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「もういいかい?」「まーだだよ」の言葉のやり取りからみなさんのほとんどが連想するのは『かくれんぼ(う)』あそびでしょう。
私はこの言葉の掛け合いをかくれんぼあそび以外のほかのあそびや園生活の中で多用して子どもたちとのコミュニケーションを楽しんでいます。
例えば給食の場面やままごと遊びの中で『もう・いい・かい?』を言い換えて
「たーべ・てる・かい?」とか「おい・しー・かい?」と声をかけます。
すると子どもたちの返事は「たーべ・てる・かい?」に対して「たーべ・てる・よ」とか
「おい・しー・かい?」に対して「おい・しー・よ」といった返事が来ます。
給食の場面で、食がすすまない子や、食べることに関心の薄い子に対して、個別に食事の誘いかけをするよりもテーブルに着席している子どもたち全体に「たー・べて・てる・かい?」「たーべ・てる・よ」とか「おい・しー・かい?」「おい・しー・よ」の掛け合いをして食事の雰囲気を徐々に整えていくほうが存外効果的です。
ニコニコ笑顔で食べている子の様子などを感じながら、自分もちょっと食べてみようかなというモチベーションがちょいと上向くようです。
集団保育の場面ならではの利点でしょう。
このことばの掛け合いに日々なじんでいくと、決まってバリエーションを思いつく子が出てきます。
「たー・べて・てる・かい?」「たーべ・てる・よ」とか「おい・しー・かい?」「おい・しー・よ」に対して
「たー・べて・てる・かい?」「たべて・なーい・よ」とか「おい・しー・かい?」「おいしく・なーい・よ」
というバリエーションです。反対言葉を面白がっています。
どうやらこの傾向には普遍性があるようで、今から 40 年前の子どもたちの中にも、そして今現在目の前の子どもたちの中にも同様の楽しみ方が見られます。面白いですね。
好きな歌でも歌詞の一部分を反対の替え歌にして楽しんでいるのを聴いたことがありますか?
これが幼児さんや学童さんになると例えば『うみの歌』を
♪うーみーは ひろくない おおきーくない つきがのぼらないし ひがしずまーない♪
かなり高度な楽しみ方ですから 1 ~ 2 歳児クラスあたりのレベルではせいぜい
「たべて・なーい・よ」とか「おいしく・なーい・よ」のようなアレンジを充分面白がっているのです。
実際に食べていないよと報告しているのでもなく、おいしくないよと不平を言っているのでもありません。
たんなる言葉あそびですから、正面切って訂正させたり小言を言ったりせず、一緒に面白がって、いなしてその先へと誘います。
「え~、ほんとかなぁ」とか
「まぁ、そうおっしゃらずにおたべなさい」
「どれどれ、たべてみましょう。うっわ、おい・しー。たべてごらん」
このバリエーションもいろいろです。
会話のやり取りを楽しみつつも、食事そのものを味わってもらえるように雰囲気を整えます。
さて、再び「もう・いい・かい?」「まー・だだ・よ」のやり取りの話題に戻しましょう。
今度は子どもさんの側に「もう・いい・かい?」と言わせて、私のほうが「まー・だだ・よ」と返事をする場面があれこれあります。
おトイレで、おむつの中にウンチをひりだした子どもさんのおむつ交換の場面がその一つの例です。
子どもさんもいろいろですからお尻の周りの汚れをおしりふきシートできれいにぬぐい取るまでの間、じっとおとなしくしていてくれる子もあれば、じっと待ち続けてくれないお子さんもいます。
暴れられたりしたら厄介で、うっかりすると仕事が増えるような場面展開さえ起こりかねません。
そこでじっとし続けてくれそうにない子のうんちの始末のおむつ交換の時などには私は子どもさんにリクエストをします。
「ねえ、『もう・いい・かい』っていってくれる?」
子どもさんのほうもこの言葉の掛け合いには耳慣れていますから実に素直に
「もう・いい・かい?」って言ってくれます。
これに対して私は
「まー・だー・よっ」とか
「 あと・ちょっ・と」とか
「もう・すこ・し」とか
「あと・ちょっ・とね」とか「もう・すーこ・し」とか
お尻拭きの進展具合によってバリエーションを凝らして返事します。
「もう・いい・かい?」「「まー・だー・よっ」のワンクールで事が済まない事態の時には
「もういっかい『も・いい・かい?』ってきいてくれる?」と仕切り直しをして時間調整をし、
めでたく「はい・おーし・まい」と宣言します。
10 10 人の子が暴れずにうんちの始末を付き合ってくれます。
「さっ、あそぼっか」と背中をそっと送り出します。
水を得た魚のように自分のやりたいあそびに向かって飛び出していきます。
その背中を見送るのって実にいい心持です。