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大仏次郎論壇賞の受賞作R1
<大仏次郎論壇賞の受賞作R1>
芥川賞と直木賞は1年に2度も発表されるので、つまり、新人作家が年に4名出現するわけで…
とうてい覚えきれないのです。と言うか、出版業界の商業主義が目立つのです。
いら立つ大使が、wikipediaで歴代の大仏次郎論壇賞を見てみると…
この賞はいい仕事をしているわけですね♪
暇な大使としては、大仏次郎論壇賞受賞作にしぼって借りることもいいかも♪
・排除と抵抗の郊外:森千香子
・大佛次郎論壇賞を受賞して 遠藤典子
・原子力損害賠償制度の研究
・大佛次郎論壇賞を受賞して 今野晴貴
・wikipedia大仏次郎論壇賞
R1:『排除と抵抗の郊外』を追記
<排除と抵抗の郊外:森千香子>
移民とテロといえば、世界が直面する喫緊の課題であるが、じっくり読んでみましょう。
12/19
『排除と抵抗の郊外 フランス〈移民〉集住地域の形成と変容』 森千香子氏
より
第16回大佛次郎論壇賞(朝日新聞社主催)は、一橋大学准教授(社会学)である森千香子さん(44)の『排除と抵抗の郊外 フランス〈移民〉集住地域の形成と変容』(東京大学出版会)に決まった。
パリ郊外の「移民」が集まる地域に入り込んでフィールドワークを敢行。若者からの聞き取りや歴史をたどり直す調査を通じて、フランス社会にひそむ人種差別と移民排除の問題を考察した。来年1月30日、東京・内幸町の帝国ホテルで、朝日賞、大佛次郎賞、朝日スポーツ賞とともに贈呈式がある。
■根底に人種差別「怒りを希望につなげたい」
米国ではドナルド・トランプ氏が大統領に選ばれ、英国では欧州連合からの離脱が選択される。相次ぐ衝撃の背景に共通して見えたのは、いわゆる「移民問題」だった。
移民と呼ばれる人々の存在がときに問題視され、差別や排除の力学が働き始めるのはなぜなのか。その解明に迫るために受賞作が採った手法は、移民(エスニック・マイノリティー)の家族の集住地域とされる現場での果敢なフィールドワークだった。
パリ北東部にあるセーヌ・サン・ドニ県。フランス国内でも貧しい県とされ、アフリカなど旧植民地出身の移民と子孫が集まる点も問題視されてきた。昨年11月にパリで起きた大規模テロ事件では犯行グループの拠点も置かれた。
「簡単に調査に入れるような場所ではない、特に女性は難しい、との忠告を何度も受けました。でも言われれば言われるほど行ってみたくなった。あまのじゃくなのです」と森さんはほほえむ。
本格的に調査を始めたのは1999年だった。どのような経緯をたどって「移民の集まる団地」が形成されたのか、そこに住む人の目にフランス社会はどう映っているのか。若者や行政関係者らへの聞き取りや調査を重ねた。
見えてきたのは、安価な労働力として欧州の域外から大量に動員された移民たちが、住宅政策や都市政策などで「以前からの国民」と平等な処遇を受けられず、条件の悪い郊外の団地に集住するよう方向付けられていく歴史だった。それは旧植民地出身者を「よそ者」扱いし続けた排除の歴史であり、根底には「人権宣言の国」にひそむ人種差別があった、と指摘する。
「移民たちは、彼ら自身に問題があるのだという視線を注がれていました。でも実際には、多数派による差別が問題を生みだしていた。問題は社会の側にあったのです」
若者のラップ音楽も拾い上げた。差別や貧困を告発する「抵抗」の文化表現だ。フランスは平等な社会だと教えられて育った若者たちが、自らを排除する社会の現実に憤り、平等を希求していた。
「郊外の現実に警鐘を鳴らす彼らの表現に耳を傾けていれば、もっと早く亀裂の深刻さに気づけたかもしれない」
フランスに初めて長期滞在したのは大学生のとき。朝日新聞社主催のスピーチ・コンテスト(仏語)で優勝し、パリで2カ月間の語学研修を受ける権利を得た。差別への関心は、移民の苦境を伝える林瑞枝著『フランスの異邦人』を読んだことで生まれた。
「危険だ」とされる地域で調査を進めることができた理由の一つは、現地で移民の子たちにボランティアで勉強を教えている女性が協力してくれたことだったという。自身も日本語や習字を教えるボランティアを重ねることで、住民の信頼を得ていった。
受賞作の執筆後、米国で新たなフィールドワークをしてきた。ニューヨーク・ブルックリンの「庶民的な黒人街」でグローバル資本による再開発が進む中、家賃が高騰し、住民から反対運動が起きていた。
「フランスにもアメリカにも、生活の安定や人間らしい生き方を求めて怒りを表す人たちがいた。そうした怒りをどうやって希望に接続していくのか。研究を通じてそれに役立てれば幸せですし、ほかには何も要りません」
いずれは日本の郊外での調査も進めたい、と話す。
外国の例を経由して日本社会を問い直すことが目標だ。(編集委員・塩倉裕)
*
森千香子:一橋大学准教授(社会学)1972年生まれ。フランス社会科学高等研究院博士課程修了。南山大学准教授などを経て現職。共著『移民の社会的統合と排除』、共編著『国境政策のパラドクス』など。
■「原因は仏社会」断言する姿勢、見事 酒井啓子・千葉大教授(中東研究)
パリやブリュッセルでの襲撃事件の頻発という時宜性、テーマの重要性に加えて、現地での調査の圧倒的な量と深さに、刊行当時から圧倒された。
都市郊外の問題を「移民の問題」とすることは、「『移動してきたこと』を焦点化するあまり、当事者が経験する困難の原因を当事者自身に探ってしまう」。その視点が問題だと看破し、「原因は、フランス社会に根を下ろす差別意識や排除の構造にもある」と断言する姿勢は、見事だ。
共和政の理念からしてエスニックな差別などあるはずがない、というフランスの理想が、移民が提起する現実からの乖離に目を瞑(つぶ)らせた。筆者のこの指摘は、今世界に蔓延する西欧近代理念の形骸化と剥き出しの差別にも当てはまる。日本の国際社会学を再活性化させる里程標となる作品だ。
<大佛次郎論壇賞を受賞して 遠藤典子>
12/24
大佛次郎論壇賞を受賞して 遠藤典子
より
原子力施設で破局的な事故が発生したとき、その巨額の損害賠償は誰がどのように負担すべきだろうか。今回受賞した『原子力損害賠償制度の研究』で描きたかったのは、日本の行政の裁量性の功罪である。
日本では半世紀以上もの間、原子力事業者が「無限責任」を負う一方、国の責任のあり方については「援助」とあいまいにされた原子力損害賠償制度が維持されてきた。原子力発電所において破局的事故は起こりえないという妄信から、検証が見送られてきたのである。そして、福島原発事故は起きた。
今回、関係省庁の幹部はそれぞれの政策的蓄積を生かし、わずか1ヶ月半あまりで原子力損害賠償法を補う支援機構制度を作り上げた。国の関与をあいまいにした法の不備を逆手にとって、機動的に緊急策をこしらえたとも言えよう。
本書はこの支援機構制度の効用を評価している。法律的整合性と経済的合理性をともに備え、かつ政治的・社会的リアリズムから遊離しないという制約の中から突破口を見いだし、有用な政策形成を行うという、本来期待されているところの行政機能が、未曽有の危機において発揮されたと考えるからである。
しかし、あくまでそれは緊急策としての評価に過ぎない。福島原発事故から3年9ヶ月が経過し、損害賠償、除染、廃炉の総費用が、当初の3兆~5兆円規模から15兆円をはるかに超える規模に拡大しかねず、支援機構制度の持続可能性に懸念が生じている。
突き詰めれば、破局的原発事故の損害賠償資金は、(1)事故を起こした原子力事業者、(2)その事業者から電力供給を受ける電気利用者(受益者負担)、(3)その他原子力事業者(相互扶助)、(4)規制・振興を司る国、のいずれかの負担の分配に帰結する。原子力事業者には債権者、株主、従業員といった利害関係者が存在し、国による公的資金の財源は税金である。
原子力損害賠償制度は、この負担の分配について、再度検討されるべき時期を迎えている。それはようやく再開された原子力政策議論の欠くことのできないパーツでもある。
米法学者のキャス・サンスティーンは著書のなかで、人々は破局的リスクに対して「過剰な反応」と「完全な無視」という正反対の反応を示すことを指摘している。そのどちらをも極力排除した、国民的議論を喚起していきたい。
この『原子力損害賠償制度の研究』という本を図書館で借りようと思うのです。
【原子力損害賠償制度の研究】
遠藤典子著、岩波書店、2013年刊
<「BOOK」データベースより>
半世紀前1961年に制定された「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」は、東京電力福島第一原子力発電所の破局的事故に対して無力だった。
本書は3.11以前の原子力損害賠償制度がどのように構築され、運用されてきたかをまず検証する。次いでその不備をどのように乗り越えて現行の損害賠償スキームが短時間に構築されたのか、そして東京電力はなぜ破綻せず「国有化」されたのかについて、政策担当者等への綿密な聞き取りに基づきその詳細を明らかにする。
公共政策・行政学における画期的な事例研究。
【目次】
なぜ政府は新立法を必要としたか/第1部 「原子力損害の賠償に関する法律」における国家の責任(原子力事業者の厳格責任と国家関与の曖昧/原賠法「不変」の構図/チッソ金融支援方式と支援機構スキームの共通性)/第2部 原子力損害賠償支援の政策学(東京電力破綻回避の真実/原子力損害賠償支援機構を設立した政府の意図/過酷事故の教訓と原賠法、支援機構法改正の論点)/第3部 賠償・除染・廃炉ー東京電力国有化の論理(預金保険制度の支援機構スキームへの転用/政府による支援機構スキームの実践/東京電力分割構想と電力自由化の整合性/原子力損害賠償制度の二層化の必然)
<読む前の大使寸評>
大仏次郎論壇賞の本でもあるし、図書館で借りようとは思うが・・・
かなり硬派なんで、歯がたつやろか。
<図書館予約:未>
rakuten
原子力損害賠償制度の研究
<大佛次郎論壇賞を受賞して 今野晴貴>
1/13
大佛次郎論壇賞を受賞して 今野晴貴
より
■政治の在り方に影響与えた
『ブラック企業』にはどんな意義があったのだろうか。
第一に、「ブラック企業」というインターネット上のスラング(悪口)に過ぎなかった言葉の広がりを、「社会問題」として提起したことだろう。「ブラック企業」とは、若者を正社員として採用しながら、次々に過重労働で使い潰し、鬱病・過労自殺・過労死に追い込むような企業を指している。この認識は、現在では厚生労働省にも共有され、対策も打ち出されているが、本書がはじめて提示した理解である。
そして、若者の「使い潰し」は鬱病の蔓延、医療費の増加、税収の減少、少子化をも招いている。私はたまたまひどい経営者がいるというような、「悲惨な物語」ではなく、事実の集積とその分析によって、個人の被害にとどまらない「社会問題」としてのブラック企業問題を明らかにしたかった。
<wikipedia大仏次郎論壇賞>
wikipedia
大仏次郎論壇賞
より
散文作品を対象とする大佛次郎賞の評論部門として2001年に新設された。
日本の政治・経済・社会・文化や国際関係などを扱った優秀な論考を顕彰することを目的にしている。
【受賞作品】(複数受賞の場合、私の判断で年度1冊としています)
・第1回(2001年度)
特別賞 - ジョン・ダワー 『敗北を抱きしめて』(岩波書店)
・第2回(2002年度)
池内恵 『現代アラブの社会思想 終末論とイスラーム主義』(講談社現代新書)
・第3回(2003年度)
小熊英二 『〈民主〉と〈愛国〉』(新曜社)
・第4回(2004年度)
瀧井一博 『文明史のなかの明治憲法 この国のかたちと西洋体験』(講談社)
・第5回(2005年度)
中島岳志 『中村屋のボース インド独立運動と近代日本のアジア主義』(白水社)
・第6回(2006年度)
岩下明裕 『北方領土問題』(中公新書)
・第7回(2007年度)
朴裕河『和解のために』(平凡社)
・第8回(2008年度)
湯浅誠『反貧困』(岩波書店)
・第9回(2009年度)
廣井良典『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書)
・第10回(2010年度)
竹中治堅『参議院とは何か』(中央公論新社)
・第11回(2011年度)
服部龍二『日中国交正常化--田中角栄、大平正芳、官僚たちの挑戦』(中公新書)
・第12回(2012年度)
大島堅一『原発のコスト エネルギー転換への視点』(岩波新書)
・第13回(2013年度)
今野晴貴『ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪』(文春新書)
・第14回(2014年度)
遠藤典子『原子力損害賠償制度の研究 東京電力福島原発事故からの考察』(岩波書店)
・第15回(2015年度)
井手英策『経済の時代の終焉』
・第16回(2016年度)
森千香子『排除と抵抗の郊外 フランス〈移民〉集住地域の形成と変容』(東京大学出版)
しかし、ま~
日本の文学賞
を覗いてみると、文学賞の数の多さに呆然とするのです(笑)
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