書評日記  パペッティア通信

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Mar 4, 2005
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カテゴリ: 歴史




本書は、そうした流行解説本とはあきらかに一線を画す力作である。
毛沢東と登小平の対照的なパーソナリティーをふまえつつ、両者の交差をとおして巨竜中国の現代史をえがく。そして、現在から未来の中国像を見通そうとする。そこでは、中国のかかえる強みも弱点も冷静にながめられている。変な煽りはいっさいなく、脅威論にも悲観論にも与しようとはしない。台湾問題への見通しも軟着陸する可能性を示唆し、愛国主義・大国主義の是正を中国にもとめている。筆者は、中国指導者層から極秘裏に情報を得ているのではないか?と思わせるほど予測の的中率が高かった『江沢民の中国』(中公新書 1994年)の著者、朱建栄とならんで現代中国分析の大家といえる存在である。それだけに、そのまとめ方は重厚で、すみずみに配慮が行き届き、概説書としてふさわしい仕上がりだ。およそ、現代中国史をおさらいしたい人には、格好のバイブルであろう。

とはいえ、この書における天児慧独自の視角のほとんどは、『中華人民共和国史』(岩波新書 1999年)に収められているし、その深い中国社会への洞察も、『中国とどう付き合うか』(NHKブックス、2003年)などをはじめとした既出の研究の焼きなおしにすぎない。この書そのものに新味があるわけではない。むしろ、天児慧の研究の総決算、といった雰囲気さえ漂う。さらに、現代中国分析の専門家だけに、中国現代史のメインのトピックは、ほとんど他人の研究によりかかっている。かれのオリジナルがそこにあるわけではない。とくに、『中華人民共和国史』の増補改訂版ともいえるだけに、そこから水増しされた部分に宿らざるをえない、つぎはぎめいた読了感はいささか気にかかるところであろう。そもそも、現代中国分析を専門にしている人間が中国現代史をかくのはいかがなものであろうか。

しかし、それがこのシリーズの特色なのである。これまでにはない、あたらしい視角で中国の通史をえがこうとする、意欲的なプロジェクトなのだ。それまでの中国史の通史企画にはなかった、毛色のかわった著者の人選。とくにそれは、「宋代」の部分を中国哲学の小島毅が、そして「後漢~三国志」部分を中国文学の金文京といった、中国史プロパーではない人間が担当していることにあらわれているだろう。ついでに「明清」部分を大木康あたりにすれば完璧だったのに。たぶん、企画をすすめるうえで、副題の「海と帝国」がネックとなったのだろう。とりあえず、ぜひご一読あれ。

価格: ¥2,536 (税込)
評価  ★★★☆






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Last updated  Sep 30, 2005 08:59:11 PM
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