突然ですが、ファンタジー小説、始めちゃいました

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2009.09.26
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 アルデバランはその日、いつもより早く目を覚ました。

 勢いよくベッドから飛び降りると、おおいそぎで着替えをすませ、隣のベッドでまだ鼻ちょうちんを出して眠りこけている兄の顔を眺めながら、腕まくりをする。
 今日は成人の儀式の日なのだ。 兄のアルクトゥールスが今年めでたく成人する、大切な日だ。 今日から兄ちゃんはもう大人、そう思うとアルクトゥールスは、3歳年上のこの兄が誇らしくてならない。
 成人の儀式というのはどの種族にとっても大切なお祭りだ。
 たとえばバルドーラたちの成人のお祭りは、それはそれは華やかなもので、朝早くから花火が上がり、あちこちの店先でご馳走やお酒が振舞われ、その後、リュキア軍の、戦士になるための採用試験があるのでたいていの若者はこれを受けに行き、その後今度は戦士になれた祝賀会、あるいは選に漏れた残念会などがあって、結局は一日中盛大なお祭り騒ぎが続く。 
 ジャムルビー族はジャムルビー族で、厳かで盛大な儀式が執り行われているらしい。 いつもはひっそり静かなリュキア神殿も、この日は一日中神官たちの詠唱が表通りまで響き、強いお香の匂いがはるかかなたまで漂ってくる。 普段は厳しい修行に明け暮れる神官たちでさえ、この日ばかりは、やっぱり神殿の中でご馳走を囲んで楽しいお祭りをしているという話だ。
 魔法使いの森に暮らすリシャーナ族たちもまた、この日は何か特別のお祭りをしているらしい。 毎年この日は、午前中、森の中がしんと静まり返って鳥の声もしないのに、午後になるとなんだか急に騒がしくなって、キツネもウサギもカラスもヤマバトも、みんな浮かれはしゃいで森の外まで飛び出してくることがあるからだ。
 ところが、パピト族の成人の儀式というのは、悲しくなるくらい実質的で簡単なものだ。 パピト族の族長であるトートスさんのところへ行って、今年成人しました、とあいさつをしてくるだけ。 たったこれだけだ。 ご馳走を作って食べるわけでもなければ、だれかが祝ってくれるわけでもない。 アルデバランは毎年、他の種族の若者たちが、大人たちに祝ってもらったり仲間同士浮かれ騒いでいるのを見るたび、うらやましくてしょうがない。 パピト族も、盛大な式をやったり、お祭りをやったりして、一日楽しく過ごせばいいのに、と思わずにいられない。 でも、パピトたちは皆自分の仕事に忙しくて、丸一日遊んで過ごすなんていうことは考えつきもしないようだ。 

 俺の兄ちゃんも、トートスさんに気に入られるといいな、と、アルデバランは自分のこと以上にどきどき、そわそわ、もう一ヶ月も前から落ち着かない。 今日、兄に着せるつもりの服も、洋服屋のローリーポーリーに頼みこんで、新調してもらったものだ。 夕べのうちにきれいにブラシをかけて、兄の枕元につるしてある。 帽子も、ハンカチも、財布も、テーブルの上にちゃんと揃えておいた。 靴も、ピカピカに磨いてある。 後は、ボリュームのある朝ごはんを作って、しっかりと腹ごしらえすれば準備完了だ。
 よしっ! と自分にひとつ気合を入れると、アルデバランは朝ごはんの買い物のために外へと飛び出した。
 真夏の朝の、冷たい空気がさわやかだ。 兄の門出を祝ってくれているような気がする。
 美しい緑のツタに覆われた、ケンタウロスの『嘆きの館』の前を通りかかると、庭先の馬小屋の中で、馬が鼻を鳴らしてアルデバランを呼んだ。 
 アルデバランは馬が大好きだ。 ケンタウロスが馬の手入れをしているといつも必ず立ち止まって見ている。 馬にブラシをかけたり、馬小屋の掃除をしたり、えさをやったり、そんな手伝いをさせてもらうことも時々ある。 だから馬もちゃんとアルデバランを覚えていて、前を通りかかるたびにああしてあいさつをするのだ。 アルデバランは思わず顔をほころばせ、馬小屋のほうへと駆け寄った。
 大きなバルドーラ馬の鼻を撫でてやっていると、馬小屋の奥のほうからケンタウロスが出てきて笑った。
 「やあ、アルデバラン、早起きだね」
 「あっ、ケンタウロス先生、おはようございます! 今日は兄ちゃんの、成人の儀式なんだ!」
 ケンタウロスが目を細めて、遠くを見るような顔をした。
 「そうか。 あのおちびさんのアルクトゥールスが、もう成人するのか」
 ケンタウロスは、アルクトゥールスとアルデバランが小さい時からの知り合いだ。 アルデバランはこの人をとても尊敬している。 ケンタウロスはたいへんな名医なのだ。 どんな病も怪我もたちどころに治してしまう。 しかも仁徳に篤い。 アルデバランは、夜遅くここを通りかかったときこの馬小屋の中で、ケンタウロスが小さなランプを灯して一生懸命怪我人や病人の手当てをしているのを何度も見たことがある。 馬小屋に泊まらなきゃならないような人はよっぽどお金のない人か、または病室が満員でケンタウロスがてんてこ舞いしているような時だ。 それでもケンタウロスは病人の診察を断ったり、治療の手を抜いたりは絶対しない。 立派な医者だと思う。

 そう思ってからアルデバランはくすくす一人笑いをもらした。
 だめだ、兄ちゃんは医者にはなれないや。 ちょっと血を見ただけで真っ青になって倒れちゃうもの。





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最終更新日  2009.09.26 20:41:33
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