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2006/09/01
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カテゴリ: 恋愛小説(連載)
【「きっと、二人なら…」を最初から読む】 【目次を見る】

 真新しい白い壁の6階建てのアパート。そこの二階の角部屋が純の部屋だった。
 純はドアの鍵を開けて梓を招き入れると、彼女を私室へと通した。そして蛍光灯のスイッチを入れる。チカチカと三度ほど明滅を繰り返した後、天井の丸い蛍光灯が室内を白く照らし出した。
 初めて尾とづれる純の部屋は、男性の1人住まいの割りに綺麗に整頓されており、そこから彼の几帳面さを窺い知ることができた。
八畳ほどの洋室には、窓際にベッドと本棚が並び、ドアから入って右手の壁の前にテレビとそれに立てかけられた小さな折り畳みテーブルがある。
 純はそのテーブルを出してきて部屋の真ん中に広げると、
「今、お茶入れるから。麦茶でいい?」と言って、部屋を出てすぐの三畳ほどのキッチンに立った。
「ありがとう。あまり気を遣わなくていいから」
梓がドアの方へと早足で歩み、純へと返すと

梓は「うん、あっさりしてる物だったら」と答えて彼の様子を見守る。
すると純は後ろの戸棚から紙に包まれた何かを取り出して、調理台へと乗せた。
「これ、讃岐うどん。香川に嫁いでる姉から大量に送られてきたんだ」
と笑いながら話す純。彼は大きな両手鍋に水を張るとコンロに掛けた。
「そっか…お姉様、香川だったわね」
 大学に入ってまだ間もない頃、確かそのようなことを純からちらっと聞いたことを梓はふと思い出した。
「何か手伝おうか?」
黙って見ているだけと言う状態に申し訳なさを募らせた梓が、それとなく純へと言葉を掛けると
「いいって。今宮は一応病人なんだから、ゆっくりしてないとな」
と言う彼の思いやりの含まれた言葉と優しい笑顔が帰って来る。
「ありがとう」

 しばらくして純が、茹で上がったうどんの入った鍋とガラス製の器を持って戻って来た。
「釜上げうどん。これが結構いけるんだよなぁ」
 うどんの入った鍋をテーブルの真ん中に置いて、梓の前にガラスの器と割り箸を置く。直径10センチほどの器の中には濃い飴色の出汁が、深みのある醤油の香りを立ち上らせていた。
「じゃ、遠慮なく食べて」
「ありがとう、桜井君。頂きます」

 随分と久しぶりに食べるうどんの味は、何だかほっとする美味しさで、それまで何を口にしても美味しいとも思えなかった梓だったが、久しぶりに普通の人と同じくらいの量を食べることができた。
美味しそうに食べる彼女を前に、純も動かしていた手を休めて安堵の笑みを浮かべた。
「ところで話って何?」
 食後しばらくの後、それとなく尋ねて来た純に、梓は静かにうなづいてから話し始めた。
「桜井君…貴子のことなんだけど…やっぱり、あの子は止めた方がいいと思う。
昼間、貴子私のお見舞いに来てくれたの。早川君と一緒だったわ…。
私ね…桜井君が傷つくところなんて見たくない…。だから…だから貴子のことは…」
「知ってる」
 まだ彼女が最後まで言い終わらないうちに、純が冷静に返す。
「えっ?」
驚きを隠しきれず梓の唇から声が漏れた。すると純は、冷静な表情のまま静かにこう続けた。
「今日、今宮の見舞いに行った帰り道で、自転車に二人乗りしてる貴子と早川の姿を見かけたんだ。
貴子、楽しそうに笑ってた…。俺と一緒に居る時よりもずっと楽しそうに…。
その時やっと分かったんだ。この前、貴子の言ってたことはやっぱり彼女の本心だったんだって…」
「それ…どう言う…?」
戸惑いがちに問う梓に、純はしばしの逡巡の後
「俺達、別れたんだ」と淡々と答えた。
~To be continued~




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最終更新日  2006/09/01 04:50:21 PM コメントを書く


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