書評日記  パペッティア通信

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May 31, 2005
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カテゴリ: 経済




なんのことはない。これを読了すれば、バカ騒ぎであることが、理解できちゃう。吉田首相の圧力による、「日曜娯楽版」打ち切りからはじまって、世論調査カット、ロッキード特番改変、沖縄テレビ調印式、佐藤内閣退陣、メディア対策指南書事件…おなじことのくりかえし。政治家への事前説明を「通常業務」とした橋本発言は、「ニューズウィーク」「ワシントン・ポスト」「ル・モンド」などの失笑を買った。今までNHKは、「政治家の圧力」を公式には一度も認めていない。つねに「編集権」による「自主規制」。その確認をまたやったにすぎないという。シマゲジ(島桂次・元会長)に裏舞台を暴露されておきながら。さすがにその厚顔ぶりにはあきれるほかはない。

NHK。
国営でも民営でもない、「公共放送」という特殊な経営形態。
本書は、国家的公共性と市民的公共性のせめぎあいという視角から、NHKと政治をめぐる通史を整理して、その存在の意味を問いなおします。

もっとも信頼されるメディア、NHK。
しかし近年、権力を監視するジャーナリズム機能が失われていることが、元会長・ニュースキャスターなど、OBの証言などであきらかにされます。それは、予算を握られているためだけではありません。「国策協力」「産業政策への協力」によって、新「財源」獲得に奔走する、NHKと政府とのあいだにおける「ギブ&テイク」によるものらしい。それが、政界担当記者の制作現場介入にみられる管理体制強化と、制作現場の閉塞・モラルの低下をひきおこし、プロデューサーの制作費着服などがもたらされた。「NHK番組改変」と着服は、表裏一体の現象なのだという。

高度な公共的機能をもつ放送は、免許制で特権的に営まれるゆえに、大きな責任をもつ。NHKは、とくに受信料という特権があるので、「ジャーナリズムと文化」の論理のみを追求することができます。しかしNHKは、「市民的公共性」の論理で書かれた放送法を、国家的公共性の論理に読みかえ、「放送の国民主権」「言論の自由市場」の理念を後退させてきた。それは、電波管理委員会の廃止によって、「放送懇談会」「許認可権」にみられるように、保守政権がメディアに絶大な影響力をふるえるようになったためらしい。「国策の徹底」「偏向報道批判」が連呼され、「編集権」という大義名分の下まかり通る、「自主規制」という名の「外圧」

英BBC放送とNHKの違いも興味深い。


しかし、受信料不払いで、NHKを滅ぼしていいのか。

ここで筆者は、市場原理からも権力からも自立するNHKなら、情報化社会でもその基幹情報メディアとしての機能は必要、とみています。豊かな物的・人材的力量を生かさなければならない。BBCにみられるような、視聴者参加による「民主」「公開」「説明責任」「多元主義」を目指せ。そのためには、「独立行政委員会」制度の復活、経営委員会改革と権限の強化、編集権を制作現場にとりもどさなければならない、などの改革の提言がおこなわれ、本書は締めくくられています。

「権力、メディア、民衆」の三極構造において、メディアは民衆といかなる関係をとりむすぶべきなのか。手堅い(古い?)「問題系」の整理。

「テレビジョンによる表現の自由があるとするならば、それは国民のもつ自由な意思が、テレビ放送の手段によって表現されるという仮説をとらないかぎり、国民の表現自由権を否定することになる」 (本書173頁 戒能道孝)

この視角は、たいへん示唆に富む。これは、すべてのメディアにおける表現の自由の根幹、「編集権」の所在をめぐる決定的見解といっていい。メディアは、国民の、そして従業員の自由の表現の手段でなければならないのです。

「編集権は首脳」にあるとした読売社説は、自らがジャーナリズムではないことを確認した、といえるのかもしれません。NHK受信料は、「契約義務制」ではあっても「支払義務制」ではない。それは、国民の総意と総体的支援によってNHKは支えられる、という立法趣旨による。ライブドアのフジテレビ買収問題にもあらわれた、「メディアは誰のものか」。一昔前、労働組合には、放送従業者の雇用をまもることで、ジャーナリストの主体的な活動をまもり、国民的要求の探求と実現を確保する道を開くことが期待されていたという。今は、だれがそれをはたすべきなのか。放送の公共性をめぐる最終決着は、あくまで国民がつけなければならない。この筆者の確信は心地よい。メディアと権力をかんがえるには、必須の書といえるでしょう。

ただ、どうしても苦言をのべたくなる部分があります。
この人、 日 本 共 産 党 シ ン パ
だったりするのですな。それもかなり古い。

敗戦直後の日本には、「民主化推進勢力は、日本共産党か一部の知識人しかいなかった」というのは、まあご愛嬌ですむかもしれません。しかし、労働運動の「統一戦線論」や、日放労批判(社会党の上田哲が委員長をやっていた)をバリバリやられると、その偏狭な「社共対立」のセクト主義には、ゲンナリさせられます。元日経新聞記者とは、とてもおもえん。死ぬまでやってなさい、社会党、新左翼ともども。とくに、「市民」的公共性という視角を押しだしながら、「国民」を連呼しまくられると、少し異様に感じられてしまう。「市民的公共性」は、お題目にすぎないのですか?とたずねたくなる。

岩波の担当編集者は、アカデミズムに即した議論を展開するように筆者に命じ、自立したジャーナリストとしての「編集権」を行使すべきではなかったか。もっと広い層に読んでもらう、「国民の知る権利」とやらのために。


耐えられないことが予測できる人には、評価は★1つ分減らしてほしい。

評価 ★★★☆
価格: ¥735 (税込)

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Last updated  Nov 2, 2005 06:25:32 PM
コメント(11) | コメントを書く


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Re:市民的公共放送の再建にむけて 松田浩 『NHK -問われる公共放送-』 岩波新書(新刊)(05/31)  
NHKで見たもっとも衝撃的な「番組」は、東郷健の政見放送でした。でも、これの内容にはNHKは何の関与もしていないのですね、あたりまえか。

中公新書ラクレ 『メディアの迷走 朝日・NHK論争事件』を読もうかなと思っています。 (May 31, 2005 09:20:08 PM)

Re[1]:市民的公共放送の再建にむけて 松田浩 『NHK -問われる公共放送-』 岩波新書(新刊)(05/31)  
春秋子  さん
とりがら2001さん、こんばんわ~

>中公新書ラクレ 『メディアの迷走 朝日・NHK論争事件』を読もうかなと思っています。

斎藤環だけ異様で笑えて面白かったです。
だれもNHKを論じていないのが素晴らしい怪著ですた。
(May 31, 2005 09:27:51 PM)

Re:市民的公共放送の再建にむけて 松田浩 『NHK -問われる公共放送-』 岩波新書(新刊)(05/31)  
Sanzo-  さん
それでも、まだ、ほかの局よりNHKを見てしまいます。 (May 31, 2005 10:46:12 PM)

毎日ありがとうございます。  
西村幸祐 さん
トラックバックをいつもありがとうございます。ただ、関連あるテーマにしていただかないと、迷惑なこともあります。
今回は、これから書く31日づけエントリーに関連あるのでコメントします。

ま、岩波と著者の組み合わせを考えたら、内容は押して知るべしでしょう。ほとんど読むに値しないものかも知れませんね。
いま、NHKものを出すなら、政治家にNHKが圧力を掛けた件や、長井暁氏の人間像をあぶりだしたり、ダービー中継のディレクターが、なぜ日の丸と君が代をカットするのかとか、いかに色々な番組で無駄な経費が使われているかとか、打ち上げパーティーの経費の無駄遣いとか、そんな内容だったら面白いし、売れるかも知れませんね。 (Jun 1, 2005 12:08:14 AM)

一読してみます  
る~し さん
TBありがとうございました。
こんな本があるのですね。知りませんでした。まあ、一度読んでみる価値はありかもしれないと思いました。
NHK。問題続出ですが、いい番組も作ってはいるんですよね。民間放送ではなし得ないような地味~~~な番組。
もうなくなりそうで、記録して残しておくべき地方の祭りとか……。善し悪しですね。
本の紹介ありがとうございました。 (Jun 1, 2005 09:26:01 AM)

いつもTBいただくのですが  
佐倉純 さん
恐縮ですが、できれば関連したテーマでのTBをお願いします。
今回TBいただいたエントリでは、NHKも共産党も一切出てこないのですが?? (Jun 1, 2005 11:13:54 AM)

NHKの偏向報道  
koppe さん
皇室典範に関する有識者会議

NHKが変更報道していました。4つの選択肢の内、現行制度をわざわざ3番目に持ってきて世界で前の2つ、実施男性優先のイギリスや、長子継承で名歩れpんが作った北欧の王室がスタンダードで現在の継承順位がまるでおかしいかの報道の仕方です。

(Jun 1, 2005 03:20:22 PM)

Re:毎日ありがとうございます。(05/31)  
春秋子  さん
西村幸祐さん、はじめまして。
こんな所にお越しいただき、恐縮しています。

>トラックバックをいつもありがとうございます。ただ、関連あるテーマにしていただかないと、迷惑なこともあります。

失礼致しました。もっと、基準を厳しくしたいと考えております。すこし甘かったかもしれません。

>ま、岩波と著者の組み合わせを考えたら、内容は押して知るべしでしょう。ほとんど読むに値しないものかも知れませんね。

一応、要約と感想を併記しております。
もし黄線で書かれた原則や、「市民的公共性」の原理にもとづいて、メディアを運営されるべきであるという提言について、読むに値しないとお考えであるならば、とても残念におもいます。 (Jun 1, 2005 06:00:59 PM)

Re:いつもTBいただくのですが(05/31)  
春秋子  さん
佐倉純さん
>恐縮ですが、できれば関連したテーマでのTBをお願いします。

靖国だし、朝鮮も関連するしなどと考えて送ってしまいました。申し訳ありませんでした。
(Jun 1, 2005 06:02:24 PM)

Re:NHKの偏向報道(05/31)  
春秋子  さん
koppeさん、こんにちわ~。

>NHKが変更報道していました。4つの選択肢の内、現行制度をわざわざ3番目に持ってきて世界で前の2つ、実施男性優先のイギリスや、長子継承で名歩れpんが作った北欧の王室がスタンダードで現在の継承順位がまるでおかしいかの報道の仕方です。

う~ん、それははっきり言って、「気にしすぎ」「詮索しすぎ」なのではありませんか??

1月、NHKが「朝日新聞虚報問題」と銘打ってNews19で朝日批判を延々と中継した直後、歌会初めのニュースをいれて、皇室のいかにもヘタな和歌を1分以上も延々と垂れ流した(ゆっくり読み上げるので時間がかかるのです)のを見ました。

わたしは、NHK内のアンチ海老沢派が、NHKがいかに政治に汚染されているかを示すため、わざわざ朝日批判は政治家に唆されたんですよ、ということを分からせるため、嫌がらせのつもりで1分も朗読をたれながさせたのではないか???と疑ったことがあります。(笑ってください)

気にし始めたら、陰謀論へはひとっ走り。
気にしないことが一番です。 (Jun 1, 2005 06:10:34 PM)

左翼不要  
善人 さん
松田浩?胡散臭い左翼?何でも反対批判先行の人間? (Jul 8, 2009 08:56:17 AM)

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