地中熱を利用し、省エネルギーに貢献するという考えが最近よく聞かれます。考え方自体は1912年にスイスにおいて地盤の熱をヒートポンプの熱源として利用する考えが出ていたようで、ヨーロッパなどでは20年ほど前から急速に普及してきているようです。
冷暖房等の建築設備は、快適性と設置費用、光熱費のバランスを考えながら、現実的な設備を提案しなければならないと常々思っているが、地中熱の場合、設置費用が嵩み、一般的な建物での導入は難しいのが現実です。当たり前のことかもしれませんが、「省エネ」とは、ただ単に「省エネ」が求められることは実は少なく、実際には「省コスト」が求められていることに注意しなければなりません。例えば、ハイブリッドカーが1000万円だとすれば、今ほどハイブリッドカーが普及しているでしょうか?ガソリン車に比べ、ちょっと高いくらいで、ガソリン代が節約できると考えると、通勤や、社用に使う人の場合、1年で元が取れるとか、2年で元が取れるとか、考えて導入しているのではないでしょうか?省エネ技術も同じだと思います。「地球にやさしい」という事だけではなく、光熱費が安くなり「何年で元が取れる」という感覚が大切と考えます。
さて、話を地中熱利用に戻すと、地中熱を利用するためには、地中に穴を掘り、その穴に配管を通し、配管の中を通る冷媒を通して、地中の温度と熱交換をすることになります。
その、穴を掘るのが、非常に高いのです。住宅1軒分の冷暖房をする場合、大体100mの深さの孔を掘らなければなりません。穴を1m掘るのに1万円~3万円かかりますので、100万円~300万円掛かります。どうですか?電気代を節約したいがために地中熱利用をする。→そのために穴を掘る→その値段が100万円以上!!!!
地中熱を利用しても、光熱費は0円にはなりません。冷暖房費が30%程度安くなるだけです(それでもすごいのですが)。2万円/月かかっていた冷暖房費が、6000円/月、程度安くなる程度。しかも夏と冬だけですから、半年分として、12万円/年安くなる程度ですので、最低でも元を取るのに約10年かかる計算です。実は、10年で元が取れるのは、建築の中では悪い方ではありません。太陽電池も、補助金が無くて買電価格32円/kWh(2014年 東京電力管内)で買ってくれた場合で13年程度で元が取れるので、地中熱利用と太陽電池利用は、今のところ、同じくらいに「現実的」な省エネ技術と考えて良いのかもしれません。
しかし、もっと良い方法があります。それは、穴を掘らずに地中熱を利用する方法です。東京でも、墨田、江東、江戸川、葛飾、中央区(関東平野は利根川の三角州なので、東京湾沿岸は似たような地盤です)などは地盤が悪いので、ある一定規模以上の建物を建てる際は杭が必要になります。コンクリート造の建物の場合、1億円程度の建物でも1000万円程度の杭工事費がかかってしまいます。実は、この杭を地中熱の利用に活用することが可能なのです。
墨田区に建設した事例を紹介したいと思います。この建物は、都市型ケアハウスと言って、高齢者が住む共同住宅で、80坪程度の狭小地でも、建てることができる、高齢者施設の中では、コンパクトな施設になります。年金等で生活されている高齢者のための住宅なので、家賃はあまり高くすることはできませんし、建設費も通常より高くすることはできません。そんな中、光熱費も安くするために地中熱利用を採用することにしました。写真のような杭を利用して、採熱用の配管を地中に埋め込みました。
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