずに星野さんの心の中にあったのだろうな、と思い、それはとてつもなくすごいことのように思えます。いつもぶれて真の見失い、揺れ動きがちな心を持つ私にとっては。どう言葉に表していいのか私にはよくわかりませんが、星野さんの言葉はひとつひとつとても心に熱く、優しく、温かくくいこんでくる言葉を残しています。また、こういう言葉がありました。「人は生きているがぎり、夢に向かって進んでゆく。夢は完結することはない。しかし、たとえこころざし半ばに倒れたとしても、もしそのときまで全力をつくして走りきったならば、そ人の一生は完結しうるのではないか」星野さんは、43才の若さにして亡くなられました。テレビ局のロケ中、ひとり寝泊りしていたテントでヒグマに襲われてしまったのです。まだ、星野直子夫人と結婚して3年目のことです。私はその当時星野道夫さんという人を知りませんでしたが、多くの人が悲しみ、惜しんだことでしょう。初めて星野さんの写真を見て、そのあとでもう事故で亡くなられた、ということを知ったときは私も何とも言えず、残念で、そして野生の動物を見つめ続けながら、その野生動物によって亡くなったことは、星野さんにとってどんな思いが残されたのだろうか、と考えていました。本当のことは、もちろんわかりません。でも、この言葉を見たときに、きっと、星野さんは確かに生き抜いて、一片の後悔もなくこの世を去ったのではないだろうか、と私は思いました。数々の写真を見て、星野さんはどこまでも「切に生きた」方だったように思います。こんなにもたくさんの写真と、言葉を残してくれたことに感謝してやみません。沢山の人たちの心を動かす写真と言葉を。「大切なことは、出発することだった」「風こそは、信じ難いほどやわらかい真の化石だ」「寒いことが、人の気持ちを暖めるんだ。離れていることが、人と人とを近づけるんだ」「木も、岩も、月も、あらゆるものがたましいをもってわたしたちを見つめている」「ほおをなでてゆく風が、移ろいゆく人の一生の不確かさを告げていた。思いわずらうな。心のままに進めと・・・・・・」「人と出会い、その人間を好きになればなるほど、風景は広がりと深さをもってきます。やはり世界は無限の広がりを内包していると思いたいものです」「自然は時折、物語を持った風景を見せてくれる。いやそうではなくきっと、僕たちをとりまく風景はすべて物語に満ちているのかもしれない。ただ、人間にそのパズルが読めないだけなのだ」写真家であり、文章家でもあった星野さん。たくさんの著書の中にはこのような言葉がたくさん寄せられています。すぐれた文章家としての星野さんの仕事をとらえ直すため、写真を一切載せていない本があります。「星野道夫著作集1~5」たった3年の結婚生活だったそうですが、直子夫人から見た星野道夫という人も、とても興味深いものがあります。ku:nelの創刊2号に紹介されているのですが、直子さんの言葉を読むうちに、本当に心根の優しい方だったと思います。早くアラスカにねじめるようにと、危険の少ない場所を選び、直子さんが好きな花のたくさん咲いている場所に連れて行ってくれたといいます。そして、一緒に旅をして撮影現場に立ち会ったときには、ふたりでおしゃべりをして散策していても光の具合や動物の位置どりなど条件がそろった瞬間、ぱっと人が変わり、ひと言も口をきかないし呼吸もしていないのではと思えるほどに集中し、無事に撮影が終わるとまた元に戻って、「ねえねえ、きれいだよ、ちょっとファインダーのぞいてみる?」と言ったり。お二人の素敵な関係を、もっと知ってみたいとも思いました。共著の本もあるそうです。星野道夫と見た風景書き始めたら止まらなくなってしまいましたが、今回の写真展で私は星野さんの写真に、言葉にとらわれて会場で買った分厚いカタログを何度も読み返しています。もし機会があったら、写真集ではなく、写真展に行かれることを強く!おすすめします。本当に、とっても素敵ですよ♪
2007.09.22
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