本盤『ソロ・オン・ヴォーグ(Solo on Vogue)』は、1954年の録音で、文句にとって初の独演盤である。ジャズに詳しい方はタイトルからもお分かりのように、ヨーロッパ(フランスはパリ)での録音盤である。ちょうどこの頃の彼は、いろんな事情からニューヨークでのキャバレーカードを失い、経済的にも苦しい時期を過ごしていた頃の一枚で、オリジナルで固めたソロ集という、ある種、実験的な作品に仕上がっている。
オリジナル曲が並んでいるせいか、曲名にけっこうややこしい部分がある。3.の「リフレクションズ(Reflections)」は、もともと「Portrait of an Ermite」、以下同様に、4.「ウィ・シー(We See)」は「Maganese」、6.「ハッケンサック(Hackensack)」は「Well You Needn’t, take 2」、7.「エヴィデンス(Evidence)」は「Reflections」といった具合である。ジャズ曲は、通常、歌詞を伴わないため、製作過程で曲名がよく変わったり、全く別のタイトルになったりすることもある。本盤のモンクのオリジナル作も、完成・定着までの途上にありながらの試行錯誤の具合を反映しているということなのかもしれないが、1.の「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」(歌詞がつけられた時のタイトル「ラウンド・ミッドナイト」と呼ばれることもある)をはじめジャズのスタンダードと化したオリジナルも多いというのは、作曲家としての才能も優れていたわけだ。