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EPPO(欧州検察庁)からの要請を受け、ベルギー警察は12月2日にブリュッセルのEU(欧州連合)外交部とブルージュにあるヨーロッパ大学を家宅捜索、元外務安全保障政策上級代表のフェデリカ・モゲリーニ学長を含む3名を逮捕したと伝えられている。若手外交官研修プログラムの入札において、不正行為があったと「強く疑われている」のだという。この事件がどのような展開になるかは不明だが、ここにきてヨーロッパのエリート層に疑惑の目が向けられているとは言える。その震源地はウクライナだ。 本ブログでも書いたことだが、ウクライナではウォロディミル・ゼレンスキーの側近として知られているアンドリー・イェルマークの自宅が汚職事件に絡んで家宅捜索を受け、その直後に辞任が発表された。 ゼレンスキーはすでに大統領の任期が切れているわけで、イェルマークを大統領首席補佐官と呼ぶのは奇妙な話だが、とりあえず西側諸国では大統領と大統領首席補佐官ということになっている。事実上、アメリカ政府の機関であるNABU(ウクライナ国家汚職対策局)とSAPO(特別反腐敗検察)が進めている汚職捜査「ミダス作戦」の一環だという。 この捜査で法務大臣を名乗っていたヘルマン・ハルシチェンコとエネルギー大臣を名乗っていたスビトラーナ・グリンチュークはすでに辞任し、国防大臣を務めていたルステム・ウメロウは7月に辞任を表明、11月に入って国外へ脱出、カタールにいると言われている。 コメディアン時代からゼレンスキーと親しいテレビ制作会社共同オーナーのティムール・ミンディッチはイスラエルへ逃亡したと言われているが、彼の所有物の中に純金製のトイレや200ユーロ札が詰まった戸棚などが含まれていたという。ミンディッチは家宅捜索の数時間前に国外へ脱出した。 こうした不正はロシアとの戦争を推進してきた西側諸国から流れ込んできた資金に絡んでいる。そうした資金を動かしているのは金融機関はブラックロックやJPモルガンなど。故ジェイコブ・ロスチャイルド、その息子であるナット・ロスチャイルド、ロスチャイルド金融資本と関係の深いジョージ・ソロスなどの名前も出てくる。こうした金融機関や富豪にとってウクライナでの敗戦は投資の失敗を意味する。 ゼレンスキーは政治家になってもコメディアンとしてシナリオ通りに動き、発言していたはず。ここにきてゼレンスキーの周辺がNABUなどに摘発されているが、このグループを操っていた人たちが欧米にいる。アメリカのネオコン、そしてヨーロッパではネオコンの子分たちだ。そうした仕組みの不正はすでに囁かれてきたが、捜査の対象になっているゼレンスキーの側近がカネの流れを証言し始めると、欧米はパニックになるかもしれない。 アメリカ海兵隊の元情報将校でUNSCOM(国連大量破壊兵器廃棄特別委員会)の主任査察官を務めたスコット・リッターのドキュメンタリーによると、ゼレンスキーはイギリスの対外情報機関MI6のエージェントの可能性が高く、そのハンドラー(エージェントを管理する担当オフィサー)はMI6長官だったリチャード・ムーアだと推測されていた。そのムーアが今年10月1日に退任し、ブレーズ・メトレベリへ引き継がれている。ゼレンスキーはイギリスの情報機関と密接な関係にある可能性が高く、この人物にメスを入れると、こうした関係が明るみに出るかもしれない。 欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長も疑惑の人物だ。彼女はパンデミック騒動のピーク時にファイザー社のアルバート・ブーラCEOと個人的に書簡を交わし、これがきっかけとなり、EU向けの350億ユーロという「COVID-19(2019年-コロナウイルス感染症)ワクチン」供給契約が締結された。「ワクチン」は2027年まで購入される予定だったが、パンデミック騒動が終了した後に需要がなくなり、期限切れのワクチンが数十万回分廃棄された。そもそもパンデミック騒動自体が如何わしく、「COVID-19ワクチン」が深刻な副作用を引き起こしていることも明白だ。フォン・デア・ライエンの責任は重いのだが、今のところ何者かに守られている。 欧州委員会は人類を管理するために便利なデジタルIDの導入を積極的に推進してきた。同委員会が2019年に公表した指針の中には、EU市民向けの「ワクチン・カード/パスポート」を2022年に導入する計画が示されていた。欧州委員会のステラ・キリアキデスは2022年12月、WHO(世界保健機関)のテドロス・アダノム事務局長と「世界的な健康問題に関する戦略的協力を強化する」協定に署名している。 WHOと欧州委員会は2023年6月5日、GDHCN(グローバルデジタルヘルス認証ネットワーク)を実現するために「画期的なデジタル・ヘルス・イニシアティブ」を開始、世界的な相互運用可能なデジタル・ワクチン・パスポートを推進すると発表している。 日本で導入された「マイナンバーカード」も一種のデジタルID。岸田文雄内閣は2022年10月13日、「マイナンバーカード」と健康保険証を一体化させる計画の概要を発表、それにともない、それまで使われてきた健康保険証を2024年の秋に廃止すると宣言した。その中心にいたのはデジタル大臣を務めていた河野太郎だ。 発表時、河野太郎デジタル大臣は「デジタル社会を新しく作っていくための、マイナンバーカードはいわばパスポートのような役割を果たすことになる」と述べ、「日本は国民皆保険制度であり、保険証と一体化するということは、ほぼすべての国民にマイナンバーカードが行き渡るということで、格段に普及が進む。」と寺田稔総務大臣は主張した。 ウクライナでNATO軍がロシア軍に敗北したことから欧米エリートの不正が明るみに出始めているが、その不正は人類管理プロジェクトにつながっている。ネオコンをはじめとする西側のエリートはロシアを簡単に屈服させられるという前提で計画を作成、ロシアが消えた後の世界を支配する仕組みを作ろうとしていたのだろうが、その計画は崩れ始めている。**************************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2025.12.04

アメリカのドナルド・トランプ大統領は麻薬対策という口実でベネズエラへ軍事侵攻する姿勢を見せているが、勿論、本当の理由は違う。石油利権を手にすると同時に、ラテン・アメリカの再植民地化から世界を支配するシステムを立て直そうとしているとしているのだろう。 そうした本音を公然と主張している人物がいる。今年のノーベル平和賞受賞者、マリア・コリーナ・マチャドだ。この人物は長年、ベネズエラの自立した体制を転覆させ、アメリカの巨大資本が支配する帝国主義体制を復活させるために活動をしてきた。 マチャドは今年11月5日から6日にかけてマイアミで開かれたアメリカ・ビジネス・フォーラムのイベントにリモートで登場、ベネズエラからニコラス・マドゥロ大統領を排除すれば、1兆7000億ドルの投資機会がアメリカの巨大企業へもたらされると主張していた。言うまでもなく、投資先の中心には石油がある。マチャドは5日に現れたが、同じ日にトランプも登壇している。 そのトランプは麻薬がアメリカへ密輸されることを防ぐと宣伝しているが、世界最大の麻薬業者はCIAに他ならない。秘密工作の資金としてCIAは麻薬取引を利用してきたのだ。 例えば、ベトナム戦争の時には東南アジア(黄金の三角地帯)のヘロイン、アフガン戦争の際にはパキスタンからアフガニスタンにかけてのヘロイン、そしてラテン・アメリカではコカインだ。その源流はイギリスが中国を侵略するために仕掛けたアヘン戦争だと言えるだろう。いずれも研究者、ジャーナリスト、そしてアメリカ議会がその実態を暴き、CIAの内部調査でもこの事実を確認しているアメリカの先輩にあたる国がアヘン戦争で中国(清)を侵略したイギリスであり、麻薬資金を処理する拠点として香港は重要な役割を演じてきた。 麻薬資金は流動性が高いことから、米英を中心とする金融システムの中で重要な位置を占めている。国連の麻薬犯罪局長を努めていたアントニオ・マリア・コスタによると、麻薬取引の利益はリーマン・ショックのあった2008年の時点で3520億ドルあったと推定され、その資金に救われた銀行がいくつかあるという。(The Observer, 13 December 2009) その2008年にはワコビアという銀行が破綻、ウェルズ・ファーゴに吸収されているが、このワコビアが2004年から07年にかけて3784億ドルという麻薬資金のロンダリングをしていたことが判明している。この事実に気づき、内部告発した社員は解雇されてしまった。 麻薬取引と関係している以上、CIAはマネーロンダリングにも関係している。実際、CIAの銀行はいくつも作られてきた。例えば、対キューバ工作と関係しているバハマ諸島ナッソーのキャッスル銀行、CIAに協力していたユダヤ系ギャングのメイヤー・ランスキーが違法資金のロンダリングに使っていたマイアミ・ナショナル銀行、ペリーン銀行、BWC(世界商業銀行)などだ。 このBWCとつながっているスイスの国際信用銀行はモサド(イスラエルの情報機関)へ資金を流していた。東南アジアのヘロイン取引と関係していたナガン・ハンド銀行、CIAのアフガニスタンにおける工作のために設立されたBCCI。1953年にイランのムハマド・モサデク政権を倒したクーデターでCIAが資金の調達に使ったディーク社は田中角栄を失脚させたロッキード事件でも登場する。**************************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2025.12.03
ドナルド・トランプ政権はベネズエラに対して軍事的な威嚇を続ける一方、西側のメディアは怖気づいたニコラス・マドゥロ大統領が国外へ逃亡しようとしているかのような話を流している。 しかし、10月下旬にロシアのアヴィアコン・ジトトランス所属のIl-76TD輸送機がベネズエラへ飛来した頃から状況が変わっている。ロシアから軍事物資、あるいは傭兵会社の戦闘員を運んできたと考えた人が少なくない。ロシアのスペツナズ(特殊部隊)もベネズエラへ入ったとする話も伝えられている。 11月上旬には、アメリカ軍が威嚇のために2機のB-52爆撃機をベネズエラへ向けて飛行させたのだが、陸地から約100キロメートルの地点でロシア製防空システムであるS-300に照準を合わされ、基地へ戻らざるをえなくなった。そのほか中低高度の防空システムであるブークM2e、シリアで有効性が証明された近距離対空防御システムのパンツィリ-S1も配備された。対艦ミサイルも配備されただろう。 中国やイランもベネズエラへの支援を始めていると言われ、イランは航続距離が2500キロメートルだという攻撃用ドローン「シャヘド」を供与、これによってベネズエラはフロリダのアメリカ軍基地を攻撃できるようになった。ベネズエラはアメリカを恐れていないだろう。 トランプに限らず、アメリカの政権はベネズエラを再植民地化して石油を奪おうとしてきたが、そのアメリカでは他の産油国とは違い、生産コストの高いシェール・ガスやシェール・オイルに頼っている。 シェールとは堆積岩の一種である頁岩(けつがん)を意味し、シェール層から天然ガスやオイルを採取するのだが、そのために水圧破砕(フラッキング)と呼ばれる手法が使われている。垂直に掘り下げ、途中からシェール層に沿って横へ掘り進み、そこへ「フラクチャリング液体」を流し込んで圧力をかけて割れ目(フラクチャー)を作って砂粒を滑り込ませ、ガスやオイルを継続的に回収する。この際に化学薬品が使用されるのだが、それによって地下水源が汚染されている。 アメリカの食糧生産はグレートプレーンズ(大平原)の地下にあるオガララ帯水層に支えられてきたのだが、その水位が低下している。その貴重な水源をシェール・ガスやシェール・オイルの開発で汚染しているのである。この帯水層は2050年から70年の間に枯渇する可能性があるとも言われ、アメリカはエネルギーと食糧で危機的な状況だ。 ウクライナをNATOの支配下に置き、ロシアを征服できればそうした問題を解決できたのだろうが、ウクライナでNATO軍はロシア軍に負けてしまった。イギリスなどはウクライナのクーデター政権に対し、最後のひとりまでロシア軍と戦えと命じている。「総玉砕」しろということだ。少しでもロシアを疲弊させ、容易に倒せる状況を作れということだが、それはできそうにない。疲弊しているのはヨーロッパ諸国だ。 ウクライナ軍の補給を支えていた幹線道路が交差するポクロフスクをロシア軍は制圧、ウクライナ側の要塞線は崩壊した。ロシア軍の進撃スピードは速まり、ウクライナ軍の戦死者は百数十万人とも推測され、そのほか、今年8月までにウクライナ軍では約40万人が無許可で部隊を離脱、つまり脱走したと報告されている。 ウクライナ軍の兵士不足は深刻。街頭での拉致が横行しているが、ろくに軍事訓練をしないまま戦場へ送られ、短期間に戦死してしまう。徴兵担当者が賄賂をもらって逃亡させるケースも少なくないようだ。そこでNATO加盟国が情報機関員、特殊部隊員、ミサイルなどのオペレーターだけでなく、通常の兵士も送り込んでいる。1カ国あたり数千名から1万名の部隊を投入、相当数が戦死したという。NATOが部隊を正式にウクライナへ派兵したがっている理由はそうした実態を隠したいからだろうという推測もある。 ウクライナへはブラックロックやJPモルガンといった西側の巨大金融機関が多額の資金を投入してきた。ドイツのフリードリヒ・メルツ首相はブラックロックの元幹部、フランスのエマニュエル・マクロン大統領はロスチャイルド銀行の出身。イギリスのキア・スターマー首相はシオニスト、つまり親イスラエルであることを公言している。イスラエルとロスチャイルド家が緊密な関係にあることは言うまでもない。 スターマーに限らず、イギリスの政界はアメリカと同様、イスラエルの影響を強く受けている。その仕組みの中で最も重要な役割を演じてきたとされている人物がトレバー・チン。2005年には「イスラエル・英国ビジネス協議会」の共同議長としてイスラエルを訪れ、アリエル・シャロン首相の輸出国際協力会議に参加。2018年にはトニー・ブレア元首相をはじめとする英国政界の有力者数名が出席したハイム・ヘルツォグ元イスラエル大統領の盛大な祝賀会を共同主催している。 チン卿は1980年代以降、イギリスの二大政党である保守党と労働党の圧力団体である労働党イスラエル友好協会(LFI)と保守党イスラエル友好協会(CFI)の両方に資金を提供、イスラエルのパレスチナ人虐殺に批判的だったジェレミー・コービンを攻撃する一方、キア・スターマーが首相になるのと助けた。 イギリス労働党は1982年9月にレバノンのパレスチナ難民キャンプ、サブラとシャティーラで虐殺事件が引き起こされた後、親イスラエルから親パレスチナへ変化していたが、それを親イスラエルへ引き戻したのがブレアにほかならない。 ブレアは労働党を親イスラエルへ引き戻しただけでなく、社会民主主義を放棄して大企業に接近していく。チン卿はそのブレアの大口献金者だったが、富豪のマイケル・レビーも有力スポンサーだった。 ブレアとイスラエルとの関係は遅くとも1994年1月に始まっている。このときにブレアは妻のチェリー・ブースと一緒にイスラエル政府の招待で同国を訪問、帰国して2カ月後にロンドンのイスラエル大使館で富豪のマイケル・レビーを紹介されたのだ。 その2カ月後、つまり1994年5月に労働党の党首だったジョン・スミスが心臓発作で急死、その1カ月後に行われた新党首を決める投票でブレアが勝利している。レビーやLFIのようなイスラエル・ロビーを資金源にしていたブレアは労働組合の影響を受けなかった。 西側の巨大金融機関はウクライナを乗っ取り、ロシアを再属国化しようと目論んだのだろうが、思惑通りに進んでいない。損を受け入れるのか、粘って全てを失うのかという状態だ。**************************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2025.12.03
パナマ船籍の石油タンカーM/T MERSINがセネガル沖で民間の船舶から飛び立ったウクライナ海軍のドローンによる攻撃を受けたと伝えられた。 8月にロシアのタマン港へ寄っていることから「影の艦隊」だとして攻撃されたと推測する人もいるが、こうした推測が正しいならば、黒海以外の公海上でも船籍や所有者を問わず攻撃して良いとウクライナ側はNATOから許可を受けていたのだろう。許可したのはイギリスの政府機関だという説もある。ここにきて対ロシア戦争でイギリスの動きが目立つ。 11月28日には黒海のトルコに近い海域でロシアのノボロシスクへ向かっていた2隻のタンカー、ビラトとカイロスが水上ドローンによって攻撃されてカイロスは炎上した。イギリスの将校が指揮したと言われている。 その直後、ロシア軍は5機の短距離弾道ミサイルのイスカンデルでウクライナ南部のニコラエフを攻撃、水上ドローンや飛行機タイプの無人機の製造工場を破壊、そこにいた10名のイギリス人エンジニアが死亡したとされている。 また、今年8月2日にはロシアのスペツナズ(特殊部隊)がオデッサに近いオチャコフでイギリス陸軍のエドワード・ブレイク大佐とリチャード・キャロル中佐、そしてイギリスの対外情報機関MI6の工作員ひとりを拘束した。MI6はオデッサからロシア深奥部に対するミサイル攻撃やテロ攻撃を指揮していると言われている。 2014年から22年にかけてのクーデターで作られた体制の戦力を増強するためにNATO諸国はマリウポリ、マリーインカ、アブディフカ、ソレダルの地下要塞を結ぶ要塞線をドンバス周辺に築いたが、ウクライナ軍の補給を支えていた幹線道路が交差するポクロフスクをロシア軍は制圧、要塞線は崩壊した。 その包囲網を突破して救出するため、ウクライナの情報機関GUR(国防省情報総局)は特殊部隊をUH-60Aブラックホークで送り込んだ。10月28日にはGURの特殊部隊員11名がヘリコプターから降りたところをロシア軍に殲滅される様子をロシア軍の偵察ドローンが撮影した映像が公開され、10月30日には2機のブラックホークで約20名から24名の特殊部隊員を送り込まれ、同じように殲滅されている。 ポクロフスクがロシア軍に制圧された後、キエフのボルィースピリにある特殊部隊の訓練基地をロシア軍はマッハ10という極超音速ミサイルのキンジャールで破壊、またスムイにある深さ50メートルという地下バンカーを極超音速巡航ミサイルのツィルコンで破壊したという。その地下バンカーにはイギリス軍の将軍とフランス軍の大佐、そしてウクライナのGUR(国防省情報総局)高官がいたという。 現在、ウクライナに正規の大統領は存在しない。ウォロディミル・ゼレンスキーの任期は昨年5月に切れている。ロシアとの戦争中だという口実で居座っているだけだが、ウクライナ軍は崩壊、NATO諸国が送り込んでいる部隊も少なからぬ犠牲者が出ているようで、ロシアの勝利は明白。ゼレンスキーの天下は長く続かないだろう。 そうした中、ドナルド・トランプ米大統領はウクライナでの戦争から距離を置き始め、ロシア政府を丸め込んで「停戦」に持ち込もうとしている。2014年の「ミンスク1」や15年の「ミンスク2」と同じようにロシアを再攻撃するための戦力を回復させる時間を稼ごうというわけだ。問題はそうしたことをロシアが受け入れないだろうということである。 すでにゼレンスキー体制は崩壊している。法務大臣を名乗っていたヘルマン・ハルシチェンコとエネルギー大臣を名乗っていたスビトラーナ・グリンチュークはすでに辞任、国防大臣を務めていたルステム・ウメロウは7月に辞任を表明し、11月に入って国外へ脱出、カタールにいると言われている。コメディアン時代からゼレンスキーと手を組んできたティムール・ミンディッチはイスラエルへ逃亡したという。そしてゼレンスキーの側近として知られているアンドリー・イェルマークの辞任が発表された。こうした人たちがウクライナへ流し込まれた資金の行方を話し始めたなら、ヨーロッパは大混乱になるかもしれない。**************************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2025.12.02
ウクライナでNATO軍がロシア軍に敗北したことを隠しきれなくなりつつある中、ドナルド・トランプ大統領は確認石油埋蔵量が世界最大であるベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領と電話会談、マドゥロに対し、退陣しなければアメリカ軍の軍事行動に直面すると脅したという。石油をアメリカの巨大資本によこせということだと理解されている。ベネズエラ沖に艦隊を並べて脅せば屈すると考えていたのかもしれないが、屈服する様子はない。 本ブログでもすでに書いたことだが、11月上旬、アメリカ軍は威嚇のために2機のB-52爆撃機をベネズエラへ向けて飛行させたが、陸地から約100キロメートルの地点でロシア製防空システムであるS-300に照準を合わされ、基地へ戻らざるをえなくなった。そのほか、中低高度の防空システムであるブークM2e、シリアで有効性が証明された近距離対空防御システムのパンツィリ-S1も配備されたと言われている。 10月下旬にはロシアのアヴィアコン・ジトトランス所属のIl-76TD輸送機がベネズエラへ何かを運んできた。この会社はロシア軍や傭兵会社ワグナーの貨物を輸送したとしてアメリカから「制裁」されていることから軍事物資を輸送してきたのではないかと言われている。戦闘員を運んできたとも言われているほか、ロシアのスペツナズ(特殊部隊)もベネズエラへ入ったとする話が伝えられている。 しかも、ロシアだけでなく、中国やイランもベネズエラへの支援を始めている。イランは航続距離2500キロメートルだという攻撃用ドローン「シャヘド」を供給したと言われているが、これが事実なら、ベネズエラはフロリダのアメリカ軍基地を攻撃できる。アメリカ軍がベネズエラを軍事侵攻した場合、ロシアの防空システムや対艦ミサイルの洗礼を受けることになるだけでなく、アメリカ本土も戦場になる可能性があるわけだ。 アメリカの脅しに屈しない国はベネズエラのほかにも少なくない。インドもそうだ。ロシアとの関係を強め、アメリカから距離を置く政策を進めている。トランプ大統領はインドがロシア産原油の購入を「ほぼ停止した」と公言したが、インド外務省はそうしたことに関する「いかなる協議も承知していない」と述べ、エネルギー調達の「広域化」によって「エネルギー価格の安定」を確保するというインドの政策を強調していた。 12月到着分を中心にロシアからのエネルギー輸入量は減少しているようだが、インドがロシアと距離を置く気配はない。インド国営の軍用機メーカーであるヒンドゥスタン・エアロノーティクス(HAL)はロシアの統一航空機製造(UAC)社製のSJ-100双発ナローボディ機を国内顧客向けに製造するという。HALは長年にわたってUACと提携、インド空軍向けにSu-30MKI戦闘機のライセンス生産を行っている。 それに対し、アメリカはバングラデシュでも暗躍していた。昨年6月から8月にかけて、バングラデシュでは学生が主導する反政府運動が激しくなり、インドや中国と友好的な関係あったシェイク・ハシナ政権が倒され、ムハマド・ユヌスを首席顧問とする暫定政府へ移行している。 ユヌスはアルフレッド・ノーベル記念スウェーデン国立銀行経済学賞(ノーベル賞ではない)を受賞しているが、トム・ハイネマンが2019年に制作した「マイクロ債務」というドキュメンタリーによると、高利貸しと言える人物だ。商業銀行の金利が通常12から13%のところ、ユヌスが1970年代に設立したグラミン銀行は30から40%。こうした高利で借りた人は返済のため、さらに高利の業者からカネを借りなければならず、多くの貧困層を借金漬けになった。 ハシナ政権を倒したデモは雇用配分制度に対する不満が原因だとされているが、その背後にはパキスタンやアメリカが存在していたと言われている。アメリカはベンガル湾の北東部にあるセント・マーチン島に注目してきた。この島に軍事基地を設置し、ミャンマーの港湾を利用している中国に対抗できるからだ。ハシナは昨年5月、外国の軍事基地許可を拒否していた。 バングラデシュはアメリカ海軍にとって重要な物流拠点になる可能性があり、同国の海軍基地は中国とインド洋をつなげるCMECを監視できるとアメリカは指摘、マラッカ海峡のコントロールにも役立つとも考えているようだ。 ハシナ政権をアメリカと共同で倒したとされているパキスタンでは昨年2月8日に実施された総選挙の結果、266議席のうち無所属の候補者が100議席以上を獲得、そのうち93議席はイムラン・カーン元首相が率いるPTI(パキスタン正義運動)が占めていた。70議席は各政党が獲得した議席数に基づく比例代表制で女性(60議席)と非イスラム教徒(10議席)に割り当てられるのだが、PTIは政党からの出馬が認められていない。 選挙の前、パキスタンの裁判所はカーン元首相に対し、「カンガルー法廷」で立て続けに懲役刑を言い渡していた。その背景でアメリカ政府が暗躍している。インターネット・メディアの「インターセプト」が公開したパキスタン政府の機密文書によると、アメリカの国務次官補を務めていたドナルド・ルーやレ・ビグリーを含む国務省高官が当時の駐米パキスタン大使のアサド・マジード・カーンと2022年3月7日に会談、ルー国務次官補は不信任決議を提案している。アメリカの言いなりにならないカーンをジョー・バイデン政権は排除したかったのだ。 その命令に従い、2022年4月に内閣不信任決議案が提出されるが、下院議長は却下、カーンは解散総選挙に打って出ると表明し、4月3日に議会は解散されたのだが、その議会解散を違憲と最高裁は4月7日に判断し、4月10日に内閣不信任決議案の採決が行われて可決された。そして軍を後ろ盾にするシャバズ・シャリフ政権が誕生する。 国民は強く反発し、大規模な抗議行動や暴動という形で表面化。そこで軍は市民の自由を大幅に削減し、軍への批判を犯罪化し、国内経済における軍の役割を拡大、国内は麻痺する。言論統制のひとつの結果として、アメリカ政府に従属する軍に批判的なジャーナリストが殺害されたり行方不明になったりした。カーンは政治集会で銃撃されて足を負傷、その際、支持者のひとりが殺されている。 カーンは2023年8月から刑務所に隔離され、彼の率いるPTIの候補者が政党から出馬すること、またクリケットのバットを選挙シンボルとして使用することが禁止された。非識字率40%のパキスタンでは大きな打撃となると見られていたが、それでも第1党になった。通常の選挙だった場合、PTIは圧勝していただろう。 そのカーン前首相の健康状態が懸念されている。死亡しているという噂も流れ、家族や弁護士は週間にわたって面会を拒否されているとしている。当局は健在だとしているが、カーン前首相が健在である証拠を提示するように求めている。**************************************************【Sakurai’s Substack】【櫻井ジャーナル(note)】
2025.12.01
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