あま野球日記@大学野球

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2011.07.08
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カテゴリ: 近鉄バファローズ

前回 に続き、 「江夏の21球」 のこと。

■1979年の日本シリーズ第7戦、9回裏一死満塁の場面でスクイズを失敗し、結局広島に敗れ日本一を逃した近鉄バファローズ。実は近鉄・ 西本幸雄 監督には、  1960年(昭和35年)の日本シリーズ(対大洋戦)でもスクイズを失敗し、敗れ去った経験があることはすでに書いた。

この時の日本シリーズは、西本さんにとって苦い思い出が他にも2つある。それは知将と讃えられた大洋・ 三原脩 監督の心理戦にまんまとはめられたこと。ひとつは「球場外」、もうひとつは「球場内」、つまり試合においてである。

まず今日のブログでは前者「球場外」についてメモしておきたい。このことは書籍『魔術師 三原脩と西鉄ライオンズ』(立石泰則著、小学館文庫)に詳しいので、以下に引用を。


西本監督率いる大毎と三原監督が率いる大洋が日本シリーズで激突する数日前、コミッショナー、両リーグ会長や監督が集まって会合の場がもたれた。しかし西本は、東京から会場の川崎に向かう途中で渋滞に巻き込まれ、小一時間ほど遅刻してしまう。当時は監督1年目の新人監督だった西本はすっかり恐縮し、西鉄ライオンズの黄金時代を築いた大先輩の三原に平身低頭、詫びた。だから許してもらえたと西本は思っていた。だが三原の反撃がさっそく始まった。

翌日、ある雑誌社の企画で日本シリーズの対決を控えた西本・三原両監督の対談が組まれていた。西本は定刻までに会場に到着したが、今度は三原が現れない。しびれを切らした雑誌社の担当者が自宅に電話をすると、三原本人が電話口に出て、「そんなこと、あったかな」と惚けたという。三原が現れたのは、約束の時間から1時間半以上も経ってからのことだった。

西本の述懐---。

「まぁ、何ちゅうかね、厳しさちゅうか、もっと汚い言葉でいえば、えげつなさというか、そんなものを『ふ~ん』と思って感じました。三原さんにすれば、もう戦いは始まっているという感じだったんでしょうね。意地というか、『この若造が』というところがあると思いましたね。それで僕は『もうクソッ!』と思った。ま、そこらへんも三原さんの戦法だしね」

三原は「野球は心理戦」と言ったが、これは簡単にいえば、(試合では)相手の嫌がる事をする、というものである。しかし心理戦は「球場外」でも、試合前にすでに始まっていた。それは三原の常套手段でもあった。どんな優れた人間でも、感情的になれば、判断ミスを犯しやすくなる。西本との対談を「忘れた」のも、新米監督に対する三原の先制パンチだったと思われる。西本の采配にどれだけ影響を与えたかは別にして、結果的に西本は不愉快な思いをしたし、感情的にもなった。 


■結局、 西本さん率いる大毎は、スクイズ失敗をきっかけに1勝もできず大洋に敗れた。敗戦直後、西本さんが大毎・ 永田雅一 オーナーと 「一戦交えた」のは既報のとおり 。また前出の『魔術師---』には、この時のスクイズを仕掛ける西本さんの心情が詳細に描かれていて興味深かった。再び、以下に引用。( )は「あま野球日記」が加筆した。

「谷本(大毎の打者)のバッティング1戦目で秋山(登、大洋のエース)にいかれ、それから僕も秋山のシンカ-の威力ももうよくわかっていましたから、それにオリオンズの打線が沈滞していたからね。だから、今回のシリーズの重苦しさも分かってましたから、試合をリードされるんじゃなしに、対等な対場に戻せば、これをきっかけに何か肩の荷が下りて本来の姿に戻ってくれるのではないかという意識があった。それにスクイズは、成功したって1点しか取れん。1点取れればいい、という感じで使う戦法ですよね。ところが、あのときは満塁でしょう。ヒット1本出れば、ひっくり返せるというケースです。だから、人は僕を消極的というわけですよ。けれども、このスクイズのサインと言うものは、胃が痛くなる思いで出すものなんだ。度胸のない監督には、スクイズはできない」


■この日本シリーズ終了後、永田ラッパ、いや永田オーナーの「バカヤロウ」という声を聞いた途端、とうとう西本さんはキレた。大毎生え抜きのプライドをもつ西本さんは、たった監督を1年やっただけで、心血を注いで作り上げたチームを去ることになった。

著者の 立石泰則 さんはこんなことを書いて、ボクは納得させられた。

西本の退団は、当時のオーナーと球団の関係を象徴している。所詮、オーナーにとって、プロ野球チームを持つのも相撲のタニマチになるのも、その意識において殆ど変わらないのである。彼らは間違っても「チームはファンのもの」とは言わないし、球団を一つの事業体、ビジネスと考えようとしない。あるのは、宣伝・広告媒体としての球団の価値であり、自分の趣味としてのそれであった。だから金を出している以上は、自分の好きなようにしたい、とオーナーは思うのである。監督の仕事である采配や戦法にまで口出しするのも、そのためである。


プロ野球はオーナーの道楽であってもいいとボクは思う 。ただ行きすぎた口出しは現代版の 野球害毒 である。

先日の新聞には、不振が続く巨人に対して読売・ 渡辺恒雄 社主が「チーム不振の責任の所在をはっきりさせる!」と息巻いたという記事が載っていた。どうしようもないオーナーは当時だけの遺物ではない、現存もするのだ。

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Last updated  2011.07.09 06:22:37
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