図書館で本を借りよとしてもついつい詩集に目がいってしまいます。
今回は永瀬清子氏の詩集「春になれば鶯と同じように」を借りて読みました。前のように出かけられないので、本でも読もうという魂胆です。でもまだ目がチラチラするので、なかなか進みませんでしたが、自分が好きな詩をPCに書き留めておきましたので、それを紹介します。
この「春になれば・・・」は晩年の詩集のようですが、永瀬さんらしいふくよかさを遺憾なく発揮しています。
アンターレス
--さそり座への願い
はなれの窓からは
水田をへだてて
新田山が おだやかに横たわっていた
その上にすれすれに
ぴったり さそり座のアンターレス
まるで巨きな束ね熨斗のようだった
或いは横Sの字にも見え、かがやいていた
その星座が その窓から母の部屋をいつも見守ていたのだ
母は亡くなる前に
下着類をすっかり真っ白に洗って
きちんと畳んでしまっておいた
亡くなる日にはその部屋の
障子も真っ白に張りかえて
自分の敷いた布団の上に倒れて
そして亡くなったのだ
帰するがごとく、と言う言葉のとおりだった
ああ私はそのようにはできず
ごたごたの書きつぶしの中で死ぬだろう
ペンをはなさず死ぬだろう
ただ願うのはアンターレス
あなたが私を見ていてくれて
母を見守ったそのように
私をじっと見ていてくれること
いつかいつかその夏の夜に
私をみつめていてくれること---。
水田にうつったその二子山の形で
大きな唇のように私を包んでくれること---。
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