書評日記  パペッティア通信

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May 13, 2005
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カテゴリ: 社会



その政策について、やや擁護するスタンスから、この書物は出版されています。

そもそも、中国最初の王朝、夏・殷・周は異民族王朝であったこと。
異民族は「天下」の必須構成要素として伝統的世界観にくみこまれていたこと。
夷・狄・蛮・戎は狩猟・遊牧民族の生活様式・言語の特徴をあらわしたこと。
華と夷とは、文化の差異にすぎず、周囲の異民族引き込みと自発的「中原化」とよって、拡大していったこと。

近年、こうしたスタンダードな見解は、対中国感情の悪化によって、大マスメディアではめっきりとりあげられなくなっています。まさしく、時宜をえた出版として、大変感謝したい。

内容は、なかなか興味深い。
漢奸は、元々「漢族の悪者」で、アヘン戦争の頃「清朝(=漢)を転覆させる売国奴」にかわったこと。それを「漢民族の裏切り者」と読みかえた反清運動は、多民族国家の現実を掘り崩す危険性をもっていたこと。南北朝時代に出現した「中華」も、このとき漢族単一国家の象徴の概念にかわってしまった。他民族国家の現実にあわせるため、清朝倒壊後かかげられた「五族共和」は、独立容認のスローガンになってしまう。そこで、これらを1つに融合させるため、「中華民族」概念がとなえられたといいます。それに反して、一見、56もの民族を創出した中共も、その識別に政治的恣意性が介在し、存在を弱めるような政策がとられていること。 漢民族は、比率が低下しており、少数民族は政策上は、優遇されていること。少数民族居住地域は、列強の侵略など国際政治の矢面に立たされてきたこと。宗教への迫害政策は転換されたこと。



それでも、問題点は多岐におよんでいて、正直きりがありません。こき下ろす中共以前と、中共以後のそれぞれの「自治」に、どんな違いがあるのか、何も示せていない。どんなに、国民党の方向性は抑圧であっても、戦前の現実は「自治」でしたしねえ。中共は、伝統的社会構造の維持を図ったといいながら、宗教弾圧・土地政策とはこりゃ如何に? そもそも、伝統を「守らせる」のは、「自治」とはいえないでしょう。だいたい、中共支部の「自治」なんて、たとえ「自決」であろうと、民主集中制の原理下、なんの意味があるのか理解に苦しみます。事実上、中国では、地方政治の分権というか、支配の弛緩がすすんでいますが、それではいっそう「民族自治」の内実には何の意味もなくなってしまう。

ただ、征服王朝の多元型国家システムと漢人王朝の多重型国家システムの比喩は、話半分でも大変面白いものがあります。多元型は、「中国」を牽制する「民族」的根拠地を強化するものであるらしい。ふむふむ。国際政治が錯綜する、朝鮮・ロシア民族の二重国籍問題は、なかなか触れられることがなかったことでしょう。中国の歴史教科書問題とやらも、大変面白い。岳飛を民族英雄というのを止めよう、国内内戦でしかないからだ、というと、大反発がおきて撤回されることになったらしい。

こうしたディテールの面白さにささえられた本書は、大枠はともかく、読まれるべき好著になっています。

評価 ★★★
価格: ¥819 (税込)







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Last updated  Nov 7, 2005 11:13:22 PM
コメント(6) | コメントを書く


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あ゙  
cyan さん
この本、少しだけ読んでいました。
図書館から借りていたものの1冊(先月末の新刊コーナー)。

恥ずかしながら、中国が「多民族国家」ということすら、知りませんでした。

全部読まないままに返してしまったのですが、トホホな私にとって、少し目が開かれた本でした。 (May 14, 2005 10:25:25 PM)

○「中国情報」をもたない戦後の日本。  
breton005  さん
戦前の方が、知識・情報・人脈などなど、利権を絡めて相当程度の実質ある「情報」を、もっていた。戦後の無関心は、米国の<関与>によっている。田中角栄の急速な中国(共産党)への接近は、米国主導に危惧感を抱かせた。結果は、角栄の抹殺。無知なる新米記者の「研究」から<金脈発掘>に通じる香炉は、偶然なる情報の提供により進められた。○当時の角栄(取り調べ)担当の検事・堀田も退官した。必要なことは、なにも語らない。いずれにしても、日本と中国。双方ともに<情報不足>なのだ。それが必要以上の<摩擦>を生んでいる。日本企業も投資レベルの安全圏にいることで、その契機を掴もうとはしていない。 (May 15, 2005 02:29:06 PM)

Re:○「中国情報」をもたない戦後の日本。(05/13)  
春秋子  さん
breton005さん
>戦前の方が、知識・情報・人脈などなど、利権を絡めて相当程度の実質ある「情報」を、もっていた。いずれにしても、日本と中国。双方ともに<情報不足>なのだ。それが必要以上の<摩擦>を生んでいる。

その通りですね。みな足で集めようとしません。
偏向しないで情報を受け取ることなど不可能ですが、集めた情報を検証できるようなシステムを双方がもちえたらいいとおもいます。

cyan様、ちわ~♪

不勉強でつよ(笑) (May 15, 2005 10:02:02 PM)

Re:中国民族問題の理解のために:王柯 『多民族国家 中国』 岩波新書(05/13)  
きざし昇  さん
こんばんは。

 多民族を包括した現代の国家というのを、昔旅行で行ったインドと中国で考えたことがあります。
 インドにいるときは、「ガンジーは、よくもマ~、こんな国をまとめることができたもんだ!!」と感じました。 なんだか見た目にバラバラなんです。
 私の旅行したときの中国は、人民服が溢れているセピア色の中国でした。
 見た目には統一感があって、共産主意の手法で上手くまとめていると思いました。

 ただ、インドは徹底的にイギリスの法律を使った統治が、インドの国民に漠然としたレベルで認知されているのに、中国の場合は、看板として「平等」を言っていても、法律を使った「公平」の観点が欠落していると感じました。
 多民族をまとめるのに、「公平」を主眼にした契約概念がなければ、「利益」で誘導するしかないのかもしれませんね。
 今の中国を見ていると、まりにも混乱を治めるシステムにマッチしていたため、組織のシステムの耐用年数が来ていると思います。 (May 19, 2005 12:40:48 AM)

Re[1]:中国民族問題の理解のために:王柯 『多民族国家 中国』 岩波新書(05/13)  
春秋子  さん
きざし昇さん

> 多民族をまとめるのに、「公平」を主眼にした契約概念がなければ、「利益」で誘導するしかないのかもしれませんね。

この辺、デモクラシーもまた、定着するには利益を分配しなければならないのでしょう。

利益を分配できる時代、
ひょっとしたら、中国にも民主主義の浪が訪れるのかもしれません。

いかがでしょう?? (May 19, 2005 11:36:55 PM)

Re[2]:中国民族問題の理解のために:王柯 『多民族国家 中国』 岩波新書(05/13)  
きざし昇  さん
春秋子さん
>利益を分配できる時代、ひょっとしたら、中国にも民主主義の浪が訪れるのかもしれません。
>いかがでしょう??
-----
 デモクラシーとか民主主義が、中国の国民性になじむものなんかが「?」なんです。
 近代国家という枠組みによる、世界協調の価値と、中国の国民性と相性が良いものなんでしょうか?
 歴史のある華僑世界が、小中華思想を体現して、地域と調和(融合)し難い傾向を感じます。
 大中華思想を捨てて、国際ルールを採ることができるでしょうか?このパラダイム変換のとき、大きな混乱が起きるような予感がしています。
 根本的なところで、日本人的な発想と中華民族の発想が違っているのでは、このごろ考えるようになりました。


(May 20, 2005 12:59:29 AM)

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