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お話し森の山小屋で
(
第
8
稿
)
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4/4
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⑥ ものづくりの妖精さん
「ねえ、ねえテーブルさん」
「テーブルさんてばテーブルさん」
「あのさ、うんとさあ・・・」
子ども達はいっぺんにしゃべり出しました。
「ちょ、ちょ、ちょっと待った。」
「ようせいさんってまほうつかい?」
「ようせいさんってどんなときにくるの?」
「ようせいさんどっからくるの?」
「いろんなようせいさんがいるの?」
子ども達はわれさきにと質問をしました。
「質問は一人ずつだ」
「ようせいさんってまほうつかい?まほうをつかえる?」
「いいや、魔法使いではないね。
ちょっと魔法使いみたいなところもあるけれど・・・
もしかしたら魔法を使えるのかもしれないけれど
魔法を使っているのは見たことないなぁ。」
「それじゃあどんなことできるの?」
「さっきもちょっと話したけれど、一生懸命考えて
すてきな言葉が閃いたり、
何か素敵な考えややり方を思いついたり、
今まで気が付かなかったことに気づいたり発見したりするたびに
妖精さんはその人のすぐそばに来て小さな拍手を贈るんだ。
そしてその人の周りを嬉しそうにぐるぐる廻るんだ。
その閃きややり方をその人が試して
それがうまくいけばいくほど妖精さんの数もどんどん増えて大拍手。
妖精さんたちは熱烈な拍手をしながらびゅんびゅん廻るんだ。
その拍手を浴びると不思議と元気が身体中にみなぎってくる。
時にはヴァムさんが思わず『絶好調!』なんて自分を褒めながら
ものづくりしているのを見たことも何度かあったなぁ。」
「ようせいさーんってよんだらきてくれるの?」
「いいや、妖精さんは呼んでも来てくれないし、
いついつ来るよなんて約束もしない。
とっても気まぐれなんだ。」
「ようせいさんってどっからくるの?」
「さ、どこから来るんだろうねぇ。
何処から来るかではなくて、多分…」
「たぶん。なあに?」
「多分、みんなの身体の中に最初っからいるんじゃないのかなぁ。」
「さいしょっからいる?」
「そう、最初っからいるんだけれども大抵眠っている。だから・・・」
「だからなあに?」
「だからなかなか気が付かないんだ。
妖精さんが目覚めてすぐそばを拍手しながら
ぐるぐる回っていても気がついていない人が沢山いると思うよ。
目には見えないからね。
『あっ、今、妖精さんがすぐそばに来てる』
って感じる人だけが妖精さんと会話できるんだろうね。
会話といっても妖精さんはおしゃべりをしない。
ぐるぐる廻ることと拍手で表現するだけだから、
それがきっと妖精さんの言葉なんだろうと思うよ。」
「いろんなようせいさんがいるの?」
「ものづくりの妖精さんのほかにも・・・。
ことばの妖精さん。お話の妖精さん。
歌の妖精さん。楽器の妖精さん。
ダンスの妖精さん。
絵や彫刻の妖精さん。
お部屋の妖精さん。
森の妖精さん。
大地の妖精さん。
空の妖精さん。
水の妖精さん。
光と影の妖精さん。
ありとあらゆる妖精さんがいるんだよ。」
⑦ あそびの妖精さん
「ねえ、てーぶるさん」
「何だい?」
「あそびのようせいさんっていないの?」
「おっと、肝心な妖精さんのことをすっかり忘れていたよ。
どうして忘れていたかなぁ。ふぅ~む・・・。」
「ねぇ、いるの いないの どっちなの?」
「いるとも、いるとも。
子供にも大人にも実にたくさんの妖精さんがね。
だが、どうして忘れていたかなぁ・・・。」
そのままテーブルさんは黙り込みました。
子供たちは口をぽかんと開けてお話を待ち続けました。
静かな時間がゆっくりと緩やかに流れました。
テーブルさんは何かを話出そうとしているのですが
ずっと黙ったままです。
その様子はさっきから懸命に言葉を探しているといった風で、
それでいてちょうどいい言葉が見つからないらしいのです。
そして時間はまるで止まったかのように動かなくなりました。
「はくしょん。」 とジョーイが小さなちいさなくしゃみを一つしました。
「遊びの妖精さんはね、
ほかの妖精さんたちのとはちょっとばかり違うんだ。
くるくる廻ったり拍手をしたりすることもあるけれど、
それよりも明るさを増すというか、輝くんだ。
身体の内側から外側に向かって輝きを増すんだ。
大人たちの輝き方にはうねりや揺らぎがあるんだけれどもね。
特に君たち子どもの場合にはその輝き方がまっすぐなんだ。
どうかな、わかったかな?」
「あまりよく・・・わからない」
「そうか、『あまりよく解らない』か。
では今日はここまでにしておこう。
きっと私自身がまだよく解っていないから、
私の中で言葉が熟成していないんだ。
だから君たちに伝えきれないのだ。
ううぅ~ん。
これは私の宿題にさせてもらおう。
解ったつもりでいたが、まだまだ充分に解ってはいないのだね。
そのことに気づかせてくれた君たちにありがとう。」
「はくしょん」
またひとつジョーイがちいさなくしゃみをしました。
「空気が少し冷えてきたんだ。
おや、ここを見てごらん」
テーブルの上のポットのふたをオレンジ色の光が染めています。
光の源をたどっていくと、西の壁にちいさな節穴が見えました。
かわいらしいハート形の節穴でした。
「もう日が暮れるという知らせだ。
そろそろお家へお帰り。」
「ありがとう、たのしかったよ。またくるね。」
「ああ、いつでもおいで、待っているよ。」
「さようなら」
「さようなら」
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