ウクライナ政府は7月14日、過去9日間にアゾフ海でロシアの船舶116隻に打撃を与えたと発表した 。言うまでもなく攻撃の主体はNATOであり、アメリカやイスラエルの情報機関と関係の深いパランティア・テクノロジーズのAIが作戦の立案で重要な役割を果たしたのだろう。西側の反ロシア勢力は「潮目が変わった」と浮かれていたが、実際はロシア軍の激しい報復攻撃を招くことになった。オデッサやニコラエフの港へ物資を輸送する船舶を攻撃、ウクライナは黒海へのルートを断たれ、「陸の孤島」にされている。キエフ、スミ、オデッサなどの主要施設を激しく攻撃し始めた。
苦境に陥ったウクライナのウォロディミル・ゼレンスキーは長距離ドローンでカスピ海を航行したイランの商船を攻撃、イラン人船員が殺害された。この攻撃をイランのアッバス・アラグチ外相は激しく批判し、イラン議会は対イラン攻撃の拠点になる場所はイラン軍の正当な標的になると宣言、ウクライナのほか、イギリス、ブルガリアの名を挙げた。
ウクライナと西アジアを舞台にした戦いは形式上、別々の戦争だが、カスピ海を航行していたイラン戦への攻撃によって、実態通り、ひとつの戦争になるかもしれない。本ブログでは繰り返し書いてきたように、これらの戦争はイギリスが19世紀に始めた長期戦略に基づく。アメリカはその戦略を引き継いでいるだけであり、イスラエルはイギリスが作り上げた国だ。
この長期戦略に基づく戦争ははじまたイギリスの政治家はヘンリー・ジョン・テンプル(別名パーマストン子爵)。この人物は1855年2月から58年2月、59年6月から65年10月、2度にわたって首相を務め、反ロシアで有名だ。ビクトリア女王に対してアヘン戦争を指示したのもこの人物である。最初のアヘン戦争は1840年に勃発、第2次アヘン戦争は56年に始まっている。
2度のアヘン戦争でイギリスは中国(清)に海戦で勝利したが、内陸部を征服することはできなかった。それだけの地上軍がなかったからにほかならない。そこで戦国時代に戦闘奴隷の歴史がある日本に目をつけた。そして仕掛けたのが明治維新だ。
その日本は現在、アメリカの属国。 陸上自衛隊、海上自衛隊、航空自衛隊を一元的に指揮する常設組織として「統合作戦司令部」が2024年3月に編成され、これによって 自衛隊はアメリカ軍の指揮下に入ったと考えられている。
歴代アメリカ政府の外交や軍事をコントロールしてきたシオニストの一派、ネオコンは 1992年2月に 国防総省のDPG(国防計画指針)草案として世界制覇プロジェクトを作成した。この草案作成で中心的な役割を演じたのは国防次官を務めていたポール・ウォルフォウィッツで、そのことから「ウォルフォウィッツ・ドクトリン」とも呼ばれている。
このプロジェクトにおける最優先事項は 新たなライバルの出現を防ぐことにあるが、ドイツと日本をアメリカ主導の集団安全保障体制に統合し、民主的な「平和地帯」を創設する、つまりドイツと日本をアメリカの戦争マシーンに組み込み、アメリカの支配地域を広げるということも謳われている。1995年以降、日本はアメリカの戦争マシーンになる準備、つまり中国と戦争する準備を急ピッチで進めた。2024年3月の統合作戦司令部創設はその一環だろう。
総理大臣を務めていた故安倍晋三は2015年の6月、赤坂にある「赤坂飯店」で開かれた官邸記者クラブのキャップによる懇親会で、「安保法制は、南シナ海の中国が相手なの」と口にしたと報道されている 。自衛隊は2016年に与那国島でミサイル発射施設を建設、19年には奄美大島と宮古島、そして23年には石垣島でも施設を完成させた。
この軍事施設建設の理由は国防総省系のシンクタンク「RANDコーポレーション」が発表した報告書が説明している 。GBIRM(地上配備中距離弾道ミサイル)で中国を包囲するためだというのだ。
南西諸島にミサイル発射基地が建設されつつあった2017年11月、アメリカはオーストラリア、インド、日本とクワドの復活を協議、18年5月にはアメリカ太平洋軍をインド太平洋軍へ名称変更した。インド洋から太平洋にかけてを一体化して扱おうとしたのだろうが、今年6月、名称を太平洋軍へ戻すことを決めた。
RANDコーポレーションによると、専守防衛の建前と憲法第9条の制約がある日本の場合、ASCM(地上配備の対艦巡航ミサイル)の開発や配備で日本に協力することにし、ASCMを南西諸島に建設しつつある自衛隊の施設に配備する計画が作成されたとされていたが、すでにそうした配慮は放棄されている。
2022年10月になると、「日本政府が、米国製の巡航ミサイル『トマホーク』の購入を米政府に打診している」とする報道があった 。亜音速で飛行する巡航ミサイルを日本政府は購入する意向で、アメリカ政府も応じる姿勢を示しているというのだ。
トマホークは核弾頭を搭載でる亜音速ミサイルで、地上を攻撃する場合の射程距離は1300キロメートルから2500キロメートル。中国の内陸部にある軍事基地や生産拠点を先制攻撃できる。「専守防衛」の建前と憲法第9条の制約は無視されていると言えるだろう。
そして2023年2月、浜田靖一防衛大臣は亜音速巡航ミサイル「トマホーク」を一括購入する契約を締結する方針だと語ったが、10月になると木原稔防衛相(当時)はアメリカ国防総省でロイド・オースチン国防長官と会談した際、「トマホーク」の購入時期を1年前倒しすることを決めたという。当初、2026年度から最新型を400機を購入するという計画だったが、25年度から旧来型を最大200機に変更するとされているのだが、イランに対する攻撃で枯渇、配備は遅れる。
RANDコーポレーションが書いているように、アメリカ軍はミサイルで中国を包囲しようとしている。ロシアに対するウクライナと同じように日本は中国に軍事的な圧力を加え、場合によっては攻撃することが求められている。
日本と中国との友好関係を築いたのは田中角栄である。彼 は総理大臣として1972年9月に北京を訪問、日中共同声明の調印にこぎつけ、その際に尖閣諸島の領土問題は「棚上げ」にすることで合意している。この知恵によって日中両国は経済的な結びつきも強まった。この関係を壊したのは菅直人政権だ。
2010年6月に成立した菅直人内閣は閣議決定で尖閣諸島周辺の中国漁船を海上保安庁が取り締まれることに決め、2000年6月に発効した「日中漁業協定」を否定してしまう。この出来事で中心的な役割を果たしたのは国土交通大臣を務めていた前原誠司。彼は9月に外務大臣となり、外交的に問題を修復する道を断ち切ることになった。
そして2025年10月に内閣総理大臣に就任した高市早苗は翌月、 衆院予算委員会で「台湾有事」について問われ、「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだ」と発言。彼女も「ひとつの中国」を受け入れているので、中国で内戦が始まった場合、日本は中国に対して宣戦布告するということになる。東アジアにおける戦乱の発火点になりうる場所のひとつは台湾。高市の発言は日本をウクライナと同じような状態にしかねない。
高市首相は11月11日、衆院予算委員会で「核を保有しない、製造しない、持ち込まない」という非核3原則を堅持するかどうかという質問に対して明言を避けた。本ブログでは繰り返し書いてきたことだが、アメリカのCIAやNSAの分析官は日本が核兵器を開発していると確信、監視してきた。
1995年を節目にして、日本はアメリカの戦争マシーンに取り込まれてきたが、その一方で経済的には衰退し続けている。そのひとつの切っ掛けは1988年7月に実施されたBIS(国際決済銀行)規制の問題だろう。国際業務を行う銀行の場合、自己資本比率を8%以上にすることが求められたのだが、当時、日本の銀行は4から5%。その結果、貸出額を減らさなければならなくなり、1990年代から銀行は「貸しはがし」をすることになる。回収しやすい会社、つまり優良な中小企業から資金を回収し始めた。その際、日本の優秀な職人を中国企業が雇った。技術が中国へ流れたとも言える。またアンダーグランドの資金がそうした企業へ流れ込んだようだ。教育水準の低下も日本経済を弱体化させる一因になっている。
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【 Sakurai’s Substack 】
【 櫻井ジャーナル(note) 】