全323件 (323件中 1-50件目)
(まさか、トゥパク・アマルが、早々に手を回していたのか…?!だが、いくらなんでも、このような、あの者どもにとっても危険の大きいことを?!)アレッチェの強く握り締めた拳が、わなないている。(いや……有り得る!!いかにリスクがあろうが、我がスペイン軍を最も窮地に陥れる方法は、結局、これだと見切っていたのだとしたら…!ならば、あの男が、どこかで、この手を打ってくる可能性を予測しておくべきだったのだ――!!)あまりに強度の切歯扼腕のために、アレッチェの、その歯も、腕の骨までもが、実際に砕かれそうなほどにギリギリと不快な音を立てて鳴っている。「おのれ…トゥパク・アマル……!!」アレッチェは、激しく拳を机上に打ちつけると、大股で執務室のドアに向かう。そして、ドアを蹴り上げて開くと、荒々しい怒声で乱暴に部下を呼びつけた。「即刻、バリェ将軍を、ここに呼べ!!それから、すぐに、ラ・プラタ副王領のフロレスに伝令を飛ばすのだ。大至急、わたしの元へ参じよと――!!」【お知らせ】本日もお読みくださいまして、どうもありがとうございます。いつも、とても励みになっています!『第8話 青年インカ』も長い章となってしまいましたが、最後までお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました。明日からは、いよいよ『第9話 碧海の彼方』に入って参ります。早速、英国艦隊側の敵情視察からスタートしたいと思います^^おかげさまで、この物語も、いよいよ終盤戦となりました。トゥパク・アマルも主役に返り咲きたくてウズウズしている様子ですし(…って、登場は、もいちょい先なんですが<(_ _)>)、次章は、トゥパク・アマル、アンドレス、アレッチェ、フロレスなど、これまでの主要キャラ総動員で盛り上げていけたらと思っております!今後とも、どうぞよろしくお願いいたします!!【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。 ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.28
コメント(4)
(まさか…?謀られた……―――?!)アレッチェは、半ば引きつるほどに激しく吊り上った険しい眼で、再び、書面に視線を走らせる。その衝撃的な指令書の内容は、さしずめ下記の通りであった。『英国の艦隊がペルー沖に向かっている。ジョンストンの率いる英国艦隊は、2戦艦(大砲計114門)、4巡洋艦、輸送船若干を持ち、これにパリアの率いる4戦艦が伴っている。他にインディオの反乱軍に渡すべき武器を1万5千点積んでおり、相談役としては、スペインに恨みを持つイエズス会の僧アリスメンディが乗り組んでいる。英国艦隊は、ペルー沖のアレキパ近くの海岸に向かう可能性があり、此度の反乱の中心ティンタ郡(註:トゥパク・アマルの出身地、且つ、領地)に近く、非常に危険である。即刻、厳戒態勢を要する。なお、彼らは上陸後、反乱軍と連絡する可能性がある。大至急、英国艦隊の攻撃に備えよ』アレッチェは、書類を机上に激しく叩きつけた。「…っ……!」既に鬼のようになった形相が、さらに突き上げる憎悪と憤怒のために醜悪に歪み、苛烈な赤黒いオーラがメラメラと燃え上がる。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。 ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.27
コメント(0)
かくして、いよいよアンドレス軍が、ラ・プラタ副王領での勢力を維持すべく当地に残留するアパサ軍と離れ、ペルー副王領へ帰還の進軍をはじめた頃、スペイン側の動きはどうなっていたであろうか。アンドレスがフロレスから英国艦隊の到来を知らされるよりも少し前、ペルー副王領リマのインディアス枢機会議本部の執務室で、かのアレッチェが、非常に苦々しい表情で葉巻をくわえたまま、荒々しく書類をめくっていた。ペルー副王領の反乱軍討伐隊総指揮官アレッチェ――彼は、本来の植民地巡察官たる職務も再開しつつ、現在もインカ軍の残党を叩き潰しながら、且つ、脱獄したトゥパク・アマルの捜索をも執拗に継続していた。そして、次なるインカ軍との本格的な決戦に備え、火器類の生産に、いっそうの熱を上げていた。だが、そんなある日、本国スペインから、まさかの衝撃的な内容の司令書を受け取ったのである。その重要書類を睨みつけながら、アレッチェの脳裏には、未だ行方の掴めぬ、あの男――トゥパク・アマル――の姿が生々しく甦る。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪ホセ・アントニオ・アレッチェ≫植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。 ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.26
コメント(0)
「むぅ……!」アパサは奥歯を噛み締めて反(そ)り返りながら、未だ、怒りの収まらぬ顔で腕組みをしている。しかし、それでも、ついに吐き捨てるように呟いた。「いずれにしろ、英国軍が来ちまったからには、もはや打つ手を考えるしかあるまい!!」アンドレスも喉元を片手で押さえてむせながら、深く頷いた。そして、もう一方の手で、腰に提げたアパサ譲りの剣を力強く握り締めながら、擦れ声ながらも、決然と言う。「はい!!もはや、ここまできたら、英国軍とスペイン軍が海上で激突する機を捉え、我々インカ軍が最善の動きができるよう、万全の準備を整えておくのみです!!恐らく、トゥパク・アマル様のことです――既に、各地の同盟者に糾合をかけ、その辺りの采配は振るわれているかと!ならば、なおのこと、我らも、早々にトゥパク・アマル様と合流を図りたい……!!我が軍も、今度こそ、急ぎペルー副王領へと戻り、トゥパク・アマル様と共に、英国艦隊の到来に向けて次の段取りに入らねばなりません!!」まだ、その場には、衝撃と驚愕と混乱の空気が漲ってはいたが、それでも、その場にいる誰もが、興奮に昂(たか)ぶる恍惚たる表情で、ゾクゾクと全身に武者震いの走るのを感じずにはいられなかった。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.25
コメント(4)
そんな二人の方へ、ベルムデスが急いで走り寄った。そして、アンドレスの襟元に強く絡み付いているアパサの指を解(ほど)きながら、誠実な瞳でアパサに深く礼を払う。「アパサ殿、あなた様のご懸念は、よく分かります。トゥパク・アマル様も、その点を大変、憂慮されて、この手ばかりは、最後の最後まで使わずにおられたのでございます。ですが、この1年間の反乱の過程と、そして、今の状況を冷静に振り返ってみますれば、我々インカ側が兵のみならず民の力までをも総動員して戦ってきましても、やはり、どうしても、敵方の火砲には抗(あらが)えず、決定打を与えることはできてはおりませぬ。どれほど団結し、士気を高め、力を振るい立たせようとも、物理的に超えられぬ壁というのはあるものです。ましてや、この反乱を支えているのは、実際のところ、義勇兵たちが中心。その彼らとて、いつまでも己の田畑を離れて参戦を続けるのには、限度がありましょう。もはや、これまでのような戦闘だけでは、埒(らち)の明かぬところまで来ていると存じます。さすれば、トゥパク・アマル様の思い切った策は、決して、的をはずれてはおりますまい」深い年輪の刻まれた思慮深い面差しに鋭さをも宿して語ると、ベルムデスは、もう一度、アパサの方を見てから、跪いて頭を下げた。「ここまでの策に出なければならなかったトゥパク・アマル様のご覚悟とお苦しみを、一番、良くご理解できるのは、皇帝陛下の最も信頼する同盟者であるアパサ殿以外にはおりますまい?それに、この策はリスクもありますが、上手くことが運べば利も大きいことを、類稀なる実戦の雄であり、智略にも長けるアパサ殿なら、お分かりになるでありましょう」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。≪ベルムデス≫トゥパク・アマルが全幅の信頼を置く、高齢の重臣(60歳代)。武勇にも優れる高徳の賢者。既に亡きトゥパク・アマルの父の代から、インカの王族を支え続けてきた。現在は、アンドレスの陣営で、副官的存在としてアンドレスを支えている。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.24
コメント(0)
アパサに強く締め上げられながらも、アンドレスは、苦しい息の下から、懸命に何か言おうとしている。「――…確か…に、アパサ殿の仰る通り、危ない橋ではあります…。ですが、スペイン軍が英国軍と遣り合っている間に、内地を我々が占拠し、戦いに疲弊したスペイン軍と英国軍を、同時にこの国から叩き出せば…――」「っんな、簡単にいくかっ!!!馬鹿めっ!!英国艦隊っつたら、あのアルマダの海戦で、スペインの無敵艦隊をコテンパに撃破してんだぞ!!スペイン軍なんぞより、もっとヤバイ強敵だろうが!!あああ…っ、だから!!トゥパク・アマルも、おまえも、苦労しらずの貴族だの何だのは、大事なところで考えが甘すぎなんだっ!!」「―――…――」顔を真っ赤に憤らせて鼻息を荒げるアパサに完全に締め上げられて、ついにアンドレスは擦れ声すら出なくなっている。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.23
コメント(0)
「アパサ殿…!!」アパサの口角から飛び散る唾を全身に受けつつも、アンドレスは、アパサの前に身を低めて懸命に礼を払いながら、必死で言葉を継いでいく。「アパサ殿の案じられるお気持ちは、よく分かります!!ですが、全ては、あのギリギリの本陣戦の最中に、やむなく決定されたこと…!トゥパク・アマル様が囚われる前夜のことだったのです。ラ・プラタ副王領に遠く離れているアパサ殿にご相談することは、不可能な状況でした!分かってください、アパサ殿!!」足元に縋(すが)って平伏しているアンドレスの肩を、アパサの豪腕が激しく握り締めた。そして、そのまま襟首を掴んで、己の鼻先まで、ぐいっと、相手の顔を突き上げる。「アンドレス…――!俺は、トゥパク・アマルが俺に相談しなかったことに腹を立ててなどいるんじゃない!あの英国軍が、本気で攻めてきやがったら、この国は、どうなる?!いや、それどころか、もう来ちまったかもしれねぇって、そんな話ってあるかよ?!今度は、この国は英国の植民地か?!一体、何のために、ここまで甚大な犠牲を払って、反乱を続けてきたってんだ?!!あ?!どうなんだ?!アンドレス!!」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.22
コメント(0)
長い沈黙の後、ついにアパサが口火を切った。「トゥパク・アマルの奴…!!何たる…何たる危ない橋を渡しやがったんだ……!!」地底を這うような低く凄んだアパサの声音に、アンドレスは鼓動の速まりを感じつつ、そちらをうかがうように視線を走らせる。案の定、アパサは、先刻にも増して髪をメラメラと逆立たせ、恐るべき形相で仁王立ちになっていた。あまりに険しく吊り上った目は血走り、全身からは激昂のオーラが燃え上がっている。その怒り心頭に発しているさまを見て取ったアンドレスは、額にヒヤリと発汗を覚えながら、懸命に言葉を探した。先刻のアパサの強打によって切れたばかりの口内が、いっそうジクジクと痛み出す。それでも、アンドレスは、アパサの方へと一歩を踏み出した。「アパサ殿……」そんなアンドレスを、焼き尽くすほどの凄まじい眼光でギリッと睨みつけるアパサの前で、アンドレスはゴクリと固唾を呑む。一方、アパサは吐き捨てるように、がなり出した。「あいつは……!!トゥパク・アマルは…!!英国にいる僧と連絡を図っただと?!そんな滅茶苦茶な計略を、しかも、自分ひとりで勝手に進めやがったのか!!あいつは!!!」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(1日1回有効) (随時)
2008.02.21
コメント(2)
アンドレスは礼を払い返すと、グイッと口元の血を拭って居住まいを正し、真剣な横顔で周囲に向き直る。「兵たちや民には大きな混乱の元となりかねないため、まだ、内密に願いたいのですが」そう念を押した後、かつて、トゥンガスカの本陣戦の夜、トゥパク・アマルが英国の高僧アリスメンディ宛に送った手紙の仔細と、トゥパク・アマルの意図を説明していく。――十数年前までペルー副王領にて、イエズス会の一員として布教活動を行なっていたスペイン人の神父アリスメンディ。アリスメンディは、やはりイエズス会の神父であったアンドレスの父ニコラスと知己の仲でもあり、共にインカ族の窮状を救うために尽力していた。しかし、己に従わぬイエズス会に対するスペイン国王による激しい弾圧により、やむなくアリスメンディは英国へと亡命。一方、この弾圧の渦中、アンドレスの父親は暗殺され……。スペイン人でありながらも、スペインへの激しい復讐心に燃えるアリスメンディは、英国に渡った後、現在は、スペインに敵対する英国王室と近しい間柄の高僧にまでなっていた。そのアリスメンディに、トゥパク・アマルは書状を送り、この国の内乱のさまを知らせ、それによって、アリスメンディのバックにある英国軍を動かし、この地のスペイン軍を叩かせ、外圧をかけさせようとしているのだ、と―――…。はじめてその話を聞かされた者たちは、ベルムデスやアンドレスが、かつてそうであったように、皆、驚愕と衝撃と混乱の面持ちで、完全に凝固している。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.20
コメント(2)
アンドレスは、相変わらず、口の端から血を滴(したた)らせたまま、さらに低い声で、自分にも言い聞かせるように続ける。「英国艦隊が、ペルー沖に向かっているとのことなのです!フロレス殿の、このラ・プラタ副王領のスペイン軍をはじめ、ペルー副王領のスペイン軍も、まずは、英国軍の討伐に向かうと!!」「!!」そこにいた誰もが、衝撃の眼で、継ぐ言葉を持たなかった。その傍らで、アンドレスとベルムデスは顔を見合わせ、言葉にならぬままに互いの目を凝視した。かつてトゥパク・アマル様が送られた書状が、ついに……―――!!二人は、険しさと恍惚の混ざった鋭利な眼差しで、深く頷き合う。その二人の視線のやり取りを敏感に察知したアパサが、「おまえたち、何か事情を知っているな?教えろ」と、にじり寄るように身を乗り出した。アンドレスたちは、暫し息を詰めていたが、もはや、事態が事態だけに、事を明かすのも潮時か、との面持ちになると、改めて周囲を鋭く見渡す。その場にいる者たちは、完全に信頼できる固い絆で結ばれた者たちばかり、そして、それぞれの形で、トゥパク・アマルの志を真っ直ぐに継いでいる者たちばかりであった。アンドレスは、いま一度、ベルムデスに視線を走らせる。そのベルムデスも、アンドレスの眼差しに、鋭く老練な面持ちで頷き返した。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。≪ベルムデス≫トゥパク・アマルが全幅の信頼を置く、高齢の重臣(60歳代)。武勇にも優れる高徳の賢者。既に亡きトゥパク・アマルの父の代から、インカの王族を支え続けてきた。現在は、アンドレスの陣営で、副官的存在としてアンドレスを支えている。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.19
コメント(0)
アパサは、チッ、と荒っぽく舌打ちすると、投げ捨てるようにアンドレスを放した。そして、まだ眉を吊り上げながらも、ヤケクソ交じりの声でうそぶく。「ふん、おまえの暴走ぶりは、どうせ、今にはじまったことじゃねえしな。で?その様子だと、フロレスめ、何か重要なことでも、おまえに漏らしたな?」そう言って、今度は、激昂とも、面白がっているとも取れる風体で、目元を斜めにそびやかした。アパサの問いかけに、やっとアンドレスは顔を上げ、それから、素早くベルムデスの方に視線を走らせる。その瞬間、ベルムデスはハッと息を詰めた。(アンドレス様、まさか――…?!)アンドレスは、俊敏に頷いた。そして、アパサと周囲の者たちを見渡して、天幕の外に声が漏れぬよう、低く言う。「フロレス殿は、間もなく、当地ラ・パスから兵を退かれるとのことです!」「なに?!」そこにいた全員が、再び、驚愕と興奮の表情で息を呑む。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。≪ベルムデス≫トゥパク・アマルが全幅の信頼を置く、高齢の重臣(60歳代)。武勇にも優れる高徳の賢者。既に亡きトゥパク・アマルの父の代から、インカの王族を支え続けてきた。現在は、アンドレスの陣営で、副官的存在としてアンドレスを支えている。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.18
コメント(0)
次の瞬間には、激しい衝撃音と共に、アパサの豪腕に張り倒されたアンドレスの体が、無残に天幕の地に打ちのめされていた。「!!」さすがに愕然としたアンドレスが、それでも、唇の端から溢れる血を拭いながら身を起こそうとする。が、それよりも早く、アパサの黒い影が獣のような勢いで迫りくると、アンドレスの胸倉を乱暴に掴み上げた。「あ…アパサ殿…――」「おまえが、串刺しにされようが、火あぶりになろうが、俺は知らん!!だが、人質にでもされてみろ!!インカ軍のこれまでやってきたことの何もかもを、台無しにするつもりか?!いくら相手がフロレスだろうが、あまりに軽率だろうがっ!!」「す…すいません……」かなり口内を切ったのであろう、口元から血を流し、胸倉を掴まれたまま、アンドレスはガックリと俯いた。そんな彼の姿を、ロレンソやマルセラをはじめ、周囲の者たちが蒼くなってハラハラと見守っている。鼻息を荒げながら、まだアンドレスの胸倉を締め上げているアパサの傍らに、ついにベルムデスが跪いた。そして、深々と礼を払う。「アパサ殿。どうか、お手を…」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。≪ベルムデス≫トゥパク・アマルが全幅の信頼を置く、高齢の重臣(60歳代)。武勇にも優れる高徳の賢者。既に亡きトゥパク・アマルの父の代から、インカの王族を支え続けてきた。現在は、アンドレスの陣営で、副官的存在としてアンドレスを支えている。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.17
コメント(2)
雪をものともせず煌々と燃え上がる松明の間を行くと、間もなく、アパサの天幕が見えてくる。その中では、アパサ本人やロレンソ、マルセラ、その他にも主要な隊長らが集まって、明日の戦闘に備えて軍議が開かれようとしているところだった。天幕の入り口の布がバッと撥ね上がると同時に、大股で乗り込んできたアンドレスに、中にいた者たちが一斉に視線を向ける。雪まみれの姿で息を荒げているアンドレスに、アパサが、揶揄と憮然との混じったような目つきで、冷ややかに一瞥した。「遅いぞ、アンドレス。何だ?また、おまえは、ずいぶんと大袈裟な素振りで」「アパサ殿!!」アンドレスは上擦った声を発すると、アパサと、それから、やはり何事かと息詰めているその場の全員を見回して、深く頷いた。「今、フロレス殿と話しをしてきました!!」「え?!」周囲の者がギョッと目を見張る間にも、すかさずアパサの怒声が飛ぶ。「アンドレス!!おまえ、また勝手なことを!!」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.16
コメント(0)
フロレスと別れたアンドレスは、大至急、インカ軍の陣営へと馬を馳せた。義勇兵たちの夜営の状況を見回って戻ってきたばかりのベルムデスが、ただならぬ様子のアンドレスに気付き、すぐに馬の脇に寄って、問いかける。「アンドレス様、何事かございましたか?」アンドレスは馬から飛び降りると、激しい興奮の表情でベルムデスの片腕をガシッと握り、深く頷いた。その勢いで、両者の全身に降り積もっていた雪が、ほとばしり落ちる。「はい!!ベルムデス殿、大事な話が!!アパサ殿は?!」ベルムデスは、己の腕を握り締める相手の握力の強さに驚きながら、一体、何があったのか?という驚きの眼差しで、アンドレスを見た。「アパサ殿の天幕で、明日の打ち合わせをはじめておられますが」「では、すぐに行きましょう!!さあ、ベルムデス殿!!あなたも、ご一緒に!!」己の腕を掴んだまま放すのも忘れて、アパサの天幕に突き進むアンドレスに、ベルムデスは目を瞬かせながらも、共にアパサの居所へと向かう。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。≪ベルムデス≫トゥパク・アマルが全幅の信頼を置く、高齢の重臣(60歳代)。武勇にも優れる高徳の賢者。既に亡きトゥパク・アマルの父の代から、インカの王族を支え続けてきた。現在は、アンドレスの陣営で、副官的存在としてアンドレスを支えている。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.15
コメント(0)
すっかり雪に覆われた地表の上で、フロレスは、ゆっくりと馬を陣営の方へ回しはじめる。「では、わたしは行く。機会があらば、また会おう!」そう言い残すと、フロレスは、闇を貫く鋭い掛け声と共に、馬を駆り出した。「お待ちください!!フロレス殿!!」アンドレスの今度こそ必死の声に、フロレスは、もう何度目かの駆りかけた馬を止めた。そのフロレスの傍らまで、アンドレスは、勢い良く己の愛馬を乗り付ける。「あなたは、俺の中にある、スペイン人に対する認識を幾らか変えてくれた――!あなたには、感謝します。できれば、敵味方ではなく、もっと違う形で出会いたかった……」フロレスは、静かに微笑み返す。「何を、今生の別れのようなことを言っている。当地を奪還した後、そなたたちは、いよいよ念願であったペルー副王領での再起を賭けるのであろう?だが、これからが、真に厳しい戦いになるであろう。如何なることが起ころうが、そなたの命、今宵のごとく、容易く敵の手に渡さず進むが良い。命あらば、再起の可能性は常にある」「フロレス殿……!」まだ何か言いたげなアンドレスに、フロレスは優美な笑みを返して頷くと、再び、手綱を握り締めた。「さらばだ、アンドレス!」それ以上はアンドレスが言葉を継ぐ間も無いまま、フロレスの姿は、雪に霞む夜のしじまの中へと吸い込まれていった。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.14
コメント(2)
激しく息を呑むアンドレスに、フロレスは沈着ながらも、非常に鋭利な視線を注ぐ。「此度の英国艦隊の到来は、まるで、この新大陸での内乱を熟知しているかのような、できすぎたタイミングだとは思わぬか?何者かが、裏で意図的に呼び寄せたかのように」「!…――」「トゥパク・アマルか?あの者が、早々に、先手を打っていたのか?」「―――…―」興奮に昂(たか)ぶる面持ちで、しかしながら、相手の質問に、固く唇を結んだまま沈黙しているアンドレスに、フロレスは目だけで苦笑する。「まあ、そなたに聞いたところで、そなたは、わたしには何も応えはすまい。いずれにしろ、我が軍は、ここから兵を退く。この戦場は、一時休戦と言いたいところだが、今のことろ、そなたたちには、当地から即時退却する理由も無かろう。されば、我が軍がここから立ち去れば、このラ・パスは、事実上、そなたたちの手に入る。――これも、全て、あのトゥパク・アマルの筋書き通りというわけか……」貫くように遠くを見据えるフロレスの前で、アンドレスは手綱をきつく握り締めた。冷え切っていた指先に、再び、熱い血が通いだすのを感じる。(トゥパク・アマル様―――!!)【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.13
コメント(0)
他方、フロレスは、ひとしきり間を置くと、深遠な声音で言う。「我が軍は、間も無く、当地から兵を退く。今宵は、そのことを、そなたに伝えておきたかった」「え?!それは、どういうことです?!」「間もなく、そなたたちの耳にも入るであろうから伝えておくが、副王陛下から、先ほど伝令が来たのだ。あの英国艦隊が、ペルー沖に向かっている可能性があると」「!!――英国艦隊が?!」アンドレスは、今度こそ本当に馬上から落ちそうなほど身を乗り出し、漆黒の瞳を張り裂けんばかりに見開いた。「そ…それは、本当なんですか?!」「いや、真相は、まだ明らかではない。なにぶん敵も動きが慎重な上、まだ遠方におり、確定的な情報ではない。しかし、本国スペインの監視団が察知した情報ゆえ、信憑性は低くはなかろう。しからば、このラ・パスからは、一旦、撤退しても、当地のスペイン軍は両王領を挙げて、新大陸に押し寄せる英国軍を迎え撃つ準備が優先ということだ」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.12
コメント(0)
「アンドレス。そなたは、何かと思い込みが激しいようだ」微かに苦笑を湛えながらも、鋭い目で見下ろすフロレスの前で、アンドレスは、雪で湿った前髪の間から、炯炯たる光を放つ眼を剥いた。「とにかく、このラ・パスの奪還は、この反乱を成就させるための、ひとつの通過点に過ぎない!!俺は、こんなところで、命を差し出すわけにはいかない!!」「何を息巻いている。そもそも、そなたが、投降だの、何だの、言い出したのではないか。だが、アンドレス、そなたは、あのトゥパク・アマルの志を継ぐ者。容易(たやす)く、命を投げ打つわけにはいくまい。それでよかろう」「え…――!」思いがけぬフロレスの言葉に、アンドレスは、今にも飛びかからんばかりに乗り出していた身を、思わず引いた。一方、フロレスは、今度は彼の方から馬をこちらに回し、真正面から真っ直ぐにアンドレスを見据える。「それより、このような戯れごとを言い合っている場合ではない。その様子だと、そなたたちは、まだ、知らぬと見えるが―――」「え…?!な、何をです?!」雪明りの中に浮かび上がるフロレスの西洋人形のような面差しは、相変わらず、表情が読み取りにくい。しかし、その透明な蒼い瞳に、はっきりと真摯な色が宿っていることを、アンドレスは今更のように発見して、息を詰める。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.11
コメント(0)
「それとも、そなた、まさか本気だったか?」俯(うつむ)いたアンドレスの顔を覗き込むようにしたフロレスの前で、アンドレスは、ギッと、険しい目を上げた。「まさか…!!あくまで、例えばの話として、聞いてみただけだ!!」その口調は、先刻までの持って回った控えめなものから豹変して、激しい攻撃的な色を帯びている。フロレスは、僅かに眉をひそめた。そして、沈着な声で、低く言う。「『例えば』なぞという気持ちで、投降を切り出すなど、もってのほかだ。そのような軽率な態度では、将としてどころか、人としての品格を疑われるぞ」だが、アンドレスは、己の頭や肩に降り積もった雪を荒々しく手で跳ねのけながら、噛み付くように言い放つ。「フロレス殿!!俺は、あらゆる可能性を含めて、このラ・パスの戦闘を早期に終結させる方向を模索しているだけです!!俺は、あなたに、俺が今まで知っていたスペイン人とは違うものを感じていた!!だから、あなたなら、もう少し話も分かると思っていたのに!!所詮は、あなただって……!!」「ふ…所詮は、わたしも、他のスペイン人と同じだったかね?」「…っ」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.10
コメント(0)
「それでは、話にならぬ」フロレスの冷ややかな声音に、アンドレスは相手を逃がすまいとするように、その前途に、再び、馬ごと立ちはだかった。周囲は、いつしか雪が舞い飛びはじめている。「ですから、待ってください!!フロレス殿!!」アンドレスは、夜闇の中でもハッキリ分かるほどの真剣な眼で、射るようにフロレスの蒼い瞳を貫いた。「では、例えば…俺が、スペイン軍に投降すると言ったら?!」「!…――」その瞬間、さすがのフロレスも、その目を瞬かせたが、すぐに辟易とも溜息とも取れる息をつく。「――アンドレス、本気か?」懸命に覚悟を決めた表情をつくりながらも、その瞳を揺らしているアンドレスに、フロレスは、もう一度、息をついた。「愚かな。心にも無いことを」「なっ…!俺は……」「そのようなことを申すそなたの真意を量りかねるが、いずれにしろ、あのトゥパク・アマルやアパサが投降すると言うならともかく、そなたでは…――」「俺では、役不足だってことですか?!」耳を赤くして、憮然とした声を上げるアンドレスに、フロレスは、ついに苦笑する。「くく……まあ、そう怒るな。投降しなくて済むのだから」それから、厳しい口調になって、言い添える。「第一、軽々しく、投降などと申すものではない」「…―――」怒りなのか恥辱を感じているのか、次第に勢いを増す雪の中で、アンドレスは地に深く視線を落とす。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.09
コメント(2)
フロレスは、やむなしというふうに馬を止めると、体半分だけアンドレスの方に向いた。決然と相手を見据えて、アンドレスが言う。「この戦場での戦は、完全に膠着状態です。両軍にとって、ここでの戦が、最後なわけではないはず。このまま戦闘を続け、無駄に消耗し合うだけでは、互いにとって全く利がありません!!」「それは、正式な和議の申し入れか?あのアパサも、そのつもりがあるのか?」「いえ…まだ俺の考えというだけですが…。ですが、俺は真剣に考えて――」「では、和議を結ぶために、インカ軍に何が妥協できる?」アンドレスの言葉を遮ったフロレスの表情は、ますます深まる夜闇に紛れて、いっそう掴みづらい。彼のブロンドの長髪が、月明りを受けて煌き、強風にふき流されているのだけが見える。「アンドレス、どうなのだ?」「それは…―――」妥協どころか、スペイン軍に対する厳しすぎるほどの要求を断固として譲らぬ、徹底したアパサのことを思い描くと、再び、アンドレスは言葉に詰まらざるを得ない。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.08
コメント(0)
アンドレスは馬上で身を乗り出した。「フロレス殿、あなたなら知っているでしょう?!この国を植民地にした白人たちが、一体、何をしてきたか!!」フロレスは辛うじて馬を止め、低く言う。「アンドレス、では、そなたに聞く。そなたの言いたき白人たちの悪行を諌(いさ)めるよう、副王に口添えすることなら、わたしにもできよう。それをすれば、そなたは、あのトゥパク・アマルに、独立なぞという無謀な考えを捨てさせ、この反乱行為を止めさせることができるのか?そして、アンドレス、そなたは、どうだ?植民地であり続けることを、甘受することができるのか?」「そ…それは……」すっかり暗闇に呑まれて、言葉に詰まるアンドレスに、フロレスは静かな視線を走らせる。そして、今度こそ、本当に馬を駆り出した。「フロレス殿!!待ってください!!」夜の闇より黒々としたアンドレスの馬が、猛烈な勢いで、フロレスの白馬の前に回り込む。「では、もっと、現実的な話を!!このラ・パスの戦闘を、互いにとって、建設的に終わらせるために…!!」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.07
コメント(0)
アンドレスの言葉を、フロレスの鋭い視線がピシャリと遮る。「今は各王領で共に総指揮官の立場にあるとはいえ(註:アレッチェはペルー副王領のスペイン軍総指揮官、一方、フロレスはラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官)、アレッチェ殿は、もともとの身分が全権植民地巡察官。しかも、彼は、その任務を、両王領で兼任している。要するに、本来なら、わたしの上官にあたるのだ。それ故、わたしには、彼の決定を覆すほどの権限は無い」「で…でも、それでも、あなたなら副王に口添えを……!」次第に冷ややかな眼差しに変わるフロレスの前で、アンドレスは、再び、口ごもった。早くも、フロレスは、馬を己の陣営の方向に回しはじめる。「アンドレス、そなたたちは、植民地支配を根底から否定し、独立の機を狙っている。だが、スペイン国王も副王(註:各王領の副王が、スペイン国王の代理として植民地を治めている)も、断固として、この植民地を手放すつもりなぞない。それは、そなたも重々知っての通りだ。そなたは、わたしに何を副王に口添えさせたいというのだ?植民地支配を諦めましょう、とでも?」「それは…」「今、この状況で、そのような話は不毛」白馬の手綱を握り、己の陣営の方へと駆りかけたフロレスを、アンドレスの鋭い声が制する。「待ってください!!」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.06
コメント(2)
そうしている間にも、夕陽は足早に山の端に消え、たちまち極寒の夜の気配が満ちてくる。ここラ・パスは、周囲を6000メートル級の霊峰に囲まれた盆地部ではあるが、この土地自体が標高3650メートルという高所にある。吹きつける冷風に全身をなぶられながら、アンドレスは、キッと、顔を上げた。「あなたは、何故、俺たちインカを敵に回して戦うんですか?!」そう言ってしまってから、彼は、咄嗟に視線を落とした。(何で、いきなり、それを言うんだ…俺は!!もっと切り出し方ってもんが、あるだろうに……!)他方、唐突なアンドレスの言葉に、フロレスは、さして表情も変えず、微かに苦笑して言う。「何を、今更。わたしは、副王陛下から、反乱軍討伐を命じられている」「だけど…!」アンドレスは愛馬の手綱を繰りながら、真っ直ぐフロレスに向き直る。「俺たちインカの人間が、どうして反乱まで起こさなければならなかったのか、あなたなら分かっているはずです!!ましてや、あなたは、あのアレッチェと並ぶほどの地位も権力もあるスペイン人高官なのでしょう?!あなたが、我々に味方してくれたら……」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.05
コメント(0)
周りのインカ兵たちに、アンドレスは前方を見据えたまま、声で応じる。「ここは大丈夫だ。皆は、下がっていていい」「アンドレス様…!」まだ大いに不安そうな兵たちに、アンドレスは真摯に、しかし、決然と繰り返す。「大丈夫だ。皆は戻って、アパサ殿に、俺は少し遅れて戻ると伝えてくれ」非常に不安そうな兵たちが、やむなく去り、2人きりになると、フロレスは馬で距離を詰めてくる。傍で見れば見るほど、単に外見が美麗だというだけではない、何か強烈なオーラを放つフロレスを前にして、アンドレスは無意識のうちに身を引いていた。そんな己を叱咤するようにして、彼は、強気な口調でキッパリと言う。「フロレス殿、お久しぶりです!!」「久しぶりだな、アンドレス」フロレスは淡々たる表情のまま、感情の見えない声で言う。そして、あの吸い込まれるような蒼い瞳の宿る目元のみを、僅かに細めた。あれほど直に話してみたいと思っていた相手だが、いざや本人を前にすると、どこから何を切り出したものか、アンドレスは言葉を探しあぐねて口ごもる。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.04
コメント(2)
いくら近距離とはいえ、まだ互いの間に優に50~60メートルの距離は隔てていたが、それでも、アンドレスは、フロレスの目を真っ直ぐ見つめ、俊敏に礼を払う。大地に沈みかけた巨大な朱色の太陽を背景に、フロレスも、また、アンドレスに視線を走らせた。そして、艶のある低い声で、周囲の白人兵たちに鋭く言い放つ。「今日の戦闘は、ここまでだ。兵を退(ひ)け!!」「はっ!!フロレス様!!」フロレスの号令と共に、彼の軍の兵たちは、その日の戦闘から整然と撤退していく。その様子を見計らうようにして、インカ軍も武器を収め、戦場から撤退を開始した。先刻まで、地鳴りと共に轟音を放っていた火砲の唸りが、今は嘘のように静まった戦場の一角で、アンドレスとフロレスは、暫し、馬上から互いを見据えた。が、やがて、フロレスが鋭くも優美な動作で、傍に控える衛兵たちに合図を送る。「ここは、わたし一人でよい。そなたたちは、戻っていなさい」一方、フロレスと対峙しているアンドレスの方に、周囲のインカ兵たちは、ハラハラとした視線を向けている。そして、フロレスに不審な動きが僅かでもあらば、瞬時に飛び掛ってゆかんばかりの勢いで、野獣のように炯炯と目を光らせて身構える。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.03
コメント(0)
かくして、あの夢を見た晩以来、アンドレスは、戦線を駆け抜けながら、いつしかフロレスの姿を探すようになっていた。ここラ・パスの戦場においても、かつてのプノ戦と同じ逞しい白馬に跨り、中世の騎士さながらの秀麗な風貌に、それでいて強靭な体躯から繰り出される鮮やかな剣さばき――故に、そのフロレスの姿は、遠くからでもよく目立った。できることなら、言葉を交わせるほど近くに行ってみたかったが、さすがに、この戦場でアパサに次ぐ副将アンドレスが、戦闘の真っ最中に敵将たるフロレスの傍近くに寄るわけにもいかず、ただ遠目からフロレスの姿を追うしかなかった。だが、そんな、ある日の夕暮れ時―――。フロレス自身も、アンドレスに胸襟(きょうきん)を開く気持ちになっていたのであろうか…――?いずれにしろ、その日の戦闘で、アンドレスは、己から、そう遠くはない位置にフロレスの姿を発見した。そろそろ、その日の戦闘も幕を下ろす時刻に近い茜色の空の下、馬や歩兵たちの巻き上げる金色の砂塵の向こうで、銀色に輝く白馬に跨るフロレスの姿が目に眩しい。アンドレスは、漆黒の馬上でサーベルを握り締めたまま、砂塵に霞む視界の中で、その瞳を凝らした。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.02
コメント(2)
あまりに夢に没入してしまっていたためか、それが夢だったのだと、状況を把握するまでに暫くの時間がかかった。アンドレスは、バッと、寝台から身を起こす。そして、先ほどまで剣を握っていたはずの手を、暗闇の中で呆然と見下ろした。「あ…!」手の中に、びっしりと汗が噴き出している。その間にも、大きく肩が前後し、まるで本当に戦っていたかのように、すっかり息が上がっていた。(や…やっぱり…夢……!しかも、あのプノ戦の時と全く同じ場面…――)アンドレスは、静寂な深夜の闇を見つめた。(フロレス……)その彼の耳元に、先日のアパサの声が甦る。『心配するな。あのフロレスは、夜間の奇襲など、絶対にかけてこない』『え…!絶対?』『今のように大地を荒らしたままでの戦など、200年前までのインカ時代では、考えられぬことだった。まず、耕す、そして、互いに休む時は、休む。戦をするんなら、大地が許してくれる隙間だけにした。だから、当然、休むべき夜間に、決して、攻めてこない相手なら、こっちからも攻めはしない。ふふん…あのフロレスは、そういう戦い方のできる男なのだ。白人にしておくのは、勿体無いほどだ』アンドレスは寝台に座り込んだまま、鋭い目で、濃い闇を見据え続ける。(あんな戦い方をする…あの男―――!スペイン人なのに……!一体、どんなやつなんだ…?)【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.02.01
コメント(0)
だが、その一瞬の隙を狙うようにして、今度はフロレスのサーベルがアンドレスの喉元に襲い掛かる。しかし、実戦の中で無数の銃弾をかわしながら、図らずも心眼を研ぎ澄ませ続けてきたアンドレスは、この時も反射的にその剣先をかわした。彼は馬上で敏捷に体勢を立て直すと、再び、疾風のように切り込んでいく。サーベルの描く蒼い軌跡が、宙に光の筋を引いて走る。だが、フロレスのサーベルも、また、アンドレスの剣先を確実に受け留め、俊敏に切り返す。二人のサーベルが交わる鋭い金属音が、幾度も戦場に鳴り響いた。それでも一瞬も止まることなく、アンドレスのサーベルは、繰り返しフロレスを狙った。 それをフロレスが弾き返す。そして、また両者は素早く間合いを取る。二人の目が光った次の瞬間には、蒼い残光と共に正面から互いが交差する…――!!天空まで響き渡る剣と剣の交わる鋭い金属音―――!!その瞬間、アンドレスは、ハッと目を覚ました。「!!!」広がる漆黒の闇……そこは、ラ・パスの陣営の己の天幕の中だった。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.31
コメント(0)
果たして、戦場の二人は、どれほどの間、間合いを計り続けただろうか。 互いに、切り込む隙を全く掴むことができない。しかし、ついに、二人はピタリと動きを止めた。アンドレスの全身から、瞬間、焔のごとくオーラが燃え上がる。(フロレス!!覚悟――!!)先に勝負を仕掛けたのは、アンドレスの方だった。彼は、決然たる剣裁きで、フロレスへと一直線に切り込んだ。彼の全身が、唸る風を切って相手に迫る。だが、フロレスは、完全に動きを止めたまま、微動だにしていない。騎乗の彼は、猛然と迫り来る相手を見据えながら、その安定した構えを一縷(いちる)も崩すことなく、眉一筋さえ身じろぐこともないままに、そこにいる。アンドレスはサーベルを水平に握り締め、一気にフロレスとの距離を詰めた。ついに互いの体が交差する瞬間、アンドレスは、水平に構えていた己のサーベルを、フロレスの喉元へと光の矢のごとく突き出した。一方、その最後の最後まで、フロレスは全く動かない。陽(ひ)に透けるブロンドの髪だけが、風の中に舞い上がる。そのままアンドレスのサーベルは、確実にフロレスの首を貫くはずであった。―――が、手応えが無い!!己の意識よりも早く、アンドレスの鍛えられた動体視力は、フロレスが、首の一捻りで己のサーベルを避けるのを、はっきりととらえていた。『!!』アンドレスは、衝撃よりも、むしろ、強い恍惚に瞳を輝かせて息を呑む。(なんという冷静さ!!フロレス、この者は…――!!)【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.30
コメント(0)
そのまま、どれほどの時が経過しただろうか。傍(はた)から見れば、単に、間合いを取り合っているだけの単純な動作である。しかし、熟達した剣士である二人には、それだけで、双方の力を見抜くに充分であった。しかも、今のアンドレスには、これは夢だと、あのプノ戦の時と全く同じ情景を繰り返しているだけなのだと、どこかで分かりながらも、その意識は、まるでブラックホールに吸い込まれていくがごとくに、あの時の状況に、身も心も無抵抗に呑み込まれていく。(ああ…これは、夢だ…!夢なのに……!!)…――やがて、それが夢か現(うつつ)かも定かではなくなり、彼の意識は、完全に、その戦場の場面へと舞い戻っていた。剣を握る手の平に、確かな発汗さえ覚える。己の目の前で、馬の手綱を手繰りながら間合いを計り続けるフロレスの動きは、舞うように優美でありながらも、完璧に隙が無い。その鍛錬され抜かれた相手の動きと、同様に研磨され抜かれた相手の全身に、アンドレスは睨むような険しい視線を走らせた。(くっ…!フロレス…こいつ……!)きつく唇を噛み締めながらも、彼の全身には、師たるアパサと対決した時にさえ覚えたことのない手応えに、ゾクゾクと鳥肌が立たずにはいられない。互いの喉元を、心臓を、腹部を――血に飢えた魔物のごとく狙い定めて微動する剣先に、真昼の陽光が滑(ぬめ)るように反射する。さして動いているわけでもないのに、恍惚の滲んだアンドレスの鋭い横顔には、既に幾筋もの汗が伝っていた。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.29
コメント(0)
それは、かつてのプノ戦の一場面だった。(あの時と…何もかも、あの時と同じ……!)夢の中で、アンドレスは、かのプノ戦に臨んでいた時と全く同じ状況下にある己の姿を、凝視した。ティティカカ湖畔に広がるプノの戦場にいる自分は、あの時と同じように、唇を引き結び、焔の燃え立つような激しい眼で、騎馬のままサーベルを構えている。対する相手は、あの敵将フロレス―――!!『フロレス殿!!ここで会ったが、互いの運命!!お命、頂戴いたす!!』汗ではりついた前髪からのぞく、炯々たる漆黒の瞳は、もはや完全に獲物を狙う武人のそれであり、否、それ以上に、今は獰猛な気配さえ湛えている。一方、眼前のフロレスは、まさに、あのプノ戦の時と同様、白馬に跨り、研ぎ澄まされた優美な動作で、ゆっくり、完全に隙無く、サーベルを構えゆく。そして、その美麗な目元を、僅かに細めた。彼のサーベルの先端が、陽光を受けて、滑らかな閃光を放つ。アンドレスとフロレスは互いを睨み据えたまま、片手にサーベル、そして、片手に愛馬の手綱を手繰りながら、己に有利な間合いを掴むため、小刻みな移動を繰り返す。 双方共に全く隙が無く、なかなか容易に切り込むことができない。二人の険しい視線のみが、無言のままに絡み合う。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.28
コメント(2)
こうして、平穏な夜のひと時は過ぎ、日が昇れば、再び、両軍の戦闘は幕を開ける。ラ・パスのインカ軍とフロレス軍は、激戦を交えながらも、互いにとどめを刺せぬままに、時は流れていった。インカ側は、ただでさえ兵力に優れるアパサ軍に、装備のよいアンドレス軍が合流したことで、今やフロレス軍を圧倒するほどの強力な大軍となっていた。とはいえども、さすがに副王直属のスペイン王党軍たるフロレス軍の火砲の威力は凄まじく、また、指揮官フロレスの元、その砲撃力も非常に良く訓練されており――いずれにしろ、互いの力は拮抗し合い、両軍は完全に互角なままにいた。そして、そうした戦闘の続く日々の中、ある晩、アンドレスは夢を見た。最初に目に飛び込んだのは、紺碧に輝く鏡のような湖。(え…?あれは、ティティカカ湖……?!)ティティカカ湖――インカの創造主ビラコチャ神が降臨したと言い伝えられる神秘の古代湖。そして、その沿岸に広がる乾いた平原――…。それは見覚えのある戦場の光景だった。激しい戦闘の展開する戦場の一角で、何者かを前にして、サーベルを握る自分が見える……対峙する相手は――……?アンドレスは、夢の中で、朦朧としつつも、懸命に意識を彷徨わせた。湖から吹きつける風に舞う金色の長髪、そして、深遠な湖のごとく透明な蒼い瞳――その眼差しは、鋭くも、極めて沈着な気配を湛えている。アンドレスは、ハッと息を詰めた。(フロレス…――!!)【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.27
コメント(0)
「アパサ殿……!」感極まった瞳で、真っ直ぐに己を見つめるアンドレスの視線を、再び、払いのけるようにしながら、今度はアパサが顔を赤らめ、鬱陶しそうに立ち上がった。「だからっ、そういう目で見るなって!!」そんなアパサの一挙一動から、トゥパク・アマルが無事と知って心底嬉しいのだと、そのアパサの思いが溢れるほどに伝わってきて、アンドレスは、感動と微笑ましいのとで、思わず顔をほころばせた。「ふ…ぷっ」「!……アンドレス、おまえ!!何が可笑しい!!」「いえ…プッ!」「!!!―――」照れなのか怒りなのか、アパサは顔を真っ赤にすると、グルリと方向を変え、「あー!!メシ、メシっ!!」と、がなりながら大股で去っていく。そんな恩師の後ろ姿を止まらぬ笑みを零しながら見送りつつ、アンドレス自身も、トゥパク・アマルのことを思って、また感動を噛み締める。彼は立ち上がり、幾重にも連なる霊峰を隔てた先にある、遥かなるペルー副王領の方角を振り仰いだ。(トゥパク・アマル様――!!ああ……はやく…はやく、お会いしたい!!)【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.26
コメント(0)
「ったく、アンドレス、おまえなぁ…!今は、相手があのフロレスだから良かったが、違ったら、その辺の草むらに、敵方の斥候がウヨウヨだぞ。そんな大声だしたら、敵に何もかも筒抜けだろうが」「すいません…!」アンドレスは、まだ口を押さえたまま、さらに身を竦(すく)めた。そんなアンドレスを眺めやりながら、アパサは声を低める。「俺も驚いたが、あの書状は、間違いなくトゥパク・アマルの筆跡だった。妻子まで連れて脱獄だなんて、無茶な真似を……!おまえにもそうだが、昔から、あいつには、ヤキモキさせられることばっかりだ」そう言いつつも、大きく瞳を輝かせるアパサの野性的で精悍な面差しには、強い恍惚が滲んでいる。そのアパサの横顔に、アンドレスの胸は、ぐっと熱くなった。このアパサが、トゥパク・アマルの捕縛をどれほど悔やみ、案じ、救出できぬ無力感に苛まれてきたか――決して表には出さなくとも、つきあいの長いアンドレスには痛いほど分かっていた。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.25
コメント(0)
冷え切った体を温めようとするかのように、酒を飲み急ぐアンドレスに、酒瓶を差し出しながら、アパサがポツリと言う。「トゥパク・アマルの…――」「え…?!」トゥパク・アマルの名に、アンドレスは反射的に振り向き、その彫像のようなクッキリとした目を見開いて、じっとアパサを見つめた。そんなアンドレスを、アパサは手で払うようにして言う。「やめろ!そう、目をでかく開けて、こっちを凝視するな!怖いぞ…!」「怖ッ…?!」アンドレスは、ついに不貞腐れた顔で横を向いた。それでも、アパサの言葉の先を促す。「そ…それで、トゥパク・アマル様が……?」「うむ…。おまえのところにも、使者が行ったろう?」アンドレスは、ハッと顔を上げた。「では、アパサ殿も、ご存知ですか?!トゥパク・アマル様の脱獄のこと…!!」「シッ!!声がでかい」アパサは険しい眼で、アンドレスを睨んだ。アンドレスは身を縮めて、咄嗟に己の口を押さえる。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.24
コメント(0)
「もともと昔からインカの戦(いくさ)のやり方は、そんなズル臭いやり方なんかしなかった。何せ、田畑を耕しながら、その合間に戦をしていたんだからな。今のように大地を荒らしたままでの戦など、200年前までのインカ時代では、考えられぬことだった。まず、耕す。そして、互いに休む時は、休む。戦をするんなら、大地が許してくれる隙間だけにした。だから、当然、休むべき夜間に、決して攻めてこない相手なら、こっちからも攻めはしない。ふふん…あのフロレスは、そういう戦い方のできる男なのだ。白人にしておくのは、勿体無いほどだ」アパサは早々にカップを飲み干すと、再び空いたカップに、溢れる程なみなみと酒を注いだ。それから、今度は、口の端に笑みを浮かべて言う。「おまえも飲め。ソラータを奪還した祝杯だ!」アンドレスは、まだ頬を上気させたままアパサに礼を払って、やっとチチャ酒を口元に運ぶ。高地の冬は、雪混じりの冷たい強風が吹きつけ、二人の羽織った分厚いポンチョの裾を容赦無く翻して去っていく。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.23
コメント(0)
「それじゃ、敵は、絶対に、夜襲をかけてこないってことですか?」「そうだ。だから、俺も、夜の奇襲はかけない」アンドレスは、「え!」と、さらに目を見開いた。「そのような状況なら、それこそアパサ殿なら、敵の油断をついて夜襲をかけそうなものかと…!!」そんなアンドレスを、アパサは、いっそう冷ややかに横目で一瞥した。彼は新たに注いだチチャ酒をすすりながら、やや真面目な口調になって言う。「アンドレス。この反乱で、白人どもの汚いやり口ばかり見せられて、おまえ自身までが、泥に染まってしまったのか」「!!」アンドレスは、カップを両手で握り締めたまま、ますます顔を紅潮させた。「だっ…だって、アパサ殿ではないですか!昔、俺に戦術指南をしてくれた時、ズルくなれって言ったのは」「ふん…!あれは、相手が、姑息(こそく)な奴の場合だ」「…――!」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.22
コメント(4)
「アンドレス、おまえ、よく、それで大軍の将なぞ務まっているな。俺には、全く、信じられんよ」アパサの一言一句に、憤然と顔を火照らせながら、やがて、アンドレスは切り返すように、キッと、アパサを睨んだ。「アパサ殿だって、あの頃と全然変わっちゃいないじゃないですか!!こんな戦場でまで、酒なんか飲んで!!敵が夜襲でもかけてきたら、どうするんです?!」「ふふん。そうやって、すぐ、人の言葉に感情を煽られるところも、変わらねぇしなぁ」アパサは鼻で息を吐くと、いかにも上手そうにグビグビ喉を鳴らして酒を飲み干した。そして、口の周りを荒々しく腕で拭いながら、冷ややかな視線をアンドレスに投げる。「余計な心配なぞ、するな。あのフロレスは、夜間の奇襲など、絶対にかけてこない」「え…!絶対?!」「しっ!声がでかい。少しは落ち着いて座れ。それから、その酒!おまえの分だ」憮然と戸惑いの入り混じった面持ちで、差し出されたカップを受け取りながら、アンドレスはアパサの脇の地面に座った。降り積もった雪の冷たさが、腰からヒヤリと身に染みてくる。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.21
コメント(5)
スペイン人の厳重な監視下におかれた神学校を卒業したての頃、何も知らなかったアンドレスに、アパサは、剣技から戦術指南まで、全てを基礎の基礎から徹底的に叩き込んだ。このアパサは、反乱計画の初期段階からトゥパク・アマルの最も有力な同盟者の一人であり、その腕を見込まれ、トゥパク・アマルからの強い願いに押されて、アンドレスの武術指導を引き受けたのだった。数年間に渡る鬼のように厳しく容赦の無いアパサの指導に、心身共にズタズタになりながらも、懸命に特訓に励み続けたあの日々。それほど昔のことではないはずなのに、あれから、とても、とても、長い時が流れたかのように思える……。そして、全ての特訓が終わった最後の日、アパサは、大事にしていた己のサーベルを、アンドレスに譲り渡したのだった――。不意に、アンドレスの脳裏に、あの日の一場面が甦る。『それを、おまえにやる。持っていけ』揺れる眼差しでアパサを見上げるアンドレスの瞳の中で、アパサは静かに笑っていた。『おまえはよくやった』サーベルを掲げ持ったまま、アンドレスは深く頭を下げた。『本当に、何と御礼を申し上げたらよいのか…!』思わず涙が込み上げそうになるのを、彼はぐっと堪えた。アパサは低く深遠な声音で続けた。『これまで敵を攻撃することばかりを言ってきたが、おまえに渡したこのサーベルは、ただ攻めるだけのものではない。そもそもサーベルとは、攻めるよりも守ることに優れた武器なのだ。サーベルには、敵のもつ銃や大砲には無いものが宿っている。それは、美しく、魂と呼ぶにふさわしい雰囲気とも言えるだろう。おまえには合っている』アンドレスは、あの日を懐かしく思い返しながら、既に酒を仰ぐように飲んでいるアパサの傍に身を屈めて、深く礼を払った。「アパサ殿に戴いたこの剣!今では、俺の分身も同然です!!」「ふ…」アパサは酒をあおりながら、横目でニヤリとする。「アンドレス、おまえ、何を生意気な。分身だと?そんな大口たたくのは、10年は早いだろうがっ!つい、こないだまで、剣の持ち方ひとつ、いや、立ち方ひとつ知らなかったくせに」「…!」赤面しているアンドレスの方を、相変わらず、せせら笑うように目の端で見ながら、意地悪な声音でアパサは続ける。「ほれ!そうやって、すぐ顔に出るところも、ちっとも変わっちゃいない」「――!!」【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.20
コメント(2)
こうしてラ・パスでの戦闘は、真冬にもかかわらず、熱く、激しく、燃え上がっていったが、それでも、夜間は、両軍は共に刃を収め、静かに、その痛めた翼を休めた。日中の激戦の壮絶さが嘘のように静まりかえった眼下の戦場を、高台の野営場から見下ろすアンドレスの傍に、アパサがチチャ酒の入った大瓶と木のカップを二つ持って現われた。そして、そのまま、雪の結晶で覆われた草の上に、ドッカと、腰を下ろす。アンドレスが振り向くと、アパサは、早速、地面に置いた両方のカップに並々と酒を注(つ)いでいる。無防備なほどにリラックスしきった態度で、しかも、酒まで持ち出してきたアパサの様子に、驚いたような目をしているアンドレスを一瞥すると、アパサは面白そうに片目で笑う。それから、アンドレスの腰にさげたサーベルに、ちらりと横目を走らせた。「どうだ?そのサーベル、少しは役に立っているか?」「あ…!はい!!それは、もちろん!!」アンドレスは素早く腰に手をやると、鞘(さや)の上から、ギュッと、重厚なサーベルを握り締めた。使い込まれていくほどに、限りなく霊妙な気と力を高めていくかのような、そのサーベルは、今、目の前にいる恩師アパサ譲りのものだった。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.19
コメント(2)
眼下の盆地で、勇ましく自軍に挑んでいるアンドレス軍を見下ろしながら、フロレスは、その秀麗な目元を細めた。(それに、あのトゥパク・アマルのことだ。牢を抜けたともなれば、裏で、いかなる策を進めているやも分からぬ。とはいえ、スペイン側とて、トゥパク・アマルの脱獄に、ただ舌を巻いていたわけではない。ペルー副王領では、トゥパク・アマルが姿を消して以来、今も、あのアレッチェ殿は過剰なほどに武器の増産に躍起になっている。その勢いたるや、異常なほどに凄まじい。倍加された火砲の威力に、そなたたちインカ軍が、果たして、どれほど太刀打ちできるのか……)一方、指揮官となった現在も、以前と変わらず、自ら最前線に立って味方の軍団を鼓舞しながら戦うアンドレス――彼も、また、上方に構えられたフロレスの本営を、鋭い横顔で決然と見上げていた。突き刺すような真冬の冷風が、敵の刃のごとく全身に吹きつけてくる。(フロレス殿!!あなたと、また、こうして戦う日が来ると思っていました!!あのプノ戦で有耶無耶になった勝敗の決着、今度こそ、つけさせて頂く!!この戦い、何が何でも、負けられない!!再びトゥパク・アマル様のおられるペルー副王領に戻り、そして、今度こそ、インカの真の勝利を掴み取るために――!!)【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。≪アレッチェ≫植民地ペルーの行政を監督するためにスペインから派遣されたエリート高官(全権植民地巡察官)で、植民地支配における多大な権力を有する。 ペルー副王領の反乱軍討伐隊(スペイン王党軍)総指揮官として、反乱鎮圧の総責任者をつとめる。有能だが、プライドが高く、偏見の強い冷酷無比な人物。名実共に、トゥパク・アマルの宿敵である。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.18
コメント(2)
フロレス軍の激烈な火砲にも怯まず、正々堂々と正面から、アパサ軍の盾となるがごとくに戦線に突入してきたアンドレス軍を前にして、フロレスは、苦い笑みを浮かべた。(アンドレス、そなたと直接に対峙するのは、そなたが当副王領に来たばかりの頃…――あのプノ戦以来、二度目になる。まさか、そなたが、ソラータを落とすまでの指揮官になろうとは)ブロンドがかった肩ほどの長髪に、吸い込まれるような蒼い瞳を持つ優美な風貌のフロレスは、スペイン人というより、むしろ、イギリス人かフランス人のように見える。銃よりもサーベルを好んで手にし、艶やかな白馬に凛然と跨るその姿は、相変わらず、中世の騎士さながらであった。(アンドレス、そなたが仮にこのまま首尾よくラ・パスまでをも奪還した暁には、いよいよペルー副王領へと舞い戻る算段であろう。そして、トゥパク・アマルと合流か……。トゥパク・アマル――アレッチェ殿の内々の通告によれば、クスコの牢を脱して、未だ行方知れずのままだとか。一時は処刑寸前とまで言われたあの者が、再び民衆の前に姿を現すことともなれば、インカ軍の士気は一気に高まることとなろう。この反乱の行方、いよいよ分からなくなってきたか…――)【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.17
コメント(2)
イグナシオ・フロレス――ペルー副王領で総指揮を執るアレッチェに次ぐほどの権限を有する、ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官。副王からの信任も篤く、かつてはアウディエンシア(最高司法院)の議長まで務めたほどの文武両道の麗人である。スペイン本国出身の白人たちが植民地支配の重職を牛耳る中、このフロレスは、唯一、南米出身でありながらも実力で這い上がり、今では、スペイン本国出身の重役人たちを睥睨するほどの高位についていた。しかし、彼は、決して他者を蹴落とすことに邁進してきたのではない。フロレスは、当時のスペイン役人には極めて珍しく、人種的差別や偏見の少ない公明正大な人柄の持ち主でもあった。同じスペイン人でありながら、ただ植民地生まれであるという理由だけで、スペイン本国出身者から不当な差別を受け続けてきた分、それを己の毒としてではなく、むしろ糧として、より成熟した人格形成の血肉としてきたと言えようか。いずれにしろ、さすがに装備も万全で武勇も頭脳も冴えている敏腕フロレスと彼の精鋭軍団に、一時は優勢だったアパサ軍も苦戦を強いられ、次第にインカ側の雲行きは怪しくなっていた。ソラータから駆けつけたアンドレス率いる援軍が、当地ラ・パスに到着したのは、そのような戦況の真っ只中の頃であった。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.16
コメント(0)
4万の兵を指揮するアパサは、本陣をエル・アルト付近に据えていた。その本陣からは、下方の盆地に、ラ・パスの町が一望に見渡せる。封鎖に成功したアパサは、既に、ラ・パスに立て篭もるスペイン軍に、インカ側に有利な条件付きの和議か休戦かの選択を迫っていた。しかしながら、アパサの突きつける厳しい条件――全ての武器の引き渡し、スペイン側の築いた要塞の破壊、暴政を敷いてきた代官の引き渡し、スペイン人をスペイン本国に帰還させること、税関吏その他の勅任官・大地主・有力な神父などの白人の引き渡し等――に、到底、妥協などできぬ敵軍は、激しい反撃に転じていた。いかに豊かな財力や民への影響力を備えていた猛将アパサとはいえ、一介の豪族にすぎぬ彼の率いる軍は、兵力こそ多いながらも、さすがに皇族たるトゥパク・アマルやアンドレスたちが指揮する軍とは異なり、装備が悪く、ここでも、スペイン側の火砲の威力に押され、決定打を与えられぬままに時ばかりが流れていた。当初、このラ・パスのスペイン軍を率いて戦っていたのは、アンドレスが奪還したソラータの代官を歴任したこともあるセグローラ中佐であった。しかし、中佐の率いるラ・パスのスペイン軍がアパサの猛攻に押されていくさまを見て取って、精鋭の援軍を率いて駆けつけたのが、ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官イグナシオ・フロレスである。結果、ラ・パスでの戦闘は、実質的には、アパサ軍とフロレス軍との激突という構図となっていた。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。≪フロレス≫ラ・プラタ副王領のスペイン軍総指揮官として、当地の反乱鎮圧の総責任者をつとめる。副王の信任も篤く、かつては最高司法院の議長まで務めた有能、且つ、武勇に秀でた麗人。植民地生まれであるためか、他のスペイン人高官とは異なり、偏見を持たぬ公明正大な人物。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.15
コメント(2)
ところで、このラ・パス(La Paz)だが、猛将フリアン・アパサ――ラ・プラタ副王領の豪族で、トゥパク・アマルの最も有力な同盟者であり、かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある――が、数ヶ月前より、既に堅固な包囲網を敷き続けていた。実は、ラ・パスは、封鎖すること自体は、それほど困難な場所ではない。ラ・プラタ副王領で最たる要衝のこの町は、周囲を6千メートル級の山々で囲まれた盆地部分に築かれている。補給や通信の動脈である最も重要な道路は、今も昔も、ラ・パスの西側の高地エル・アルトから入ってくる。ペルー副王領からラ・プラタ副王領に通ずる幹線道路は、「太陽の門」などのプレ・インカ期の遺跡で有名なティアワナコを通り、エル・アルトで南に折れてオルーロ(Oruro)に達し、ここでオルーロとコチャバンバ(Cochabamba)への二つの道に分岐する。つまり、ラ・パスへは、この幹線から枝が出ているだけである。もちろん、この他にも小さな道はいくつかあるのだが、ともかくも、非常に険しい山々に囲まれたラ・パスは、主要な道さえ押さえてしまえば、町の全外周を包囲しなくても封鎖することが可能な地なのである。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(1日1回有効) (随時)
2008.01.14
コメント(0)
他方、この頃、隣国ラ・プラタ副王領では、トゥパク・アマルの秘策による新たな大波到来の可能性を知ったアンドレスが、急ぎ、次なる戦地へと駒を進めようとしていた。インカ軍にとって、ソラータ奪還は意義深いものであったとは言え、この反乱の全体的な戦況は、まだまだ彼らにとって厳しいものであることに変わりはなかった。本格的な反乱の決着をつけるためには、ペルー副王領のスペイン軍本隊を押さえ込むことが、最終的には、絶対に避けて通れない。だが、そのためにも、このラ・プラタ副王領でのインカ側の地盤を、しかと固める必要があった。奪還したソラータに、街の守備と復興作業のための分隊を残すと、アンドレスは、トゥパク・アマルの書状で指示されていた通り、すぐさま、アパサが激戦を展開しているラ・パスへと進軍を開始した。ソラータの水攻め成功の機運に乗り、このまま一気にラ・パスをもインカ軍の手に奪還し、一挙にラ・プラタ副王領でのインカ軍の勢力を確実なるものにしたい!!――それは、全てのインカの民の次なる願いでもあった。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪アンドレス≫トゥパク・アマル(インカ皇帝末裔で反乱軍総指揮官)の甥で、インカ皇族の青年(18歳)。若くして剣術の達人であり、2万の軍勢を率いるインカ軍最年少の連隊将。スペイン人神父の父とインカ皇族の母との間に生まれた。混血の美青年(史実どおり)。現在は、ペルー副王領の隣国ラ・プラタ副王領に遠征している。 ≪アパサ≫「ラ・プラタ副王領」の豪族で、トゥパクの最も有力な同盟者。年齢は30代半ば。「猛将」と謳われる一方で、破天荒で放蕩な性格の持ち主だが、実は、洞察と眼力が鋭く、全体をよく見通している。かつてアンドレスを戦士として鍛え上げた恩師でもある。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.13
コメント(0)
太陽の上昇に伴い、徐々に晴れゆくマチュピチュの朝霧……。やがて霧がすっかり空気の中に溶け込むと、朝露に濡れた石畳に陽光が降り注ぎ、遺跡は神秘的な夜明けの光景から明るい午前のそれへと、その表情を変えていく。トゥパク・アマルは前方を見据えていた鋭利な眼差しを、ゆっくりとビルカパサの方に戻した。そして、その瞳の色を和らげ、僅かに微笑む。「この秘都での生活も、間もなく終わりとなろう。ここでの静かな日々と別れを告げるのは、少々、惜しくもあるが……」ビルカパサはきっぱりと顔を上げて、凛々しい目で、真っ直ぐに主を見つめた。そして、太く、逞しい声で力強く言う。「トゥパク・アマル様!!国中の民が、あなた様のお帰りを待ち侘びておりましょう!!」とどまることなく昇りゆく太陽が、二人の歩みゆく石畳の道を、眩く照らし出していた。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪ビルカパサ≫インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパクと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.12
コメント(2)
「あの地下道……わたしが、クスコの牢から脱出する際に利用した地下道だが、使えるかもしれぬ」「使えると…?戦にでございますか?!」「うむ。早急に地下道の状態を調べるよう、手配をしてもらいたい。特に、次なる戦の要(かなめ)となろう地に通じる地下道――クスコ(Cuzco:インカ帝国の旧都)とリマ(Lima:スペイン側の中枢都市)の間、そして、クスコとアレキパ(Arequipa)との間に通じる地下道を。いや、リマとアレキパとの間も、忘れてはならぬ。長い間、放置されてきたゆえ、かなり老朽化はしていようが、あれほどの地下道を放置しておくのは、あまりに惜しい。ある程度の整備をすれば、必ずや、有効な使い手があろう。少々、わたしに考えもある……」「クスコとリマの間、そして、クスコとアレキパの間――!アレキパ…!!沿岸に近い要衝の町でございますね?」ビルカパサは、興奮に顔を紅潮させながら、噛み締めるように呟いた。「そうだ――」トゥパク・アマルが深く頷く。「次なる戦の重要な舞台となるかもしれぬ沿岸にほど近い町―――」低く決然としたトゥパク・アマルの声音に聴き入りながら、ビルカパサは、激しい緊迫感と武者震いが、電流のごとく己の全身を走るのを感じていた。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪ビルカパサ≫インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパクと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.11
コメント(0)
深い思慮に耽ったようにして、鋭い目で歩み進むトゥパク・アマルの斜め後方に従いながら、ビルカパサは主の横顔を俊敏に窺う。常の精悍な面差しに、さらなる強い力と険しさを宿して、早足で歩むトゥパク・アマルの様子に、ビルカパサは事態の進展を悟った。その気配に気付いてか、前方を見据えたまま、トゥパク・アマルが口を開く。「どうやら動き出したようだ」「そうでしたか……!」ビルカパサの表情にも、強い緊張と共に光が射した。そんなビルカパサを振り向いて、トゥパク・アマルは真摯な眼差しで相手を見つめる。「いよいよだ。ここを降りて下界に戻る準備に入らねばなならぬ。まずは、インカ軍本隊をあずけているディエゴの軍と早急に連絡を図りたい」ビルカパサは、すかさず、頷いた。「はっ!!トゥパク・アマル様!!」マチュピチュの石畳を歩む二人の足取りにも、無意識のうちに、その一歩ごとに力が入っていく。「ところで、あの地下道だが…――」「え?」不意のトゥパク・アマルの言葉に、ビルカパサは、瞬間、瞳を瞬かせた。【登場人物のご紹介】 ☆その他の登場人物はこちらです☆≪トゥパク・アマル≫反乱の中心に立つ、インカ軍(反乱軍)の総指揮官。インカ皇帝末裔であり、植民地下にありながらも、民からは「インカ(皇帝)」と称され、敬愛される。インカ帝国征服直後に、スペイン王により処刑されたインカ皇帝フェリペ・トゥパク・アマル(トゥパク・アマル1世)から数えて6代目にあたる、インカ皇帝の直系の子孫。「トゥパク・アマル」とは、インカのケチュア語で「(高貴なる)炎の竜」の意味。清廉高潔な人物。漆黒長髪の精悍な美男子(史実どおり)。≪ビルカパサ≫インカ族の貴族であり、トゥパク・アマル腹心の家臣。トゥパク・アマルの最も傍近い護衛官として常にトゥパクと共にあり、幾度と無く命を張って主を守ってきた。≪ディエゴ≫インカ皇族で、名実共にトゥパク・アマルの右腕的存在。トゥパク・アマルの亡き父親ミゲルの弟の長男(トゥパク・アマルの従弟)。インカ軍本隊でトゥパク・アマルの副官的役割を果たしてきた。アンドレスの叔父にあたる人物で、アンドレスの父親代わりでもあった。 ◆◇◆◇◆ホームページ(本館)へのご案内◆◇◆◇◆ ◆◇◆はじめて、または、久々の読者様へ◆◇◆ 現在のストーリーの概略はこちら HPの現在連載シーンはこちらランキングに参加しています。お気に入り頂けたら、クリックして投票して頂けると励みになります。(月1回有効) (随時)
2008.01.10
コメント(0)
全323件 (323件中 1-50件目)