墨田区の建築家 「気まぐれブログ」

2019年07月29日
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カテゴリ: 建築
34人もの犠牲者を出した。京都アニメーションの火災。前回は、建築基準法の趣旨の解釈を誤ったたではないか?と書きました。では、なぜ、趣旨の解約を誤るようなことが起こるのでしょうか?

これを読んでいらっしゃる方が、建築の専門の方であればわかるとは思いますが、一般の方に、建築基準法のややこしさというか?複雑なことはなかなか理解していただけないと思いますので、少し、建築基準法についてお話してみたいと思います。

建築基準法は、建築が安全であり、「国民の生命、健康及び財産の保護を図り、、、、」とあるように、安全であるように様々な基準が盛り込まれています。しかし、建物は安全性を高めるだけではなく、使いやすく快適性も求めらることから、安全性と快適性のバランスを取りながら設計をしています。

今回で言えば、火災が起きた時の危険から、生命を守るという部分がしっかり機能しなかったために多くの命が失われたことになります。

主要構造部が準耐火構造ではない「ロ準耐-2」
特に問題なのが建築基準法施行令112条9の条文にある「主要構造部を準耐火構造とし、、、、、、」と準耐火構造より燃えやすく? した場合には、竪穴区画を免除するような言い方になっていたことです。この条文を根拠にすると竪穴区画が免除できてしまいます。

ここで、ややこしいのが、この建物が「準耐火建築物」の性能を求められていたとしても「ロ準耐-2」という形式にしてしまうと、「主要構造部が準耐火構造ではない」「準耐火建築物」が可能になってしまうのです。

違法か、適法かで言えば適法ということになりますが、何故、この条文ではわざわざ、耐火性を下げた建物にすると竪穴区画を免除するというようなことを言っているのか、理解できません。

わかりやすく言うと、建物の構造を火に強いコンクリートにすると竪穴区画を設置しなければならないのに、コンクリートより火に弱い鉄にすると竪穴区画が不要になる。というようなことです。



つまり、耐火性を下げると、避難設備を緩和できるという不思議な条文になってしまっているのです。誰かが意図してそうなっているのか、たまたま、条文の組みあ合わせで齟齬ができて、こんな抜け道のようなことになってしまっているのかわかりませんが、不思議です。

実際に、私自身、この条文を使い竪穴区画を免除し、オープンな空間を設計したことはありましたが、建物の性格を考え3層吹き抜けの階段には不安を感じ、自主的に区画の扉をつけました。

1982年にホテルニュージャパンというホテルで火災があり34名の方がなくなりました。この後、建築基準法だけでは安全性が確認できないということで、建物の種類と規模によっては、防災評定という方法で、専門家が、個別に安全性を確認するというプロセスが出来ました。その成果があってか、その後、一度火災によって大勢の死者がでることはなくなりました。

今回、たとえ適法ではあっても、総合的に見て、危険性を予見できる場合には、配慮があってしかるべきだったのではないかと思いました。ただ、むやみに厳しくするのでは、簡単でも、「煙の降下時間」と「避難時間」の比較をし、避難の安全性を確認できるような知見が、審査する側にも、設計する側にもあれば、このようなことにはならなかったのではないかと思います。

かなや設計  環境建築家 金谷直政





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最終更新日  2019年07月30日 13時25分49秒
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