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この1年間で国内の代表的な映像コンクールで最高賞を受賞したドキュメンタリー番組を一挙に放送する「ザ・ベストテレビ」は、17年前に第1回が放送された。そして僕は、初回からずっとゲスト・コメンテーターを務めている。
NHKで民放の番組が放送される。今でこそNHKと民放のコラボは時おり企画されるが、当時としては相当に画期的だ。誰もが実現は無理だろうと思っていたし、企画段階で相談を受けた僕も、相当難しいだろうなと思っていた。
でも当時のNHKのプロデューサーやスタッフたちはあきらめなかった。ハードルをひとつずつクリアして、遂に実現にこぎつけた。
収録は最初のころは華やかだった。初回か2回目か3回目か正確には覚えてないけれど、当時のゲスト席はひな壇で(つまり数が多い)AKB48や芸人たちが座っていたことを覚えている。でも回を重ねるごとに予算は少しずつ削られて、ゲストーコメンテーターの数も少なくなった。
ただし受賞作を最初から最後まで放送して、その後にスタジオに呼ばれた当該番組のディレクターやプロデューサーがゲスト・コメンテーターからの質問に答えるというスタイルは、初回からずっと変わらない。
ここ数年のゲスト・コメンテーターの顔触れは、森達也とノンフィクション作家の河合香織、そしてヴァージル・ホーキンス大阪大学大学院教授の3人だ。司会はNHKの顔である三宅民夫アナウンサー。2017年に退職したが、今も「ザ・ベストテレビ」の司会は続けている。今回のグランプリ受賞作を以下に記す。
○放送文化基金賞最優秀作品 『膨張と忘却~理の人が見た原子力政策~』NHK
○日本民間放送連盟賞テレビ報道番組 部門グランプリ『こどもホスピス~ いのち輝く。第2のおうち々~』朝日放送テレビ
○日本民間放送連盟賞テレビ教養番組部門グランプリ『20年目の花火』鹿児島テレビ放送
○ATP賞テレビグランプリ・ドキュメンタリー部門最優秀作品『新・爆走風塵~中国・トラックドライバー 生き残りを賭けて~』NHK
○地方の時代映像祭2023クランプリ『立つ女たち~女性議員15%の国で~』NHK
例年はここにギャラクシーと芸術祭のグランプリが加わるのだけど、2023年のギャラクシーはドラマ『フェンス』が大賞作品となり、芸術祭は主催する文化庁が終了を発表したので、今年は5本だけだ。
少し話が逸れるが、芸術祭終了は唐突だった。理由もよくわからない。釜山映画祭に行ったとき、国を挙げてエンタメや文化を支援する韓国の姿勢を実感したと以前にこの連載で書いたけれど、日本における芸術や表現、アカデミズムに対する国の支援は、(特に安倍政権以降)先細りする一方だ。
今回はすべての番組のディレクターがスタジオに来て、質問に答えてくれた。
『膨張と忘却』の放送枠はETV特集。国の原子力政策に長年関わってきた研究者の吉岡斉さんが残した吉岡文書の発見をきっかけに、原発政策決定の舞台裏で行われていた虚偽と欺瞞に迫った作品だ。観れば誰もが、こうした政策決定の果てに福島原発の爆発があったのかと驚きあきれるはずだ。ディレクターは石濱陵。
観て本当に悔しい。この番組が放送される少し前に岸田政権は、原発再稼働の加速と新増設に踏み込んだ原子力政策の大転換を宣言した。福島の記憶と教訓は見事に消えた。本来ならありえない。 今年の夏はこれほどに暑かった。でも電力不足の声はほとんど聞こえない。なぜこれ以上に原発を増やす必要があるのか。 その政策決定の裏舞台で、自民党の政治家たちと原発関連企業がいかに癒着していたかを知れば、誰もがもう原発は必要ないと思うはずだ。
~ 以下省略 ~
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