つまずく石も縁の端くれ

つまずく石も縁の端くれ

全て | 徒然 | 読書 | アート |
2009年01月08日
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カテゴリ: 読書
悼む人.jpg


よる死者の話題が途切れたことが無い。時には、
被害者の人となりが詳しく紹介されることもある。

主人公の青年は、そんな全国の事故や事件の
あった場所を行脚し、亡くなった人の思いを胸に
刻むという「悼み」を行い、やがて「悼む人」と
呼ばれるようになる。

何のためにどうして、主人公はこの「悼み」を行う
のか。この行為の意義は何か、果たして意味の

最大のポイントである。

著者も、繰り返し、寄せては引く波のように、
これを訴えている。ただ、自分としては、情緒的
には理解できるのだが、まだまだ納得はできない。

次に彼をめぐる家族の物語。とくに末期ガンで、
在宅で最期を迎えようとする彼の母親の物語は
心に沁みる。

「悼む人」を追いかける嫌われ者の雑誌記者の
物語は、分かりやすい。人間の汚さ、醜さに拠った
記事を売りにしていた雑誌記者は、「悼む人」の
影響を受け、スタイルが変っていく。しかし、


もう一人、「悼む人」と行動を共にする夫殺しの女。
殺した夫の首が肩にとりついている。「悼む人」と
この夫との対話は、「悼む人」の行為の動機に迫り
圧巻である。

「死」という重いテーマを、以上のようないくつ

読み進めることができなかった。「永遠の仔」の
ようにミステリ仕立てでもなく、ただただ、時系列に
読ませるだけ。読後の後味もさほどすっきりとは
しない。それでも、心の底にポッと暖かさが残るのが、
救いはである。

表紙は作者が写した舟越桂のスフィンクスの像。
この彫刻から、作者は啓示を受けたそうだ。人間
はどこから来てどこへ行くのかという永遠の謎を
提起しているかのようだ。





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最終更新日  2009年01月10日 07時12分00秒
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重そうな内容ですね  
mimimi さん
同じ作者の「包帯クラブ」を思い出しました。
あれも、心の傷になった風景に包帯を巻いて、傷ついた者の心を癒すと言う話でしたが、主人公達が、若く、パワフルだったので、暗いイメージにはならなかったけど。

興味は有るのですが、かなりヘヴィーな内容みたいなので、心がしっかりしてる時じゃないと読めないかもしれないな。

こんな小説がベストセラーになるってのも、凄いですよね。

(2009年01月09日 10時08分07秒)

正月から「悼む人」  
きのこ さん
実家にあったので正月からこちらの本を読んでしまいました。

知らないとはいえ、なぜ家族を放っておいてまで悼まなくてはならないのか、そこが飲み込めませんでした。
それでも穏やかさや救いを感じることができるというのは、天童新太の力ですよね。 (2009年01月09日 21時32分42秒)

Re:悼む人 天童荒太(01/08)  
YC* さん
私も通勤電車の中でこの本を読んでいるところです。
朝から思わず涙ぐんでしまう箇所もありますが、皆さんのコメントを拝見すると、読後感がそれほど悪くなさそうなので一安心です。

世相が世相なだけに、救いが全くないのは気が滅入りますものね。 (2009年01月09日 23時23分42秒)

mimimiさん  
一村雨  さん
包帯クラブの進化版ですね。
「死」についての思索の著者の到達点なんで
しょうね。 (2009年01月10日 05時05分12秒)

きのこさん  
一村雨  さん
そうなんです。静人の行為に対する疑問は
尽きないのです。本の中でも病気と説明して
納得してもらう場面がありますよね。
(2009年01月10日 05時07分52秒)

YC*さん  
一村雨  さん
人の死を扱った本は重いです。
巡子の様子を読みながら、
重松清の「その日の前に」を思い出して
いました。 (2009年01月10日 05時11分15秒)

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