幕張本郷の小さなフレンチレストラン   サンク・オ・ピエのオーナーシェフ、中村雅信の日記ページ

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May 4, 2011
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カテゴリ: シェフの雑記帳

中身は、体の外側

 で、大腸には善玉悪玉含めて大腸菌がたくさん住んでいます。これは人でもその他の動物でも同じ。腸内細菌と動物は共生関係にあり、微生物の力を借りないと最終的な消化ができません。特に牛などの草食動物は、微生物による消化作用に大きく依存した生き物です。

 そのほかの体の内部、つまり消化器官以外の内臓や筋肉などは、病気にかかっていなければ基本的に無菌状態です。本来の意味での体内というのは、このことを指します。

 生食用の肉というのは、精肉加工するときに消化器官の中の雑菌に汚染されないように万全の注意を払い、速やかに低温で処理されたものでなければなりません。ところが日本の場合、こういった処理をされた生食に適した生肉というのは、九州などで生産される馬刺し用の肉と馬のレバー刺し用だけらしいんですね。あとの牛肉などのほとんどは基本加熱用です。つまりみなさんが普通に食べていた、レバー刺しや牛刺しやユッケやタルタルステーキなどはほとんどが加熱用肉だという訳なんですね。

 肉の生食をするときは、表面をガスバーナーで数秒あぶるだけでもかなりの殺菌効果がある。ガスバーナーの炎は2000℃近いから、どんな細菌も瞬時に死んでしまうからだ。だからまるきりの生の刺身と、ガスバーナーであぶったたたきとでは、かなりリスクが変わってくる。

 抵抗力がある健康な成人なら、よほどたくさん細菌が付ていない限り、まず問題はありませんが、お年寄りや幼児や体調が悪い人などは、発症する危険があります。これは、魚の刺身でも同じことです。肉でも魚介でも生食には、こういうリスクが伴う事は、食べる側も知っておくべきだと思う。こういう事件が起きると、提供する側の責任のみが追及されがちだが、強制力を持った生食用肉の規制をきちんとしていない厚労省の責任は大きいはずだし、ユッケのようなものを子供に食べさせてしまう親にも責任の一端はあると思う。

 例えば、蜂蜜を乳幼児に与えてはいけないという事を知らないお母さんがたまにいる。はちみつというのは、あまりに高い糖度のため浸透圧の関係でほとんどの細菌は死滅するが、ボツリヌス菌の胞子は生きたまま含まれることがある。これを乳幼児が食べると、胃液の酸が弱いものだから、ボツリヌス菌が活動し出して食中毒が起こる。大人の場合は胃酸があるので、胞子も消化されていまうから蜂蜜を食べても安心なのだ。

 例えば賞味期限も、保存法や温度管理を間違えれば何の意味もなくなる。与えられた食物が、すべて安全とは限らないという事は、常に考えておくべきことなのではないか?と思う。

 もちろん私は料理人としてお客様の安全を守るのが第一と考えているが、100%安全な生食はないという立場で、常にリスクはあるという事を忘れないようにしています。






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Last updated  May 4, 2011 08:49:31 AM


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