Hungry Heart

2006/10/07
XML
カテゴリ: 入院の日記
肺に溜まった胸水を排水する為に、管が挿入されどこに行くにもドレナージ装置を引いて歩くことになった。
ドレーン.jpg

トイレもお風呂も一緒に移動。
これを引いてると、やはり目立つようで患者さんから声がかかる。

患者『気胸か??』
ゆ『水を抜いてるんです~』

充電は20分~30分しか持たないのに長話されると結構あせる

この装置を転がしながら売店へ行くと、同じ装置を転がしてるおじちゃんと目が合った。
どちらともなく会釈をし、歩み寄る。

おじちゃん『なんでつけてるんだい?水か?』



おじちゃん『なんで水が溜まったんだい?』

ゆ『私、結核なんです。結核性の胸膜炎で水溜まったんですよ~。隔離されてるし最悪です
※ゆきじマスク装着してます。

おじちゃん『結核か~。大変だったな~。でも治る病気だからいいな~。』

ゆ『そちらはどうして水が溜まってるんですか??』

おじちゃん『俺はぁ~癌なんだよ~。肺癌で水溜まったんだ~。まいるよな~。』

ゆ『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

おじちゃん『俺の部屋から結核病棟がよく見えるんだけど、治る病気だからそっちの病棟の人がうらやましいと思ってんだ~。』

ゆ『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』

おじちゃん『まぁ、ガンバレや!』



”自分は大変な思いをしている、こんな装置が体に入ってんだよ、どう?大変そうでしょ?”
みんながジロジロ見るたびにこう思っていた。

隔離されていることも、水を抜いていることも”私、可哀想でしょ?”とまるで悲劇のヒロインだった。

でも、私は、おじちゃんの言うとおり治る病気だ。

病室に戻るとすぐカーテンを引いて、布団をかぶって声を殺して泣いた。


『おじちゃんだって治るよ』とは言えなかった。
『おじちゃんもガンバってね』とも言えなかった。
装置を充電させるのも忘れて、シクシクと泣いた。


おじちゃんとは翌日も売店で会った。
リンゴのジュースを買ってくれて『少し座ろうや』と言った。

ゆ『私、結核だし、あまり一緒に居ないほうがいいですよ。』
おじちゃん『どうってことねーよ。ままま、座れ。』

おじちゃんとソファーに座り、ドレナージ装置を並べた。
私とおじちゃんの胸水が並ぶ。
同じ胸水なのに、病気は違うんだなー・・・。

おじちゃんは先月奥さんを亡くしたばかりだと話し始めた。
おじちゃんは数ヶ月前から体調が悪く、変な咳が出て、体重も減少していたと言う。
奥さんがくも膜下出血で病院に運ばれ入院したときに、娘さんが体調の悪そうな父親を心配し、
その病院で健康診断を申し込んでくれ、検査したところ癌が見つかったのだと言う。

そして、気の毒なことに奥さんは一週間後に息を引き取り、初七日が済むと同時におじちゃんが入院したと淡々と話した。
『あっけないもんだよなー・・・』

昨日会ったばかりの見ず知らずの私にこんな事まで話すなんて・・・。

寂しかったのだろうか・・・。誰かに聞いて欲しかったのだろうか・・・。
病気は違えど、同じドレナージ装置を引きながら歩いている私に親近感を覚えたのだろうか・・・。

どうか、おじちゃんのこの先の人生、楽しいことばかりでありますようにと
おこがましいけれど願わずにいられなかった。



つづく。










お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2006/10/08 12:37:46 AM
[入院の日記] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Website
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: