今回もロンドンに住んでいた時の話を...。 その日僕は本当にきれいな夕日を見た。場所はプリムローズ・ヒル。緑の芝が美しいちょっとした小高い丘の公園で、沈むまでその光景に見とれていたのを覚えている。前景には、犬を散歩させている老人や帰宅途中の近くの住人が、時折シルエットで通り過ぎて、粋な偶然の演出をする。プリムローズ・ヒルはリージェンツ・パークの北側とアルバート・ロードを隔てて接している。つまり London Zoo (動物園)からは通りを渡るだけだ。こんな、いかにもロンドンらしい所で見た夕日だから、余計印象に残っているのだろう。
プリムローズ・ヒルがいかにもロンドンらしいと書いたが、「ロンドンらしい」にも当然いろいろある。キンクスの『ウォータールー・サンセット』の舞台になった Waterloo Station (ウォータールー駅) から、すぐ近くのテムズ川にかかる Waterloo Bridge (橋) にかけても、ロイヤル・フェスティバル・ホールやナショナル・フィルム・シアターなどのあるサウスバンクと呼ばれる一帯で、さすがにロンドンにいる実感が味わえる界隈だ。駅舎の入り口は昔のまま残っていて、実にかっこいい。 ロンドンを知らない人でも、あの有名なビッグ・ベンから見て、テムズ川の対岸わずか左手のところ、ちょうど今評判の大観覧車ロンドン・アイの向こう側といえば、だいたいの光景が想像できよう。ビッグ・ベンから歩いたとしても15分。それ以上はかからない。