DEL PACIFICO

DEL PACIFICO

2007/09/08
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テーマ: 水中写真(542)
カテゴリ: トンガ
4日目


1行程で参加しているほとんどの人たちにとって今日は最終日。
昨日が強風の為に海に出れなかったこともあり、
少々の無理を圧しても出港したいところだ。


風は相変わらず衰える事はなく、強く吹きつけるが
東から北よりに回っており、海に出やすくなっている。
空は昨日の曇天をもたらした雲が薄くなり晴れ間が覗いている。


越智さんはショップに連絡して、
「最終日の人が多いので、何が何でも船を出して欲しい。」



入り江を出るにつれてやはり波が高くなってくる。
この様子ではリーフの外には出れないが、
北風に対して島影となる、南東方面には捜索範囲を広げることが出来る。


2日目にクジラと泳いだエリアの手前で、早くもいくつかのブローを発見する。
しかし、タイミング悪く、物資を運んできた大型フェリーが通りかかり
海に入るタイミングを逃し、結局ロストしてしまう。


その後、いっこうにクジラの姿は見つからない。
時間は既に午後3時。
4時から5時ごろには帰港するので
「ホエールソング」のメンバー間には、半ばあきらめの表情が浮かぶ。
重い空気が船を支配する。



なんとしてももう一度クジラと泳ぎたいとの気持ちが強かった。
というのも、
2日目に全ゲストがクジラと泳ぐことが出来たにはできたのだが、
「ホエールソング」A班の2名は、
潜行していくクジラの後姿をおぼろげながら確認したという程度の
遭遇しか果たしていなかったかならなのだ。



トンガのホエールスイムに参加するのは

(乗船する船によって変わってくるが)50万円あまりの費用がかかる。
「このまま2人を返すわけには行かない。」
みなの中にこの気持ちが重く広がっていた。


しかし、いっこうにクジラの様子は伺えない。
船もなぜかあまり移動をしなくなった。
「あぁ、もうだめだ」と諦めかけた時、
ガイドのトニーが話し始めた。


別の(ショップの)船がシングルのクジラを譲ってくれるという。
このクジラ、ほとんど動かず島の近くの砂地にじっとしているというのだ。
我々が乗船する「ホエールソング」の船長のノーファが、
そのクジラとずっと泳いでいた船のキャプテンに交渉してくれたのだった。
ゲストの間に歓声があがる。


トニーが先に海に入り、海中のクジラを発見。
A班がエントリーする。
海底あたりにいるクジラを確認する。
徐々に移動しているようだ。


我々は水面を全速力で追いかける。
呼吸の為にクジラが浮上してくるのをタイミングよく捕まえる為には
ひたすらトニーについて追いかけるしかない。
しかし、みるみるうちにトニーとの距離が離れる。
トニーは我々の間で、憧れの意味もこめてターミネーターと呼ばれている。
ロングフィンを軽々と操るその強靭な泳力にはただただ驚かされる。


しばらくして、クジラが浮上して来た。
こちらに向かってくる、真正面だ。
カメラを構える、ファインダーでクジラを捕らえる。
ひたすらシャッターをレリーズする。

ザトウクジラ

ザトウクジラ


近い、このままでは接触してしまう。
しかし、ここで退くわけには行かない。
半ば開き直ってシャッターを切り続ける。

ザトウクジラ


目の前で、身を翻すクジラ、
胸鰭が起こす、水流で体が揺さぶられる。

ザトウクジラ

ザトウクジラ

ザトウクジラ


クジラとの至近距離の出会いを遂げて、船に戻ったA班。
へとへとになりながらも
今まで目の前で展開したシーンを思い返し
みなの表情に喜びがあふれている。


Kさんが興奮した面持ちで話しかけてきた。
「あのクジラ、妊娠してる。陣痛で苦しがってるみたい。」
「えっ、何でそんなの判るの? 確かに泳ぎ方がぎこちなかったけど・・・」
Kさんは、彼女自身子育て中のママであり、
お腹に新たな生命を宿した動物として、通ずる何かを感じたのだろうか?


実は「ホエールソング」の後に泳いだ、
今日は「スパイホップ」のガイドだった越智さんも、
その泳ぎ方から妊婦だと思ったらしい。


最後の最後で劇的な遭遇を果たした我々は、
最後の晩餐を行うべく港に引き返した。
明日は、1行程で参加した大半のゲストが帰る日だ。
2行程での参加の私とMさん、
トニーの友人の北京在住の中国人ケビンさんは
彼らとお別れしたあと、海に出る予定となっている。
明日こそ、風が収まって、良い環境でクジラを探したいものだ。
心地よい、充実した一日を過ごした私は
トンガの神様に感謝の気持ちと祈りを捧げた。

ネイアフ 教会








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Last updated  2007/09/08 03:23:04 PM
コメント(8) | コメントを書く


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Re:4日目 Second encounter ”Pregnancy female”(09/08)  
kasumicyoucyou  さん
凄い迫力ですね。クジラと向き合うなんて、そうそう出来ない体験ですね。
こんな迫力ある写真、今まであんまり見た事ありません。
凄いですね!! (2007/09/08 07:56:49 PM)

すごすぎ!!  
これ、怖くないんですか?
って、怖さも有るに決まってますよね?

かつて小笠原で望月カメラマンが亡くなってますが、
ここではそういう事故は起こってないんですか???
いやあ、写真見てるだけで息を飲みましたわ。

また、写真がきれいですね!!
これは売れるでしょう。

いや、まだドキドキしてますわ。
ありがとうございます。

(2007/09/08 11:29:52 PM)

Re[1]:4日目 Second encounter ”Pregnancy female”(09/08)  
anthias anthias  さん
kasumicyoucyouさん
>凄い迫力ですね。クジラと向き合うなんて、そうそう出来ない体験ですね。
>こんな迫力ある写真、今まであんまり見た事ありません。
>凄いですね!!
-----
ザトウクジラと泳げる海は、そうありませんから、経験者の絶対数が少ないですよね。
写真が少ないのもその為でしょうね。
(2007/09/09 05:44:51 PM)

こんなに  
marilinlove  さん
至近距離での撮影が出来たなんて~凄すぎです!!
正面のクジラさんの顔を見れたのも初めて。水中からのクジラさんも。
もう興奮しながら見させていただきました。
正面から撮るのに相当の泳力がないとダメだと言うことも分かりました。
水中のクジラさん、見てみたいですが、もうこの時点で至難の業です。
anthiasさんのお写真を見せていただき楽しむしかありません。(笑)
最後の白亜のチャーチと青い空のコントラストは心が洗われるようです☆ (2007/09/09 06:29:12 PM)

Re:こんなに(09/08)  
anthias anthias  さん
marilinloveさん
>至近距離での撮影が出来たなんて~凄すぎです!!
>正面のクジラさんの顔を見れたのも初めて。水中からのクジラさんも。
>もう興奮しながら見させていただきました。
>正面から撮るのに相当の泳力がないとダメだと言うことも分かりました。
>水中のクジラさん、見てみたいですが、もうこの時点で至難の業です。
>anthiasさんのお写真を見せていただき楽しむしかありません。(笑)
>最後の白亜のチャーチと青い空のコントラストは心が洗われるようです☆
-----
クジラと一緒に泳ぐだけでも
めったに経験できないことですが、
トンガでは、それが現実になります。
そして、ただ一緒に泳ぐだけではなくて
彼らの様々な表情や行動を目のあたりに出来るんです。 (2007/09/09 11:10:44 PM)

Re:4日目 Second encounter ”Pregnancy female”(09/08)  
楓天  さん
今日は、至近距離での連続写真、、水中から呼吸をして反転する大きな姿態が驚きですが、美しいと思いました。

しかし、、正面一直線ですね、、このクジラに、ゲストとして、きっと選ばれたのですね、、。

教会が青い空を背景に、クジラと神様が重なりますね。 (2007/09/10 12:49:10 PM)

Re[1]:4日目 Second encounter ”Pregnancy female”(09/08)  
anthias anthias  さん
楓天さん
>今日は、至近距離での連続写真、、水中から呼吸をして反転する大きな姿態が驚きですが、美しいと思いました。

>しかし、、正面一直線ですね、、このクジラに、ゲストとして、きっと選ばれたのですね、、。

>教会が青い空を背景に、クジラと神様が重なりますね。
-----
正面から見るクジラは、機能美にあふれた流線型で無駄の無いそのシルエットには惚れ惚れしました。 (2007/09/11 05:00:43 PM)

Re:すごすぎ!!(09/08)  
anthias anthias  さん
まー(シモパラ)さん
>これ、怖くないんですか?
>って、怖さも有るに決まってますよね?

>かつて小笠原で望月カメラマンが亡くなってますが、
>ここではそういう事故は起こってないんですか???
>いやあ、写真見てるだけで息を飲みましたわ。

>また、写真がきれいですね!!
>これは売れるでしょう。

>いや、まだドキドキしてますわ。
>ありがとうございます。
-----
実は、もっときわどいシーンにも遭遇したのですが、(後日書きます。)
正直、恐怖心は感じませんでした。
それよりも、写真を撮ることに夢中で・・・。
トンガではクジラによる事故は起こっていないようです。
ただ外洋でスイムもあるので、外洋性のサメ(タイガーシャークなど)の危険性があるようです。
(この話も後日書きます。)

望月昭伸氏の事故の記事を読んだ時は、かなりショックを受けました。
私が、ダイビングをはじめて間もない頃、テレビで望月氏がナビゲーターを勤めるダイビング番組を毎週楽しみにしていました。
望月氏は私にとって、水中写真家を身近に感じた初めての人です。

今年の水中映像祭に氏の作品が出品されていました。見ていて目頭が熱くなったのを覚えています。
望月氏はまだこの広い海のどこかでクジラたちとの対話に熱中しているのだと思ってやみません。( (2007/09/11 09:22:30 PM)

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