ザビ神父の証言

ザビ神父の証言

2010.03.14
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カテゴリ: 外国史
ハイチに贈る(56)

1799年11月9日、ブリュメール18日のクーデタで権力を握ったナポレオンは、先ずはフランスにおける、次いでヨーロッパにおける自らの地位の安定に全力を傾けます。それゆえ、植民地問題については、当面現状維持を選択しました。

この頃、仏領サン・ドマングでは、トゥサン・ルヴェルチュールの軍勢が力を付け、1800年7月末には、仏領サン・ドマングのほぼ全域を平定することに成功します。ナポレオンは、1801年2月6日にトゥサンを総督に任命して、現状を追認しています。

ここにトゥサンは、事実上サン・ドマングの最高権力者となったのです。1801年2月4日、フランス本国で国民公会が「奴隷制度の廃止」決議を採択した、丁度7年目の記念すべき日に、トゥサンは10名の起草委員を任命して、「フランス領植民地サン・ドマング憲法」の起草委員会を設置しています。

10名のうち白人の委員が7名、ムラートの委員が3名となっていますから、トゥサンが一部の白人層にまで、支持を広げていた事実が読み取れます。10人の委員は、精力的に作業を進め、同年5月には全文77条からなる成案をまとめ、7月8日にトゥサンの名によって公布されました。

この憲法は、上に記した正式名称にもある通り、サン・ドマングをフランス共和国の一部をなす植民地と規定しています。トゥサンはここで独立国を標榜していません。彼は独立を目指さないことを表明して、フランス本国との関係を悪化させない配慮を見せたのです。しかし、植民地が独自の憲法を持つことと、植民地であり続けることには、明らかに矛盾があります。卑しくも、およそ憲法なるものは、政治的主権者のみが作りうるものであり、植民地の植民地たる由縁は、国家主権を本国に奪われていることにあるからです。

次いで、憲法第3条は「この領土において、奴隷は存在し得ない」と記しています。憲法と名のつく文書で、奴隷制の廃止を明記したのは、このサン・ドマング憲法が世界で最初のものです。第4条と5条とでは、「肌の色」をはじめとして、「いかなる差別も存在し得ない」ことを明記し、第6条では、ローマ・カトリックを「公に表明された唯一の宗教である」と規定しています。

フランス本国との関係で問題となるのは、憲法の制定を含む立法・行政・司法の三権を、植民地に帰属させていることでした。また、植民地行政を1人で担う総督には、植民地議会への憲法改正を含む法案の提案権、徴税並びに植民地財政の管理権、出版物に対する検閲権、地方官吏の任免権、軍隊の統率権などの大権が賦与されていることにありました。

その上、トゥサン自身を終身総督とすると同時に、後継総督の指名権すら与えることになっていました。これでは、トゥサンは金日成や金正日以上の権力者の扱いです。


                             続く





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最終更新日  2010.03.14 21:22:19
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