突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2009.07.09
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 通された部屋は、石牢とはうってかわって、やけに豪華な部屋だった。
 四方を囲む灰色の石壁や部屋を満たす薄暗い光、そして窓のないところは同じだが、床には毛足の長い深紅の絨毯が敷きつめられ、古風な家具調度が設えられ、天井から大きなシャンデリアが下がっているなど、まるで王侯貴族の客間でも真似たようだ。 ここにも部屋の隅に小さな祭壇が、あるにはあったが、その隣には恐ろしく大きな飾り戸棚がでんと腰をすえているので、まるで祭壇のほうが隅に押しやられたような印象を受ける。 戸棚の中には、骨董品めいた置物や食器類、古典的な道具類、煌びやかな宝飾品など、さまざまなものが、飾るというでもなくただ詰め込んだようにぎっしりと並んでいた。 その品々の中には見るからに高価そうなものもあったが、どう見ても薄汚れたガラクタにしか見えないもの、明らかに壊れている道具類なども混じっている。
 神殿の一室にしては華美に過ぎると思われる、その部屋のいちばん奥の、一段高くなったところには、ビロードの幔幕がかかり、今は引き上げられているその幔幕の中の、玉座に、“黒衣の宰相”なる人物は座っていた。
 金箔と紫水晶で飾られた、王朝風の美しい玉座に、いかにも似つかわしい風貌だ。
 その名のとおり、身にまとった戦衣は上から下まですべて黒。 神殿内だからだろうか、よろいは着けていないが、軟弱な感じは少しもなく、かえって、よろいの代わりのようにまとった長い黒のマントが、颯爽とした若い王を思わせる。 すらりと伸びた長い足は雄鹿のように敏捷そうだし、端正な顔立ちも、勇猛な戦士というよりは、どこか貴族的だ。
 「お召しにより参上いたしました。 もと城跡警備隊所属、ベベルギア二等戦士です」
 ごく自然に行った臣下の礼に、“黒衣の宰相”は親しげにうなずき、玉座の足もとを指差した。 
 「うむ。 リュキア軍祭祀司令官ドーラ大佐である。 もっと近くに寄れ。 ここは暗くて人の顔も良く見えぬ」
 おそるおそる玉座の足もとににじり寄ると、リュキア軍祭祀司令官ドーラ大佐は、またうなずいて、言った。

 「仰せのとおりでございます。 いかに身に覚えのないこととはいえ、私怨から大佐どのの兵を3名も失いましたことにつきましてはまことに申し訳なく、私のほうからも除名を希望いたしました」
 「殊勝である。 警備隊には本日、新しく4名の兵士を任命したから、後のことは、案ずることはない」
 意外なほど軽い口調でそう言ってから、ドーラ大佐は言葉を切り、しげしげとベベルギアの全身を眺め回した。
 「ときにベベルギア、お前はなぜ自分が今ここにいるかわかるか? 以前私と会ったことがあるのを覚えていないか?」
 ベベルギアは当惑してちょっと返答に詰まった。 もちろん、自分がなぜこんなところに閉じ込められているのか見当もつかなかったし、まして、リュキア軍の大佐などというえらい身分のバルドーラには、今までお目にかかる機会さえなかったからだ。
 すると、ドーラ大佐はくすくす意味ありげに笑って言った。
 「あれは、半年前、リュキア軍の競技場で開催された月例の祭礼のことであった。 私は祭祀司令官として、アナルケルを従え、ジャムルビー神兵たちの医務用特設テントに詰めていたが、そのとき、そのテントの真ん前で、振舞われたお神酒に酔ったバルドーラ同士の喧嘩が始まった。 神兵どもはあわてて止めに入ろうとしたが、つまらない祭りに退屈していた私はその喧嘩に興をそそられ、神官どもを引きとどめて見物を始めた。 喧嘩している二人は、双方共に街の遊び人といった風体で、これといった武器も手にしていなかったし、放っておいても大事にはなるまいと思ったのでな。 残念ながら喧嘩は、面白がって見物するほど見応えのあるものではなかったが、そのとき横合いからその喧嘩の仲裁に入ったのが、ベベルギア、お前だった」
 そういえばそんなことがあったな、とベベルギアもそのときのことを思い出した。 あの日もアルゴス組 (このときそんな組はとっくに解散していたが)の仲間の一人の葬儀に出た後だった。 葬儀の後、皆で酌み交わした追悼の酒にかなり悪酔いしていたところに、通りがかった祭りの振舞い酒。 そして、又しても仲間を一人失ったショックも尾を引いていて、ベベルギアの友人2人が些細なことで喧嘩を始めたのだった。 確かに、その仲裁に入ったことも覚えていた。 よりによってそれがリュキア軍の特設テントの真ん前だったことには気がつかなかったが、ベベルギアがリュキア軍の人材発掘員だとかいう怪しげなバルドーラに声をかけられたのも、確かあの日の帰り道だった。
 あの日、何が原因だったのか、もう思い出せないくらい些細なことから喧嘩を始めた、本当は仲の良かったあの友人たちも、今は2人とももうこの世にはいない。 あの後まもなく、相次いでアンタレスの魔剣の餌食になったと、風の便りに聞いた。





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最終更新日  2009.07.09 20:02:22
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