雪野、・・・すまん・・・許せよ
この手で 母上に復讐することはできない
、と・・・どうして証拠をにぎろうと、 どうして復讐など誓ったのか
と、嘆き苦しみ、耐えきれなくなった正人は、その怒りを庄司にぶつけて行きます。
正人「庄司、・・・ 何とか言ってくれ
・・・」
声を荒げて、庄司に救いを求めます。
庄司「正人様は考えるお方です」
正人「 なにぃ
」
庄司「苦しむお方です。・・・しかし、一旦 お心が決まったら
、 必ず実行されるお
方
です。・・・ 強い勇気をもって
・・・」
静かな口調でいう庄司の言葉に、勇気づけられたのでしょう。
正人「庄司、俺は 祐吾のような男になりたいぞ
。・・・今こそ、今こそ、あの男の
ように・・・」








正人はそこまでいって、廊下を渡って来る 雪野が目に入り
、話をやめます。正人の母時子が今の方へ正人に来てほしいとのことで雪野が迎えに来たというのです。庄司は「申し上げてもお分かりになるかどうか」といい、正人に「お聞きになりましたか」というと、正人は 無言で首を縦に振ります
。


庄司「では、おいでになりますか、・・・母上様のお居間へ」
正人「・・・母上は俺など、 生んでくれなかった方が
よかった」
その言葉に雪野が驚きます。
正人「人間はみんな悪い、 悪者ばかりだなあ
」
庄司が庭先に様子を窺っていた者を追って行きます。
正人は、雪野に、お前も生まれて来ない方がよかった、といい、立ち上がり雪野の方に、雪野も正人の前に、 気の触れた態度は崩さず
、「 寺へ行こうか
」と話しかけると、
正人「なっ、 俺と一緒に寺へ行こう
」
雪野「正人様、ほんとに 気が狂っておいでなの
ですか」



そのとき、正人の 心が乱れる
のです。
雪野は、正人が明国へお発ちになる うれしい誓いの言葉と一緒に頂いた品
でございます、お忘れではございますまい。「正人さま、 この鏡の前でお聞かせください
。 本当のお心を
・・・正人様」







正人の背にもたれかかる雪野に、
正人「 祝言をするなら
、相手は 阿保がいいぞ
。世の中に 馬鹿ほど幸せな者はいな
い
」
私だけには、 そのような言葉を
・・・と悲しい顔で正人から離れる雪野に、追い打ちをかけるように、




正人「女は、 紅や白粉を塗りまくる
ぞ、天から授かった顔を、 もう一つの顔にこし
らえる
ぞ。・・・ 化け物だ
なあ」
雪野は、「 私にだけは
どうか真実のお言葉を・・・」




そこへ戻って来た庄司に、正人 が
気が狂って
いるとは
・・・思えないという雪野、すると、正人が急に大笑いをしはじめます。「このとおり、 これが正気の人の笑い声か
」と、正人を援護します。
正人「女は嫌いだ。女は汚い、娘も汚い、妻も汚い、母も汚い、女は嫌いだ・・・
お前も嫌いだ。・・・出てけ」


雪野が出て行ったあと、奥の間の正人は、・・・辛かったでしょう・・・、
正人「 雪野
、・・・ すまん
・・・ 許せよ
・・・」



続きます
。
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