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小説 「 scene clipper 」 Episode 41
「ところで・・・」
青木氏は何かしら意を決したように切り出した。
何か問われそうな予感がして、リョウは青木氏の顔にピントを合わせた。
「わしは今夜以降君には会うまいと決めていた」
「そんな・・・」
「いや、君と私は住む世界がまるで違う。」
「それは・・・承知の上でした。でも自分はケンさんを信じています。ですから青木さんにお会いすることに危惧はありませんでした」
一瞬ケンの視線を感じ取ったリョウが視線を合わせるとケンは嬉し気に頷いた。
「そうか・・・ケンが気を許すはずだな。甘えるようですまないが、今後もケンと仲良くしてやってくれるかね?」
「はい、勿論です」
「そうか、ありがとう・・・ところで君に最後の頼みがある」
「なんでしょう?」
「実は君の叔父上の墓参りがしたいのだが。案内してもらえないだろうか」
「はい、恐らくそう仰ることになるかも知れないと、思っていました」
「そうか、流石だね。スケジュールは君に合わせるから、よろしく頼みます」
と青木氏は再びリョウに頭を下げた。
「分かりました。明日仕事の日程を確かめてからケンさんに連絡するということでよろしいでしょうか」
「結構です、よろしくお願いします」
和やかな雰囲気の中で散会の乾杯を挙げた後、リョウはケンに送られて笹塚に戻った。
ケンはリョウに礼を言い、リョウはケンに「水くさい」と言い、二人の男は気分の良い笑顔を見合って「じゃ」「うん」とマリのマンションの前で別れた。
ピンポーン♪
ドアが開いてマリが顔を見せた。
「随分久しぶりのような気がするんだけど、気のせいかしら?」
(今日はマジで優しくしないと・・・)
リョウは本能的にそう直感し行動に移すことにした。
翌朝、珈琲のいい匂いで目覚めた。
隣で寝ていたマリはいないが・・・キッチンから鼻歌が聞こえてくる。
♪夢でもし会えたら♪吉田美奈子!
これはすこぶる上機嫌だぞ。
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