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左は空気(エアロゾル感染)、右はウィルス不活化のイメージ 2021年1月11日 新型コロナの感染者が、東京で1219人になりました。 感染には、細菌やウィルスが、飛沫によって感染をおこす「空気感染」、接触による感染「接触感染」、空気による感染「空気感染」があります。 これらの感染のなかでも、空気感染については、触れてもいないのに感染することから、非常に注意が必要な感染症です。注意が必要と言われても空気中をウイルスが漂っているのですから、注意のしようもありません。 コロナウィルスもそうだと思いますが、ウィルスの飛沫核は非常に小さいので、空気中を漂って、宿主から周囲に感染が広がります。 コロナウィルスについては、エアロゾル感染と言われているようですが、空気感染の一種と考えて良いでしょう。医療施設の場合、空気感染対策は、感染者を陰圧管理された部屋に入れて、汚染された空気が周囲に漏れないようにします。 しかし、日常の空間では、陰圧管理など、できるわけがないですし、そもそも、誰が感染者かわからない状態で多くの人が同じ空間にいるのですから、手の打ちようがありません。 感染が広がらないように、ワクチンの普及が待たれるところですが、環境整備の点で、できることはないのでしょうか? 出来ることは、空気の流れを抑えることでウィルスの拡散を防ぎ、床や壁、家具に落ちたウイルスを不活化させることになります。 空気の流れを抑える方法としては、「エアコンのような対流を起こすような空調を控える」こと。そして、ウィルスを不活化させるには、床や、壁、家具に抗ウイルス性を持たせることで可能になります。 こういった空気感染対策は、コロナウィルスに対する対応に限らず、SARS、MARS、季節性のウィルス対策にも有効です。これからは、こうった感染対策も考えた環境整備の視点が必要になるのではと考えます。 かなや設計 環境建築家 金谷直政 http://www.k-sekiei.net
2021年01月11日
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まず、たてものの耐震性について、覚えておいてほしいことがあります。 それは「その建物がいつできたか?正確に言うと確認申請をいつ出したか?」 ということです。 建物の強度は、幾度となく起こった地震の経験から、少しづつ基準が強化されてきました。特に、1981年(昭和56年)の6月に改正された基準が現行の耐震基準に近い強度となります。 この年より前に建てられた建物は、現行の耐震基準を有しておらず、大きな地震、ごくまれ(数百年に一度発生する地震)に発生する地震に遭遇した場合倒壊する可能性が高いのです。反対に1981年以降に建てられた建物はこのような地震がきても倒壊することはまずありません。地震の大きさと建物の安全性[金箱構造設計事務所] ですから、1981年という数字を是非覚えておくと良いと思います。 建物を借りるとき、不動産やさんが説明する重要事項説明の中で、建物の建築年を説明してもらいますが、どれだけの人が、その年が持つ重要性に気付いているのでしょうか? むしろ、外装や内装の新しさに目を奪われ、築年数の裏に隠されている脆弱な骨組みのことは意識しないのではないでしょうか? 熊本の地震では、1981年以前に建てられたアパートの外装と内装がきれいにリフォームされ、新築と見まごう仕上げとなっていました。そんなアパートが崩れ学生が3人も亡くなったのです。 大家さんの立場で考えてください。目に見えない構造にお金をかけるより、仕上げをきれいにし、WIFIを完備した方が、手っ取り早く、安く、入居者を引き付けることができるのです。投資効果が高いと考える大家さんが多いのが現実です。 これは、ある意味、殺人に近い行為だと思います。きれいな外見のアパートに安く住んでいると、大きな地震がきて、あっさり崩れて死んでしまう人は、まるで。食虫植物につかまる虫、罠にかかる動物のようです。「安い」「キレイ」「風情がある」という魅力の裏には危険が潜んでいることを知っておかなければなりません。特に、経験の少ない若い学生には、周りの大人が気づいて、危険なアパートには住まわせないよう気を付けたいものです。 かなや設計 環境建築家 金谷直政
2019年12月16日
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"京島ゆずテラス" の現場の紹介動画をUPします。動画の初めの方では、名称の「ゆず」の由来を、後の方では「テラス」の由来を説明しています。https://youtu.be/R_KDQdQN0sMかなや設計 環境建築家 金谷直政
2019年11月10日
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最上階のコンクリート打設の前に、配筋(はいきん)工事が進んでいます。コンクリートは打設されると、配筋の様子も確認できないし、間違っていてもやり直しができません。その配筋を現場監督がチェックし、更に設計事務所が確認させてもらいます。・かぶり厚さ(型枠と鉄筋の距離が適正か)・鉄筋の種類(太さがあっているか)・定着長さ(太さの何倍が確保されているか)などを確認します。まるで鉄の編み物のような細かい作業です。ですから、熟練の職人が細心の注意を払い組んでいきます。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2019年11月04日
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京島に建設中の「京島ゆずテラス」東京の墨田区北部は、低層の木造建物が密集している典型的な下町です。ここに19室のシェアハウスを建設中です。この辺りは昭和の時代は町工場が多く、1階が工場、2階が住宅という建物が多かったです。この敷地も、そのような建物が建っていましたが、工場は閉鎖され、2階に親族の方が住んでいました。1階が工場のため壁が少なく、耐震性に不安があり、住み続けるのにも不安を感じていたようです。この建物をどのように活用していくか?様々な検討をした結果、シェアハウスに建て替えることにしました。オープンは来年の3月。工事も急ピッチで進んでいます。今までの経緯を含め、メーキングのリアルな報告をしていければと思います。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2019年10月29日
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東京の下町、墨田区京島に建設中のシェアハウス「(仮称)京島テラス」コンクリートの打設の様子です。コンクリートの打設は、後戻りのできない緊張感があります。打設の前には、型枠の組み立て、配筋、配線、配管等の作業を繰り返し、更に設計者や施工者による検査をした後にコンクリートを流し込んでいきます。コンクリートを流し込む作業の前の作業に比べ、コンクリートの打設は、一瞬です。大体朝の9時頃に一台目の生コン車が来て、受け入れの検査を行います。その後、多くの手によって組み上げられた型枠の中にコンクリートを一気に流し込みます。一度流し込まれたコンクリートは、規則にのっとって細かく組まれた鉄筋を覆い隠すように型枠全体に注ぎ込まれ、一度流し込まれると後戻りができません。配筋の間違いがあったとしても、あとは、実際の地震があって、建物が壊れるまで、間違いがあったのかわからなくなってしまいます。ですから、コンクリートの打設の前には、施工者が自主的に行う検査だけではなく、第三者である設計事務所が監理者として、注意深く検査を行う必要が大きくなります。この現場では、パートナーの構造設計事務所の梅沢建築構造研究所のが、毎回配筋検査を行ってくれ、やはり、毎度毎度、指摘事項があり、是正があります。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2019年10月08日
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東京の下町、墨田区京島に建設中のシェアハウス「(仮称)京島テラス」コンクリートの打設を行いました。今回のコンクリートは14台の生コン車打設の予定。地上5階部分の床なので、コンクリートを上部に圧送します。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2019年10月08日
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メゾン・ド・セゾン入口東京の下町に計画していた、賃貸アパートが完成しました。今年の3月にはほぼ完成していたのですが、入口回りのドア、庇、サインなどの制作がようやく終わり、この度、竣工となりました。今回の特徴は何といっても、その立地。東京の下町の中でも特に、狭い道路が入り組んだ地域のドンツキが今回の敷地です。ドンツキは突き当り道路で、通り抜けできない道路です。ここの敷地まで来るのにも何度も曲がり、曲がりながら奥まった道路の一番奥。ドンツキの突き当りの右側が今回の敷地です。敷地は、ドンツキの突き当りの脇道路に面する家の軒先には洗濯もの、路上にはバイク、自転車、上を見上げると電線。道路とは言え4m幅の道路、4mは建築が可能な道路の最小の道路です。初めて、ここに踏み入れた印象は雑然とした感じでした。敷地面積は、15坪の変形敷地で、依頼はアパートを建てたいということでした。もともと建築の資材置き場として貸していましたが、住宅メーカーからアパート経営を進められ検討していたのですが採算が合わないため、私たちに相談にいらっしゃいました。住宅メーカーの提案は、木造2階建ての提案でしたが、私たちは鉄骨3階建ての提案をしました。住宅メーカーの提案は、変形敷地に四角い建物を提案していたため、どうしても無駄が多く、敷地を有効に活用できていなかったようです。敷地を有効に活用する計画私達の提案は、鉄骨造で、平面に斜めの壁を取り入れ、その斜めの壁は、内部のアクセントとなるよう壁紙に色をつけることにしました。こうすることで、2戸しか取れなかった貸室は3戸とすることができ、事業性も格段に高くなりました。意外かもしれませんが、木造の2階建てと、鉄骨の3階建ての建築の坪単価はそれほど変わりません。むしろ、住宅メーカーの坪単価よりも安くなりました。15坪の変形敷地に建ったアパート外壁の色は、道路に面している部分の色をどうするかについて重点的に検討しました。様々な色を検討し、たどり着いたのは赤なのですが、真っ赤ではなく、少しピンクがかった赤。活力を感じる色でありながら、どぎつくなく、主張をしながら少し品を感じる色で、発注者様からも気に入っていただきました。外壁の色の検討また、入居者のターゲーットは若い女性をイメージしていましたので、楽しく、おしゃれな雰囲気になるよう色も含め全体のイメージを考えました。暗闇に浮かび上がるサインかなや設計 環境建築家 金谷直政
2019年08月04日
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34人もの犠牲者を出した。京都アニメーションの火災。前回は、建築基準法の趣旨の解釈を誤ったたではないか?と書きました。では、なぜ、趣旨の解約を誤るようなことが起こるのでしょうか?これを読んでいらっしゃる方が、建築の専門の方であればわかるとは思いますが、一般の方に、建築基準法のややこしさというか?複雑なことはなかなか理解していただけないと思いますので、少し、建築基準法についてお話してみたいと思います。建築基準法は、建築が安全であり、「国民の生命、健康及び財産の保護を図り、、、、」とあるように、安全であるように様々な基準が盛り込まれています。しかし、建物は安全性を高めるだけではなく、使いやすく快適性も求めらることから、安全性と快適性のバランスを取りながら設計をしています。今回で言えば、火災が起きた時の危険から、生命を守るという部分がしっかり機能しなかったために多くの命が失われたことになります。主要構造部が準耐火構造ではない「ロ準耐-2」特に問題なのが建築基準法施行令112条9の条文にある「主要構造部を準耐火構造とし、、、、、、」と準耐火構造より燃えやすく? した場合には、竪穴区画を免除するような言い方になっていたことです。この条文を根拠にすると竪穴区画が免除できてしまいます。ここで、ややこしいのが、この建物が「準耐火建築物」の性能を求められていたとしても「ロ準耐-2」という形式にしてしまうと、「主要構造部が準耐火構造ではない」「準耐火建築物」が可能になってしまうのです。違法か、適法かで言えば適法ということになりますが、何故、この条文ではわざわざ、耐火性を下げた建物にすると竪穴区画を免除するというようなことを言っているのか、理解できません。わかりやすく言うと、建物の構造を火に強いコンクリートにすると竪穴区画を設置しなければならないのに、コンクリートより火に弱い鉄にすると竪穴区画が不要になる。というようなことです。条文では主要構造部を準耐火にしなければ、竪穴区画不要ということですから、例えば階段を鉄製のものから、木製にすれば、やはり竪穴区画が不要になってしまいます。つまり、耐火性を下げると、避難設備を緩和できるという不思議な条文になってしまっているのです。誰かが意図してそうなっているのか、たまたま、条文の組みあ合わせで齟齬ができて、こんな抜け道のようなことになってしまっているのかわかりませんが、不思議です。実際に、私自身、この条文を使い竪穴区画を免除し、オープンな空間を設計したことはありましたが、建物の性格を考え3層吹き抜けの階段には不安を感じ、自主的に区画の扉をつけました。1982年にホテルニュージャパンというホテルで火災があり34名の方がなくなりました。この後、建築基準法だけでは安全性が確認できないということで、建物の種類と規模によっては、防災評定という方法で、専門家が、個別に安全性を確認するというプロセスが出来ました。その成果があってか、その後、一度火災によって大勢の死者がでることはなくなりました。今回、たとえ適法ではあっても、総合的に見て、危険性を予見できる場合には、配慮があってしかるべきだったのではないかと思いました。ただ、むやみに厳しくするのでは、簡単でも、「煙の降下時間」と「避難時間」の比較をし、避難の安全性を確認できるような知見が、審査する側にも、設計する側にもあれば、このようなことにはならなかったのではないかと思います。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2019年07月29日
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4級建築士の金谷です(ほんとは1級です) 多くの報道やサイトでは、「今回の建物の違法性はない」というコメントが多いですが、その根拠は非常にあやふやです。3つの例を挙げると ■消防法上の違法性がないというコメントが多いようですが、建築の火災について、防火区画や排煙に関することは建築基準法です。テレビで「元東京消防庁の○口隆夫」という方が「法律違反はありません」と言っていましたが、これは消防法上のことに限ってだと思います。 ■また、一般の方が、建物の避難ということで、建築基準法の「避難階段」の設置要件を調べて、避難階段の設置は5階縦以上の物件からと考えていますが、これは「避難階段」の設置要件であり、世の中の全ての階段が避難階段により避難するわけではありません。「避難階段」以外の階段でも安全に避難できるようにしなければならないのです。 ■今回の、建築上の問題点は、「防火区画」の内「竪穴区画」(建築基準法施行令112条9)がしっかり確保されていなかったことです。 竪穴区画とは、ざっくり言うと、吹き抜けや階段などで上下階の空気がつながってしまうと、火災時の煙が全体に広がってしまうので、それを防ぐ区画が必要になるということです。 ですから、今回のような3層にまたがる階段の場合は、竪穴区画をつける必要があります。いくつかの緩和規定がありますが、今回はその緩和規定には当たりません。 今回は、この竪穴区画の条文の裏技的解釈により、竪穴区画が免除されていると推察します。 裏技的な解釈とは。この規模の建物だと建物の耐火性能は「準耐火建築物」以上にしなければなりません。しかし「準耐火建築物」の中に「ロ準耐-2」という構造があり、主要構造部を「準耐火構造」より脆弱にすることで竪穴区画を免除できることになる。という解釈が可能になるのです。 これは、知っている人は知っているという裏技的解釈で、一級建築士でも知らない方も多いと思います。 問題の条文は、「竪穴区画」を規定している建築基準法施工例112条9の冒頭で、「主要構造部を準耐火構造とし、かつ、地下又は3階以上の階に居室を有する建築…」とあり、この階段部分を区画せよということなのですが、「主要構造部を準耐火構造」にしなければ区画しなくても良い。と読めてしまいます。ですから、準耐火構造よりも脆弱な耐火性能、例えば不燃程度、にすれば竪穴区画が免除されるという不思議な解釈が導かれてしまうのです。 建築基準法施行令112条9 でも、これは全くおかしな話で、「耐火性を脆弱にすることで避難経路の安全性を低くすることができる」緩和っておかしくありませんか?通常緩和とは、何か他の安全性が確認できるから、条文で必要なものを免除できるとういうのが常識なのではないのでしょうか? 建築基準法のほとんどは仕様規定です。仕様規定とは「こういう場合にこのような措置をしておけば良い。」という取り決めであり、「これだけの火災に危険性があるから、これだけの措置が必要」というような根拠に基づいたものではないのです。 ですから、今回のような裏技てきな法解釈がまかり通り、このような惨事につながったのだと思います。 ただ、法は法なので、裏技とはいえ違法ではないのです。今回のような物件の場合に限らず、趣旨から考えるとおかしい場合などは、合理的な検討が必要と考えます。例えば「煙の降下時間>避難時間」という数式で検証し、避難の安全性を担保するような手順を踏む必要があるのかもしれません。 これが、複雑になりすぎるのは申請業務が冗長になるので歓迎できませんが、少なくとも、確認申請の窓口で対応している担当者(設計者も検査する側も)が、法の趣旨を考えて避難安全の原理を理解したやり取りが必須だと思います。 何故こんな危険な建築が存在していたのか?という疑問の答えは、建築の確認審査の段階で、条文の裏技的な解釈で適合しているし、安全性の趣旨を理解しなかったことが原因と思います。 かなや設計 環境建築家 金谷直政
2019年07月27日
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京都アニメーションは、何故大惨事になったのか? 34名もの犠牲者を出した京都アニメーションの火災。何故、これほどの惨事になったのでしょうか? 報道などから明らかになっている情報では、 建物の概要は、3階建て、延床面積700m2程度、屋上に通じる区画された階段、1階から3階につながる螺旋階段 生存者の証言では、あっという間に、黒い煙が螺旋階段から建物中に広がったとのことです。 螺旋階段は、区画されていなかったので、煙の通り道になってしまったようです。建築基準法では、「防火区画」というのがあって、その中の一つに「竪穴区画」と言うのがあります。これは、上下階を結ぶ階段や吹き抜けがあった場合に、壁、扉やシヤッターなどで区画するといすうものです。 建物の用途や、竪穴の設置場所などにより緩和はあるのですが、今回の螺旋階段については、緩和の理由がありません。 なぜ、この螺旋階段が区画されていないのか?竪穴区画が建築基準法で規定化されたのは1967年ですので、この建物はそれ以降に建てられているとすれば、この螺旋階段は区画されていなければならないはずです。 京都固有の緩和規定があるとも思えません。考えられるのは、 確認検査での判断ミス。 完成後に改修があった 等、でしょうか?そうなると、、この惨事の原因は、放火だけではないかもしれません。 かなや設計 環境建築家 金谷直政
2019年07月26日
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環境建築家の金谷です。東京の下町、墨田区京島で設計事務所をやっています。所員が数名と、ネコがいるこじんまりとした設計事務所です。 最近、アパートの施工不良が巷をにぎわせています。一つはレオパレス21の界壁が無い共同住宅。もう一つは大和ハウスの共同住宅の外部廊下の柱部分の認定不適合です。 レオパレスについては、壁が薄くて音がまる聞こえという話は以前から良く聞いていたので、「やっぱりね~、そだねー」って感じです。隣の住戸との間の界壁が不十分だと、やはり音は良く聞こえてしまいます。レオパレスあるあるですが、宅配便が玄関のチャイムを鳴らすと、同じ階の住民が一斉に、玄関のドアを開ける。という笑い話も聞きますが、本当だとしたら笑い事ではありませんね。 一方、大和ハウスについては、歴史もありますし、あくまでもイメージですが、コンプライアンスもしっかりしていそうで、まさか、そんなことが起こるとは思いませんでした。 また、施工不良ではありませんが、積水ハウスの浜松支店でも、2009年に、確認申請書の副本を偽造したという事件がありました。 なぜ、こんなことがおこるのでしょうか?表題にも書きましたが、このいずれの事例も発注者に対して「設計料が無料」もしくは、非常に安く示されています。それが、どういう事かというと、発注者の立場に立って、建物の出来を確認する専門家が居ないということです。 いづれの場合も、会社という組織が主体となり、技術者を雇い、会社の方針の元、技術者に対して指示しコントロールしています。そういった雇用関係では、本来、施工の間違いを正すべき設計者が、自分の役割をまっとうすることができるのでしょうか? 言いたくは有りませんが、会社の利益に背いて不正を正す設計者は、社内では「技術者は融通が利かない!」「仕事を取ってきているのは営業なのに、エラそうなことを言うな!」と言われることは想像に難くありません。 ですから、法律では、建物を作る際には、施工者と設計者を明確に分け、建築士という資格を設けているのです。設計料無料の住宅メーカーや不動産業社などの会社は、社内での設計技術者の発言力が弱いということに他なりません。 建物の安全を確認するべき設計者が、専門外の上司や営業職に遠慮しながら設計・監理をしているような建物は、例えるなら、薬局が内科医を雇って大量の処方箋を出して利益を上げるようなものです。 イメージして下さい。巨大な薬局が経営している病院!そこでは内科医を雇っています。内科医は一生安泰な職場と高額な報酬が得られ、さらに定時にきっちり変えることが出来るので、気に入って勤めています。病院の医院長は医者ではなく薬局の社長です。 「診察料は無料」のこんな病院、あなたは信用できますか?いっぱい処方箋を出してくれます。それは、薬局が儲かるから。そんな病院に行ってみたいですか? もちろん、こんな病院はありません。今は、基本的に医薬分業で、病院と薬局は別の法人が経営する必要があります。利益を上げようとする経営者と真摯に医学という真理を行う医者は、独立した立場にあります。医療の世界では当然なことが、建築の世界では、曖昧になっています。 むしろ、利益を最優先する住宅メーカーや不動産会社の方が、CM等を通して、私たちにアピールしてきて、イメージUPに努めてきているのです。 設計料無料に払う代償は大きいと思います。東京の下町、墨田区京島で設計事務所をやっています。所員が数名と、ネコがいるこじんまりとした設計事務所です。 最近、アパートの施工不良が巷をにぎわせています。一つはレオパレス21の界壁が無い共同住宅。もう一つは大和ハウスの共同住宅の外部廊下の柱部分の認定不適合です。 レオパレスについては、壁が薄くて音がまる聞こえという話は以前から良く聞いていたので、「やっぱりね~、そだねー」って感じです。隣の住戸との間の界壁が不十分だと、やはり音は良く聞こえてしまいます。レオパレスあるあるですが、宅配便が玄関のチャイムを鳴らすと、同じ階の住民が一斉に、玄関のドアを開ける。という笑い話も聞きますが、本当だとしたら笑い事ではありませんね。 一方、大和ハウスについては、歴史もありますし、あくまでもイメージですが、コンプライアンスもしっかりしていそうで、まさか、そんなことが起こるとは思いませんでした。 また、施工不良ではありませんが、積水ハウスの浜松支店でも、2009年に、確認申請書の副本を偽造したという事件がありました。 なぜ、こんなことがおこるのでしょうか?表題にも書きましたが、このいずれの事例も発注者に対して「設計料が無料」もしくは、非常に安く示されています。それが、どういう事かというと、発注者の立場に立って、建物の出来を確認する専門家が居ないということです。 いづれの場合も、会社という組織が主体となり、技術者を雇い、会社の方針の元、技術者に対して指示しコントロールしています。そういった雇用関係では、本来、施工の間違いを正すべき設計者が、自分の役割をまっとうすることができるのでしょうか? 言いたくは有りませんが、会社の利益に背いて不正を正す設計者は、社内では「技術者は融通が利かない!」「仕事を取ってきているのは営業なのに、エラそうなことを言うな!」と言われることは想像に難くありません。 ですから、法律では、建物を作る際には、施工者と設計者を明確に分け、建築士という資格を設けているのです。設計料無料の住宅メーカーや不動産業社などの会社は、社内での設計技術者の発言力が弱いということに他なりません。 建物の安全を確認するべき設計者が、専門外の上司や営業職に遠慮しながら設計・監理をしているような建物は、例えるなら、薬局が内科医を雇って大量の処方箋を出して利益を上げるようなものです。 イメージして下さい。巨大な薬局が経営している病院!そこでは内科医を雇っています。内科医は一生安泰な職場と高額な報酬が得られ、さらに定時にきっちり変えることが出来るので、気に入って勤めています。病院の医院長は医者ではなく薬局の社長です。 「診察料は無料」のこんな病院、あなたは信用できますか?いっぱい処方箋を出してくれます。それは、薬局が儲かるから。そんな病院に行ってみたいですか? もちろん、こんな病院はありません。今は、基本的に医薬分業で、病院と薬局は別の法人が経営する必要があります。利益を上げようとする経営者と真摯に医学という真理を行う医者は、独立した立場にあります。医療の世界では当然なことが、建築の世界では、曖昧になっています。 むしろ、利益を最優先する住宅メーカーや不動産会社の方が、CM等を通して、私たちにアピールしてきて、イメージUPに努めてきているのです。 設計料無料に払う代償は大きいと思います。施工者から独立した立場の設計者が行う現場監理の様子かなや設計 環境建築家 金谷直政
2019年04月19日
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弊社にて設計・監理しておりました「事業承継とBCPから考えた二世帯町工場」が竣工いたしました。この度、建て主様のご厚意により見学させていただけることになりました。建て主のライフプランと震災対策を考え、いつまでも働き続けることができるようデザインした下町の町工場です。事業の承継、建物の建替え、災害時の事業の継続等、今日の事業者を悩ませる問題の解決の事例として、ファイナンシャルプランナーでもある建築家が、事業者のライフプランも含め、事業者視点で作り上げました。日時:2019年3月2日(土)10:00~15:00場所:墨田区八広(京成曳舟駅より徒歩5分)詳しい場所はメールか電話(070-5027-7142)で問い合わせください。■ファイナンシャルプランナーと建築家とつくる町工場震災後も稼働する町工場。学校等の避難所と同等の耐震強度を確保。近隣への騒音・振動対策。45tプレスの騒音クリア。高齢者が働き続けられる町工場。現代の風水。快適な住環境。設計と発注方法の工夫により大幅なコストダウン。坪単価80万円以下節税効果の高い建物。所得税/登録免許税/不動産取得税/固定資産税/贈与税/火災保険DOWN柱の無い広くて天井の高い工場。100mm角の鉄骨柱■建築概要地域:準工業地域、防火地域/準防火地域敷地面積:151m3(46坪)建築面積:127m2(38坪)延べ面積:309m2(93坪)構造規模:鉄骨造 地上3階建設計監理:かなや設計構造設計:梅沢建築構造研究所施工:ホクショウ詳しい案内をご希望の方は、かなや設計の金谷にご連絡いただければ、ご案内いたします。電話:03-3611-3559メール:「事業承継とBCPから考えた二世帯町工場」内覧会希望
2019年02月21日
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世の中には様々な仕事があります。社会が高度に複雑になるにつれて、専門的な仕事がどんどん増えてきます。厚生労働省編職業分類の2011年改訂版によると、我が国のには17209種類の職業があるそうです。さて、いきなり大風呂敷を広げましたが、何を言いたいかというと、私の専門分野の建築の設計の仕事をしている立場で感じるのは、建物を建てようとする際に多くの専門家が関わりますが、専門家が多すぎ、また、それら専門家と専門家の連携がスムーズに取れないことによる問題が多くなっています。こういった問題解決には、建築家の果たす役割が大きいと考えます。近年、起こった重大事件を例に問題点を確認してみます。先ずは、東日本大震災2011年宮城県沖を震源地とする未曾有の震災がありました。18,449人の死者・行方不明者を出す大災害でした。事故の現場には、さぞかし痛ましく無念な事態があったことと思います。私が、注目したいのは、そういった事故の現場の一つ、福島第二原発事故になります。この事故は、予想を超える高さの津波が来たため原子炉周辺の施設が破壊され冷却水を原子炉に供給出来ずに水素爆発が起こり大量の放射能を放出したというものです。爆発の影響で破壊された状態であることから未だに燃料を回収できない不安定な状態が続いています。この事故の中に、専門家が細分化していることで事態が深刻化したことを二点見ることができます。まず、第一の問題。地震が起こり大きな津波が来る危険性が予見した専門家がいたにも関わらず、有効な対策が取られなかったこと。この地震が起こる前から、大地震が起こること、そしてそれに伴う大津波が来ることを報告されていました。しかし、当時の東電は、これらの報告を無視、あるいは矮小化していました。更に、こういった東電の意向に沿うような説を訴える学者の意見などを持ち出し、大津波の対策をとらなかったのです。経営者にとっては、起こるかどうかわからない天災に経費をさくよりも利益を上げることのほうが大事だったのでしょう。ここで、災害をリスクと考捉え、そのリスクを取り除くのか?最小に抑えるのか?それとも抱えきれるものなのか?等を考えていれば、結果は違っていたと思います。当時の東電の経営的な立場の近くに建築家がいれば、もっと適切な助言ができたのではないかと思います。次に、第二の問題。原子力発電所を設計した技術者の職能の問題があります。福島第二原発は、設計がおかしかったのではと思います。特に配置計画に疑問を感じざるを得ません。この事故では、冷却水が送られないことが爆発を誘発しています。その原因は、全電源喪失でした。施設の中には、絶対に電源が途切れてはいけない施設があります。人の命にかかわる建物は電源が保たれるように設計するのは設計の基本です。それは誰が何と言おうと変えてはいけない鉄則です。建物の設計では、様々な技術者が関わりますが、その技術者をコントロールし、設計の鉄則を主張する立場の専門家が、しっかり機能していたのか疑問に思います。津波がきて、真っ先に水を被る海岸近くに自家発電設備を作っていることは大きな誤りです。こういったバックアップ用の施設は水が被らない高いところに配置すべきです。ここからは、推測になりますが、原子力発電所ということで、決定権を持つのが原子力技術者か、プラントのエンジニアリングだったのではないでしょうか?そのため建築計画の鉄則よりも、専門性の高いエンジニアが誤った優先順位で設計をしたのではないかと思います。ここでもやはり、建築家の立場で、それぞれの専門家の意見を聞き優先順位を整理していれば、こんなことにはならなかったはずです。設計の現場では、何を優先させるかの選択の連続です。例えば、デザインを優先させ、打ちっぱなしコンクリートを多用すれば、断熱材が入れられなくて省エネ性は犠牲になります。また、床や階段をコンクリートにすることで転倒した際のダメージが大きくなり、場合によっては骨折や命にかかわることにもなりかねません。A.見た目をかっこよくしたい。→コンクリート打ち放し。B.省エネ性能を高めたい→コンクリート表面を断熱材で覆う。というように、AかBかを選択しなければなりません。こういった選択しは、デザイナーが決定権を持てばA。設備のエンジニアが決定権を持てばBとなります。ここで大切なのは、Aが間違いということではなく、Bが正しいという事ではないという事です。イメージを優先させる建物の場合はAを選択した方が良い場合もあります。
2018年02月04日
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民泊をサイトに掲載し、ほぼ一年にわたり宿泊者を受け入れています。ネットからの集客の効果もあり、訪れる方は、国内海外から来ていただいています。私がここをオープンしたきっかけは、一昨年(2015年)隣地に住む高齢の男性が亡くなり、その親族の方から売却の相談を受け、購入することになったのが始まりです。当初は、民泊を行うつもりは無く、自分の家の延長としてスペースが確保できれば良いかな。という程度でした。購入を持ち掛けられた建物は、木造、昭和54年築、築38年の物件です。新耐震基準前の物件なので耐震性能は現行の基準を満たしていませんし、一部違法な増築もあるような建物でした。更に、左側に29/1000程度傾斜していましたので、目安となる7/1000以上傾いているため、このまま使うのは無理と判断し、建て替えを考えることにしました。そうなると当然考えなければならないのが資金のことです。借地権ではありますが借地権を購入し、家を建て替えるとなると相当の費用が必要になります。何らかの事業性を確保し、この不動産自体から収益を上げなければなりません。不動産を使っての収益となると、通常は部屋を貸して家賃収入を得ることになります。しかし、アパートとして人に貸して事業性を確保すると、賃貸人が利用し続けることになるため、当初考えていた自分の家の延長としての利用はできなくなります。なんとか、事業性も確保して、自分の利用したいときに利用することはできないだろうか?周りを見回してみると「海外からの観光客が増えている」「都市部ではホテルが常に不足がちである」などの変化を感じました。また、そういった新聞記事も目につきました。これら、海外の観光客ののための宿泊需要と、隣の土地活用がうまく結びつくのではないかと感じました。そして、私が望む活用方法と合わせて考えると、今まで、建物に対して考えていた概念では解決できない問題が見えてきました。私の考える、建物に期待する用途は自分が使えること。子供の勉強部屋、親の宿泊場所。客間事業性があること。閉鎖的ではなく、町に関わるような建物であってほしいこと。町の特徴にあったものであること。等です。それは、いままでの建物は、用途を固定した一つの用途で考え、その用途に合致した「機能」「法適合性」を持たせて建てることになります。果たして、そんなことは可能なのだろうか?いろいろ考え。試行錯誤した経緯を紹介したいと思います。環境建築家 かなや設計 金谷直政
2017年12月02日
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昨年から弊社にて設計してました都市型軽費老人ホームが竣工いたしました。お施主様のご厚意により、下記、内覧会にて見学させていただけることになりました。福祉事業者、医療法人、地主の方、都市型軽費老人ホームに関心のある方、施設の開設をお考えの方、土地所有者で土地の有効活用をお考えの方この機会に是非、ご覧いただきたく、ご案内いたします。日時:2017年10月23日(月)・24日(火)、10:00~16:00場所:墨田区立花。詳しくはメールか電話(070-5027-7142)で問い合わせください。今回の建物の特徴は、狭い敷地(70坪)に鉄骨造4階建、入居者20人のケアハウス。前面道路4mの密集地。工事中の騒音に配慮しました。初期費用を抑えた省エネ。厚い断熱材と断熱サッシ。明るくて、落ち着きのあるインテリア。スカイツリー、花火を望む開放的な屋上。補助金を活用。高い事業性を確保。柱の無い広い室内、地震に強く、ローコストの鉄骨ブレース構造。壁面緑化となります。詳細については、当日の内覧会でご確認下さい。詳しい案内をご希望の方は、かなや設計の金谷にご連絡いただければ、ご案内させていただきます。電話:070-5027-7142メール:都市型軽費老人ホーム「さんいくハイツ東あずま」内覧会希望かなや設計 環境建築家 金谷直政
2017年10月10日
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葡萄を食い荒らす葡萄の長屋の葡萄の実が大きく生りはじめて、実が色づき始めました。ところが、葡萄の皮が地面に散乱し、近くには葡萄の種の入ったフンまであります。近隣の方の目撃情報から、犯人はどうもハクビシンの要です。区役所に相談するも、駆除は業者に依頼して下さいとのこと。ハクビシン問題。区役所では解決せず、上野動物園に電話してみました。動物相談員の方に電話を回してくれ「家の周りにハクビシンが出て困っているんですが、、、」というと「ああ、最近、東京で多いんですよね。」と始まって、江戸末期から日本にいるとの記録がある等、ひとしきりのうんちくのあと、「何か、被害が有るのですか?」と相談員。「植えている葡萄を食べるんです」と言うと、「あー、それはダメですね。葡萄がなっていれば来ますね。」と相談員。「何か方法はないでしょうか?」ときくと、「それは、もう葡萄を全て採るしかないですね」と、明快で絶望的な解決策をアドバイスしてくれました(^^;)流石、動物目線の貴重な解決策、、、でも、葡萄の実を守るために、葡萄の実を全て狩るって、なんだか、切腹を迫られるような無念な気持ちがします。自分の頭の中の30%がハクビシンが占めているような今日この頃です。写真は、とりあえず刈った果実たち。
2017年08月03日
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前回、前々回に引き続き、肥大化した行政のコストの結果、問題が起こっていることについて考えていきます。民泊は建築基準法上は「ホテル」「旅館」「簡易宿所」(以下ホテル等)になります。ここから行政の建築確認審査の裁量行為の問題について書いてみます。建築に係る法律は、建築基準法だけではなく、建築基準法施行令、さらに各都道府県の条例等があり、その全てに適合しなければなりません。以前も書きましたが、一番大本の建築基準法でさえも解釈に差があり、本来「羈束行為(きそくこうい)」であるはずの確認申請において「裁量」により解釈にブレが起こると書きましたが、これが、条令になるとさらに各自治体によって解釈が分かれてきます。話が専門的になりますが、問題の本質の部分なので正確に書きたいと思います。東京の条例で東京建築安全条令というのがあります。この中に東京都建築安全条令10条の4という条令があります。ここではホテル等の場合、「直通階段の出入口」が道路に面していなければならないとなっています。そして東京都建築完全条例17条において、共同住宅の場合「主要な出入口」が道路に面していなければならないとなっています。微妙に違うのは、道路に面して設けるのが10条の4の場合「直通階段の出入口」となっているのが17条では「主要な出入口」となっているところです。ここで、条令の解説の部分には、建物の避難の形態によっては「直通階段の出入口」が「主要な出入口」として考えることがあると書いています。つまり共同住宅として計画され「直通階段の出入口」を「主要な出入口」と考える取り扱いをし、17条に適合した建物の場合は道路に対して避難が成り立っているので、ホテル等としても適合することになります。この判断は、建築の設計、審査に関わる者が避難の主旨を考えれば当然に行きつく判断だと思うのですが、そうではないと判断する行政が出てくるので困ります。その結果、共同住宅として計画された建物をホテル等に用途変更することができなくなってしまいます。これが、私一人の勝手な解釈であれば、私が改めなければならないとは思いますが、民間検査機関3社に聞いてみましたが、そのいづれもが私と同様な解釈をしています。その中の一社は国交省のガイドラインに沿って適合している旨の証明書まで出しています。何度も言いますが建築基準法は誰が判断しても同様の結論がでる羈束行為のはずです。それが実際にはこのようなブレが生じます。しかも一級建築士、民間検査機関3社が合法というものを行政は違法と言い続けるのです。そして先にも書いたように、このただ一者だけ違法と言い続ける行政は肥大化した組織であることを指摘していましたが、これが、この問題を根深く深刻なものにしています。肥大化した行政による建築確認→一人当たりの経験が少ない→法律の読み込みにブレが生じる→民間の判断とのかい離が生じる→確認申請はますます民間に出す→ますますヒマになる→ますます肥大化しヒマを持て余し民間検査機関にも圧力をかける→民間が行う確認申請にもブレが出てくる。肥大化した建築行政が地域経済にブレーキをかけるという悪循環の構図が出来上がるのです。と、正当な建築行為を制限するような悪循環が続くのですが、次回はさらに地域経済にブレーキをかける取り扱いについて紹介したいと思います。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2017年07月14日
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前回は、建築行政のコストが肥大化している問題点について考えました。今回からは、肥大化した建築の行政コストの結果、更に問題が起こっている点について考えてみます。内容が、具体的、複雑なため、何度かに分けて考えていきます。今回は(その1)としました。建築の行政コストの肥大化し、民間の6倍以上のコストがかかっています。その無駄な状態には目に余るものがあります。もちろん、国交省が現代の社会構造の変化に対応するように法律を作り制度を整備してきていることは実感しています。例えば、長期優良化住宅リフォーム推進事業等、既存の住宅を有効に使おうとしている制度には、今までとは違う国の意気込みを感じることができますし、実務者として、趣旨を理解し、その実現に努力していきたいと思っています。しかし、国や都道府県の制度、方針、趣旨が、いったん法律という文章になり、地方行政の役人の手に渡ったところで問題が起こるのです。制度の趣旨とは違った独自の解釈によりゆがめられてしまうことが起こります。すこし長くなりますが、東京都の制度がゆがめられた事例を紹介します。不燃化促進という事業があります。これは、古い木造の建物が多くたつ木造住宅密集地域(木密地域)では、一旦火災が起こると次々と燃え広がり地域一帯を燃やし尽くしてしまうことから、地域の木造建物を燃えにくく(不燃化)して行こうという事業です。昨年(2016年)の暮れに新潟の糸魚川市で、一軒のラーメン屋から出火し、4haの地域の147棟の建物が焼損しました。出火から鎮火まで30時間を要し国内において過去20年間で最大の火災となりました。このように木密地域でいったん火災が起こると大火災に発展する危険性が大きいのです。こういった危険性も見越して、東京都では2013年(平成23年)に「木密地域不燃化10年プロジェクト」を策定し、災害時に甚大な被害が想定される整備地域(7000ha)の不燃化率を2020年(平成32年)までに70%に引き上げていくことを目指しています。制度としては、大変素晴らしく、ドンドン進めていただきたいと思いますし、整備地区に住む住民としても、また建築士としても協力できる点については協力していきたいと思っています。総論としては全く問題なく賛成ですが、ここで、実際に執り行う部分で問題が起こります。次回は、実際の行政での取扱現場で起きたあり得ない事例について掘り下げていきます。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2017年07月05日
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前回は、ゴリ押しの建築行政が行われる理由を考えてみました。今回は、現状のような建築行政が経済に与える影響を考えてい見たいと思います。まず、一点目は、行政コストの肥大化が考えられます。同じ建物でも、行政に確認申請を出す場合と、民間に確認申請を出す場合で判断が違うことはこれまで書いてきました。取り扱い件数が少ない行政では判断にブレが生じることが多いことから、これがリスクととらえられ、9割ほどが民間に出しているのが現状です。民間の確認申請料は行政よりも高額になっているにも関わらず皆民間に出しているのです。例えば100㎡程度の住宅の場合、民間だと確認申請、中間検査、完了検査の合計で20,8000円、行政だと合計で31,400円。民間の1/6の金額です。申請料だけで17万円も違います。17万円もあればエアコンを省エネ型にしたり、断熱材の性能を上げたり、CO2削減に有効なことがたくさんできますね。民間の申請手数料は、審査する人の人件費、事務所の経費等を積み上げた結果必要になる金額です。一方、行政は、税金により職員の給与が支払われています。本来住民が受けるべきサービスとして税金を支出し職員を雇っているから行政の確認申請料は安くなっているのです。ここで、一つの疑問が起こります。我々の経済、社会のインフラの一部でもある建築をつくるため確認申請が必要なことはわかります。そのために税金を使い行政職員を雇っているのもわかります。しかし、ほとんどの確認申請を民間が行い確認申請料を民間に払っている現状では、国民は、建築確認に二重に費用をかけていることになります。日本において建築行為(新築、大規模な改修・修繕、用途変更)を行うものは、審査の部分で二重に費用を負担し、しかも、民間と同一の業務を行う経験の少ない行政職員が、民間を監督、是正命令を出す立場にあるという非常に捻じれた構造になっています。前回のグラフでは、平成23年度時点で、建築行政職員一人当たりの確認件数は年間12件となっています。つまり、行政職員一人は月に1件の審査をしているだけという状況です。私の住む東京都墨田区の平均年収は740万円です。退職金、年金を考え、生涯のコストを考えると倍の金額がかかっていると考えられ740万円×2=1440万円1440万円÷12か月=120万円/月となり、家一軒分の確認申請を行うために区民は約120万円のコストを負担していることになります。冒頭の説明で、一見安いように見える行政へ確認申請手数料でしたが、民間に出した場合20万円/件、行政の場合120万円/件、ということは、行政の確認申請は民間の6倍のコストで申請業務を行っていると考えられます。こうなると、インフラ整備のために職員を雇っているのか、職員を雇うために仕事をあてがっているのか分からなくなってきます。こういうことが、日本の高コスト体質の一因になっているのだと思います。今回は、建築行政が経済に与える影響の一点目として行政コストの肥大化について考えてみました。次回は、二点目として、そういった建築行政が経済を失速させていることについて考えてみます。かなや設計 環境建築家 2017.6.27
2017年06月30日
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前回は、行政の法律解釈のゴリ押しの事例を紹介しました。今回は、何故、このようなことが起こるのかもう少し理由を考えてみたいと思います。理由を探った結果、改善されれば良いな。という、希望を込めての考察になります。まずは、話が分かりやすいように、建築行政が行政の他の仕事と大きく違う点を理解してもらうために、民間検査について少し説明しようと思います。このブログの「民泊から見た・・・4」で少し説明しましたが、以前は、確認申請は役所のみで行っていましたが、1998年の建築基準法改正により、民間による検査が始まりました。民間と言っても、建築審査の経験がある者が審査をしなければならないということで、初めは役所の建築指導課に居た経験者が民間に転職して申請に当たっていました。ご存知のかたも多いかと思いますが、役所では、2~3年毎に部署が移動します。移動するということは、それまで別の事を担当していた者が、建築確認申請の担当になります。それは、実際の担当者、建築主事、係長等、その部署の全ての職員が新米(言い方が失礼かもしれませんが)になるわけです。新米ゆえの問題点は「手術件数の少ない外科医に手術をお願いするようなもの」前回書きましたが、今回は、客観的なデータを見ながら考えてみたいと思います。そもそも、確認申請が行政と民間の両方で確認申請を行っているのならどちらを利用すべきかと考えると、多少申請手数料が民間が高くても民間に頼むことになります。統計でも民間が8~9割を占めています。確認申請が必要な建築数はそうれ程大きく変動していませんので、当然行政の申請業務は減っていきます。データを見てみるとスゴイ勢いで減っているのがわかります。平成12年(2000年)時には建築行政職員1人当たりの確認件数が102件だったのが、平成23年(2011年)には12件ほぼ1割になっています。これが、逆だったらどうでしょう?民間の検査期間の職員一人当たりの処理件数が1割になるということは、収入が減るので人員を削減しなければなりません。しかし、行政では人員を減らすようなことはしていません。行政職員は皆机に向かって仕事をしているように見えますが、仕事が1/10に減って何故同じように仕事が続けていられるのでしょうか?経済や社会構造の変化により仕事の種類も多様化していき、新しく生まれる仕事がある一方、なくなる仕事があるのは世の常です。しかし、建築の確認申請業務は、民間に開放されているにも関わらず残っているのです。碁の格言に「下手の考え、休むに似たり」という格言があります。下手な人が考えているのは曲面を何とか打開しようとしているのでしょうけど、それは、休んでいるに等しいということです。行政の確認申請がこれににています。つまり、不慣れな行政職員が確認申請を見るのは、時間ばかりかかり、実際にはさほど効果的に審査を行えていない。場合によっては、間違いまで起こすのですから、休むどころか下がっているようです。碁の格言に習うなら、「行政の確認申請、経済失速の元」となるでしょうか?ゴリ押しの建築行政の温床は、仕事が激減したにも関わらず減らない行政職員がいる現状ではないでしょうか。仕事量が1/10になったにも関わらず、人数が減らない職場でどういうことが起こるか想像できます。重箱の隅をつつくような不毛な「指導」。簡単な事柄も上に決済を繰り返す非効率な事務処理。慎重な判断をすると言えば耳触りは良いですが、過度な慎重な姿勢は、日本の経済の減速、国際競争力の低下につながりかねません。次回は、その辺のことを考えたいと思います。かなや設計 環境建築家 2017.6.27
2017年06月27日
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前回は、区が法の解釈を間違えた例について書きました。その後どうなったかをお知らせします。驚いたことに、区は、間違えた解釈のまま廊下を広くしなければ確認申請を下ろさないと言います。理由は「今回解釈に誤りはあったが、今まで、区では、このように解釈してきたので、今回だけ変えるわけにはいかない。」とのこと。驚きです。よくもまあ、こんなことが言えるものです。間違ったのは、役所の責任なのに訂正せず、今まで間違いを押し付けられた人と同じように被害を被りなさい。という事!誤ったことをやめることができない。正誤の感覚が麻痺しているのでしょうか?一人ひとりの職員はそんなことは無いと思うのですが、何故なのでしょう?間違いでも一度決めたことは変えられない。という事なのでしょうね!悲しいけど。特に建築行政にこういった傾向が感じられるのは私だけでしょうか?ある意味真面目?でも、これぞお役所?こういう組織と付き合っていると、言っている言葉の中のどれだけが真実なのか?どれだけが誤りなのかが分からなくなってきます。本来市民に対して誠実であるはずの行政職員が、実は、組織のために働いているという一面を垣間見ました。同じ区に建つ建物でも民間の検査機関に確認申請を出したとしたら、不必要に廊下を広くする必要はありません。廊下が不必要に広いということは部屋が狭くなるということです。区の建築主事に「民間と区で判断が違い、区に確認申請を出した場合には、使う人が不便になってしまいます。」と聞いたところ、「それは仕方がない」とのこと。この区の対応は、どうにかしていると思います。こういう体質のところは、判断が分かれる微妙な部分はすべて悪い方に考えます。こういう体質の役人が実質的な裁量権を持っている自治体では、多くの事業者が事業のチャンス、本来得られる利益を失っていきます。すべての自治体がそうだとは思いませんが、建築確認申請については行政の判断が違っていることが多いと思います。これは、建築の確認申請が完全な羈束行為ではなくある程度の裁量行為とならざるを得ないことによる制度的な結果なのかなと思います。その解決策として、裁量する人の技量をもっと高めるべきという議論もありますが、私はそれは違うと思います。同じことを官民で行うこと事態が問題なのではないかと思います。つまり、建前は羈束行為ということになっていながら、実際には、一義的に決まらない判断に悩むことが多いのがそもそもの原因です。今は民間検査が増えてきているのですから、確認申請は民間にゆだねるべきなのではないでしょうか?民間の検査員は、その取扱い件数も多いため、判断する技量も手馴れて早いです。取り扱いが多ければ正しく判断するのか?と訝(いぶか)る方もいるかもしれんせんが、例えば、あなたが外科手術を受けるときに、年に10件しか手術をしない外科医と年に100回手術をする外科医ではどちらが安心でしょうか?応えは明白です。手馴れた外科医の手術の方が安全ですよね。行政の確認申請は年に数回しか手術をしない医者にメスを握られているような恐ろしさを感じます。しかも、間違っても、直さないというのですから、手術に失敗してもそちらが我慢してくださいというお粗末さなのです。「行列のできる法律相談所」「行列のできる〇〇」というように、一義的に決まらないサービスは人気のあるところに集中するのは理由があります。大切な家やビジネスの拠点を作る時、間違いのない確認申請にしたいもの。そう考えると経験が多くブレのないところに取り扱ってほしいですよね、それが自分や自分の会社の資産を形成しビジネスの拠点となるのならなおさらです。かなや設計 環境建築家 金谷直政 2017.6.26
2017年06月26日
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前回は、消防法のことを考えましたが、今回は、建築基準法について考えてみたいと思います。建物を建てるとき、大規模の修繕や模様替え、建物の用途を変更するときは確認申請が必要になります(建築基準法6条)そして、この確認申請を受理し、審査し許可するのが行政の確認検査部署、一般的には建築指導課がそれにあたります。また、1998年の建築基準法改正により民間の建築確認検査機関(以下、民間機関)による審査も可能となり、現在では、民間の検査機関によるの確認申請が圧倒的に多くなっています。2012年の国交省の調査では民間:行政=8:2との事でしたが、民間の伸び率からみると現在は9割がた民間になると思います。ここで問題になるのが、確認申請の際の判断のブレについてです。建築基準法6条では「確認」を受けなければならない。となっており、これは、羈束行為(きそくこうい)にあたります。羈束行為とは「行政庁の行為のうち、自由裁量の余地のない行為。法の規定が一義的であって、行政庁はそれをそのまま執行しなければならない行為。(小学館 大辞林)」とされています。因みに対義語としての「裁量行為」は「行政庁の行為のうち、法規が多義的なため、行政庁に一定範囲の裁量の余地があるもの(小学館 大辞林)」です。つまり、確認申請は、だれが判断しても同じで、行政だろうと、民間だろうと、法律が変わらない限り10年前だろうと昨日だろうと同じ判断が出るということになるのですが、現実はかなり違います。判断が分かれる部分が結構あるのです。例えば、面積や避難に関わる部分などを一義的に判断などできないのはしばしばです。こういった判断のブレによっては、計画自体が成立しなくなることさえあります。私が経験した、行政による判断のブレの実例を一つ紹介します。都内のある区で、建物の設計をしました。法令、条文を読み込み計画したつもりなのですが、その行政の担当者が、避難上の解釈から廊下の幅が狭いというのです。法令の主旨も含め何度も説明しますが、納得してくれません。結局、行政は法令を考えうる厳しい側に解釈し、ありえないような解釈にたどり付く埒が明かないので、法令の解釈のこともあるので、法令を作った上位の役所にも相談もかねて確認すると、区の判断が誤りであることがわかりました。上位の役所からその区に連絡してもらい、ようやく間違いを認めてもらいました。このように明らかに間違いであると認められるケースはまれで、実際には、行政の裁量によって判断が決まってしまうのです。この後話は、これで終わらず、結果的に事業者の利益を損なう結果になりました。それはまた次回に。かなや設計 環境建築家 金谷直政 2017.6.24
2017年06月24日
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前回は、街の中の空き家、空きスペースを民泊に活用することで、市街地活性化、空き家問題等を解決することを考えました。総論ではとても良いことですが、実際にこういったことを実行するには、いくつものハードルを越えなければなりません。旅館業法、消防法、建築基準法などの法律。近隣住民への理解。が大きなところになるでしょうか?今回は、こらのうち法令について考えてみたいと思います。まずは、旅館業法では、宿泊室数や人数の違いにより、ホテル、旅館、簡易宿所に分けられます。洗面所、便所、リネンの収納等、必要な設備が整っていればほぼ認められます。次に消防法について考えてみます。消防では大体予防課という所で審査をしますが、ここの職員は実際に消火活動も体験し、火災の際にはどういう危険が起こり、どのように救助、避難が行われるかの実地訓練、現場の場数を踏んだプロです。消火、通報に必要なもの、場合によっては不要なものを現場目線で、適切に指導してくれます。ホテル等の場合、自動火災報知設備の設置が求められますが、これは通常のものを設置すると100万円程度かかってしまいますが、300㎡を超えないような民泊のような小規模な物件の場合、特定小規模施設用自動火災報知設備の設置が認められていますので、これを付ければ、10万円前後で設置が可能になります。ただ、ここに一つハードルがあります。ほとんどの消防設備業社は、特定小規模施設用自動火災報知設備の設置は、「認められていない」と「やったことがない」等の理由で通常のものを設置させようとします。どうも、この業界のオキテのようなものがあるのか、不慣れな設備を扱いたくないのか?工事金額が小さくなるのでやりたくないのか?それとも所轄の消防署との折衝を避けたいのか?消防設備については新たなものはナカナカ受け入れたがりません。しかし、通常の自動火災報知設備が高額なため、この設置を躊躇することから、法律の規制を逃れた非合法の民泊として開設するケースが多いのではないかと思います。こういった危険な状態の宿泊視閲が巷に存在することはとても危険です。そこに宿泊する人ばかりでなく、火災が起きた際に初期の消火が間に合わず火が広まって町全体に不幸が襲い掛かってしまうのです。法律に適合し、火災時の初期発見に有効な設備を設置した民泊が増えて欲しいものです。次回は、建築基準法に関わる問題点について考えてみたいと思います。かなや設計 環境建築家 金谷直政 2017.6.23
2017年06月22日
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前回は民泊を取り巻く法規について書いてみました。今回は、民泊の必要性、可能性、日本経済への貢献について考えてみたいと思います。我が国への観光客数は、ここ5年余りで大きく変化しています。皆さんも自分のまわりを見てみると実感することがあるのではないでしょうか?観光地、東京の銀座、新幹線の中、外国人が増えてきたと感じませんか?実は、5年前の2012年までは年間835万人程度だった観光客数は、2013年には1036万人、2014年には1341万人、2015年には1973万人、2016年には2403万人観光客数推移(日本政府観光局統計からJTB総合研究所作成)と、急激に増加しているのです。他の産業では、売上微増、もしくは横ばい、減収と、どうも冴えない日本全体にはびこる閉塞感とは全く別の世界が展開しているのです。また、別の見方として、GDPに占める観光収入の割合で日本の観光収入を見てみましょう。世界の観光客のベスト3は、一位フランス8473万人、二位アメリカ6977万人、三位スペイン6066万人、ちなみに日本は26位1036万人です(2013年世界銀行データ)。日本の観光客が他国に比べ極めて少ないことがわかります。これをGDPに占める観光収入で見てみると、一位アメリカの観光収入は214,772百万ドルであり、GDPに占める割合は1.2%。二位スペイン67,608百万ドル4.8%。三位フランス66,064百万ドル2.3%。日本は21位16,865百万ドル0.4%です。つまり、他国に比べ観光客数が少なく、同時に観光収入低くなっています。別の見方をすれば、それだけ伸びしろがあると考えられると、デービッドアトキンソン(元ゴールドマン・サックスアナリスト)は「新・観光立国論」で述べています。この本は、我が国の観光の問題点、可能性などを、客観的なデータを元にわかり易くまとめていますので、日本の観光のみならず経済、まちづくりに関心のある方は是非、読むことをお勧めします。増え続けている観光客を受け入れて更に、他の成熟した先進国並みに観光収入を上げるためにはどうすれば良いか、考えていきたいと思います。では何故、日本には海外からの観光客が、これほど少ないのでしょうか?一つには閉鎖性があると思います。観光客に対しておもてなしをするとは言っていても、街中のサイン、メニュー、観光地での案内等の表記が日本人相手の表記で他の国の方には分かり難くなっています。更に、宿泊施設の不足もあると思います。現在国内出張でビジネスホテルに泊まろうとしてもなかなかホテルが取れない状況にあることからもわかると思います。まず、街中のサイン、メニュー、観光地での案内等の表記については、多言語化を進めるのは必須と考えます。サインに頼らない絵文字のようなピクトサインを増やし、感覚的に情報を伝える手段を考えても良いと思います。因みに、ピクトサインとは、トイレのマークを男女の簡単な絵を示すことでその場所を案内するようなサインで、どの国のどの年代の人も理解することができるサインです。これは、1964年の東京オリンピックで日本人が考案したものです。日本人は、こういうことを本気で取り組めばとても上手く作り上げる感性を持っています。そして、観光客を受け入れるための宿泊施設が必要です。この部分については、既存のホテル等の施設が担うのか、今回のテーマとして考えている民泊を活用するのかということになると思いますが、日本の現状の姿から考えると、民泊の整備を積極的に進めることによるメリットが大きいと感じます。現在、日本には820万戸の空き家があり空き家率は13.5%(2013年時「老いる家 崩れる街」野澤千絵)と言われ、更に毎年100万戸づつの新築住宅が建設され、同時に空き家も増え続けています。一方、人口は2008年をピークに減少し続けており、女性の合計特殊出生率が2016年1.44(厚生労働省調べ)であり2016年の出生数は97万人であることを考え、今後人工が増加する見通しがないことを考えれば、空き家がますます増えると予想できます。そうなると空き家が増え続け、更に新しい家が建ち続けるという、国を挙げての「ゴーストタウンづくり(苦笑)」が着実に進行していく事になります。実際、関東周辺の町では業社主導の宅地開発が進み、旧市街地の空洞化が進行し、シャッター商店街がアチコチで見られます。私が住む墨田区でも、土地が足りないと言いつつも、高齢者が無くなった後の空き家がそのまま残り続けているのを多数見かけます。このように未利用の居住空間が市街地には多く残っていながら、新たな住宅が郊外に建つという事は、更に空き家が増え続けることに繋がります。こういった空き家を観光客用に活用できれば、空き家問題、商店街の活性化、観光客の受け入れ施設の整備を同時に進めることができるわけです。総論では、理解できるのですが、こういった古家や住宅、商店などの小規模な敷地の活用を考えると、一筋縄でいかないことに直面することになります。次回は、こういったことを阻害する要因について考えていきたいと思います。かなや設計 環境建築家 金谷直政 2017.6.22
2017年06月22日
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海外旅行者の増加に伴い、各地で宿泊施設の不足が問題化しています。今までは、ホテル、旅館等の宿泊施設が主な宿泊先でしたが、新たに宿泊施設として民泊(みんぱく)が注目されてきています。今年(2017年)の6月9日には、民泊新法が成立したところです。このブログでは、民泊の法律上の位置づけと、その解決方法、そして、最前線で起きている問題を何度かに分けて書いていこうと思います。民泊とは、今まで住宅として利用されてきた建物の一部を宿泊者に貸す形態で、自分の家の一部を貸すことから始まった新たな宿泊形態です。現在、広まっている民泊の多くはAirbnbというサイト上で、ホスト(宿泊させる側)、ゲスト(宿泊する側)の間でお互いに合意し宿泊が成立します。さて、ここで、問題があります。このような民泊という形が、いままで我が国には無かったため、日本の法律にはあてはまらない部分があるのです。ここで言う法律とは大きく分けて「旅館業法」「建築基準法」になります。まず、旅館業法の方ですが、継続的に宿泊させるためには「旅館業法」の届け出を出して認可されなければなりません。たとえ自宅の一部を細々と貸すとしても、金銭を受け取り継続的に貸す場合には届出が必要になります。また、次に建築基準法も継続的にお客さんを宿泊させる場合には建築基準法の用途が、「ホテル」「旅館」「簡易宿所」(以下ホテル等)のいずれかに該当することになります。そしてホテル等の扱いになると「特殊建築物」となります。特殊建築物とは、建築基準法のなかでも特に安全性に留意しなければならない建築です。ホテル等の他に、劇場、病院、共同住宅、学校、百貨店等などが特殊建築物となっています。これらの建物は、不特定多数(ふとうくていたすう)の人が利用するために安全にしなさいということになるのです。不特定多数とは建物に不慣れな色んな人を指し、これらの人の使用も想定していているため、避難のしやすさ、耐火性等の基準が厳しくして、より安全な建物としています。つまり、ホテル等の特殊建築物は、ある意味、民泊として考えられている住宅とは正反対の種類の建物ということになります。ですから、民泊でいう自分の家の一部を「民泊→ホテル等」にする際には、今まで家族という特定の人が使っていた我が家を特殊建築物に変えることになるので、建築基準法の制限が強化されるのです。ですから、ほとんどの場合住宅を民泊としてそのまま利用することは建築基準法上違法ということになります。問題点の入り口は、ここまで、次回はこういうことから見えてくる行政の対応とその問題点を考えて行きたいと思います。かなや設計 環境建築家 金谷直政2017.6.21
2017年06月21日
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「葡萄の長屋」内覧会のご案内昨年から企画・設計・監理・施工してきた宿泊施設「葡萄の長屋」が完成いたしました。つきましては内覧会を行いたいと思います。葡萄の長屋の特徴は、・10坪に満たない敷地の有効活用・耐震性、耐火性の高い建物 → 災害時の資産の保全・屋上の活用 → 景観を楽しむ生活・ローコストで、効果の高い省エネ → 高断熱・太陽熱利用・補助金を活用 → 不燃化助成制度で最大610万円の補助金・設計事務所とつくる安くて良い建物・1階をバリアフリーに → 広がる活用法。親との近居等などなど、狭い敷地ながらもみどころ満載の建物となっています。その他、不明な点、ご関心のある点などについても現地でご確認ください。日時:2016年10月30日(日)10:30~12:00 13:00~18:00場所:東京都墨田区京島3-18-5 京成曳舟駅から徒歩6分連絡先:070-5027-7142(かなや設計 金谷)
2016年10月20日
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昨年、リフォームの設計をした北見のサクランボハウスが、全国賃貸住宅新聞に掲載していただきました。築40年のアパートをフルリフォームした物件です。オーナーの相続も絡んでいたので、どのように処分していくかを検討するところから始めました。事業計画→プラン作成→補助金申請→建設→運営と各段階を行きつ戻りつ慎重に計画を進めた物件です。・不動産としての魅力を失った古い賃貸住宅。・相続の問題。・建築コストの高騰。等の問題をオーナーが解決することはとても難しく、古い不動産を所有する多くの方が、悩んでいると思います。一体、誰に相談して、どうすれば良いのでしょうか?建物の事だけでも、断熱性、耐震性、借り手に魅力的なデザイン、工期、資金繰り、そしてコストの問題をオーナーの立場で、解決しなければなりません。また、税金の事、相続の事までトータルでオーナーの利益をになるように考えるパートナーって、存在するのでしょうか?本物件は、設計事務所がオーナーのパートナーとして、これらの問題をトータルに解決!・古い不動産を最新の性能にフルリフォーム。・補助金を利用し、建設費負担を軽減。・魅力的な物件として再生。建物のことに関して設計事務所は、オーナーの代理人として、トータルな問題解決を提案しなければと思います。今年の初夏。物件の名前にもなったさくらんぼの木にかわいいサクランボの実が生っていました。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2016年09月08日
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自然に触れると心が安らぎます。誰しも、山や森等の大自然の中を歩いて空気を胸いっぱいに吸うと、肺の中に新鮮な空気が入り込み、体全体が浄化されるような心地よさを覚える経験があるのではないでしょうか?また、山や森とまでも行かなくても、緑を眺めるだけでも心地よさを感じるものですが、普段の生活の中では、なかなか自然を身近に感じることはできない方も多いと思います。特に、都市の中では、自然よりも建造物の方が圧倒的に多いので、意識して緑を育てなければ、身近に感じることもできません。■密集市街地の二面緑化都市の生活で、敷地が狭くても、緑を楽しむ方法として、屋上緑化や壁面緑化などが考えられます。いくつかの事例を見ながら、緑化について考えていきたいと思います。こちらは、墨田区の密集市街地に建つ住宅の屋上です。密集した住宅や町工場の中のわずか16坪の土地に建つ住宅ですが、屋上に出ると、はるか向こうの地平線まで見える極上の眺望が楽しむことができます。 そして、この写真は、建物の正面です。向かって左側がモッコウバラ、右側が巨峰です。モッコウバラの小さくてかわいい八重咲きの花。いい香りがします。この小さな花が壁面にびっしり咲くんです。モッコウバラは、白のほかに黄色もあるようです。 こちらは、道路との間の狭いスペースに植えたチューリップです。春には、狭い通りを彩ってくれます。 チューリップが終わると、バラが咲き始めます。手前の真紅のバラは、カップ咲きのイングリッシュローズ、「L.D.ブレスウェイト」。一年を通して大きくて豪華な花を咲かせます。向こう側は、フロリバンダローズ。一つの枝にたくさんの花を一斉にさかせます。 そして、少し遅れて初夏に咲き始めるのが、つる性の四季咲きのバラ、とってもいい香りのする花弁がびっしり詰まった「ナエマ」。ゲランという香水から命名されたという。この前を通ると、控え目で、いい香りがします。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2016年03月09日
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設計が無料というのは、表向き見積書に出ていないだけです。確認申請のための図面が必要なわけですから、実際には設計者が図面を書いているのです。測量も地盤調査も同じです。無料と言ってはいますが、見積書に出てないだけで、工事費の中に上乗せされているにすぎません。設計と一口に言っても、皆さんのイメージする設計とはどういうものでしょうか?平面図を作るのが設計と思っている方が多いと思いますが、それは設計の中のほんの一部に過ぎません。平面図を作ることは、設計全体で言えば5%の比重もないのではと思います。どのような工法で作ったら良いか、断熱性のこと、高齢化について、コミュニティーとのかかわり、また、将来の維持管理費、その時の各々の建築資材の相場までを考え図面をつくるのが設計です。例えば、事業物件として集合住宅を建てるとき、通常は、鉄筋コンクリートか鉄骨造で検討しますが、その時の職人の不足具合で、工法が変わってきます。近い例で言えば、東日本大震災で、東北地方に職人が必要になったため、2013年ころの東京では、型枠職人や鉄筋の職人が不足していました。求人倍率が7倍程度と、薬剤師と同じ位高い求人倍率となり、このことが原因で、鉄筋コンクリート造の建設費が、まず高騰。そして、少し遅れて、鉄筋コンクリートの建設費が高騰したことから、鉄骨造での建設が増え、鉄骨造の建設費が高騰したのです。こういった場合は、一例として、木造で計画を考えことも考えられます。敷地が広ければ、木造の戸建住宅のような建物をいくつも建てることで、集合住宅と同じような収入を得られることが可能になります。木造は、正しく、断熱・気密等の設計を行えば、100年以上も持つ工法ですので、資産価値は十分です。これが、設計料無料のサービス的な設計の場合は、鉄骨造が高い時でも鉄骨造で、鉄筋コンクリートが得意なゼネコンであれば鉄筋コンクリート造が高い時でも鉄筋コンクリート造で設計を進めてしまいます。なぜなら、建物を建てることが仕事の会社は、自社の工法で建てることしかできないからです。このような決まりきった設計は、経済が、一様に成長し続けた社会状況や、変化の少ない社会状況の中では、問題がないのかもしれません。しかし、常に変化し続け、更に成長が見込めない現代においては、常に変わる市場に柔軟に対応する設計が必須となります。施工会社に雇われた設計者が行う設計では柔軟な対応が困難になのではないでしょうか。設計者は、その時の建築相場を見極め、構造形式と建物の性格に見合った設計を柔軟に行い、最終的に建て主に利益をもたらす提案をする必要があります。その、作業には会社の事情で特定の工法で行う設計ではなく、独立した立場で、建て主の利益になる提案をする設計者が必須になるのです。施工会社に雇われた設計者が行う無料の設計が、如何に危険であるかお分かりかと思います。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2016年03月08日
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設計事務所による配筋検査 横浜の傾きマンションを始め、欠陥マンションは何故できるのでしょうか?そして、問題になっている欠陥マンションは、たまたま問題があっただけなのでしょうか?それとも、何か業界に潜む問題があるのでしょうか?近年問題になった欠陥マンション、公になったもので、思いつくだけですが東京の南青山で、2014年、三菱地所が設計、鹿島建設が施工した高級マンション。梁の鉄筋を切って配管を通した事例。入居前に内部告発によって発覚。横浜西区で、2014年、住友不動産の分譲、熊谷組の設計施工のマンション。杭が地盤に届かずに傾いた事例。2003年に完成。2014年に傾きがあり、杭の問題が表面化、その後2016年に、配管工事に伴って基礎の鉄筋が切られていることが発覚。横浜都筑区で、2015年、三井不動産の分譲、三井住友建設が設計施工のマンション。杭が支持地盤に届かずに建物が傾いていることが発覚。等の問題がありました。いずれも、大手のディベロッパー、施工会社がかかわっていた物件です。建物の中には人が生活し、仕事をしています。考えられる災害等から人命を守るというシェルターとしての大切な役割があります。ましてや多くの家族が住むマンションは、土地が幾重にも積み重なり、建物そのものが町を形作っているようなものです。その安全性については、慎重の上にも慎重を重ねなければなりません。そのマンションで、ここ3年間だけで、3件も構造上の欠陥が発覚しています。冒頭でも、言いましたが、たまたまなのか?という問いに対しての私の考えは、「傾きマンションのような欠陥は、たまたまの事例ではなく、マンション建築では氷山の一角に過ぎない。」のではないか?ということです。なぜなら、いづれも場合も、単なるミスでは無いからです。人間だれしもミスをします。もちろん建築という人の命を預かる構造物にミスはあってはならないのは当然ですが、そんな建前ばかりをごり押しし、ミスはあってはならないという風潮が、現場を委縮させ、問題を隠蔽し、更に深刻にしてしまうのだと思います。ミスではないというのは、横浜西区のマンション、東京青山のマンション、いづれのケースも、梁に配管用の孔を空け忘れて後から孔をあけている点です。コンクリートの梁は一度打ってしますと、後から孔をあけることはできません。それは、構造上大切な配筋を切ってしまうからです。それなのに穴をあけるというのは、危険を承知で行っている確信犯と言えます。建物の基礎の配筋を切るということは人間でいえばアキレスけんを切るに等しいような恐ろしいこと、建物からの悲鳴が聞こえてきそうで、わが身の足元に痛みさえ覚える感覚です。また、杭の長さが不足していたという横浜都筑区のマンションでは、杭を打った時支持地盤に到達しているか否かは、杭のオペレーターがわかるはずです。オペレーターが用意した杭では長さが足りないとわかれば当然現場監督に報告することになります。それなのに、杭の長さが不足したまま工事が進むと言いうことは、これも良くないことを知っていながらの確信犯と言えるのではないでしょうか。更に、近年、感じるのは、現場監督の技量不足です。バブル崩壊後の失われた20年のゼネコンにどのような影響を与えたかを考えると、現場監督の待遇を落としに落としてきた20年と言えます。経験豊かな40~50代の現場監督は人件費が高いということでリストラされました。そして、建築の需要が戻ってきて、業界全体で現場監督が不足した結果。次代を担う20~30代の現場監督も経験豊かな先輩から仕事を十分に教えてもらえず経験の浅いまま現場に出ていく。あるゼネコンでは、建築学科の求人が間に合わず、大学の文系出身者を採用し、現場監督に育てているというところもあるといいます。建物の質は現場監督で決まると言っても過言ではありません。そんな重要なキーマンが、経験不足であったり、オーバーワークで疲弊していたりしていてはちゃんとした建物ができるわけがありません。現場監督の粗製乱造は建物の粗製乱造を意味します。バブル崩壊後の我が国の現場は、他の産業と同様に、規格と審査によって質を保つように仕組みが整えられてきましたが、規格と審査さえクリアしていれば、問題の本質には目をつぶるような風潮が幅を利かせてきました。検査だけでも確認申請長期優良住宅品確法フラット35施工会社の社内コンプライアンス設計事務所や施工会社のISO等があります。以前は確認申請だけでしたので、制度の屋上屋を重ねて安心を買っているつもりが、単なる気休めにしかなっていないケースが多いと感じます。ホントの問題に目を向けず、審査の証明書を付けることで前に進んでしまう安直な風潮。それを許す各社のコンプライアンス規定。エネルギーをかける対象が、問題の解決ではなく、書類上の整合性をとること。こんな、不合理で矛盾に満ちた現場を何度も目にしてきました。彼らの立脚点が、安全な建物を作ることではなく、書類の整合性をとること、スケジュールを守ることでなりがちです。こういった呪縛のなかで委縮してしまって、盲目になっているのでは、欠陥マンション問題が無くなることはないと思います。私が、設計監理を行った物件では、そういった委縮した現場監督に対して、問題点を直視することを何度も何度も言い。目の前の建物の質を確保することを徹底していきます。私自身も、配筋検査は現場監督に任せず、設計者側の目で、一本一本確認して、建物のアキレスけんを切るようなことを未然に防ぐ配慮を徹底しています。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2016年03月07日
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築40年の木造賃貸住宅 骨組みを残してフルリフォーム 構造体を生かしてコーナー窓を設置してイメージ一新北海道の北見市に建つ築40年のアパート、古くてなかなか借り手が付きません。大家さんとしては、壊すにも解体費用がかかるし、更地にすれば土地の固定資産税が6倍にもなるので、解体するわけにもいかず、古家&空き家のままです。現在、全国で古い空き家が、このような事情で増え続けています。少子高齢化による高年齢の部分が大きい人口ピラミッド。もし、建物の築年数ピラミッドというものがあれば、人間の高齢化と連動するように、築年数の多い部分が多くなってきているのかもしれません。しかし、建物の場合、古いから寿命を迎えるという事はありません。「リフォーム」による若返りが可能です。人で例えれば、還暦を迎えたところで体が生まれたての新品になるようなもの。ここで、建物の寿命について考えてみます。国土交通省の建設白書によるとイギリスの住宅の平均寿命は75年。一方日本の平均は26年。消費大国のアメリカでさえ44年であることと比べると、我が国の建物の寿命は極端に短いのがわかります。日本の住宅の寿命が短い理由は何故なのでしょうか?頻繁に更新される建築基準法に適合しなくなる。古い住宅が、世間に求められる要求水準に適合しなくなる。国の政策で、住宅を新築することが推奨され、様々な優遇措置が取られてきた。古い建物の評価が不等に低い現在の建物の評価手法。これが一番大きな理由かもしれない。等が、考えられます。しかし、建築基準法においては変更の必要がないほどに高度化してきました。また、住宅の要求水準もこれ以上は必要ない位充実してきました。つまり、現行の建築基準法を順守し、長寿命を見据えた、構造、断熱、維持管理のしやすさ等を考慮した住宅を丁寧に作れば。これからの日本の住宅の寿命はイギリス並みに長くなると思われます。国の政策も、既存の建物のリフォームを推奨する制度が出始めてきています。古いアパートが。リフォームによって、最高水準の住宅にすることが出来、その評価ができる市場が出来てくれば、問題となっている古い空き家が、社会の資産として動きだすことになります。特に、アパートのような収益物件の場合、事業として成り立っていることが前提になります。事業性の裏付けがあるリフォームが可能になるということは、面的な広がりと持続性のある空き家問題の解決へとつながっていくと考えられます。 本来であれば、不動産分野における聞く年数の多い建物の評価手法が確立することが望まれますが、今回の事業は、その制度ができる前に、市場に評価を任せて先に進みたいという思いからやってみました。 かなや設計 環境建築家 金谷直政
2016年03月06日
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築40年の木造賃貸住宅、高度経済成長と言われた時代に建った建物です。オーナーはサラリーマン。この物件の立地は北海道の北見。オホーツク地域では最大の都市で人口は約12万人。ここもまた日本の地方が抱える少子高齢化に伴う人口減少と高い高齢者率、という課題を持つ町となっています。人口減少は、貸し家を持つオーナーにとっては、マイナス要因となる。この物件も6戸の内入居者は1戸のみ、しかも3万5千円の家賃を2年前から滞納。もはや、賃貸事業とは名ばかりで、負の遺産でしかない状態でした。古家でも都市計画税、固定資産税を取られていることを考えれば、持っていても損するばかりの疫病神のような物件です。■古家は、売却か?建て替えか?リフォームか?オーナーご主人は、長期療養をしており、そのための入院費用の確保のため売却を考えていたが、地方都市の不動産価格は驚くほど安い。土地の価格は7万円/坪程度。しかも、これでも40年前に比べ値上がりしていることから売却すると税金が取られ、古家の解体費用分の負担も考えると手元に残るお金は意外と少ないことがわかりました。そこで、賃貸住宅としての魅力を再生し、利益を生む物件として家賃収入を得る方向で検討することにしました。オーナーご主人の療養費の足しに5万円/月の収入が得られることを目指して事業計画を作り始めました。A案:建て替え 12戸、10戸、8戸B案:リフォーム 6戸+新築2戸C案:リフォーム 6戸地方都市においては、高齢者が増えているが、高齢者が安心して暮らせるバリアフリー住宅が無いことから、高齢者住宅として建て替える案を重点的に検討しました。■民間の優良資産の形成を国が補助!長期優良住宅化リフォーム推進事業検討を進める中で、国交省がの「長期優良住宅化リフォーム推進事業」が、1戸あたり100万円だったのが、条件を満たせば200万円を出すことになりました。調べると、今回の物件でも使えることがわかり、計画は、C案の既存の6戸をリフォームすることになりました。そのかわり、この1戸あたり200万円の補助金が出る制度はリフォームのグレードがとても高く、「劣化対策」「耐震」「維持管理のしやすさ」「省エネ」「高齢者対策」「可変性」「住戸面積」等のグレードが、新築の長期優良化住宅と同等のレベルが求められます。既存建物の基礎のヒビ割れ築40年の建物とは、どういうものなのでしょうか?数ある建築基準法の改正の中でも1981年(昭和56年)の改正は、構造に関わる大きな改正がありました。それまでの木造住宅では、基礎に鉄筋を入れなくてよかったので、この築40年の建物の基礎にも鉄筋は入っていませんでした。現地で調査すると、ところどころ、基礎に元気な(笑)ヒビが入っていました。■オーナーの費用負担を抑えて、最低の性能から最高の性能へ新築の優良長期優良住宅はの割合は、2009年に制度がスタートし、普及の割合は、新築一戸建て(分譲、持家、貸家、供給住宅を含む)の23~24%。注文住宅に限れば70.7%(2013年度)で、2014年6月末時点で50万戸を超えた状態となっています。劣化対策等級でいえば等級3(最高等級)相当なので、数世代持つ家ということになります。国交省では「構造躯体の仕様継続期間が少なくとも100年程度」と言っています。これは、現在考えられる最高水準の住宅性能と言えるのではないでしょうか?賃貸住宅では、事業性を上げるために、断熱材を薄くしたり、メンテナンスのことを考えずに工事費を安くするために配管工事をしたり、外装材も考えるられる最低価格の材料を選らぶのに比べると、通常の賃貸住宅とは雲泥の差と言っても良い性能です。言いかたを変えれば、高度経済成長の頃に建った質の低い建物を最高の性能にするための費用を国が出してくれる。と言ってもいいかもしれません。レーダーチャートにすると、青い部分が当初の性能で、赤い部分がリフォーム後の性能です。その間にある黒い部分が標準的な住宅ですから、その激変ぶりがわかるのではないでしょうか?■最新の省エネ技術「地中熱利用」今回のリフォームでは、更にグレードUPしている部分があります。それは、冷暖房に地中熱を利用したことです。地中熱は、他の自然エネルギーに比べ、日本中どこでも安定的に利用できる唯一の自然エネルギーです。暖房の省エネルギー技術としてはヒートポンプというものを使うことが一般的ですが、北海道の北見は冬の気温が低すぎるために暖房時にヒートポンプの効率が下がってしますのです。地中熱によるヒートポンプは外気ではなく地中と熱交換を行うので、暖房時の効率低下を補ってくれる最高の省エネ技術なのです。ただ、問題は、コストが高いということ、通常地中熱を採熱する孔を一本掘るだけで100万円~300万円かかると言われています。それを、注文住宅ではなく民間の賃貸住宅に付けるなんて聞いたことは有りません。たぶん北海道は、ここが初めての試みです。(喜茂別の村営住宅で事例があり)正面が地中熱、右側が通常のヒートポンプ(三菱電機ズバ暖)全ての住戸に付けたわけではありませんが、どうして賃貸住宅にこのような高性能な設備をつけることができたのでしょうか?これも国の補助金制度を使って設置が可能になりました。こまめに探すと、国のいろいろな補助制度があります。国の補助金については、別の機会に詳しく書きたいと思います。■事業を成功に導く設計事務所の役割ポイントカラーを配した明るい外観今回の工事会社は、地元北見の工務店でした。敷地からも車で5分程度なので、後々のメンテナンスのことも考えると最良の工務店だったと思います。しかし、その工務店にすると最初から決めていたわけではなく、選定の結果そうなったのです。工務店の選定に関しては、相見積方式としました。工務店5社程度と面談をし、それぞれの工務店に同じ図面を渡して、同じ条件で見積りを出してもらいました。その結果、2社は辞退し、3社が見積りを出してくれました。「相見積になりますが、見積りをして頂けますか?」と聞くと2社は、「相見積であれば対応できない」と言って断ってきました。価格競争には加わりたくないということなのかもしれません。その気持ちはわかりますが、値段の高い物が必ずしも良いとも限りません。このことは、別の機会に書きたいと思います。A社、70,620千円(消費税別)B社、44,998千円(消費税別)C社、40,600千円(消費税別)という結果になり、見積金額も低いことも総合的に考えてC社に決定しました。この時期(2014年12月)は東京、東北では職人不足で工事費が高騰していましたので、北見でも建設費が高めの傾向はありました。しかし、見積金額というのは、各工務店の仕事の混み具合等のタイミングにより結構違うことがあります。今回は、比較的、開いた方ではないかと思います。発注方法はうまくいったと考えてよいでしょう。坪単価は、45.5万円(冷暖房・外構含む)でした。長期優良住宅化リフォーム推進事業の補助金を考慮すると、坪単価は32.7万円となります。この金額で、国交省が考える最高水準の建物が出来たわけです。リフォームでも設計事務所が、設計をすると、工事費の上でも有利なことが分かるのではないでしょうか?日差しと眺望が気持ち良い人気のコーナー窓インテリアのデザインも好評です。この、コーナー窓が気に入ってくれて、地元の不動産会社さんからも「空きがあったら真っ先に教えてください!」と言われて、1LDKも2LDKも空き待ちの状態が続いています。環境建築家 金谷直政 かなや設計
2016年03月05日
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昨年から設計していた都市型軽費老人ホームとデイサービス等が複合した福祉センターが完成しました。テーマは、「都市の中でホッとする古民家風の住処」場所は、墨田区北部。1.狭い敷地の有効活用。2.高騰する建設費の影響を回避する方法。3.「何かと問題の多い杭」を使わない工法。4.コストをかけない省エネ手法。5.性格の違う施設を一つの建物にまとめる導線とセキュリティー対策。6.室外機隠し、建物正面の壁面緑化。7.利回り15%以上の超収益手法。等が、主な特徴です。この度、事業者様のご厚意により、内覧をさせていただく機会をいただきました。日時は12月2日14時30~15:30。内覧をご希望の方は、あらかじめ金谷までご連絡下さい。場所等、お知らせします。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2015年11月24日
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築40年の賃貸住宅、再生の事例です。物件は、北海道の北見市、人口12万人の地方都市です。北見市も全国の地方都市と同様、少子高齢化と、人口減少が進んでいます。この築40年の賃貸住宅。建替えか売却かで、話しが進んでいました。しかし、売却したとしても建物の価値はほとんどないこと、少子高齢化の進む地方都市の地価はそれほど高くないことから、驚くほど安い値段でしか売れない上、更に税金を取られる事になります。しかし、こういった物件は、売却するしか手立てがないのが現状です。しかし、今回は、事業性を検討した結果、建て替えでも、売却でもない方法を選びました。それは、リフォームです。リフォームというと、壁紙を貼り替えるとか、外壁を塗り替えるとか、防水をやり替える程度の事を思い浮かべる方も多いのではないでしょう。しかし、ここで考えたリフォームは、構造体をそのまま残し、その他は全て取り払ってやり替えるリフォームです。リフォームとはいえ大規模なリフォームだと、新築並みとまではいきませんが、相当な工事費が掛かることもあり、むしろ建替えたほうが、印象も良くなるし、良いのでは?と思われるのではないでしょうか?ところが、リフォームにこだわることで、出来ること、メリットが有るのです。そのメリットの一つが、補助金の利用です。今回のリフォームでは、一戸あたり最大200万円の補助金が受けられる制度を利用しました。この賃貸住宅は6戸なので、最大1200万円の補助金がもらえることになります。今回のリフォームは、総額4000万円(税別)だったのですが、実際に交付された補助金1175万円を相殺すると2825万円(税別)でできたことになります。この補助金は、大変意義深い制度だと思います。「少子高齢化に伴う空き家の増加」という問題、「古い物件をどうすることもできないオーナー」の問題、地域社会が抱える問題と、個人が抱える問題を解決することが、この制度により可能となるのですから。環境建築家 金谷直政 かなや設計
2015年08月09日
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夏い暑!いや、暑い夏!意識が混濁する様な暑さが続いています。夏に日当たりの良い建物は、太陽のエネルギーをもろに受けて外壁の温度が、あっという間に上昇してしまいます。建物の中は、もちろん冷房をつけてしっかり温度を下げますが、外の温度が高ければ高いほど、部屋の温度を快適に保つために多くのエネルギーを必要とします。例えば1.外の温度38度→部屋の温度28度だと、マイナス10度2.外の温度30度→部屋の温度28だと、マイナス2度部屋の温度は同じでも、使うエネルギーは、1の方が(下げる温度の差が大きいほど)多くなってしまいます。ということは、外の温度が低ければ使うエネルギーを少なくできます。ででは、外の温度なんて変えられる方法なんてあるのでしょうか?それが、あるんです。 壁面緑化 で下げることが可能なのです。写真は、墨田区に完成した建物です。外壁の緑化は、テイカカズラという種類の常緑のつる性の植物です。この植物は平らな壁面に絡むことはできませんが、特殊なステンレスのワイヤーを用意しておくと、ほぼ メンテナンスフリー で育ちます。植えて3年目ですがちょうどよくなってきたところです。サーモカメラで温度を図ると、緑の無いところは48度、緑のあるところは38度になっています。ちょうど10度、温度が下がっています。この温度差は、建物の中の冷房の負荷(消費されるエネルギー量)が少なくなります。つまり10度差の分だけ省エネになるのです。また、壁面が暑い街並みに比べ、緑化された壁面が続く街並みは通りの温度の上昇も抑えヒートアイランド現象を抑制する効果があります。なにより、見た目にも涼しさを感じる緑、もっともっと増えてくれると良いのになぁ。と思います。壁面緑化は広い庭も不要で見た目にも環境にもメリットの多い省エネ手法です。基本を守れば簡単です。感心のある方は、是非試みてください。かなや設計環境建築家 金谷直政
2015年08月01日
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昨年より設計監理をしていた物件が竣工し、施主様のご厚意により、内覧をさせていただく機会をいただきましたので、ご案内いたします。この施設は、「サービス付き高齢者向け住宅」「看護小規模多機能ホーム」「デイサービス」「訪問看護」「訪問介護」「訪問介護居宅支援事業所」「地域交流スペース」等7つの機能が1つの建物に入った複合施設です。■特徴は1.在宅支援7施設が1つになった複合施設。2.7施設を使い分ける動線計画とセキュリティー対策。3.停電時も発電して普段は省エネ!ガスコージェネレーションシステム。4.部屋の奥まで自然の光を取り入れる庇。5.特注、シャワー付きのユニットトイレ。6. 変形敷地を有効活用する配置計画。7.設計開始から竣工まで1年未満。8.健康、メンテナンスコスト削減。ワックス不要の天然リノリウム床。■内覧会概要・日時:2015年6月26日(金)10:00~12:00 13:00~15:00・場所:川崎市中原区上平間1264-1・連絡先:070-5027-7142(かなや設計 金谷)内覧会参加希望のかたは、資料を送りますので、ご連絡ください。 かなや設計 環境建築家 金谷直政
2015年06月19日
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計 MERSコロナウイルスの感染が、韓国で猛威を振るっています。感染経路は飛沫感染で、病院内での二次感染により感染が広がったとの報道がなされています。MERSの死亡率は40-50%とも言われ、非常に高くなっています。日本では、MERSは、感染症法の二類感染症に指定されています。二類感染症は、感染力・重篤度・危険性が高く、早急な届け出が必要になるカテゴリーであり、エボラ出血熱、ペスト等、危険性が極めて高い一類感染症に次ぐ危険な感染症です。今回の韓国での感染は、2015年5月4日にバーレーンから帰国した68歳の韓国人男性が、20日にMERSと確定し、平沢聖母病院8階8104号室に入院していました。ところが、改修工事の際のミスにより、この病室には排気口が無く、エアコンの空気にのってウィルスが拡散したと疑われています。感染症を疑われている時点で、患者を陰圧管理された病室に移すべきであろうし、この患者が入院していた病室に排気口が無かったことが通常ではありえないことだと思います。しかし、そういった医療上・建築上のミスもありましたが、エアコンによりウィルスの拡散が起こる可能性があるようです。エアコン(エアコンディショナー)というと、空気を暖めたり冷やしたりする機械であり、我々の廻りで一番使われている冷暖房設備です。この一番使われている冷暖房機器が、感染症を拡散するのです。では、その、リスクを減らすことはできるのでしょうか?それには、冷暖房に空気の対流を使わないことが有効と考えます。エアコンは、空気を動かすことで熱を運ぶ(暖かさや涼しさを運ぶ)、しかし、同時に菌やウィルスも運ぶことになるので、感染が起こるのです。い熱移動に輻射(放射)成分を使うと空気の動きを抑える事ができます。輻射(放射)による熱移動は、熱を、物体から物体に直接伝えるため、空気を動かす必要はありません。太陽から地球に熱が伝わるのは輻射(放射)による熱移動であることを考えるとイメージし易いと思います。病院の病室病室や、高齢者施設の居室などの、感染の起こりやすい環境では、輻射(放射)による冷暖房が、感染症対策として有効ではないでしょうか?院内感染リスクを軽減する壁面放射冷暖房かなや設計環境建築家 金谷直政
2015年06月10日
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道東の北見、築40年の木造テラスハウスをフルリフォームする物件の紹介です。賃貸住宅に求めるものはなんでしょう?耐震性、省エネ、暖かさ、結露しない家、適正な家賃 等、いろいろあると思います。これらの要望を全てかなえた物件が、現在北見市でリフォーム工事中で、今年(2015年)3月に完了する予定です。賃貸住宅を選ぶとき、築年数を気にする事が多いのではないでしょうか?新しければ性能の良い住宅と考えることが多いと思うからだと思いますが、本来、住宅に求めるのは、新しさではなく、性能のはずなのに、ただ単に新しいものは性能が良いのでは?と言う思い込みから新しい賃貸住宅を探しているのではないかとおもわれますが、いかがでしょう?しかし、賃貸住宅の場合、事業性を確保しなければならないのでシビアに費用配分をし、その結果、目につきにくい部分が省かれてしまいがちです。例えば、賃貸住宅で省かれがちなのは、主に断熱に関わるところ。壁の中に入っている断熱は外観から見えないので、最低限の断熱しか行われず、その結果、寒い住宅。になってしまっているのです。今回のフルリフォームでは、まず断熱を、考えられる最高のグレードとしています。通常の持家で厚さ100mmの断熱ですが、150mmの厚さの断熱材を入れています。ちなみに、性能が良いと思われているコンクリート製のマンションは、断熱材の種類は違いますが、断熱材の厚さは50mm程度しかありません。いままでの賃貸住宅は、目に見えない部分を省いた結果、古くなると何の魅力もなくなります。寒いので住みたくもなくなります。結果的には築20年程度でまた建替えをする必要がでてきます。目先の収益性を考えて安く作り、スグに時代遅れになる賃貸住宅は、結果的に建替えサイクルが短くなり収益を生みづらい資産にしかなりません。今までの賃貸住宅のサイクルは、安く建てる→性能が低いのでスグ価値が下がる→借り手も住みたくない→建替える→収益が出ないという状況です。これでは、誰のための賃貸住宅なのかわかりません。住宅メーカーやディベロッパーが儲かるだけです。少子高齢化、地球温暖化、省エネ、持続可能な社会等、昨今の問題への対応は、しっかりとしたものを適正価格で作り、永く使っていくことでかなりの部分が解決できます。性能の高い賃貸住宅を作り、借りる人にとっても、貸す人にとっても、永く、使い続けられることが大切なのではないでしょうか?◆概要・所在地 :北見市美芳町6丁目5-1・構造規模 :地上2階建 木造・建設費坪単価:約45.5万円/坪(冷暖房、外溝含む)◆戸建て住宅以上の充実設備・暑い夏も快適、全室に冷暖房が効きます。・貸家では珍しい、でも嬉しい追い焚き機能付き浴槽。・浴室乾燥機付き。・幅750mmの大型洗面台。・燃料費が安い、灯油給湯設備。・大きい窓でも寒さ知らずの断熱雨戸。・洗浄機能付き便座。・戸建住宅並みの広い浴室。1317タイプと1616タイプ。◆北見で一番暮らしやすい立地・2台分の駐車スペース(2LDK物件には標準、1LDKにはオプション対応)・物置付き・大型スーパーイオンまで300m。・イオンにはシネマコンプレックスも。歩いて映画の生活。・日常の買い物に便利なスーパーふくはらまで100m。・敷地内にはサクランボの成るサクランボの木 ♪・大きな窓で、日当たり良好。・建築家が設計(リフォーム設計)した住みやすいお家。◆家賃・1LDK(40.40平米)53,000円/月 高齢者に最適。広い浴室。・2LDK(57.19平米)68,000円/月 広いLDK、コーナー窓からの景色が最高。・2LDK(48.60平米)68,000円/月 北見初!地中熱利用冷暖房の住宅、冷暖房費が通常のエアコンの半分!◆連絡先・かなや設計 TEL 03-3611-3559 メール kanaya@k-sekkei.net 担当:金谷・かなや設計に直接、入居の申し出をいただいた方は、仲介手数料を優遇いたします。◆オーナーさん、大家さんもご相談ください。・既存の賃貸住宅の改修に関心のある方の相談にものります。・魅力の低下した賃貸住宅をバリューアップ(価値向上)し、収益物件に生まれ変わらせます。・住宅メーカー(○○ハウス、○○ホーム)や、ディベロッパー(○○建宅、○○建物)が進める新築物件は、必ずしもキャッシュフローが出るとは限りません。・補助金等を活用し、利回りの高いリフォーム(場合によっては建替え)を提案できます。・設計事務所が図面を作り、公正な相見積を施工者数社から取ることで建設費は1~3割は下がります。
2015年02月13日
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省エネ技術の採用を考えるとき、一般的に、次のようなことが起こります。•省エネを目指すと導入の費用が高くなる。•導入も費用を安く抑えようとすると省エネにはならない。この二律背反の現象は、車でも、家電でも同じでしょう。では、建築の場合どうでしょう?多分、製品としての省エネ設備をつけただけの場合は、車や家電と同じように、「省エネ」か「安い」かの選択を迫られるかもしれません。しかし、建築は、多くの要素から出来上がっています。それぞれの要素の思いがけない組み合わせをすることで、「省エネ」と「安い」という二律背反に見える要求の両方を満たすことができます。「省エネ」はプロジェクトの中の一要素建築の場合、ランニングコスト(水道光熱費)は、建物が完成してから、ずう〜っとのことなので省エネは諦めきれない要求事項です。一方、イニシャルコスト(建設費)は、諸々の要素の積み上げであり、各要素が少しづつでも標準より高くなると総工事費が大幅に予算を超えてしまいますので、どの要素も標準に収めておかなければプロジェクト全体が破たんしていまします。バリアフリーも、清潔さも、耐震性も、また、建築以外では、良質なスタッフの確保も、電子カルテetc. 大切なものはたくさんあります。省エネももちろん大切ですが、他の分野の予算配分を侵食してはなりません。ですから、「省エネ」と「(建設費の)安さ」は両立させなければならないのです。そういった観点で考えると、地中熱がいかに素晴らしい省エネ手法だとしても、特別扱いはできないのです。費用対効果をシミュレーションし、導入するに値する技術なのかどうかの見極めが必要です。無批判に受け入れ、金銭的な負担を負った先に、わずかながらの電気代の節約では目も当てられません。下のグラフは、今回のシステムの採算シミュレーションです。今回、導入した方式では、杭を地中熱の採熱部分として使ったり、室内の間仕切り部分を放射冷暖房部分と兼用したり、工事費全体のUPを極力抑え、採算の合うシステムとなっています。試験的に導入し、採算度外視のプロジェクトは違い、本当に元の取れる地中熱利用が完成しました。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2015年01月13日
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地中熱利用と、放射冷暖房の相性が良いことは、前回書きました。このことを別の視点から考えてみます。暖房時には、一般的なエアコンの場合、室外機で約50℃程度の温度を作ります。この50℃の温度を配管を通して室内のエアコン機器に運び、配管に接続する薄いアルミのフィンに熱を伝えます。その温まったアルミのフィンに風を吹き付け、風に熱を乗せて室内に伝えるわけです。ですから、冬の外気温が約0℃だとすると、50℃も暖めなければならないのです。一方、放射冷暖房は、まず室外機で作る温度が36℃程度と、エアコンに比べ14℃も低い温度です。ですから、地中熱と放射冷暖房の組み合わせでは、東京での地中の温度が年間を通して18℃であることから、18℃暖めれば良いだけです。1.一般的なエアコン:0℃→50℃(50℃の差)2.地中熱と放射冷暖房:18℃→36℃(18℃の差)いづれも、ヒートポンプという技術を使っていますから、熱を低いところから高いところへ汲み上げるということを考えると、汲み上げる温度差が小さいほうがエネルギー消費が小さいのがわかると思います。水を50mの高さまで汲み上げるエネルギーと18mまで汲み上げるエネルギーの違いのようなものなのです。得られる熱が同じならエネルギー消費が少ない方が良いですよね。これが、地中熱と放射冷暖房が省エネである理由なのです。下記に、一般的なエアコンと、地中熱を利用した冷暖房システムの消費電力の比較を示します。東京都心のオフィスビル(笹田、2010) 地中熱利用促進協会ホームページより東京都心のオフィスビルで、空調システムを空気熱ヒートポンプ(通常のエアコン)から地中熱ヒートポンプに更新したケースを示しています。空気熱と地中熱の電力消費量の実績を比較すると、年間で49%の節電・省エネとなっており、とくに夏季の節電・省エネ効果が大きいことがわかります。(地中熱利用促進協会より抜粋)かなや設計 環境建築家 金谷直政
2015年01月12日
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地中熱の利用に当たっては、設置費用が嵩むことは、前回、述べた通りです。そして、その解決策として、杭を使った実例を紹介しました。地中熱利用には、ヒートポンプという技術を使います。ヒートポンプは、熱を低いところから高いところに汲み上げる装置で、水を低いところから高いところに組み上げるポンプをイメージするとわかり易いのではないでしょうか?熱をくみ上げるポンプというイメージです。そして、このヒートポンプの特性として、熱源温度(地中熱源側、一次側と言います)と利用温度(室内の冷暖房設備、二次側と言います)の温度差が小さければ小さいほど高い効率が得られる。と理解しておくことが大切です。地中熱利用に最適な壁面放射冷暖房以前より、高齢者等、弱者の居住環境には、エアコンよりも放射式冷暖房が、快適で、なおかつ安全であることを追求し、それに見合った設備「壁面放射冷暖房」を開発してきました。こういった試みは、建築設備機器としては、唯一、医師会のホームページでも取り上げていただいています。壁面放射冷暖房は、暖房時には36℃程度の温水、冷房時は18℃程度の冷水、のように、熱源温度と利用温度の温度差がきわめて小さくて良い冷暖房設備です。この「壁面放射冷暖房」と「地中熱ヒートポンプ」の組み合わせが、「省エネ」と「快適」を両立させる冷暖房システムとなります。 高齢者等の弱者が快適→すべての人が快適この画像は、サーモカメラで撮影した、暖房時の居室の様子です。右側の壁面が30℃程度で、一様に赤っぽくなっています。反対の壁面、天井、床も25℃程度のほぼ均一な温度になっています。これは、部屋全体の温度がほぼ一様なため、平均輻射温度が高めになっており、とても快適な状態であることがわかります。このように、地中熱を使った省エネ型の冷暖房が、快適な住環境を実現することと両立していくことがおわかりいただけると思います。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2015年01月12日
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地中熱を使った省エネとは?地中熱を利用し、省エネルギーに貢献するという考えが最近よく聞かれます。考え方自体は1912年にスイスにおいて地盤の熱をヒートポンプの熱源として利用する考えが出ていたようで、ヨーロッパなどでは20年ほど前から急速に普及してきているようです。冷暖房等の建築設備は、快適性と設置費用、光熱費のバランスを考えながら、現実的な設備を提案しなければならないと常々思っているが、地中熱の場合、設置費用が嵩み、一般的な建物での導入は難しいのが現実です。当たり前のことかもしれませんが、「省エネ」とは、ただ単に「省エネ」が求められることは実は少なく、実際には「省コスト」が求められていることに注意しなければなりません。例えば、ハイブリッドカーが1000万円だとすれば、今ほどハイブリッドカーが普及しているでしょうか?ガソリン車に比べ、ちょっと高いくらいで、ガソリン代が節約できると考えると、通勤や、社用に使う人の場合、1年で元が取れるとか、2年で元が取れるとか、考えて導入しているのではないでしょうか?省エネ技術も同じだと思います。「地球にやさしい」という事だけではなく、光熱費が安くなり「何年で元が取れる」という感覚が大切と考えます。地中熱利用の省エネは、太陽光発電と同程度さて、話を地中熱利用に戻すと、地中熱を利用するためには、地中に穴を掘り、その穴に配管を通し、配管の中を通る冷媒を通して、地中の温度と熱交換をすることになります。その、穴を掘るのが、非常に高いのです。住宅1軒分の冷暖房をする場合、大体100mの深さの孔を掘らなければなりません。穴を1m掘るのに1万円~3万円かかりますので、100万円~300万円掛かります。どうですか?電気代を節約したいがために地中熱利用をする。→そのために穴を掘る→その値段が100万円以上!!!!地中熱を利用しても、光熱費は0円にはなりません。冷暖房費が30%程度安くなるだけです(それでもすごいのですが)。2万円/月かかっていた冷暖房費が、6000円/月、程度安くなる程度。しかも夏と冬だけですから、半年分として、12万円/年安くなる程度ですので、最低でも元を取るのに約10年かかる計算です。実は、10年で元が取れるのは、建築の中では悪い方ではありません。太陽電池も、補助金が無くて買電価格32円/kWh(2014年 東京電力管内)で買ってくれた場合で13年程度で元が取れるので、地中熱利用と太陽電池利用は、今のところ、同じくらいに「現実的」な省エネ技術と考えて良いのかもしれません。太陽光発電より、効率的な地中熱利用の方法しかし、もっと良い方法があります。それは、穴を掘らずに地中熱を利用する方法です。東京でも、墨田、江東、江戸川、葛飾、中央区(関東平野は利根川の三角州なので、東京湾沿岸は似たような地盤です)などは地盤が悪いので、ある一定規模以上の建物を建てる際は杭が必要になります。コンクリート造の建物の場合、1億円程度の建物でも1000万円程度の杭工事費がかかってしまいます。実は、この杭を地中熱の利用に活用することが可能なのです。墨田区に建設した事例を紹介したいと思います。この建物は、都市型ケアハウスと言って、高齢者が住む共同住宅で、80坪程度の狭小地でも、建てることができる、高齢者施設の中では、コンパクトな施設になります。年金等で生活されている高齢者のための住宅なので、家賃はあまり高くすることはできませんし、建設費も通常より高くすることはできません。そんな中、光熱費も安くするために地中熱利用を採用することにしました。写真のような杭を利用して、採熱用の配管を地中に埋め込みました。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2015年01月10日
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北海道の北見市、築40年のアパート、古くてなかなか借り手が付きません。大家さんとしては、壊すにも解体費用がかかるし、更地にすれば土地の固定資産税が6倍にもなるので、古家&空き家のままになってしまいます。現在、全国で問題になっている空き家の多くが、このような問題を抱えています。少子高齢化による高年齢の部分が大きい人口ピラミッド。もし、建物の築年数ピラミッドというものがあれば、人間の高齢化と連動するように、築年数の多い部分が多くなってきているのかもしれません。しかし、建物の場合、古いから寿命を迎えるという事はありません。「リフォーム」という魔法で若返りが可能です。人で例えれば、還暦を迎えたところで体が生まれたての新品になるようなもの。ここで、建物の寿命について考えてみると、日本の住宅の寿命は短いと言われています。国土交通省の建設白書によるとイギリスの住宅の平均寿命は75年。一方日本の平均は26年。消費大国のアメリカでさえ44年であることと比べると、極端に短いようです。日本の住宅の寿命が短い理由としては、建物そのものが陳腐になってしまうことが考えられます。どういった点で陳腐になってしまうかというと。頻繁に更新される建築基準法に適合しなくなる。住宅に求められる要求水準に適合しなくなる。等が、考えられます。しかし、建築基準法においては変更の必要がないほどに高度化してきました。また、住宅の要求水準もこれ以上は必要ない位充実してきました。つまり、現行の建築基準法を順守し、長寿命を見据えた、構造、断熱、維持管理のしやすさ等を考慮した住宅を丁寧に作れば。これからの日本の住宅の寿命はイギリス並みに長くなると思われます。したがって、今回のリフォームをきっかけに、現行の建築基準法に適合し、新築以上の構造、断熱、維持管理のしやすい最高水準のアパートに再生出来れば、借り手のいない古アパートが、有効な社会の資産として動きだすことになります。特に、アパートのような収益物件の場合、事業として成り立っていることが前提になります。事業性の裏付けは、面的な広がりと持続性のある空き家問題の解決へとつながっていくと考えられます。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2015年01月07日
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梅雨が明けて、本格的な夏。暑い日が続きます。そんな、夏、エアコンで涼むのも良いですが、冷たい風に当たると「不快!」体調も崩れがちです。夏場には風邪やインフルエンザが意外に多いのもうなずけます。安全で快適な冷房って、無いのだろうか?冷たい風が当たらず、暑がりも寒がりにも不満が少ない冷房を紹介します。壁面放射冷房です。簡単に言うと壁自体が凍って冷え、その冷えた壁が体から放射される熱を取ってくれます。真夏に鍾乳洞に入った時の涼しさの感覚と同じです。明日(7/23)、両国国技館で開かれる、ひがしんビジネスフェア2014 で実演展示します。この機会に、是非、凍る壁を体験してみてはいかがでしょうか?・時 :2014年7月23日 9:30~16:00・場所:両国国技館すみだ中小企業センターのブースに展示しています。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2014年07月22日
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先日、家の設計をお願いしていただいた方から聞いた話です。「家を建てたいと思ったけど、どこに頼んだらよいかわからないので、知名度のある住宅メーカーさんに行こうと思いました。」とのこと、そんなものかな?と思いつつ話を聞いていると、「建物を建てるとき、住宅メーカーだと、金額が決まってから、契約を結ぶことになるが、建築士に頼むと建物の工事金額が解らないうちに設計の契約を結ぶことになりますよね。そうすると、もし、建物の工事費が高くて建てられなくなった場合、設計料が無駄になるので、設計事務所には頼みづらいんです。」という話をしてくださいました。[住宅メーカー]か[設計事務所]か、どちらに頼もうかと悩んでいる人の多くが、同じようなことで悩み、決断しかねているのではないでしょうか?値段がはっきりわかったものを買いたいというのは、車や服など、既製品の買い方ですが、まだ完成していないものを買う場合は、買い方が違うのです。値段が決まったものを買う方法は、価格の決定権が売る側にあるのですが、まだ完成していないものを買う場合はむしろ、「買う側が値段を決めて買えばよい」のです。このくらいの値段で建物が欲しいと決めて、それに合わせて設計し、業者を探して、建ててもらえば良いのです。建てる前に値段が決まるというのは、高め高めになっているはずです。私の事務所で、建物を建てる場合はほぼ、相見積もりという方法で建物を建てます。相見積もりとは、設計事務所が施主と打ち合わせて図面を作り、その図面で施工者数者から見積もりをとり、安いところに発注する方法です。この方法だと、ほぼ、市場の値段の安いほうで受注できます。数社から相見積もりをとるとだいたい2〜3割工事費が開いてきます。不思議なことですが、だいたい2〜3割開きます。一般的な住宅なら、2000万円〜2600万円の間で見積もりが上がってきます。住宅メーカーで同じ広さ、性能の住宅を頼むと2600万円以上の値段になるはずです。以前、住宅メーカーにも、相見積もりに参加してもらったら、一番安い見積もりより5割も高い見積もりがでてきました。つまり、そういうことなのです。値段が先にわかる契約方法は、高くなるのです。建物は、現場で多くの手間を積み重ねて作る一品ものです。作る業者によってコストの差はそれほど出ないはずです。システムキッチン、サッシ等、合理化できる部分は、合理化し尽くされ、それらを組み立てる職人の手間もほとんど同じです。時間がかかったから値段が上がることはなく、完成した成果によって職人の工賃も決まるので、住宅メーカーが作っても工務店が作ってもそれほど違いはありません。ただ、住宅メーカーの宣伝費、営業経費、ショールームの維持費分は明らかに工事費に上乗せされますので高くなっています。ものを買う発想ではなく、自分が都合できる予算の中で最大限価値のある建て方で建ててみてはいかがでしょうか?かなや設計 金谷直政
2014年06月11日
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建築の寿命ってどのくらいか知っているでしょうか?学生の頃、建築材料学の先生が「鉄筋コンクリートの寿命はどのくらいでしょう?」と、学生に聞きました。コンクリートと言えば石と同じように固いので永久と書きました。ところが正解は60年。鉄筋コンクリートは、型枠を組みコンクリートを流し込んで形を作る構造です。コンクリートの中には鉄筋が入っており、鉄が引っ張り、コンクリートが圧縮を受け持つことで双方の長所を併せ持つ19世紀の大発明です。弱点として鉄筋がさびることで、コンクリート面を押し出しひび割れが発生し、そこから更に雨水や、二酸化炭素が入り込み鉄筋のさびが進行するという悪循環に陥る事です。ですから、鉄筋のさびにつながるコンクリートのひび割れやジャンカ(セメント量が少なくスキマが出来ている様子)は良くありません。60年というのは、設計通りに工事が良好に行われた場合の寿命です。それでは、世の中の建築はちゃんと施工されているのでしょうか?実は、そうとは言い切れません。先日も、某大手不動産会社が発注。大手ゼネコンが施工した青山の超高級マンションで、コンクリートが脆弱になる施工ミスが発見されました。これは、たまたま、マンションの契約者が、サイトで見つけた内部告発を追求し施工不良が見つかった物件ですが、たまたま見つかったところから考えると施工ミスは氷山の一角。ハインリッヒの法則から類推すると同様な問題が埋もれていると考えられます。コンクリートの施工不良は巷では良く起こっていると思います。19世紀の大発明である鉄筋コンクリートよりさらに昔、ローマ皇帝ハドリアヌス帝は、起源125年にパンテオン神殿を建てました。これは、コンクリートを使って建てた建物で、建設後1900年にもなろうとしているのに立派に建っています。わずか60年先も危ういコンクリートを打つなんて日本人は、いまだにローマ帝国の足元にも及びません。無限のコンクリートを目指したいものです。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2014年04月07日
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地球温暖化対策、省エネ、原発など、エネルギーの分野に関して、今日私たちが向き合っている目標は多い。これらの課題解決が必要であることは、多くの人にとって異論のないところだと思います。 では、その手段としてはどのような手段があるでしょうか?現在一般的に言われているのが、太陽電池です。国、地方自治体の補助金、電力会社の買電(ばいでん)制度を見ても太陽電池の普及を誘導するような制度になっています。また販売業者、住宅メーカーのCMなどの影響もあり多くの人が、太陽電池さえつけておけば、冒頭に挙げた3つの課題が解決すると思っているのではないでしょうか? しかし、太陽電池にはさまざまな問題点があると考えられます。 まず、発電効率が低い点。この発電効率が低いということには2つの意味があります。太陽が理想通りに出てパネルにあたっている時でも効率は最大でも20%程度です。そして、表示された発電量に達するのは一日のうちの限られた時間帯のみで、日没後は発電量は当然「0」だし、大半の時間は表示された発電量に遠く及ばない電力しか生み出さないのです。 次に、社会全体での費用負担が平等ではない点。自宅の屋根に太陽光パネルを設置している家では買電によって電気代が節減されることになっていますが、買電のための費用は電気会社が電気代から払っているので、見方を変えると、太陽光発電設備を付けている者に対して、付けていない者から資金が流れることによって成り立っている仕組みです。 このように、技術的な点と、公平性という社会的な点において、太陽光発電は問題があるのではと思います。さらに、公平性はさておき、社会全体で省エネを考えるということであれば、もっと効率が良くて、多くの人が納得のいく技術の普及を進めるべきではと思います。 かなや設計 環境建築家 金谷直政
2014年04月05日
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冷暖房といえばエアコンをイメージする方も多いのではないでしょうか?一般的な家庭では壁の上のほうに設置されていたり、職場では天井に埋め込まれたりしている。その他、病院、福祉施設などでも使われています。しかし、広く普及しているエアコンは、風が当たる、ホコリが舞う、暖房時に空気が乾燥する等、様々な問題点が指摘されています。特に、高齢者を始め入院中の患者のような身体的な弱者にとって負担になっています。健康な人であっても、先に挙げたような問題点があることを考えると、弱者にとっての負担が大きいと考えられます。では、エアコンが持っている問題点を解決する冷暖房があるのでしょうか?私が15年ほど前に老人施設を設計した際に、「風が出ない、高齢者に優しい冷暖房をつけて欲し」と言われ、「輻射暖房が最適」と考えたことに始まり、輻射式の冷暖房の採用を考えました。輻射式の冷暖房自体はすでにいくつか世に出ていましたが、そのどれもが、コスト、耐火性、結露の問題等の課題があり実用的なものがなかったことから、「壁冷暖房」の開発を始めました。第一号が完成したのが2011年。それから10年がたち、快適性、安全性に加え、省エネ性も加えた、地中熱を利用した壁冷暖房が完成。快適、安心、省エネ、を同時に実現する壁冷暖房、この冬も入所しているお婆さん、お爺さん、そして、施設の管理者の方にも満足してもらえました。かなや設計 環境建築家 金谷直政
2014年04月04日
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すみだ区中小企業センター主催で、セミナーを開催します。墨田区だからできる!!「防災・省エネ・快適を同時にかなえるものづくり」欲張りなテーマですが、・軟弱地盤・震災時の火災の可能性が高い・密集地帯の墨田区だからできるものづくりを考えてみました。これらマイナス要因にあふれる現状に目をつぶるか、受け入れて解決方法を作り上げるかは、自分自身なのだと思います。参加自由です。墨田区だからできる で検索。または、すみだ中小企業センター最新技術セミナーをクリック■参加料:無料■定員:20名(先着)■申込方法:電話、ファックス、電子メール■申込先・問い合わせ先:すみだ中小企業センター 担当 菅沼 TEL03-3617-4351
2013年09月20日
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