突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2009.04.04
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 見渡す限り、一面の砂の海だった。

 右も左も、360度、あるのはただ、熱く焼けた砂と乾ききった空ばかり。
 くるりと振り返れば、もう方向さえわからなくなりそうだ。

 たった一つの小さな磁石だけが頼りだった。
 エリダヌスは、気も遠くなりそうな熱気の中、顔が隠れるほどフードを目深に下ろして、足もとの砂だけを見ながら歩き続けていた。
 エリダヌスの後ろには2人の弟が、これも同じようにフードを目深に下ろして、黙々とつき従っている。

 額に噴き出す汗をぬぐって、手首にまきつけた牛の皮を見れば、この『死の砂漠』に入ってから毎晩1つずつ刻み付けてきた印は、もはや35。

 もうとっくに目的地についていいはずだった。

 2人の弟たちもまた、同じ不安にさいなまれているのだろう、昨日あたりからはほとんど口もきかず、時おり祈りの言葉をつぶやくばかりだ。

 3人の上にのしかかった不安は、あまりにも大きく、重く、口にすることさえ恐ろしかった。

 “本当に、この方角で良いのだろうか”




 半年前、神学校の卒業を間近に控えたある日、エリダヌスは、2人の弟、カノープスとスピカとともに、生まれ育ったハザディル神殿の、何百人もの兄弟姉妹たちの中から選ばれて、神殿奥宮の巫女さまの御前に召し出され、こう告げられたのだった。

 「我が愛する子どもたち、エリダヌス、カノープス、スピカ、そなたたちには今から旅に出てもらうことになりました。 行き先は、はるか東方『死の砂漠』の只中にあるという、ゴルギアスホローの神殿。 ゴルギアスホローといえば、そなたたちも知ってのとおり、そこにおわすすべての神官が、神より特別に与えられし不思議の御力を操るという古い伝説の国です。 これまでは、そのような話は隠り世の夢まぼろしと誰もが思っていましたが、このたび、奇しくもリュキア暦999年という巡り合わせの今年、我がハザディル神殿の奥庭に一頭の天馬が舞い降りて、俄かに現し世の呈を帯びてまいりました。 その天馬のたてがみには、ゴルギアスホローからの書状が結び付けてあり、その内容は、同じ神を信奉するジャムルビーの兄弟たるハザディル神殿にも、ゴルギアスホローの奇跡の力を分け与えたく、ついては3人の若者を修行に遣わすように、という申し出と、その伝説の国に到る地図でした。 早速、お召しに従い3人の若者を急ぎ遣わせる由、返書を託した天馬を再び空へと放ちましたが、巷にては今も、ゴルギアスホローは呪われた地にある禁断の国と恐れられ、そこへたどり着くまでにはさまざまの苦難が立ちはだかっていると言われています。 不思議の御力を授かるという修行もさぞやつらく厳しいものでしょう。 それを思えば胸が痛みますが、けれどそなたたち3人は私が選びに選び抜いた、特に信仰心篤き優れた子どもたち。 そなたたちならば必ずや、幾多の苦難を乗り越えてその地へとたどり着き、大いなる神の御力を授かって、我がハザディル教国に更なる繁栄と豊穣をもたらしてくれるものと信じています。・・・行ってくれますね?」

 もちろん、3人は選ばれし者となったことを誇りに思い、意気揚々と出発したのだった。

 だが、旅はつらかった。
 母なる大地、広大なハザディルの国内を歩いているうちはまだ良かった。 のどが渇けば至るところ清らかな水が湧き出ていたし、空腹になれば豊かな大地は気前よく日々の糧を分け与えてくれた。 寒さに震える夜は信者たちが暖かい一夜の宿を提供してくれた。 苦しい生活の中で工面したお金や食料をそっと手渡してくれる信者たちもいた。 心優しい信者たちに守られ、かしずかれて、3人はむしろ神殿で厳しい修行や労働に明け暮れていた時より幸せなくらいだった。
 しかし、海の上に出るとそういうわけにはいかなかった。 水も食料も限られた狭苦しい船内で、動くこともままならずひたすら揺れに耐えているのは苦痛だったし、船乗りたちは皆荒っぽく野卑で、けがらわしい冗談で3人をからかった。 嵐の夜には生きた心地もしなかった。 それでも、船乗りたちは決して信仰心がないわけではなかったし、自ら自慢げに吹聴するほど乱暴でも罰当たりでもなかった。 長い航海の間に心はいつしか通じあい、港に到着して別れるときには、互いに抱き合っておいおい泣いた。
 本当の苦難は、彼らと別れて砂漠に入った時から始まったのだ。 常に快適な温度と湿度と明るさが保たれている神殿の地下だけで一生のほとんどの時間を過ごすジャムルビー族にとって、来る日も来る日も灼熱の太陽に焼かれ、乾ききった砂まじりの風にさいなまれながら旅を続けるのは地獄の責め苦にも等しかった。 そして、日没とともに襲いかかってくる急激な寒さは、ありったけのものを着込んで身を寄せ合ってもなお、少しも暖を得ることが出来ず、浅い眠りを妨げられるのだった。






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最終更新日  2009.04.04 16:44:22
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