アオイネイロ

May 27, 2010
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カテゴリ: 小説
願い、祈り
何度も叫んだ
だけど声は届かない...

「天音、何やってるんだ?」
「えへへっ。お花の冠」
陽だまりの中で、描いていた夢。
壊れるなんて思わなかった。
ずっと続く幸せだと疑わなかった。
どうしようもなく子供だったから。


炎の中に消えていった。
大切な、たいせつなものたち。
「あ、ぁ………」
「天音、逃げるぞ!!」
足が動かない自分を引っ張って、走っていた彼は
きっと同じように怖かっただろうに
「おにぃ……やだ、やだぁぁぁっ。おかあさ……っ」
「天音!!」
動けない自分を叱咤した、必死な声。
耳の奥にこびり付いて剥がれない。
「――っ!」

炎の影から、一人の影。
恐怖以外の何物でもなかった。
動かない兄に縋りついた。
「天音、逃げろ。オマエだけでも……」
「やだっ、やだよぉぉぉ!!!」

「早く……いけっ………大丈夫、おまえなら……できるよ」
頭を撫でられて
記憶が無くなった。
兄が強制転移魔法を使った事に、何年も経って気付いた。
魔法なんて全然使った所を見たことなど無かったのに、
魔力だって全然強くなかったくせに、
そういう時だけ、
いつもそうだった。そういう時だけは強くなるんだ。
誰かを助ける為に、いつもは全然ダメなのに、いくらだって自分を犠牲にする。
残された人の気持ちも考えずに

「………ばか」

花の冠を手に、空を見上げて呟いた。
そんな兄に憧れ、同じ道を歩もうとする自身に向けて





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Last updated  May 27, 2010 02:19:06 PM
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