Over The Moon.

Over The Moon.

2007年12月18日
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カテゴリ: *能関係の日記*
師匠(仕舞)「今日の番組は凄いよね」

自分の出番が来るまでに
他大学の卒業仕舞を観る。

師匠「『鳥追』とか。俺でも舞えないし」


誰であれ
最後の仕舞となると、曲選びにも気合いが入るもので
番組後半のラインナップは、難曲珍曲が並んでいる。

「声をしるべに出で船の」

長刀の仕舞、『船弁慶キリ』。



謎の仕舞、『善知鳥(うとう。読めない普通・・・)』。

「今日の修羅の敵は誰そ」

鴨くんと同じ『八島』もある。


とにかく観ていて思うのは
誰もがその仕舞に思い入れを持ち、
誰もが最高の気迫を持って挑んでいるということだ。

この一人ひとりの舞台の裏に
それぞれの努力と苦労があったのだろう。


能は勝ち負けではないけれど
負けてはいられない。



師匠「そろったね」




切戸のところに
シテと地謡4人が集まる。


師匠「俺はいつものように見所で観てるから。頑張って」

鴨くん「はい」


師匠が去り

湯気出てんじゃないかと思うくらい。

・・・でも緊張してるな絶対。


てか、ああやばい、
私も緊張してきた。

緊張するとあまりいい方向にはならない。
深呼吸して、
平常心、平常心・・・


鴨くん「・・・それじゃあ」

ふうっ、と
息を吐いて

鴨くん「いいですか」

周りを見回す。

私「はい」

鴨くん「では」


「「よろしくお願」」

ごつっ


鴨くん「・・・」 私「・・・」


頭ぶつけるとか漫画だよ!


私「・・・ははっ」

鴨くん「ちょっと笑わないでくださいよ(笑)。
    もう一回」

私「はい」


「「「よろしくお願いします」」」



まあでも
頭をぶつけたせいで
変な気負いが取れて、舞台に上がれたのは事実。



「今日の修羅の敵は誰そ」

仕舞『八島』。
シテは源義経。

「何能登の守 教経とや」

このシテ謡の気合いはおそらく

「あら物々しや手並は知りぬ」

今日の全仕舞の中で、一番こもっていただろう。
修羅物という仕舞の性格はあるだろうけれど
その声は、能楽堂全体にとどろいている。

「思いぞ出づる 壇の浦の」

だから地も

地「その船戦今ははや」

それに見合うだけの気合いをもって謡う。


当たり前だけど
この4年間で、一番よく後ろから仕舞を観たのは
鴨くんの仕舞だ。

それは一種誇らしくもあり
少々もったいなくもある。
大事な舞台は、いつも正面から観ることが出来ないから。

・・・きっと凄いんだろうなぁ。
いろんな意味で。


地「月に白むは」

シテとの掛け合い。

「剣の光」

地「潮にうつるは」

「兜の」

シテの体が
ぐっと沈んで

「星の影」

強い拍子ひとつ。
身を起こして隅へ、刀になった扇を振り上げ

地「水やそらそら
  ゆくもまた雲の波の」

波を斬りつけるような型。
勇ましく、それでいて
穏やかな海のイメージ。


地の謡いようによっては
いくらでも荒い雰囲気に出来てしまうけれど
ここはきっと、そんなに荒いところではないのだ。

だってやがて

「浮き沈むとせしほどに」

この合戦は、修羅物によくあることながら
夜の夢の幻として

「春の夜の波より明けて」

夜明けとともに消えていくのだから。


「敵と見えしは群れいるかもめ」

かもめは
見えるだろうか。

「ときの声と聞こえしは
 浦風なりけり高松の」

浦風は聞こえているだろうか。
聞こえていてほしい。

「高松の朝嵐とぞなりにける・・・」



舞台からひっこむと
師匠が早足で来られて

師匠「いやー、鴨くん
   もう悔いないでしょう」

鴨くんは
肩で息をしながら

鴨くん「はい」

答える。
興奮冷めやらぬ状態。


師匠「次は『天鼓』だからね。
   3回くらい深呼吸して、落ち着いて謡ってね。
   全然違う雰囲気の仕舞だから。
   荒くなったらぶちこわしだから」

私「はい」


言われたとおりに深呼吸をする。
高ぶっていた気を静める。


師匠「シテ謡、最初は下だから」

私「はい」

師匠「地も落ち着いてね」

鴨くん「はい」


そして師匠が見所に戻られて
再び改めて
見回す。

もう一度深呼吸。


私「では」


今度は私の
現役最後の仕舞。



「「「よろしくお願いします」」」




→その4につづく。





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Last updated  2007年12月25日 18時33分52秒
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