書評日記  パペッティア通信

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Mar 11, 2005
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カテゴリ: 政治
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あの怜悧な姜尚中も、すっかりタレント学者になってしまった。めっきり斬新な視点が語られなくなってひさしい。「朝生」のファンだったものとしては、残念な話だ。とはいえ、もう55歳になろうかとする人間に、さらなる前進をせまるのも酷な話かもしれない。一学者一仕事、ともいうし。スルタンガリエフをえがいた感動巨編、『ラジカル・ヒストリー』(中公新書)の著者、山内昌之の無残なまでの凋落ぶりと比較しては、評者はわが身を慰める毎日だ。また、編者かよ、山内昌之…いや失敬。姜尚中の前著『ナショナリズムの克服』(集英社新書)も、森巣博の力あってのことのようにおもえた。

というわけで、テッサ・モーリス・スズキとやらを確かめるために購入した。ところが、これが意外と悪くない。内容は、デモクラシーの空洞化と通称「ネオ・リベ」(新自由主義)と称される動きへの、うんざりするような「警鐘」が鳴らされるだけなのだが、テッサ・モーリス・スズキの存在もあって、ずいぶんと救われているようだ。

先進国における「寡頭制」(オリガーキー)の進展。「公」と「私」の境界の消失。決断とセキュリティをもとめる意識の蔓延。それまで、「公」領域や非市場領域であった、余暇・健康・教育・安全保障といった分野に、企業が忍びこんでいく「市場の社会的深化」。階層の再生産不能がもたらす不安と、政党に代表されていないと感じることからもたらされる、石原慎太郎など、中心政党と癒着した「ポピュリズム」政治家の台頭。日清・日露・第一次大戦・第二次大戦につづく冷戦後は、5番目の「戦後民主主義の時代」にあたるのだ…さわりだけで、なかなか面白い論点が紹介されていることがわかるだろう。「世論」という幻想への批判、難民をかんがえるためのビオスとゾーエーという論点、オーストラリアの多文化主義・デモクラシーの歴史と実情などもいい。とくに、第四章「直接民主主義と間接民主主義」の冒頭のデモクラシーの歴史の見取り図は、かなり参考になる。昨今の、デモクラシーのかかえる問題系について、てっとりばやく把握するための必読書ではないだろうか。

とはいえ、疑問をいだかせる所も多い。とくにそれは、デモクラシーの根幹である「代表」をめぐる、ナイーブな議論にかかわってくる。個人や「階級」を代表しない、国民政党をめざす2大政党制は「日本党」であると断罪される。少数意見がすくい取られないことをなげく。しかし、政党に「代表」されているという発想が、そもそもマルクスのいう「虚偽意識」でなくしてなんであろう。

デモクラシーは、世論・政党などの「媒体」を通してしか、確証されることはない。商品は、貨幣を通してしか確証されないように。ポピュリズムの対極としてもちあげられる、アーレントの相互承認の世界。しかし、これにさえ「他者」という媒体が介在していることを忘れられていやしないか。ホッブスの何の秩序もない自然状態から秩序を打ち立てるという発想について、人間の社会性を否定し、歴史を忘却する議論であるとして、そのホッブス的なネオコンの発想を批判する。ならば、貨幣や国家という象徴秩序は、一体どのように生まれ、なんのためにあるのだろうか。

歴史という語りに回収し、社会化された市民に抵抗をみいだす2名。その必然として、グローバリズム資本主義が宣告され、それに抵抗する市民がもとめられ、あたかもそうした主体が存在するかのように呼びかけられる。どちらも深く検証されることはない。「社会化」という見果てぬ夢。この夢が隠蔽しているものは、われわれは決して代表されることはないし、他人を代表することなんてできないという、あまりにもありきたりな事実ではないだろうか。

「我々こそ主役」であることはたしかだ。しかし、我々はあまりにも多様である。デモクラシーは、「媒体」を通してしか機能しない。この諦念にたつこと。その諦念の先に、よりましな「媒体」をかんがえ、よりましな「解決」をもとめつづける困難な旅程。それこそが、デモクラシーを衰亡の淵から救いだしうるの唯一の道であろう。

このことを忘れては、グローバリズムとも戦うことすらできないのではないか。あたかも、高層ビルとスラム街の併存する、途上国の貧民層の絶望的な戦いのように。。。。

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Last updated  Nov 20, 2005 07:41:44 PM
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