音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

音楽日記 ~ロックやジャズの名盤・名曲の紹介とその他の独り言~

2011年07月04日
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カテゴリ: ジャズ




 ニーニョ・ホセーレ(Ni?o Josele, 日本盤ではホセレと表記される)は、1974年生まれのフラメンコ・ギター奏者。スペイン南部、アンダルシア自治州のアルメリア生まれで、1970年代に始まった“ヌエボ・フラメンコ”(スペイン語で“新しいフラメンコ”の意、英語に訳すとニュー・フラメンコ)の流れに属するギター奏者である。とはいえ、同時に“スペイン・ジャズ(スパニッシュ・ジャズ)”という分類のされ方もする。これまで5枚のアルバムを発表しているそうだが、筆者は現時点では本盤しか聴いていない。

 ともあれ、このニーニョ・ホセーレの音楽は、伝統的ジャズでもなければ、伝統的フラメンコ演奏でもない。だが、この盤で演奏されているのは、有名ジャズ・ピアノ奏者、ビル・エヴァンスゆかりの楽曲群である。つまり、新しい現代音楽を創造し続ける人にとって、とりわけフランメンコの伝統を持つスペインのように「心」や「魂」で対話する音楽を受け継ぐ人にとって、ジャズという分野のビル・エヴァンスなるピアノ奏者が残した遺産は、今もそれだけの参照項とされるのであろう。

 紹介ついでに少し苦言を加えておくと、ジャズの定番で人気の有名曲だからといって、邦盤のアルバム名を『ワルツ・フォー・デビー~ビル・エヴァンスに捧ぐ』というのは少しやり過ぎではなかろうか。本盤の原題は『Paz(パス)』といい、スペイン語で“平和”の意味である。ジャケット裏には確かにビル・エバンスの名が記されてはいるが、正確には“Ni?o Josele and the music of Bill Evans”とあるに過ぎない。つまるところ、ニーニョ・ホセーレがビル・エヴァンスゆかりの曲を演ることに意味があるのであって、ビル・エヴァンスだから何でもいいわけではない。買い手の気持ちになれば絶対的にそうのはずである。

 ビル・エヴァンスがいいのならエヴァンス本人の演奏を聴けばよい。そうではなくて、スペインのフラメンコの流れを持つ新世代のギター奏者がそれらをどう解釈し、演じるかに注目するのが筋だろう。いや中にはビル・エヴァンス関係なら何でもという人もいるかもしれないが、そんなマニアはごくごく少数で、別に“ワルツ・フォー・デビー”なんて謳わなくてもこのCDを聴いたり購入したりするはずだ。というわけで、単にビル・エヴァンスが好きという人には到底勧められたアルバムではない。それどころか、ビル・エヴァンスこそがお気に入りという人が聴いたら、元のイメージから離れづらいだけに、かえってがっかりするかもしれない。そんなわけで、売り手の意図とは裏腹に、エヴァンス愛好家にとっては難しい1枚になるだろう。けれども、ヌエボ・フラメンコのギターに興味があって、なおかつジャズに興味のある(場合によってはビル・エヴァンスなどあまりよく知らないという)聴き手には、愛聴盤になる可能性を秘めた1枚ということになる。こんなことを思いめぐらせていると、音楽を聴くには先入観という要素が大きいということをあらためて考え込んでしまった次第である。




[収録曲]

1. Peace Piece
2. Waltz For Debby
3. The Peacocks

5. My Foolish Heart
6. The Dolphin
7. Hullo Bolinas
8. Minha
9. Never Let Me Go
10. Turn Out the Stars
11. When I Fall In Love

2006年リリース。





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Last updated  2011年07月04日 06時27分45秒
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