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2007年07月02日
『ブラックストーン・クロニクル』 ジョン・ソール
テーマ:
ミステリはお好き?(1498)
カテゴリ:
カテゴリ未分類
舞台はアメリカの小さな町ブラックストーン。すべては、廃墟となって町を見下ろす古い精神療養所を壊すときから始まった。プレゼントが届くとなにかが起きる連続事件。町の新聞『ブラックストーン・クロニクル』の編集長オリヴァー・メトカフに、第二の犠牲者ジュールズ・ハートウィックは言った。「きみがとめなきゃいかん…そいつがわれわれ全員を殺す前に」なにをとめるんだ?この町は、呪われた町なのか?町を恐怖に陥れた黒い人影は、今夜も闇のなかで次のプレゼントを選んでいた…。1番目のプレゼントはアンティークドール、2番目のプレゼントはロケットペンダント、3番目のプレゼントはドラゴンのライター、連続事件は、はたしてどこまで続くのか…。
ジョン・ソールは、五冊読めば飽きる。そんな、過去の定説だったらしいですね。
ソール本は、これで3冊目ですが、従来の「児童虐待」に「バッドエンディング」というストーリー展開ばかりの作品群、、というわけでもなく、これまた、非常に読みやすかったです。
この『ブラックストーン・クロニクル』は6つのプレゼントを巡る物語で、六ヶ月に渡って6冊刊行され、日本では上下巻のハードカバーで出ました。
プレゼント毎のエピソードが良く出来ていておもしろかったです。
ラストは、おそらく、こうじゃないか、、と思うようなオチでしたが、まずまず。
最近、以前に比べればやや爽やかな作品が翻訳されるようになったようですが。この『ブラックストーン・クロニクル』は、ハッピーエンドですしね。
訳者 金原瑞人:あとがきより 二〇〇六年五月二十二日
ジョン・ソール。一九四二年生まれ、アメリカの中堅ミステリ・ホラー作家、といった位置づけだろうか。日本でも人気があって、翻訳はすでに二十冊を超えている。
処女作は『暗い森の少女』(一九七七年)。日本語のタイトル通り、「暗い」(ただし、原作のタイトルは Suffer the Children)。過去に父親が娘を犯して自殺する、という事件があり、その百年後、同じ惨劇が繰り返されるというふうな展開。かなりえぐい描写もあり、そしてジョン・ソールのそれ以後の作品にもよくある「救いのない結末」。
ジョン・ソールはこの手の作品をかなり書いている。もちろん、一方には『マンハッタン狩猟クラブ』という、歯切れのいいミステリ・サスペンスもある。マンハッタンの地下鉄世界に放りこまれた青年が、犯罪者とともに、追っ手をかわして逃げまくるという小説だ。ただ、この作品でも、仲間の犯罪者というのがひと癖あって(男が好きで死姦が好き)、主人公は追っ手から逃げながら、この仲間もかわさなくてはいけない。そして、ひねりのきいたエンディング。
まあ、ある意味、わかりやすすぎるミステリ作家といっていいかもしれない。
が、なぜか前々から気になっていて、あるとき、十冊ほど買いこんで読みふけったことがある。ある種の魔力のようなものがあって、延々とグロテスクな場面や、残酷な描写が続いて、あげくのはてに暗いエンディングといったものも少なくないのだが、不思議な力があって、最後まで読んでしまう、いや、読まされてしまう。
スティーヴン・キングやクライヴ・バーカーといった、斬新なモダン・ホラーではまったくなく、スタンダードな古典的な恐怖小説をそのまま現代に持ってきたような作品を書くのだ。これが逆に、とても新鮮だった。
とにかく力がある。いやおうなく読まされてしまうのだ。圧倒的な力といっていい。
そんな力を持てあましていたジョン・ソールが初めてそれをバランスよく、巧みに使いこなした作品がこの『ブラックストーン・クロニクルズ』ではないかと思う。
モダン・ゴシックともいうべき『暗い森の少女』の特徴を色濃く残しながら(繰り返されるグロテスクな惨劇)、『マンハッタン狩猟クラブ』のテンポのよさとスリル、そしてラブロマンス。そう、悲惨な事件は起こるものの、この作品、救いはあるし、最後はハッピーエンドなのだ。
舞台は田舎町、ブラックストーン。うち捨てられて久しい精神病院に解体の鉄球が打ちこまれるところから物語は始まる。ここは新たに町のセンターとして再建されることになっていたのだ。ところが、いきなり資金繰りがうまくいかなくなって、計画は頓挫。それだけではない。やがて、ブラックストーンの町に災いが少しずつ蔓延し始める。
古い建物に怪しい人影が現れ、そこに隠してあったものを闇に紛れて届けると、その家には狂気があふれ、悲惨な出来事へと発展していく。最初は、人形、次はロケット……不思議なことに、その悲劇は過去に精神病院で起こった事件とどこかつながっているらしい。次の犠牲者は誰か……
この物語の中心人物はオリヴァー・メトカフ。町の新聞『ブラックストーン・クロニクル』の編集長で、今では使われていない古い精神病院の敷地内のコテージに住んでいる。父親はこの精神病院の院長をしていたが、オリヴァーが幼いときに自殺している。町の人々がおびえるなか、オリヴァーはこの謎を解かなくてはならないと感じる。オリヴァーはやがて、レベッカ・モリスンという女の子に心を奪われていく。レベッカは交通事故で両親を亡くし、そのときに軽い知的障害を負い、おばのもとに身を寄せ、図書館で働いている。
不気味な連続事件と、オリヴァーの恋と、オリヴァーの曖昧模糊とした過去、この三つが最後の最後で、ぴったり重なっていくところは見事としかいいようがない。
さて、スティーヴン・キングの『グリーンマイル』にヒントを得て書かれた、この作品、最初は、薄めの本が順次、六冊出版された。これを訳して合本にしたのが、この本。
発表と同時に大ブームになり、ファンクラブはできるし、ネットのサイトもできるし、ゲームまでできるし……といった調子。また、舞台になっているブラックストーンという町についても、あれこれ話題が絶えない。興味のある方は、ぜひネットサーフィンで遊んでみてほしい。
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最終更新日 2007年07月02日 11時33分22秒
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