書評日記  パペッティア通信

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Jan 17, 2007
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(この日記は1からの続きですので、 こちら からお読みください)


▼   ジジェクは、明快だわ。 ゾーエーとなったとき、その人の人権は古着と同じで、海外に送られ、「人道的介入」が行われることから分かるように、「人」とは市民権を具体化する一連の政治行為によって創出されていることは、確かなのね。 だから、「人権の普遍性」と現実の市民的権利の落差は、たしかに存在するし、「普遍性」と「特殊性」(政治的領域)の落差と捉えてしまうかもしれない。 しかし、それは違うの。  「人権の普遍性」こそ、政治的主体が固有のアイデンティティにおいて非偶然性を主張する権利、社会それ自体の普遍性の行為者として自らを措定する権利を定める のであって、ひいては「市民の政治問題化」という過程を通して市民的権利を創出をもたらすものなのよ。 政治をどこまでも、見失ってはならないのね。


▼   とくに示唆を受けたのが、キリスト教・ユダヤ教を家父長的庇護を与える宗教であるのに対して、 イスラムとは「孤児」であり、アイデンティティが見つからない場合、共同体をたちあげるのに最適な宗教 、という議論よねー。 ジジェクの箴言として、『「 多神教―ユダヤ教―キリスト教 」のトリアーデは、西洋哲学史で2度反復された、「 スピノザ―カント―ヘーゲル 」と、「 ドルーズ―デリダ―ラカン


▼  意外だったのが、ジジェクにとっては、NATOへ肩入れすることは、ヨーロッパを支持してアメリカと対立することらしいのよ。 あと、面白かったのは、文化人類学批判ね。「現地文化を理解しよう試みる人類学者は間違っている、その文化が自らを分かっていない様子をきじゅつしなければならない」………  マルクスにかぶれたような人なら誰しも使いたくなる箴言に、この本は、満ちているわ。 


▼   理論的水準に到達していない 」 「理想的な社会でこそ、死刑制度は―――貧困者を死刑にするなどのバイアスがかからないため―――必要な制度である」 「唯物主義とは、物質的発展へのナイーブな信頼ではなく、 現実の完全な偶然性を受け入れること である」 「 回転寿司とは、マルクス主義的革命である。なぜなら、生産過程が隠されていない (笑)」 「黒人の暴力やレイプにまつわる噂が、すべてが事実であることが証明されても、人種差別に基づいて広まったなら、「病的な人種差別によるものであって、 事実にみせかけたウソ なのだ」


▼  雑学も面白かったわ。 さすが知の巨人。 ハイデガーは、ある自著の和訳を日本語も知らないのに好んでいて、なぜだ?と突っ込まれると、「特攻隊員出身だから、私の思想が分かるはずだ」と答えたんですって。 レーニンの愛人と未亡人に対するスターリンの話も、面白かったわ。 アルゼンチンのガウチョ、デリダ本人のデリダ理解、アイデンティティはみーんな、他人が付与するもの……というのも、強調していたわ。 龍安寺の石庭は、石が一度に全部見られないように配置してあるって、修学旅行で見たはずなのに、インタビュアーに言われるまで気づかなかった。 ショックよねー。


▼  でもさ、不満も多いのよね。 「本質」を否定するラカン派精神分析で、本書でも散々、「外見」こそすべて、といってるのに、この表題はいったい何考えているのかしら?  あと、どうしても、肝心の2つの評論は、ただのアジテーションに読めてしまうのよ。 ジジェクの『厄介なる主体 1 ―政治的存在論の空虚な中心 』青土社の議論を読んでいないと、パディヴ、ランシエール、バリバルの批判者でもあることが分からなくて、たんに援用しているだけに思えるのではないかしら。 あと、インタビューが、面白い爺なのか、バカな爺なのか、わけが分からなく感じさせてしまうのも、難点かしら。


▼  ジジェクの仕事は2つに分かれるわ。 『イデオロギーの崇高な対象』に代表されるラカン派理論の哲学史への適用と、現代政治へのアクチュアルな理論提起。 むろん、この2つは、完全に分かれる訳ではないけれど、前者の「黒ジジェク」が難解でわかんない、という人には、後者の「白ジジェク」としてお奨めできるのではないかしら。  


▼  ただ白ジジェクに止まらず、黒ジジェクにいくと、もっと面白い、とだけ言っておきたいわね。 入門書には、立派なもの、という評価はゆるぎないわ。 お薦めかしら。


評価  ★★★☆
価格: ¥ 756 (税込)  


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Last updated  Feb 23, 2007 10:48:59 PM
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