極上生徒街- declinare-

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矩継 琴葉

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2007.10.01
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カテゴリ: 小説
誠氏ね!! スクイズの最終回を見ながらUP。


※一部過激な表現があります。ご自身の判断で読みください。



第1話 堕ちる闇 明ける未来
第2話 目覚め×サイン
第3話 接触
第4話 クロチェヴィーア





「お前は、信じるか……?」 


 珍しく北山が林に答えを求めた。
 林は一瞬と惑ったものの答える。


「可能性は上がりました」



 2人の目線の先に、鈍器のようなもので撲殺された女性の遺体が写っていた。
 鉄パイプ、あるいは金属状のモノで後頭部や全身を激しく殴打され、完全に陥没骨折しており、直接の死因は頭蓋骨を砕いて直接脳まで凶器が届いたためのものによる脳挫傷であった。死亡推定時刻は深夜の1時前後と見られる。


 現場となった場所は、須藤が逮捕された場所から200m北へ行った、同じく十字路になっている場所だ。似た風景が何メートルも続き、まるで無限回廊に迷い込んでしまった気分になる。

 以前にもここでは通り魔事件が幾度となく起こっている。理由は同じ風景が続くこともあるが、高い塀が何百メートルと続き、街灯設備の不備、と元々防犯という点で最悪の条件となっていた。加えて、道幅が狭く、車がすれ違えるのがやっとというほどで、犯罪以外の面でもここは危険な場所となっていた。



「これ……恨みというよりは、通り魔に近い感じがするわね」


 いくら仕事とは言え、死体を細かく見れる刑事はそう少なくない。死体を調べるのは医者で刑事の仕事ではないと言う者もいる。それに死体を見ていて気分が良い者はいない。
 だが川澄は傷口から服の乱れ方、全身と、表現は悪いが絵画を丁寧に見るかのように調べた。やはり、一人違う世界にいる感じがする。
 短く黙祷し、川澄は遺体に手を合わせ立ち上がった。



「恨みにしては、《遊びすぎている》。頭を狙ったのは一番最後だろう。まず足、スネではなく脹脛を殴打されていることから、後ろから迫ったことは間違いない。次に手だ。抵抗されないようにしたのだろうが、肘の骨が砕かれていた。次は顔だ。声を出させないように、威圧の意味で殴ったに違いない。まぁ、そこまでしなくとも近隣住民が悲鳴を聞いてないことから、襲われた時点で恐怖で声が出なかったのだろうな……。それから、犯人は強姦したようだ。女性を痛めつけてエクスタシーを感じる、変わった性癖の持ち主のようだ。そして殺したのは口止めの為と見て間違いないな」



 現場に来て5分と経ってない。しかし、その5分間の間に、全ての状況を読み取り、一気に推理してしまった。常々、川澄の凄さを身をもって実感していた林でも、毎回脱帽してしまう。雲の上の人という言葉はまさに川澄のものだと感じた。



「おい、これは連続殺人事件に関係あると思うか?」


 川澄は上司であるが、北山は敬語を使う気は無い。
 一方の川澄もそれを了承している。川澄が課長に昇進したときのことだ。年上の人に気を使われると逆に士気が落ちるという言葉を全員に伝えた。その時に出来た人間とはこうも違うのかと、林は感心していた。


「難しいわね。ただ、どの事件にも見られる共通点として《幼さ》が見れるわ。4件の転落死事件は、まるで実験していたかのように繰り返され、次の事件はまるで解剖するかのように殺していた。今回も徹底さに似た殺し方をしてる」





 ようやく林も話に加わる。


「確かに、強姦殺人の可能性もあるけど、強姦に幼さを感じたわ。なんと言うか、母性を求めていたようにも感じる。経験が少ないようにも感じるし、女性との交際経験自体ない人間かもしれないわね。体液も残っていたし、鑑識に調べてもらうわ」


 何故だか恥ずかしくなり、林は顔を赤らめてしまった。
 その様子を見て北山は川澄の後ろで笑っていた。そして、


「ばーか。お前のことじゃねぇよ」と付け加えた。






 林は完全に急騰湯沸し器状態。
 そんなやり取りでも、笑わないのが川澄である。
 一つ咳払いをして「ところで、信じるとかどうとか言っていたけどなんのこと?」



「それは、昨日逮捕したという男のことです」


「その男が、俺は予知できるんだ~天才なんだ~総理大臣になれるんだとか言っててな」


(そんなことまで言ってません)と軽く林が小突いたが、北山はその何倍もの力で鳩尾にやり返し、林は悶絶してしまった。


「予知? ふざけてるの?」


「あいつの頭がふざけてるのかもな。この事件が起こることを予知しやがった。これで、あいつが犯人ではないことも分かったし、とりあえずは無罪放免決定かもな。ま、野に放すのも良いし、いっそ利用でもしてみたらどうだ?」


 ゲハハハと下品に北山が笑う。


「……面白いわね、それ。あっち(アメリカ)じゃ、超能力捜査官てのもいるくらいだし。協力を願い出るのも手ね」


 北山は冗談で言ったつもりだったのだが、川澄は須藤を利用することを決めた。予想外の展開に、林は悶絶するのを忘れた。





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最終更新日  2007.10.02 00:42:50


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