Over The Moon.

Over The Moon.

2010年09月20日
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カテゴリ: *能関係の日記*
<→ その1 のつづき。>

始曲は恒例の
全体連吟『鶴亀』。

希望者50人ぐらいが舞台に並び、
私も声出しがてら、隅っこに入る。
ちょうど自分の舞囃子と同じ曲でもあるし。


「それ青陽の春になれば・・・」

私の舞囃子の


「千代のためしの数々に~」

自分のシテ謡だと思って謡う。
出番前に、思いっきり声を出せるのは有り難い。


それから現役の仕舞を見て、
連吟『紅葉狩』に混じって
楽屋で一息ついていると

女の先生「猫さん(仮名)の鞄ってどれかしら」

今ちょうど、猫さんの装束付けをされている先生が
楽屋に顔を出される。

私「あ、えーと、これです」

女の先生「タオルがあるみたいなんだけど・・・どこかなぁ」



そこへ藤色の装束をつけた猫さんが顔を出す。
うおー、きれい。
これだけ間近で見ると、やっぱ装束って迫力が違う。
(猫さんが「 いつか装束つけてみたい 」と


私「もうすぐですね」

猫さん「最初の『いつわりか~』さえ謡えれば
  あとは何とかなる気がするんですけど」

最初の一句って、すごく大切で難しいものだしな。

私「頑張ってください!」
猫さん「はい」



本日の番組内でひとつの山場、
半能『藤』だ。



熊さん(仮名)「猫さんは
 五月さんの3~4倍は稽古してるから」

と、熊さんが仰る通り
仕事帰りの深夜にBOXに行って
夜な夜な『藤』を稽古されたというのは
ほんと、尊敬する稽古っぷりだ。

それを知ってる人も、知らない人も
半能(※能の曲を、装束を着けて半分だけやること)が出るのだから
期待しないわけにはいかない。


見所には、人がぎっしり。

そわそわと観客が待つ中
高い笛が鳴る。



ワキ「山また山をはるばると・・・」

登場したワキが、普通に最初の句を謡い出す。
地取り(※最初のワキの謡を地が繰り返す謡)も普通にあって
なんだ、普通に始まるのかと思ったら

ワキ「霞む夜の・・・」

一気に後半の、待謡へ。


幕が開き
藤色の衣の、藤の精が出てくる。

その、緊張感の後に続くのは


シテ「いつわりか・・・」


ふんわり、穏やかな雰囲気。


申し合わせのとき

猫さん「シテの面、すごくいい顔してますよね」

初めて面に対面した猫さんはそう言って
凄く嬉しそうだった。

猫さん「いいなぁ・・・悩みとかなさそうで」


藤が純粋に好きな、藤の精。
ぽってりと優美な顔は
見ていると、のどかな気持ちにさせられる。


女性がシテの、三番目物は難しいと言われているけれど
三番目物を多くこなしている猫さんだから
細かなハコビ、柔らかな型は、板についている感じがある。

ぽーっと観ていて
シテが途中の足拍子を外し
後見の位置に座られた師匠から、別の足拍子が聞こえてきたときは
ちょっと現実に引き戻されたけれど

終始『藤』という曲の、柔らかな雰囲気が
たゆたゆと流れていたように思う。


・・・いやほんと
面をつけて、装束つけて
稽古通り舞うだけでも、ホンマすごい。


地「梢に青葉や 残るらん・・・」


シテが幕の向こうに消えてゆき
拍手が見所を包む。


すーっと終わった、という感じ。


『藤』とか、つかみ所はない曲だけれど
「ふんわり」「穏やか」「ゆったり」といった
観た後に純粋な空気感が残っている気がする。

ちょっと別の世界に連れて行かれたような、その感覚は
今の現実世界じゃあなかなか味わえない、贅沢な経験だ。


『藤』が終わったということは
もうしばらくすると、
私の出番。


私は、今日観てくださる方々に
何かを残すことが出来るのだろうか。



まーそんな小難しいこと考えるよりかは
そんな高いレベルにあるわけでもなし
最後にもっかい、おさらいでもすることこそ、肝要なれ。


しっかりきっちり稽古して
その成果を出す。

今の私に出来ることといえば
多分、それに尽きるのだ。



その3 につづく。>





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Last updated  2010年09月26日 23時39分07秒コメント(0) | コメントを書く
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