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新吾は自ら父上に会いに行くぞ御公儀の命により、新吾様を召し捕りに参ったものだという山村は、新吾を匿った罪で通朝も召し捕り連れて行こうとしたとき、「控えろ」新吾は落ち着きはらって「葵新吾はここにいるぞ」と名乗り出ます。 新吾「何の用だ」山村「将軍家の命により、あなたを召し捕りに参ったのです」新吾「なに、父上が・・・」新吾「父上が、新吾を召し捕れとおっしゃったのか」 「上意」と山村はいうと同時に新吾にかかっていくと、新吾は振り切り「寄るな」と捕吏を振り払い新吾「汝らに召捕られずとも、新吾は自ら父上に会いに行くぞ」 新吾「将軍家に、話をするのだ」 新吾「邪魔だてすると叩き斬るぞ」 (約50秒近くの立ち廻りになります)そういうと、新吾は剣を抜き、次から次に襲い掛かってくる捕吏を払いながら道まで出てきたとき、「お待ち下さい」と行く手を塞がれます。 続きます。🎥『新吾二十番勝負』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。新吾二十番勝負・・・(1)新吾二十番勝負・・・(2)新吾二十番勝負・・・(3)新吾二十番勝負・・・(4)新吾二十番勝負・・・(5)新吾二十番勝負・・・(6)新吾二十番勝負・・・(7)新吾二十番勝負・・・(8)新吾二十番勝負・・・(9)新吾二十番勝負・・・(10)新吾二十番勝負・・・(11)新吾二十番勝負・・・(12)新吾二十番勝負・・・(13)新吾二十番勝負・・・(14)この記事の下のコマーシャルの下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々下の方までスクロールしてみてくださいね。
2025年11月14日
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将軍家へ対面を申し込むのだ中院通朝邸の庭の池の傍に立っている新吾と由紀姫の姿が水の波紋に揺れています。新吾に話をする由紀姫の真剣な表情。由紀姫「上様、京においでになるのですよ。御対面するお気持ちはありませぬか」新吾 「今さら何を言う」由紀姫「いいえ、実の親子がご対面もなさらずにおいでになることのほうが、よほ どおかしいのです」 由紀姫「新吾様は、ご自分の気持ちを偽っておいでです。剣のため、剣の道を歩むため、そんなことで親子の絆は断ちきれません、もし断ち切れたとしても、それは人間ではありません」由紀姫の言葉は、新吾には痛烈に感じました。 今まで激しい感情で話して来た由紀姫は由紀姫「御対面なさるなら、私がお取りなし致しましょう」新吾 「あなたが」由紀姫「はい」 由紀姫がきっぱり新吾に答えたとき、そこに駆けこんで来た甲賀新八郎の促しに走り寄ると「どうでした」と聞くと、新八郎が「大変なことになりました」と言ったのです。新八郎「新吾様が御所の塀を修築なさったことがわかり、幕府で大問題になっているのです。朝廷への寄進は御公儀のご法度、西丸派の方々はここぞとばかり上様に迫り、金子を御用意なされたお鯉の方様は責めをとって御蟄居なされた由、それに御前様も閉門の憂き目に」由紀姫「父上も」新吾 「ほんとうか」新八郎が「はい」と返事をします。 由紀姫が新吾に、「この分では、新吾様にお咎めがくるわ、必定です」 一瞬新吾は考えて、新吾「咎めが来る前に私が赴こう」その言葉に、由紀姫も新八郎も驚きます。新吾「私が父上に会って話をする」 新八郎が止めると、新吾「かまわぬ、禁裏御所の荒れ果てた塀を見るにしのびず、寄進をしたことについて、母上は蟄居させられる、讃岐殿は閉門になる、馬鹿馬鹿しいかぎりだ。私は父上に会って、こんな馬鹿げた法度はやめていただく」由紀姫と新八郎は、六平太が井伊様の使者とご一緒を待ってからと、引き止めますが、新吾は「ほっといてくれ」と、そして、新吾「お前達は、私を対面させようと努力したのではないか。今度は自分から行き、いや、将軍家へ対面を申し込むのだ」 止めるのも聞かず振り切って屋敷を出て行こうとした新吾の足が止まります。捕吏が屋敷の中にどっと入って来たのです。 続きます。🎥『新吾二十番勝負』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。新吾二十番勝負・・・(1)新吾二十番勝負・・・(2)新吾二十番勝負・・・(3)新吾二十番勝負・・・(4)新吾二十番勝負・・・(5)新吾二十番勝負・・・(6)新吾二十番勝負・・・(7)新吾二十番勝負・・・(8)新吾二十番勝負・・・(9)新吾二十番勝負・・・(10)新吾二十番勝負・・・(11)新吾二十番勝負・・・(12)新吾二十番勝負・・・(13)この記事の下のコマーシャルの下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々下の方までスクロールしてみてくださいね。
2025年10月20日
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新吾を召し捕れ新吾は、京都の中院通朝の屋敷に来ていました。「では、何故あなたを殺そうとしたのです」と新吾が通朝に尋ねますと・・・御所の修築のことで、所司代の態度があまり冷たいので、腹に据えかね談じこみましたが、それが気にくわなかったのでしょう・・・と通朝がいったことに、「たったそれくらいのことで」と新吾が言うと、通朝「そうです、それが徳川幕府の政策なのです」新吾「徳川幕府?」…天皇は尊んで扶持せず、荒廃した御所の塀を修築する財力すら持たされていない・・・と通朝が話すと、新吾は即答で、新吾「分かりました、塀の修築は、私がさせていただきましょう」これには通朝もびっくりして「あなたが?」と言います。 新吾「不審に思われるかもしれぬが、私も一万石の扶持を持っている」と言うのを聞いて、またまた通朝がどいうことだと驚いた様子を見せると、六平太が「御安心なさいませ。この御方は葵新吾様でいらっしゃいます」と口添えします。新吾「父になり代わり、寄進させていただきます」 新吾は母上に頼んで五千両の金子を一時立替えてもらって送ってほしいことの内容の手紙をお縫に出します。お鯉の方は、手紙に母上と書いてあったのがうれしくて、金子の使い道は分からないまま手配をお縫に命じます。新吾は、庭に寝ころび、空を見つめ恋しい母上お鯉の方のことを思っていました。新吾「やっぱり母上は、夢で思っているような、お人かもしれないなあ・・・母 上・・・母上・・・(思いが込み上げ、大きな声で)母上」と呼び起上ります。 そこへ通朝が、新吾からの五千両で塀の修築の手続きを取り、帝も大へん喜んでいたことを伝えに来ます。「それは結構でした」と新吾も喜びを表します。通朝が気がかりなことがあると・・・金利寄進は徳川家の法度、新吾が将軍の御子とはいえ・・・そこまでいったとき、新吾は「ご心配にはおよびません。万一のときは、私が責任をとります」 そのころ、由紀姫と新八郎も京に入り、六平太とばったり会うのでした。通朝の屋敷にいる若い侍は葵新吾だという報告を聞いた牧野河内守は、朝廷への寄進は天下のご法度、相手が新吾様とあれば、みだりに手出しもできない、しかし「うまくいけば、備中殿と相図り、新吾派の覆滅をきすることもできる」と考え、将軍家ご上洛まではそっとしておくよう、山村与八郎に命じます。上洛の途中、宿舎の二条城に入った吉宗に、河内守が御所の塀の修復の件を報告します。朝廷への寄進はご法度、厳重に調べて処罰するように吉宗が、備中は、取調べたところ、葵新吾様であることを報告します。「新吾が」と動揺する吉宗を、備中守と河内守はチラッと視線を合わせます。その大金は江戸から為替で、と聞いて、新吾の扶持を管理するのは酒井讃岐と吉宗がいうと、河内守が「意外な御方から・・・お鯉の方様から」と聞いて、吉宗の顔色が変わりました。そして、十分取り調べた上で断をくだすといい席を立っていきます。そのことは、大奥のお鯉の方にも讃岐守から伝えられました。お鯉の方が送った金子を新吾が朝廷へ寄進した、新吾へのお咎めは必定と聞いて、お鯉の方は「お金を送ったのは私です、私が責めをおいます」と讃岐守が「新吾様の扶持を管理するのは拙者です」と言い、私におまかせくださいと。すると、お鯉の方は讃岐守の様子からお鯉「讃岐どの、お腹をめされるおつもりですね」讃岐「新吾様のことをこころよからず思うやからは、このときとばかり上様を責め立てましょう。拙者の腹一つで済むことならば」お縫が讃岐守に申し出ます。お縫は、今回の手配はすべて自分がやったこと、新吾様のために死ねるのなら本望だ、といい控の間で逆手に持った懐剣を讃岐守が叩きおとし、やって来たお鯉の方の言葉に、お縫は泣き伏します。参内の支度の間で、河内「お鯉の方様の蟄居、酒井讃岐の閉門など、一応名目はたちましたなれど、肝 心の新吾様が」すると、吉宗が備中守と河内守に向かっていいます。吉宗「そち達は名目さえつけばよいのか」二人は顔をあげ吉宗を見ます。吉宗「お鯉や酒井は朝廷の寄進とは何の関係もない。新吾の罪を軽からしめようと 思えばこそ、そち達の名目を立てるため、お鯉は自ら蟄居を申し出たのじゃ ぞ。余も今までは城中の不和を避けるため、つとめて新吾の話には触れまい と努力をしてきた。子を思う親の情に変りはない。余の苦衷わかるか」参内の時刻が来たとの知らせを受た吉宗は、部屋を出る前に立ち止まり河内守に、新吾の居所はわかっているのか、と聞きます。河内守は、中院通朝卿の屋敷にいることを伝えると、吉宗「将軍として命ずる。朝廷への寄進は天下の法度、示しをつけぬ訳にはいくま い。新吾を召し捕れ」 続きます。🎥『新吾二十番勝負』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。新吾二十番勝負・・・(1)新吾二十番勝負・・・(2)新吾二十番勝負・・・(3)新吾二十番勝負・・・(4)新吾二十番勝負・・・(5)新吾二十番勝負・・・(6)新吾二十番勝負・・・(7)新吾二十番勝負・・・(8)新吾二十番勝負・・・(9)新吾二十番勝負・・・(10)新吾二十番勝負・・・(11)新吾二十番勝負・・・(12)この記事の下のコマーシャルの下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々下の方までスクロールしてみてくださいね。
2025年10月06日
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私は剣の道を行きます新吾は四明岳にある梅井多門の墓に報告をしています。・・・・・先生、私は先生のお志をついて、宿敵武田一真を倒し、日本一の称を得ました。・・・だが、その自信も納富一無斎先生によって打ち砕かれました。白根弥次郎の邪険にも不覚をとりました。・・・でも、私は、多門先生と庄三郎先生に育てられた剣の子です。どんなに険しくとも、苦しくとも、私は剣の道を行きます。先生、どうか見守っていてください」 合掌する新吾は背後に足音が近づくのに気づきます。その足音は、夏目六平太でした。新吾が「六平太」と言うと、六平太は新吾に今度こそ本当の門弟にして欲しい、井伊家の家臣でいるより新吾の家来でいる方が楽しいのだ、という六平太に、「困った奴だ」という新吾。 六平太が新吾の腕の傷に気がつき、「もしや、大賀に」と聞く六平太に新吾は「大賀陣蔵は死んだ。白根弥次郎に不覚をとったのだ」と言います。 その時、六平太の耳が何かを察知しました。白根弥次郎が中院通朝の輿を襲っているところに、死んだはずの新吾が立塞がったので、弥次郎はびっくり、新吾は、弥次郎の師納富一無斎先生に助けられたのだといい、 新吾「また、よからぬことを企んでいるようだな」弥次郎は、邪魔だてすると貴様も一緒に、といってくる弥次郎に新吾「弥次郎、やめろ」と言うと、弥次郎は「やかましい」と剣を振り上げてきます。しばらく二人はじっと相手の出方をみていて動かないでいましたが、弥次郎は新吾に「今日は見逃してやる、改めてけりをつけるぞ」と言い捨て去って行きます。 助けてくれたお礼にやってきた中院通朝に新吾が聞きます。新吾「相手の男を御存知ですか」道朝「恐らく、金で買われた男でしょう」新吾「金で買われた?・・・」 山村与八郎という男から金を受けとっていたところを見ていた一無斎は、弥次郎を杖で何回も叩くと、一緒に山へ帰るようにいいますが、弥次郎は一生懸命励んできたが報われるものは何がある、日本一の葵新吾に打勝ったのだから、この腕て身を立てたい、山を降り人並みの楽しみを味わいたい、というのです。一無斎は、剣は心だ、というと、心はなくても剣は強くなる、強い者が勝ち弱い者が負ける、そういってはむかう弥次郎が師に剣を振り上げ負けて斬られる覚悟したが、斬ることが出来ない一無斎は、弥次郎との子弟の縁を切るのです。その様子を見ていた山村与八郎は、京都所司代牧野河内守のところに、中院道朝を襲ったが邪魔が入り達成できなかったことの報告に行っていました。河内守は「裏の方からいけなければ、表からせめる手もある」というのです。 続きます。🎥『新吾二十番勝負』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。新吾二十番勝負・・・(1)新吾二十番勝負・・・(2)新吾二十番勝負・・・(3)新吾二十番勝負・・・(4)新吾二十番勝負・・・(5)新吾二十番勝負・・・(6)新吾二十番勝負・・・(7)新吾二十番勝負・・・(8)新吾二十番勝負・・・(9)新吾二十番勝負・・・(10)新吾二十番勝負・・・(11)この記事の下のコマーシャルの下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々下の方までスクロールしてみてくださいね。
2025年09月17日
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むやみに剣を抜かれるのは、よろしくない崖下に落ち気を失っていた新吾が目をあけると納富一無斎の顔がそこにありました。「あなたは・・・」と言い新吾が起き上がろうとするのを、「傷は浅いが動かぬ方がよい」と一無斎が言います。 新吾の「どうして私を」の問いに、一無斎は、崖の下にあの男の死骸の傍に気を失っているところに通り合わせた、というのです。あの男とは大賀陣蔵でした。「傷口から察すると、相手は私の弟子の白根弥次郎」と言うのを聞いて、新吾が聞きます。新吾 「では、あなたは、納富一無斎先生」一無斎「ご存じか」 新吾は、真崎先生から、今の世に権勢といわれるのは納富一無斎唯一人だと、よく聞かされていたと。新吾 「でも、納富先生は、ずっと以前に、山の中にお入りになったのでは」一無斎「世を捨て山にこもった身が弟子に裏切られ、再びこの世に老醜をさら す。・・・己の蒔いた種をかりとるために山を降りねばならんとは、 ・・・業の深いことです」といって立ち上がり「では、おだいじに」と言い小屋を出て行く一無斎に、新吾が「納富先生」と声をかけます。新吾はお願いするのです。新吾「何卒、一手御指南ください」「体にさわるぞ」と一無斎がいうと、新吾「いえ、かまいません」 一無斎「あなたは日本一の剣士、我らごとき老いぼれの及ぶところではない」と言い去りかける一無斎めがけ、「御免」と抜打ちに斬りつけると、一無斎の姿は目の前になく、振り返った新吾の前に現れると、 新吾の振り上げた剣をおさえる一無斎の杖が重く、新吾はどうすることも出来ないのです。 しばらく新吾はどうすることも出来ない苦痛を浴びるのです。それは新吾の剣士としての自信を根本から崩していくほどの凄まじい一無斎の剣の極意でした。一無斎はそんな新吾に、「心正しく、精進おこたわざれば、天下無敵の剣、・・・自愛され」そして 一無斎「むやみに剣を抜かれるのは、よろしくない」そう言いい杖をおろし去って行く一無斎の後姿を、呆然と見ているだけの新吾でした。 そして新吾は一無斎の言葉を噛みしめ山に登っていきます。 「情けない、これが自源流代将か。天下第一の剣か・・・」新吾は自分自身に投げかけるのです。 続きます。🎥『新吾二十番勝負』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。新吾二十番勝負・・・(1)新吾二十番勝負・・・(2)新吾二十番勝負・・・(3)新吾二十番勝負・・・(4)新吾二十番勝負・・・(5)新吾二十番勝負・・・(6)新吾二十番勝負・・・(7)新吾二十番勝負・・・(8)新吾二十番勝負・・・(9)新吾二十番勝負・・・(10)この記事の下のコマーシャルの下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々下の方までスクロールしてみてくださいね。
2025年09月04日
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剣の試合に、損得はない酒井讃岐守の命を受け、由紀姫が彦根にやって来た目的は・・・そのことを思い、将軍家上洛の日までは彦根にいようと決心をしたはずの新吾でしたが、翌朝新吾の姿はなく、置手紙がありました。今の自分は、将軍の子の煩わしさから逃れたい気持ちでいっぱい、愛馬とも別れ一人で行く、願わくばあとを追わないでほしい、とありました。一人旅立った新吾。あとをつけている大賀陣蔵には気づかないのでした。山中辻堂があるところまで来たとき、雷が鳴り一雨来そうになってきたので、辻堂で雨を避けようとしたとき、辻堂の中から現れた白根弥次郎に、新吾は驚きます。 弥次郎は、こんなところで日本一に会えるのは全くの奇遇だ、といい近づいてきました。が、新吾が相手にせず黙ってその場を去ろうとしたとき、弥次郎が新吾に「待て」と言います。 弥次郎「また逃げるのか。俺のような名もない剣士では、損とみたか」新吾 「剣の試合に、損得はない」弥次郎「では、相手をするか」新吾 「損得で手合わせするお人とは、立ち合いたくないのだ」と言った新吾の高慢ちきな面の皮をひんむいてやる、といい剣を抜きます。弥次郎「弱いものが負け、強いものが勝つ。俺の剣に理屈はない。強い者勝だ」新吾もゆっくりと剣を抜き身構えます。 弥次郎が斬り込んでいきます。新吾も容赦はしません。激しい雷鳴と凄まじい稲光のなか、二人の壮絶な戦いが広げられます。新吾が弥次郎の剣をはじき返し、たじろぐ弥次郎に一刀をあびせようとしたとき、木の上から狙っていた大賀陣蔵の手裏剣が新吾の腕に突き刺さります。手裏剣の飛んで来た方を見て、新吾は「大賀陣蔵と呟きます。 陣蔵に邪魔され、新吾が弥次郎に斬りたてられて、足を滑らせ崖下に落ちてしまいます。 「日本一の葵新吾を打倒した、俺が日本一だ」という弥次郎に、陣蔵が「俺のおかげでな」と姿を見せます。「俺が投げた手裏剣に気がつかなかったのか、俺がいなきゃお主の命はないところだ」と言った陣蔵に、それでは礼をいわなくちゃといい、弥次郎は刀を鞘におさめると見せて、陣蔵に斬りかかります。陣蔵が投げた手裏剣が弥次郎の目をめがけます。刺さったように見せた弥次郎に油断した陣蔵は逃げるところで斬られ崖の下に落ちました。 続きます。🎥『新吾二十番勝負』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。新吾二十番勝負・・・(1)新吾二十番勝負・・・(2)新吾二十番勝負・・・(3)新吾二十番勝負・・・(4)新吾二十番勝負・・・(5)新吾二十番勝負・・・(6)新吾二十番勝負・・・(7)新吾二十番勝負・・・(8)新吾二十番勝負・・・(9)この記事の下のコマーシャルの下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々下の方までスクロールしてみてくださいね。
2025年08月14日
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・・「多加女」・・「多加と言ってくださいましたね」新吾の前に跪くと、清七は「お役者あがりの清七とは仮の名、誠は酒井讃岐守の家臣、甲賀新八郎と申すもので」と名乗ります。新吾 「讃岐殿の家臣か」新八郎「はい、主人讃岐の命を受け、新吾様を狙う大賀陣蔵の邪魔をしておったの です」新吾 「そうだったのか」そのとき、廊下を歩いてくる由紀姫の姿が新八郎の目に入ります。由紀姫が新八郎に「ご苦労様でした」と言うと、新八郎は大賀陣蔵を打ちもらしたことを告げます。由紀姫は庭にいる新吾に気づくと、「新吾様」と走りよります。 新吾 「由紀姫殿」由紀姫は、恥ずかしそうに由紀姫「あなた様に、お逢いするために参りました」新吾 「わたしに」由紀姫「はい」 お浪という娘の案内で、二人は奥の部屋に案内されます。(由紀姫は、案内してくれたお浪がまだ廊下にいることを知っていて)、由紀姫は新吾に深くお辞儀をして、父讃岐守の命で来たことを伝え、由紀姫「何卒、当分の間、彦根に御滞在くださいますように」(お浪が片方の障子を閉めました)新吾 「何故です」新吾には、由紀姫のいうことに合点がいきません。 新吾「大賀陣蔵ごときを恐れて、彦根に匿われていることは、私の本意ではない。 由紀姫殿、あなたは私の気性をよくご存じのはずだ」(このとき、片方開いていた障子が閉められます)かしこまった挨拶を交わしていたのですが、由紀姫は障子が閉まり、お浪が行ったことを確認すると、急に態度を変え、媚びるような笑みを浮かべたと思ったら、新吾の顔をしっかりと見て、 由紀姫「由紀姫ではございません。多加とお呼びくださいませ」そういわれて、新吾は少し戸惑いを見せます。新吾 「お別れしたときに、申し上げたはずだ。・・・貴方が酒井家の姫君として現 われたとき、私の胸の中に生きて来た多加女の姿は消えてしまった」 新吾のその言葉に由紀姫が反論します・・・由紀姫「新吾様、それはあまりに勝手なお言葉です。・・・あなた様こそ、我儘なお方だと、お恨みに存じます」 新吾 「私が、勝手な、我儘な人間だと」 由紀姫「はい」 由紀姫「自分勝手な夢を描き、自分勝手に夢を壊し、女ごころなど察しようともな さらず、私の心を奪っておきながら、・・・あなたは、ひどいお方、憎いお 方です。・・・でも、わたしは新吾様が好き、新吾様が好きです」そういい身もだえしている由紀姫に言葉をかけることが出来ずにいる新吾です。 新吾だって由紀姫のことは好きなはず。恋い焦がれる苦しさに身悶えしている由紀姫が「新吾様」と言ってきたとき、新吾にもこらえていた気持ちの変化が見えました。 その瞬間、由紀姫は自分を抑制することがでず、新吾の胸に身を投げ出していきます。新吾 「姫」由紀姫「姫ではありません。多加です」 多加だといわれては、さすがに、新吾の気持ちも抑えきれなくなっていました。新吾 「多加女」由紀姫は、そう言った新吾の顔をじっと見つめにっこりして、由紀姫「多加と、・・・多加と言ってくださいましたね」 二人は無言で、お互いじっと見つめ合います。 新吾が由紀姫を抱き寄せようとすると、由紀姫はハッとしたように身を縮めますが、新吾はも一度強く抱いていきます。 そのとき、誰かが部屋の方へやってくる足音が聞こえ、慌てて二人は離れます。 お浪がお茶を持って来たのです。二人の間に気まずい空気が少しの間流れます。戸惑いを隠し新吾は、お浪を意識して由紀姫に声をかけます。新吾 「あなたも旅疲れのはず、今夜はおやすみなさい」由紀姫「いいえ、わたくしは・・・」新吾 「でも、今夜はもう遅い。・・・明日ゆっくりお話を聞こう」新吾はそう言い、足早に部屋を出て行きました。 あなたが邪魔をしなければ・・・と、由紀姫はお浪を睨みつけます。二人で過ごせるはずだった夜は・・・。新吾も由紀姫も床に入ってもなかなか眠れない様子です。 続きます・🎥『新吾二十番勝負』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。新吾二十番勝負・・・(1)新吾二十番勝負・・・(2)新吾二十番勝負・・・(3)新吾二十番勝負・・・(4)新吾二十番勝負・・・(5)新吾二十番勝負・・・(6)新吾二十番勝負・・・(7)新吾二十番勝負・・・(8)この記事の下のコマーシャルの下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々下の方までスクロールしてみてくださいね。
2025年07月25日
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刺客?あの清七と名乗る男がそうではないか酒井讃岐守は、新吾を父子対面の日まで彦根に引き止めておくため、新吾のあとを由紀姫に追わしたのです。その由紀姫は町人の娘多加になり、彦根に向かっていました。水面を見つめていると、「多加女、・・・貴方は普通の女ではない。何かすぐれたものを持っている。私は多加女が好きだ。・・・今まで逢ったどの女の人より好きだ」と恋い焦がれる新吾が現れます。何としても引き止める、彦根で上様と御対面していただくのです、と強い決心をするのです。 新吾は彦根城に着いていました。井伊直惟と家老夏目外記とが話をしていて、六平太が夏目の甥の夏目六平太と告げられます。夏目六平太が新吾に挨拶をします。六平太「お許しくださいませ。なにぶん主命なれば」 井伊直惟が「私が命じたのです」と言い直惟 「実は、酒井讃岐守様から、あなたの身辺お守りするよう頼まれたのです」新吾 「讃岐殿から」新吾の評判を恐れた西丸の太田備中守が秘かに刺客を送っている、というと、新吾は「刺客?」と・・・ 新吾は六平太に聞きます。新吾「白根弥次郎という男では」六平太「いいえ、伊賀流の達人、大賀陣蔵とか」新吾「伊賀流の忍者」もしかして、あの清七と名乗る男がそうではないか、新吾の中で疑惑が深まっていったのです。 その清七は、薬売りの姿をした大賀陣蔵が彦根に入ったのを見て、新吾の近辺に来ていることを察します。ある夜、寝静まった頃、清七が部屋から出て動きます。新吾はそれを察知します。忍びの支度をした清七が外の様子をうかがいながら動き廻るのを新吾が見ていました。 清七が「あっ、新吾様」と言うと、新吾はやはり刺客であったかと思い、新吾「とうとう化けの皮がはがれたな。・・・わしをつけ狙う忍者とは、お前のこ とだったのか」 違うという清七の言葉を新吾は受け入れません。新吾 「黙れ。伊賀流の大賀陣蔵とは、汝のことであろうが」新吾に何かいおうとした清七が、屋根の方に目をやるや「あっ危ない」と叫び、新吾も屋根の方に視線を走らせます。 暗闇につつまれた中、新吾目掛け手裏剣が次から次へ飛んできます。 その隙に屋根にあがり、大賀陣蔵であろう黒装束と闘っている清七を見守っている新吾、そこに六平太が大勢の者を連れやって来ます。陣蔵は引きあげようと下に飛び降りた時、新吾が振り下ろした一刀に傷つきますが、素早くその場を逃げて行きます。 賊を追おうとする清吉、六平太に、新吾は「追いかけても無駄だ。・・・到底お前達でも追いつくまい」といいます。かぶり物をとった清七に向い、「貴様も仲間か」という六平太に、新吾が「違う」と、新吾「清七のおかげで、わしは助かったのだ」 清七「何卒、お許しください」清七は、新吾に身分を明かすことになります。 続きます。🎥『新吾二十番勝負』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。新吾二十番勝負・・・(1)新吾二十番勝負・・・(2)新吾二十番勝負・・・(3)新吾二十番勝負・・・(4)新吾二十番勝負・・・(5)新吾二十番勝負・・・(6)新吾二十番勝負・・・(7)この記事の下のコマーシャルの下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々下の方までスクロールしてみてくださいね。
2025年07月14日
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しあわせは、金では買えぬ馬に乗った新吾、うしろを六平太そしてお供に加わった清七が付いて、田園風景の中を歩いています。新吾が清七に声をかけます。新吾「清七とかいったな」清七は、お役者あがりのけちな野郎だと新吾の傍に走り寄りいいますと、新吾「お前の芸当は、女に化けることと、掏り取るだけか」清七が「へっ」と返事をすると、新吾「武士にも化けられそうだな」新吾は正体を見破っていたようです。清七の表情が変わり黙ってしまったので、新吾は「あはははは」と笑い、「まあいいい」と言って路傍に目がいき、馬の足を止めます。 おにぎりを分けあって食べている巡礼姿の親子三人連れに、新吾はくぎ付けになり、親子睦まじい姿に笑みを浮かべ、そして自分自身の悲しさを思ったのでしょう。六平太と清七も新吾の気持ちを分かったのでしょう。 新吾「親子に金子を恵んでやれ」と、突如六平太にいいます。六平太が「はっ、はい」と言い、財布から小銭を出そうとしているのを見て、新吾「小判をやれ」と言われ、「小判」と六平太はびっくり。新吾が親子の前を通り過ぎた後に、小判を渡しに、あっけにとられた夫婦の前に小判を投げて新吾のところに行くと、六平太はいくらなんでも小判とは・・・道中はと不平を新吾にいっていくと、清七が六平太にいいます。金は使い方が肝心、あの貧しい親子にとっては、あの金がどれだけありがたいか、といい、「世の中には可哀想な人間がずい分いるもんでしょうね」と新吾に向かって言うと、新吾「だが、あの子は可哀想ではない」六平太と清七は思わず新吾の顔を見ます。新吾「金はなくとも、両親と一緒に、・・・両親の愛情の中に育つ子は、しあわせ だ」新吾のことを思うと六平太と清七も辛くなります。新吾「しあわせは、金では買えぬ」 新吾が彦根に向かったという知らせは、酒井讃岐守から吉宗に伝えられます。心配しているお鯉の方からの言いつけでお縫が讃岐守に聞きにいくと、上様は征夷大将軍として天皇に参賀するため京へ向かわれる。その際必ず、彦根に立寄られる。そこで父子対面の機会が必ずある。その日まで彦根に新吾を引き止めておく手段はうってあるといいます。 続きます。🎥『新吾二十番勝負』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。新吾二十番勝負・・・(1)新吾二十番勝負・・・(2)新吾二十番勝負・・・(3)新吾二十番勝負・・・(4)新吾二十番勝負・・・(5)新吾二十番勝負・・・(6)この記事の下のコマーシャルの下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々下の方までスクロールしてみてくださいね。
2025年06月26日
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彦根までは参りましょう澄みきった青空に毛槍が舞い、井伊直惟の行列が街道を行きます。夏目外記が井伊直惟に呼ばれ行列を止めます。直惟が夏目に「新吾様は」と聞くと、「行列と一緒では窮屈でかなわんと仰いまして」と答えると、「大丈夫かな、逃げられたのではあるまいな」と言う直惟に、「はい、ご心配にはおよびません。六平太が付いております」と夏目が答えました。行列から離れた新吾は六平太の姿が茶店にありました。新吾 「では、このへんで逃げ出すか」と新吾が言ってきたので、「それはいけませんよ」と六平太、「いったん井伊様とお約束なされたことを」と言うと、新吾 「いや、わしは四明嶽の多門先生に詣で、秩父の老先生にもご報告せねばな らん」六平太「でも、彦根は四明雅嶽の途中ですよ」新吾 「六平太、お前はさかんに彦根行きを勧めるが、誰かに頼まれたな」六平太は「いいえ」ととぼけますが、新吾はお見通しです。 新吾 「直惟公の頼みというのは、恐らく父上との仲を取持とうというのであろ う」 六平太は、約束通り彦根までは参りましょう、と。六平太「井伊様の御頼みが何であれ、先生がおいやなればそのときお断りになれ ば」これには、新吾もまいった様子、新吾 「お前がその気では、逃げ出すわけにもいかんな」 諦め新吾が馬鞭を置いたとき、「ごめん下さいまし」と女が声をかけてきます。 女は、彦根までご一緒させていただけないかといってきましたので、新吾が「お一人か」とその女に聞くと「はい」と答えると「あら」と言い六平太に何やらいいながらぶつかっていきます。新吾はその女が声をかけてきたときから誰であるか気がついていたようです。 六平太はその女に興味を持ったようで、「女の一人旅は大へんでしょう。うううん、よろしい・・・」と女に言い、「でしょうな」と新吾の顔色を見ます。その新吾は呆れて笑いを浮かべるとお茶を飲みながら黙って見ています。 六平太は「ところでだ、あなた・・・あなたどっかで」と言いかけ女の顔を見て、六平太「拙者の顔をご存じないか」女は「いいえ」と答え、新吾はおかしくてしかたのない様子で六平太を見ています。 六平太「確かに、どっかで」と思い出せずにいる六平太に、新吾 「思い出せぬか」と聞く新吾に六平太「先生は、ご存じですか」新吾 「うん」そう言い鳥追笠から見える女の顔を見ると、女は顔を伏せます。 新吾 「まだ分らんのか」のぞき込むようにして女を見ますが、分らない様子の六平太に、新吾 「吉原の宿の」やっと分り「あっ、貴様」と六平太が気がつき、女は「すいません」と謝り、わざわざ女に化けたりして、と文句をいった六平太に、女が好きな六平太さんだからと・・・そして、その男も新吾のお供の加わりました。 続きます。🎥『新吾二十番勝負』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。新吾二十番勝負・・・(1)新吾二十番勝負・・・(2)新吾二十番勝負・・・(3)新吾二十番勝負・・・(4)新吾二十番勝負・・・(5)この記事の下のコマーシャルの下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々下の方までスクロールしてみてくださいね。
2025年06月12日
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新吾の自源流と弥次郎の無明流夕日の海に向かってじっと立つ新吾。その様子をじっと見つめる六平太が呟きます。やっぱり忘れられんのかな両親のこと、それとも恋人のことかな、いや剣のことを考えているらしい・・・そうだあの白髪のおやじ、それともあの浪人かな、と考えていたとき、新吾が急に剣を抜き海に向い構えます。 六平太が新吾に近寄り「先生、如何なされた」というと、我に返り、新吾「だめだ、とてもあの老人にはおよばぬ。・・・ひょっとすると、あの浪人に も」日本一の先生が何をいうのですか、と六平太がいうと、新吾「昨日の日本一は、今日の日本一ではありえんのだ」 そんなことを話していると、六平太の耳が何かを感じとったようです。新吾「どうした、また何か・・」六平太が、「この調子では今夜は吉原宿に泊まれないかも知れない、早く参りましょう」といいます。新吾「どうしてだ」 吉原宿へ着くと、なるほど井伊直惟の行列が本陣に到着のようで、宿場中が大騒ぎになっていました。「これでは旅籠もいっぱいだな」と新吾が呟いたとき、「へへへ、全くでございます」と町人風の男が声をかけて来て、見たように宿場はこの様子なので、「今夜のところは・・・」と言う男に新吾が「難しいか」と言うと、「旦那方お二人位なら、何とか手前どものほうで」と宿に案内されます。 冨士屋という旅籠に案内され、新吾は女中相手に話しながら気持ちよさそうに野風呂に入っています。その新吾を大賀陣蔵が富士の裾野から尾行しています。六平太はどうしたか女中に聞くと、案内してきた男の人と一緒に出掛けたというのです。新吾「なに、・・・あの男客引きではなかったのか」 その男と六平太は居酒屋にいました。男はお供にしてもらえるように頼んでほしいと六平太にお願いしています。六平太に男は何が出来るといわれ、例えばというと、「あっいけねえ、財布をおっこどした」と六平太にすぐ返すからと、六平太は懐に手を入れると「いかん、俺の財布もない」と慌て出します。新吾から預かった胴巻もないというのです。六平太の困ったところを見て「こいつか」と言い、男は懐から財布と胴巻を出して見せます。新吾は床に入り寝ていると、隣室から何かに抵抗している女の声がしたと思うと、襖もろとも飛び込んで来たこの旅籠の女中が助けを求めて来ます。 「客人に迷惑をかけてはいかん。こちらへ戻れ」という男に必死に嫌だといい、助けを求めるため、新吾「許しておやりなされ、可哀想に震えております」と言うと、「なに」と襖を少し開け「貴様」と言う薄闇に見えた男の顔を新吾は見て、新吾「箱根のお方か」老人が弥次郎と呼んでいた浪人でした。弥次郎「とぼけるない、折角役人から金をせしめてやろうと思ったに、つまらんと ころでよくも邪魔をしてくれたな」新吾「貴公は金のために人を斬るのか」弥次郎「そうよ、金に不自由のないお主らには、この気持ちはわかるまい。貧乏人 の俺達には金が一番だ。ああ女は許してやる。その代わり、手合わせして もらおうか」新吾「それは困る」弥次郎「困るのはそちらの勝手だ。お主を倒せば日本一の剣になれると思うと欲が 出てな。箱根以来お主を尋ね求めていたところだ。」弥次郎に出ろといわれ、新吾は剣をとって立ち上がり、弥次郎と庭の方に出て行きます。 先に待つ弥次郎、あとから来た新吾は刀を帯に差しながら、「立ち合いに先立ち一言お聞きしたい」と弥次郎にいいます。 新吾「貴公の姓名と流儀は」弥次郎「無明流、白根弥次郎」新吾「剣の師は」弥次郎「納富一無斎」新吾「納富先生、・・・箱根で呼びかけられたあのご老人では」そのとき弥次郎が「うるさい」と言い抜打ちに斬りつけてきました。 新吾の自源流と弥次郎の無明流の双方の剣の闘いは決着がなかなかつきません。 そこへ女中が呼んできた井伊家の足軽隊がやって来て、弥次郎は新吾に「日本一は必ず俺がいただくからな」と言い残し、その場を去って行きます。新吾が足軽隊に囲まれたとき、「控えおろう」と井伊家の家老夏目外記が六平太と共にやってきて、新吾に平伏します。それを見て新吾はびっくりしたが、ニヤニヤしている六平太を見て、彼の仕業かとあきれ顔をするのです。 続きます。🎥『新吾二十番勝負』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。新吾二十番勝負・・・(1)新吾二十番勝負・・・(2)新吾二十番勝負・・・(3)新吾二十番勝負・・・(4)この記事の下にも、橋蔵さんに関するものを載せています。時々スクロールしてみてくださいね。
2025年05月25日
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新吾様に惚れたのです新吾が箱根にいるということは、江戸城にも知らされていました。吉宗はお鯉の方のところに行くと、お鯉の方の気持ちも分かっているが、一門のため、新吾ために「公の対面、公職につけることは思い切ってほしい」と告げるのです。吉宗「城中には新吾を誹謗する者もいる。たとえそれが真実でなくとも、一門の不 和を招くようなことがあっては、万民を安んずることはできぬ。察してく れ。余は天下の将軍だ」老中酒井讃岐守の屋敷では、讃岐守が由紀姫に将軍吉宗の思いを話しています。讃岐守「折角の御前試合に新吾様に逃げられたので、覚悟をお決めになったのであ ろう」と言い、由紀姫にも責任があるというのです。何故かと聞く由紀姫に、「そのようなことがないようにと、お側につけておいたのだ」という讃岐守に、由紀姫は「でも、あのときは・・・」と。讃岐守は由紀姫に、あのときだけではないと、讃岐守「新吾様のお行状を調べにやったときも、中途で逃げ帰ったではないか」由紀姫「自信がなかったからです」讃岐守「うーん、世の常の女ではないと、自ら公言しておったそなたとして は・・・」由紀姫「だって父上、私は、新吾様に惚れたのです」讃岐守はびっくりし「惚れたとは何事だ」と言うと、「いけませぬか」と言う由紀姫に讃岐守「さような下世話な言葉を使ってはならん」由紀姫「じゃあ、どう言えばいいのです」と切り返してきたので、讃岐守が慌てて讃岐守「・・・例えば、慕っているとか・・・」由紀姫「慕っているのと惚れているのは違います。父上なら慕うこともできます が、父上に惚れたといったらどうなります?」それに対し「ばか」と返すと、由紀姫「それごらんなさいまし、惚れるのは恋人だけでしょ。こんないい言葉、慎む必要などありません。父上に叱られようと、私は惚れていたのです。新吾様に惚れたのです」それを聞いていた讃岐守は呆れながら、讃岐守「それほど惚れているのならば、何故あとを追わぬ」由紀姫「追っかけて行っていいのですか」讃岐守「隠密の甲賀新八郎にあとを追わせたが、未だに連絡がない」由紀姫「町娘の多加女に戻っていいのですね」讃岐守の配慮に胸弾ませる由紀姫は、「新吾のお別れの言葉、いまでも忘れません」と、今でも昨日のことのように酔いしれるのです。「わしの好きなのは多加女だ。・・・だが、多加女はもういない」・・・「いえ、多加女はいます。多加女になって、再び新吾様の前に・・・」 続きます。🎥『新吾二十番勝負』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。新吾二十番勝負・・・(1)新吾二十番勝負・・・(2)新吾二十番勝負・・・(3)
2025年05月03日
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武田一真を倒した自源流の若僧か六平太のいった通り箱根の関所では、役人達が関所破りをした浪人5人を追いかけています。その浪人達の前に、一人の浪人が立ち塞がっていたため、立ちすくみます。しかし、後からは役人達が追って来ているので、その浪人に斬りかかっていった一人は倒れ、刀を持ち妖気をおびた浪人の近づくのに恐れをなし後ずさりしていきます。刀をさげたまま歩いてくるので、残りの4人の浪人が斬りかかっていくと、3人を一気に斬り捨てました。待ってくれ命だけは助けてくれ、と哀願する残った一人に笑いを浮かべ刀を振り上げたとき、「お待ちなさい」という声が役人達の後ろのほうから聞こえると、新吾と六平太が現れます。新吾「刀を捨てた相手だ。あとは役人に任されては」その浪人は「余計な世話だ」といい哀願している浪人に刀を振り上げた瞬間に、新吾「おやめなさい」浪人は「なにい」と新吾に言ってきたので、新吾は新吾「関所破りの罪人は、手に余ったときにのみ斬るのです。ひっ捕らえて取り調 べるのが常道です」浪人「常道、ふふん、俺は外道だ」新吾「外道?」 すると、浪人は「そうだ」というと、俺の刀は始末をつけないと鞘に戻らない、といってきます。それに対し、新吾がしばらく間をおいて・・・「では、どうするのだ」と言った新吾に、「こうだ」と言うと浪人の剣は目にもとまらぬ速さで新吾に向かって振り上げられると、新吾も剣を抜き構えます。 剣を構える新吾を見ていて、浪人は薄気味悪い笑いを浮かべると、新吾にいってきます。 浪人「出来るな。その腕前は、武田一真を倒した自源流の若僧か」そう言ってきたとき、今度は新吾が浪人に向かって剣を出し、二人は剣を交え離れると、しばらくじっとお互いに様子をうかがって、新吾が先に動くと、浪人が後ろに下がります。 そして、また二人とも動かずに構えていたとき、「弥次郎」という声がした方を見て、浪人は驚き顔色が変わり、そして、新吾も驚いた瞬間、弥次郎という浪人は逃げ去って行きます。弥次郎を追いかける老人を止めようとしたとき、「妖しい奴、ひっ捕らえろ」と新吾を取り囲みました。 新吾にかかって来る役人達に割って入った六平太は、恐れ多くも将軍家の御長子、葵新吾様の御名を知らないのか、というと、役人一同平伏するのです。新吾は六平太にあきれ顔です。 続きます。🎥『新吾二十番勝負』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。新吾二十番勝負・・・(1)新吾二十番勝負・・・(2)
2025年04月29日
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箱根の関所?去って行く老人を呆然と見ていた新吾に、「何ですかあの爺は。日本一の葵新吾様が両手をつかれたり」と新吾の愛馬の手綱をとって突然近づいて来た男が声をかけて来ます。 「貴公は?」と新吾が訝しげに聞くと、男は新吾の剣技を慕って後を追いかけて来た者、どうか門弟に加えてほしい、と両手をつき頭を下げます。それを見て、先ほどまでと違って表情も柔らかくなった新吾は、新吾 「慕ってくださるのはうれしいが、自源流の剣技を求むなら、秩父の山へ 行って真崎先生の門人になるがよい」 そういう新吾に、流派がのぞみではなく、「新吾先生をお慕いして参ったのです」というのです。新吾が「折角だが、私は修行の道にあるもの、とても人を教える自信はない。・・お諦めください」そう言うと、愛馬に乗り走り去って行きます。男は、門人にしてもらうまでは傍を離れないと、追いかけて行くのです。 西丸派の刺客大賀陣蔵が新吾の後をつけています。その大賀陣蔵を隠密甲賀平八郎がつけています。新吾は愛馬を飛ばし、しばらく駆けて行き、馬から降り鞍の調整をしていると、あの男がにこにこしながら近づいてきたのです。 新吾は驚きの表情で、「貴公は、先刻の」と言うと、「はい」と言い、近道をして待ち受けていたといいます。「それにしても」と言う新吾に、男が「足の早いのと、耳の早いのは、六尺六平太の特徴です」と言うのを聞いていて、新吾 「六尺六平太。あっはっは、変った名前だ」新吾が馬に跨ると、六平太はしっかりと馬のくつわをとって歩き出します。新吾が「まだ門弟にするとはいってない、くつわを放せ」と言っても、六平太は「門弟にしていただくまでは、放しません」と。新吾 「困った奴だ。じゃあ、好きなようにしろ。・・だが、そちが手を放したら 逃げ出すかもしれんぞ」 それに対し、六平太は、六平太「逃げようとなさっても無駄です。拙者は馬に劣らぬ早い足を持っておりま す。それに、どこへお逃げになろうと、一里先までの物音を聞き分けるこ の耳を持っていますから」新吾 「一里先の物音、嘘をつけ」 六平太か嘘ではないと新吾にいったとき、六平太の耳が動きます。笑っていた新吾も、その様子に、何か気になったのでしょう。見た方向に、何気なく通り過ぎる大賀陣蔵と甲賀新八郎の姿がありました。 六平太に「先生は剣気に対しては敏感ですが、声なき声に対しては、私の耳に劣りますな」と言われた新吾が「どういう意味だ」と言うと、六平太をお供にくわえてくれれば、この耳が厄除けになる、といっていたとき、またもや六平太の耳が動きます。新吾 「どうした、また何か」 六平太「この方角なら、箱根の関所辺り」新吾 「箱根の関所?」 続きます・🎥『新吾二十番勝負』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。新吾二十番勝負・・・(1)
2025年04月08日
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強い・・・強すぎるのじゃ大川橋蔵さんの颯爽とした美剣士ぶりで熱狂的人気を博した「新吾十番勝負」四部作に続いて、新たな川口松太郎の書下ろしで製作された新シリーズになります。将軍・吉宗を父にもちながら地位も栄誉も捨て、厳しい剣の道を進む葵新吾の前に立ちはだかる敵を倒すことは、幕府の政策に背くことになり、父吉宗と対決することになるのです...。◆第70作品目 1961年1月3日封切 「新吾二十番勝負」 葵新吾 大川橋蔵甲賀新八郎 沢村訥升由紀姫 丘さとみお縫 桜町弘子お鯉 長谷川裕見子納富一無斎 大河内傅次郎太田備中守 小沢栄太郎酒井讃岐守 三島雅夫六尺六平太 千秋実白根弥次郎 平幹二朗夏目外記 沢村宗之助井伊直惟 小柴幹治山村与八郎 徳大寺伸中院通朝 原健策牧野河内守 北竜二大久保弥太夫 上代悠司大賀陣蔵 楠本健二徳川吉宗 大友柳太朗葵新吾は宿敵武田一真を倒して天下第一の称を得ます。そのため、新吾の行方には険しい剣の道が続いていくのです。刺客の大賀陣蔵、新たな敵・白根弥次郎が新吾に挑んできます。一真を倒し日本一になった新吾は、こんどは野望にとりつかれた剣客達から追われる立場へとなったのです。新吾は山中で襲われる公卿を助けたことから・・・ものがたりは展開していきます。 ナレーションで始まります。仏説に曰く、人の生まるるは、宿業を因とし、父は母を縁とする、と。だが、如何なる輪廻のめぐり合わせか、その母が仇と狙う相手を父として生まれた子は・・・葵新吾がそれである。とはいえ、今やその父は当代将軍吉宗として崇められ、母もまたお鯉の方と敬われている。もし、彼が望むなら、地位も栄誉も決して難しいことではない。だが、彼は剣の道を選ぶ。苦しい救いのない方の道を。たとえ、天下第一のを得ようとも、一瞬の安らぎもない険しい道、それが剣の道だ。 画面は変わって、富士の山の麓に変り、草むらに身を横たえている新吾がいます。彼は自分自身の行くべき道を軽い眠りの中にみていました、「一瞬の安らぎもない険しい道・・・それが剣の道だ」。 新吾がハッと眠りから覚め、刀を取り体を起こし、身に迫って来る剣気に身構えます。近づいて来る足音に耳をすまします。すると、足音が止まりした。 しばらく、お互い身動きをしない時間が流れると、老人の方が歩き出しました。それを感じとった新吾は、急いで歩いて来る老人の前に出て行き、 新吾は、道に座り手を仕え、新吾 「私は葵新吾です」一無斎「葵新吾」新吾 「はい、・・・何卒一手ご指南のほどを」一無斎「何をおっしゃる、日本一の称ある新吾様に、この老いぼれが何の役にたち ましょう」 新吾 「いや、眠りを覚まされたただいまの凄まじい剣気」と新吾が言うと、老人は「それは違う」と静かに笑って言い、続けます。一無斎「世を捨てた老いぼれに、どうしてそんな力がありましょう。あなたの驚か れたのは、あなた自身の剣気」そう言われ新吾は「え?」と驚きの表情を見せます。 一無斎「あなたは自分の影に驚かれた」新吾 「自分の影」 一無斎「隙の無いのも結構じゃが、それでは昼寝もできまい。弓の弦も始終張りつ めていてはのう。・・・強い・・・強すぎるのじゃ」そう言って新吾の前を歩き去って行く老人を呆然と見つめている新吾でした。 その新吾に、一人の男が声をかけてきます。続きます。
2025年03月30日
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私はそれを、今でも信じている「葵の御紋がないその者は若さまとはいわせん。民部、斬れ」老中堀田の命令一下、家臣達も若さまに襲い掛かります。若さまは刀を抜くと、英明院、鈴木、唐金屋と順に見回し、「血に迷った狼どもが相手ならば、若さまの剣も鬼の刃となって答える。そのつもりで掛かって来い!」 そういって、一文字崩しに構えます。 一人が若さまに掛かっていき斬り合いになります。若さまは、徐々に堀田や鈴木の方へ進んで行きます。 中庭に移動し、奥座敷がある方へやってきて、堀田、鈴木を追い詰めて行きます。 鈴木が、若さまに剣を抜いて鞘を投げつけます。身をかわす若さま。若さまに斬られた侍が障子を倒した部屋には、英明院が覚悟を決めたようにじっとして身動き一つせずにおりました。 若さまの「英明院様」の呼びかけに、顔をあげます。 若さまが、英明院にいいます。若さま「私の知っていた英明院様は、亡き将軍家のよき御部屋様でした。加賀守ご ときに辱めをうけられるはずのないお方でした。・・・私はそれを、今で も信じている」 若さまの英明院に対するせめてもの思いやりの言葉でした。そこに、鈴木が若さまに向かってきます。 若さまの前に立ちはだかった熊谷民部を斬り、逃げる堀田を追い詰めて行きます。 門の外には、佐々島や小吉や捕り方がいます。門外に逃げて来た堀田は、追いかけて来た若さまを見ると、これは幸いと、「乱心者じゃ召捕れ」と命令しますが、「・・・若さまのお命狙うとはもってのふるまい」で反対に、唐金屋と共にお縄になってしまいます。一件落着。 月美香太夫が、奥で英明院が自害したことを伝えますと、若さま「そうか。それでいいのだ。老中に辱めをうけられようとして、自らその身 の潔白を守られたのだ」佐々島から奉行にそのように伝えるようにいうのです。 御公儀御用の看板が戻った伊勢屋では、初荷のお酒が届き、祝い酒が振舞われ、若さまの音頭で新年の挨拶が交わされます。「おめでとう」「おめでとうございます」 そこへ、お蝶やお澄達がやって来て、お若い矢の初荷、町中の人が待っている、と若さまを担ぎだし、町中を練り歩きます。若さまも楽しそうです。 (完)🎬『若さま侍捕物帖』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。若さま侍捕物帖・・・(1)若さま侍捕物帖・・・(2)若さま侍捕物帖・・・(3)若さま侍捕物帖・・・(4)若さま侍捕物帖・・・(5)若さま侍捕物帖・・・(6)若さま侍捕物帖・・・(7)若さま侍捕物帖・・・(8)若さま侍捕物帖・・・(9)若さま侍捕物帖・・・(10)若さま侍捕物帖・・・(11)若さま侍捕物帖・・・(12)若さま侍捕物帖・・・(13)
2025年02月18日
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葵の紋に生きる徳川の家の志だそれから数刻ののち、浜御殿では招かれた琉球一座の踊りと歌が繰り広げられ、月美香太夫一人の舞の舞台になり、正面に置かれた装置に太夫が立ちますと扉がまわり、笠で隠した一人の女の人が出て来ます。階段を降り、音楽が鳴り止むと同時に舞台にすくっと立ち、笠を飛ばし羽織っていた着物を脱ぎます。老中堀田加賀守が「あっ、若さま」と、英明院、鈴木や唐金屋も一同びっくりします。そして刀を手に取った熊谷民部らに、若さまが「静まれ」と制止ます。 若さま「はっはは、琉球一座よりもっと面白いものをお目にかけよう」。 若さまが正面座敷に座っている堀田に向い若さま「加賀守、しばらくだな」 加賀守「これは若さまには先ぶれもなく、何の御用でございますか」若さま「あっはっはっ、何を言ってやんでい。先ぶれをすりゃおそらく、その唐金 屋と鈴木采女、風をくらって逃げうせるだろうからな」 唐金屋「妙なことを承りますな。私が何故逃げなくてはなりません」若さま「唐金屋、御上の御用を取りたいばかりに、異国の芸人にまでとんだ日本の 恥をさらしたな」唐金屋「何でございますって」若さま「小納戸役頭取と交わした取引状に、琉球芸人の世話まで書き込んだとは、 呆れ返った馬鹿ものだ」そう若さまに指摘された唐金屋は鈴木の方を見ます。 今度は唐金屋の隣りに座っている鈴木采女の方を見て、若さま「また、その取引にうまうま乗って、天下の財政をかえりみず、私利私欲の ままに御用商人を取りつぶし、その悪事に加担した下役を無頼武士を使っ て闇から闇へ葬る」 そういうと、今度は、熊谷民部の方を見て、また続けます。若さま「正月元旦の夜明けに一人、城の見回り番士が下城そうそう殺されたはず」 すると、鈴木が、「何を証拠にそのようなことを申される」といってきたので、若さまは「よーし、この後に及んで証拠呼ばわり、・・・おちか」、若さまに呼ばれ「はい」とおちかが舞台の中央にやってきます。 若さま「采女、この娘の前に恥ずかしいとは思わぬか」 びくともしない鈴木を見て、若さま「また、この取引書状、江戸八百八町の町民の前に、さらしてやろうか」そう言って、若さまは、ひろげた書状を見せます。 そして、堀田にいいます。若さま「加賀、直ちに城内におもむき、この由上様に申上げ、鈴木采女を裁きにか ける」 堀田は落ち着いた口調で若さまに、葵の御紋をめされている若さまのお言葉とはいえ、お聞き届けはいたしかねる、といってきました。加賀守「若さま、これにいさせられるはどなた様と心得なさる。先の将軍家御部屋 様、英明院様であらせれられるぞ、お控えなされ」若さま「ふざけるねい」若さまは英明院の方へ歩きながら若さま「天下万民を思うてまつりごとをとられた、先の将軍家の御皇室さまが、そ の方ごときに恥かしめをうけられるはずがない。誠の英明院様ならば、一 室にこもってひたすら、亡き将軍家の御霊を弔い、正しい太平の世を祈ら れるはずだ」英明院は、若さまにいわれたことに下を向きます。 若さま「真に尊いのは、人の身分ではない、見ろ」若さまは葵の御紋のある羽織を脱ぎ、着流し姿になります。 若さま「世を捨てて、天下を守り、それが葵の紋に生きる徳川の家の志だ」 「葵の御紋がないその者は若さまとはいわせん」と堀田はいうと、民部に「斬れ」と命令し、家臣達も若さまを取り囲みます。 続きます。🎬『若さま侍捕物帖』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。若さま侍捕物帖・・・(1)若さま侍捕物帖・・・(2)若さま侍捕物帖・・・(3)若さま侍捕物帖・・・(4)若さま侍捕物帖・・・(5)若さま侍捕物帖・・・(6)若さま侍捕物帖・・・(7)若さま侍捕物帖・・・(8)若さま侍捕物帖・・・(9)若さま侍捕物帖・・・(10)若さま侍捕物帖・・・(11)若さま侍捕物帖・・・(12)
2025年02月02日
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千と一両か鈴木采女は老中堀田加賀守のところに行き、若さまのことを地獄道場に申し付け始末をつけるので、町奉行の方をよろしくと御願いしています。「その娘は若さまと呼んだのか」と聞いてきた堀田に、「多分どこか旗本の部屋ずみの侍かと」そして確かにお屋敷の庭に忍び込んだ者だと鈴木が言うと、「待て」と言って老中堀田が何ごとかを思案しているようでした。堀田は英明院にそのことを話します。英明院が「真実、あの若さまなのでしょうか」ということに、鈴木采女を相手にそれほどのことがやれるのは、「若さまを除いてはおりません」と堀田が答えます。そうすると・・・表立てば、二人の関係も今までのようにはいかない、英明院は、若さまを堀田の手で消してくれ、と頼みます。唐金屋が地獄道場と称する熊谷道場に若さまを消すよう依頼します。若さまが急ぎ足で歩いて来ると、「若さま」とお澄に呼び止められます。今日は何処に入っていたのかというお澄に「ちょっと、忙しかったからな」と若さま。 お澄 「若さまでも、お忙しいときがあるんですか」若さま「そりゃあ、あるとも。今夜あたりは、もっと忙しくなるぞ。あははは」 冗談をいい歩いていた若さまの足がぴたりと止まります。「あら、どうかなすったんですか」というお澄。若さまは、しばらく無言のまま辺りの様子をうかがっています。 そして、若さま「お澄坊、うっかりしていて、こりゃあ、前も後も行けなくなっているな」お澄 「あら、何がですか」といいお澄は周囲を見渡し、誰もいないではないか、と若さまにいいます。 すると、若さまは自分の後ろへお澄を移動しながら、若さま「いるいる、ほーれ、・・・前にも後にも・・」 熊谷道場の熊谷民部と門弟達が取り囲みます。お澄に離れているようにいいます。「やっぱりお前か、又会ったな」という民部に若さま「老中の用心棒と思っていたが、今夜は商売がえか、それとも、これが本職 かな」 熊谷は、よく知ってるなというと、若さまに対し熊谷 「お主も若さまといわれるくらいなら、金に不自由はしまい。いくら出せ る」若さま「うん?」熊谷 「千を一両でも越えれば、お主もその大川の土左衛門に変ることはない。 千と一両出せるか」若さま「千と一両か。案外安いもんだな」 熊谷 「さすがは若さまだ、大きく出たな。よし、手を打とう。命は金ではかえら れん、だいじにすれば面白いこともあるぞ。千と一両の引きかえにする、 その娘を預かろう」おとなしく熊谷のいうことを聞いていた若さまの表情が変わり、若さま「お前は、大へん慌て者だな。それとも頭が悪いのか」 「なに」という熊谷に、若さま「笑わしちゃいけねえぜ。俺が千と一両が安いと言ったのは、たとえ死にか かった病人ひとりの値段にしても安いと言ったんだ。千両積もうが万両積 もうが、人間の生命なんぞは、取引の出来ねえ尊いもんだ。それに金をも らって人を殺すなんぞは、世の中の屑も屑大屑だ」熊谷 「なんだと」若さま「千両積んで頼みに行った馬鹿おんなを、おう、言ってやろうか」べらんめえ口調での若さまがこういったとき、熊谷道場の浪人達が一斉に刀を抜きました。その浪人達を見て、若さま「ほーお、誰も人間の目をしていない、まず、狼だな。それも気違いの狼の目だ」 その言葉が放たれたとき、若さまに浪人達がかかって行きます。(ここから立廻りに) 佐々島と小吉がそこへ通りかかり、小吉の呼子笛が鳴りひびき、浪人達は退散します。若さまも助かりましたでしょう。急がなければならないのです。 続きます。🎬『若さま侍捕物帖』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。若さま侍捕物帖・・・(1)若さま侍捕物帖・・・(2)若さま侍捕物帖・・・(3)若さま侍捕物帖・・・(4)若さま侍捕物帖・・・(5)若さま侍捕物帖・・・(6)若さま侍捕物帖・・・(7)若さま侍捕物帖・・・(8)若さま侍捕物帖・・・(9)若さま侍捕物帖・・・(10)若さま侍捕物帖・・・(11)
2025年01月25日
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私事に追われ、昨年は「若さま侍捕物帖」⑽までと中途半端でブログ更新ができなくなってしまい、おいで下さっていた方々には、大変申し訳なく思っております。今年も続行していきますので、これからもよろしくお願いいたします。〈mw金糸雀〉 🌈 🌈 🌈大きいのが掛かって来たぞ若さまはおいとを連れて釣りに出かけています。場所は、先日若さまが堀田をつけてやって来た英明院の屋敷門が見えるところで釣りをしています。おいと「ねえ、若さま、こんなところで釣れるんですか」若さま「釣れるとも、大きいのがかかるぞ」おいと「うそばっかり、うふ」おいとの酌で一杯飲もうとしたとき、一台の駕篭が入って行きます。 それを見て若さまが「入りびたりか」と、そこへおいとが、英明院様はまだ若くて綺麗な方ですってね、と言ってきたおいとに、若さま「さあな、おいと坊の方が、ずっと綺麗じゃないかな」おいと「あら、若さまったら。どこでそんなお上手教わりました」若さま「風呂屋で知り合った職人だ」おいとと楽しそうに笑っていた若さまの視線が正面の道の方へ動きます。 若さま「ほーら、大きいのが掛かって来たぞ」おいとは、釣竿を見ても魚はかかっていないので、若さまの視線の方を見ますと、やって来たのは伊勢屋のおちかでした。「とうとうやってきましたね」と若さまがいうと、「私参ります。鈴木様のお招きに」と決心をしたおちかに、「えらい」と若さまが大きな声で。 唐金屋との取引の書付を取り交わし、鈴木はおちかの待つ部屋にやってきます。卓上の上に置いた書付がおちかの目にはいります。鈴木は、残されたお前達親子のことは考えてやろう、このままでは明日か明後日には島流しの船だからな、と言うとおちかに近寄っていきます。「母を助けてくださるのですね、店の者も大丈夫ですか」と聞くおちかに「皆江戸に住めるようにしてやる」と鈴木はいい、おちかの手を掴みいきなり抱きすくめます。おちかは必死に抵抗し鈴木から離れると、卓上の書付をつかみ逃げようとしたところに鈴木が立ちはだかり、その書付どうするんだ、と聞いたので、おちかは、おちか「私の、私の代に、この書付を頂きます」と鈴木に向かって言うと、鈴木「なに、貴様誰かに頼まれてきたのか」鈴木は刀を手に持ち、「誰に頼まれた」とおちかにせまったとき、「わしだ」と声がして、障子があきます。若さまです。 鈴木 「誰だ、貴様は」若さま「騒ぐない」おちかが若さまに書付を渡します。若さま「はっは、この書付がわしの手にあるかぎり、鈴木采女の不正は天下にさら される」 鈴木が「誰か参れ、曲者だ」と大声で手下達を呼び集めるのを見て、若さま「曲者?・・・笑わすな、大声で人を呼んで赤恥の上塗りをしてえのかい。貴様が何をやり、何をしようと思っても、どっこいそうはさせねえよ。江戸中の侍が、金で縛られると思うと、大まちげえだぞ」 そのとき、逃げたはずのおちかのうしろから鈴木の手下がぞろぞろやって来ました。若さまに斬りかかって行きます。そのとき、唐金屋が若さまの目に入り、若さま「おう、唐金屋、お前の店に掲げた御用商の看板は、このわしが、引きずり 下ろす、伊勢屋の店にもう一度かけてやるんだい。あっはっ」 笑うと、行こうとおちかを連れ廊下を歩いて行く後を、刀を構え恐る恐るついて来る侍達の方を振り返り、そして鈴木の方を、次に唐金屋がいる方をみると、若さま粋な唄を口ずさみながらその場を去って行ったのです。 続きます。🎬『若さま侍捕物帖』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。若さま侍捕物帖・・・(1)若さま侍捕物帖・・・(2)若さま侍捕物帖・・・(3)若さま侍捕物帖・・・(4)若さま侍捕物帖・・・(5)若さま侍捕物帖・・・(6)若さま侍捕物帖・・・(7)若さま侍捕物帖・・・(8)若さま侍捕物帖・・・(9)若さま侍捕物帖・・・(10)
2025年01月16日
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若さまというあだ名の侍がいる月美香の心くばりで、部屋を貸してもらった若さまはおちかと話を始めます。見ず知らずの異国の芸人までが、おちかのことを心配してくれている心を無にしてはいけない、とおちかに言いきかせて、確信に触れます。若さま「こんなことをたずねるのは罪なことかも知れんが、鈴木采女はお前が目当 てだったのか」 聞かれたおちかは、若さまにこういい出します・・・役人なら何をしても良いのでしょうか、町人は何でもいうことを聞き騙され踏みにじられ消えてゆくものなのでしょうか。ただ鈴木様に父が私のことをお断りしただけで、いいがかりで父を殺しお店を潰した。御用商人は、女のことまでその取引の中に書かなければ、鈴木様の御用がいただけないのでしょうか、・・・と若さまに話したのです。若さまはおちかのいったあることが引っかかります。若さま「取引の中に」 おちかはその話を聞いたことを話し始めます・・・鈴木様を刺そうと、鈴木様と唐金屋の話を聞いていた、唐金屋は琉球一座の太夫をおちかの代わりに鈴木様に差し出すのだ、とそして、母や店の者の島流しを許すからといい私を・・・、と。若さまが「鈴木は唐金屋とその取引を済ませたのか」と聞くと、明日取引をするようだといいます。おちかの話すことを聞いていた若さまは、若さま「お前のその気持ちはよく分かる。頼む役人も取り上げてくれないとき、人 間誰でもそんな気持ちになるもんだ」 しかし・・・と、若さまはおちかにこういいます。若さま「だがいま、お前が鈴木を狙っても無駄だ」若さまは、万一鈴木を倒すことが出来たとしても、誰も救われないというのです。 若さま「お前はいま、鈴木を刺そうとした。・・・その覚悟があるならば、何故、鈴木の不正をつきとめない。父の恨みをはらそうと考えない。・・身を捨てて、その取引の証拠を奪うのだ」 「私、そのようなことが・・・」というおちかに、すぐさま若さまは「出来るとも」と言います。若さま「やろうとさえ思えば、お前ひとりではないぞ」おちかが若さまの顔を見ますと、若さま「味方がいるではないか」 おちか「あなた様が」若さま「誰もいなかったなら、私がなろう」 おちかはうれしいという表情をしたあと、「でも」といいなぜか悲しい顔を見せます。その様子を見た若さまは、おちかにあのときのことを話すのです。若さま「お前の父親が死んだとき、通りすがりの侍が、番頭に言づけたはずだ。 『けっして力を落すな』と」おちかは、あのとき、番頭から聞いたことを忘れてはいませんでした。おちかは若さまを信用して頼る気持ちになったようです。 「島流しまで、二日や三日の暇がある。それまで気を静めて、父の位牌の前へ座ってやれ、力を落してる母を抱いて座ってやれ。うーん⤴あはは」 立ち上がった若さまに「その覚悟がついたら、深川に来るがいい」と言われたおちかは「深川?」と明るい顔で聞くのです。若さま「喜仙という船宿に、若さまというあだ名の侍がいる。お前と同じように、 いつでも身を捨ててやる男だ。わかったな」そういって若さまは部屋を出て行きます。廊下で、鈴木に太夫をという話を聞いてしまった月美香の心境も複雑のようです。 唐金屋に御公儀御用問屋の看板が掲げられました。 続きます。🎬『若さま侍捕物帖』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。若さま侍捕物帖・・・(1)若さま侍捕物帖・・・(2)若さま侍捕物帖・・・(3)若さま侍捕物帖・・・(4)若さま侍捕物帖・・・(5)若さま侍捕物帖・・・(6)若さま侍捕物帖・・・(7)若さま侍捕物帖・・・(8)若さま侍捕物帖・・・(9)
2024年10月27日
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伊勢屋の酒が好きだった侍だ若さまは、英明院の屋敷からの帰り道、心の中でこんなことをつぶやきながら歩いていました。「世の中には、見て見ぬふりをしなければならないこともあるのか。私ひとりの正義感など、通らぬこともあるのか。・・・私はやっぱり、世間知らずの若さまか・・・」 しばらく歩いて行くと、料亭から帰りの駕篭に乗った鈴木采女が通り過ぎるのを見て、歩き出した若さまは、おちかの姿にきずき足を止めます。 鈴木の駕篭の後を追うおちかのただごとでない様子を見て、若さまは出刃包丁を持ち鈴木の乗った駕篭めがけ行こうとしたところを引き留めます。 何故止めるのか、と抵抗するが出刃包丁を取り上げられたおちかは「私はいまの侍を・・・」とまだ行こうとするおちかを若さまが遮ります。若さま「馬鹿、お前の手で武士を刺せると思うのか」おちか「でも、このままでは・・・」若さま「落着け、だいいち大勢の侍が一緒についてくのだ、もし、お前が刺そうと したことが気付かれれば、ただではすまなくなるぞ」どうしたらよいのか・・・泣き崩れるおちかに、若さまが話かけます。若さま「万に一つ、鈴木采女を刺したとしても、父親の無実の罪は拭われんぞ」 おちかが顔をあげ、「あなた様は」と聞いてきます。若さまは、「伊勢屋の酒が好きだった侍だ」と答えます。 そのとき、「もし」と突然呼びかけて来た女の声がします。数人の琉球衣装を着た人の中の太夫の月美香です。月美香「私共の宿はすぐこの先、むさくるしくとも部屋の中なら、この方のお心も 静まりましょう。さあ、どうぞ」若さま「見ていたのか」「はい」と月美香が言います。 続きます。🎬『若さま侍捕物帖』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。若さま侍捕物帖・・・(1)若さま侍捕物帖・・・(2)若さま侍捕物帖・・・(3)若さま侍捕物帖・・・(4)若さま侍捕物帖・・・(5)若さま侍捕物帖・・・(6)若さま侍捕物帖・・・(7)若さま侍捕物帖・・・(8)
2024年10月19日
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何処へ忍びのお出掛けかと・・・英明院は堀田の来るのを待ち焦がれていたようです。若さまが屋敷の門の外にいると、「何をしている」と熊谷民部ら侍達がやってきます。それを見て、若さまはおかしいというような笑いを浮かべると、若さま「図体は大きいが、お前は鳥目か」そう言われた熊谷が「なに」と言ってくると、若さま「何をしてるって、門を見ているだけだ」 熊谷が、若さまに今の行列を付けて来たな、といってきたのに対し、若さまは若さま「今をときめく老中の行列、何処へ忍びのお出掛けかと、あとを付ける野次 馬は大勢いるぞ、あはっはっは。人間あまり出世すると、うっかり夜遊び も出来んらしいな」 「さっさと去れ、余計なことに気を使うと、身のためにならんぞ」と脅しをかけてくる熊谷に、若さま「余計なことかな」 熊谷「御老中が何方さまの屋敷に入ろうと、貴様の知ったことではない」若さま「うーん、それはその通りだ。しかし、そういうお前さんは一体何だい」そういたとき、侍達が2,3歩動いたのを見て、若さま「天下の老中が、英明院様を訪ねる。当たり前のことだ。別にごろつき用心 棒を雇う必要はないはずだ、そうだな」熊谷達は狼狽えたようです。若さま「それとも、お前も私と同じ野次馬か。・・・・私がここに立っているのが おかしいなら、お前もおかしい。おかしい同士だ、気にするな」 そういって、帰って行く若さまです。ある料亭の奥座敷で、鈴木采女と唐金屋が私腹を肥やそうとの話をしています。老中堀田は英明院様を抱いているから、城では一番強い立場で、その堀田は鈴木の思いのままだというのです。松造が報告にやって来ます。なんだと聞く鈴木。伊勢屋にちょっかいを出している若侍をちょっと脅かそうとしたのだが、手ごわそうで、といい、娘が目当てでしょう、というと、鈴木は厳しい表情で、そんな男がついているのか、「構わんからその男を消してしまえ。城の見回り番士を片付けた地獄道場にまわせ」と唐金屋に命じます。唐金屋はそれよりもと言って、琉球の太夫の件は話がついていると斬り出し、鈴木采女と唐金屋の取引の約束の中にきちんと入れておくことで話がまとまります。鈴木采女は、ほんとに太夫をものに出来るのなら、酒だけでなく味噌、醤油の御用も扱わせてやると、唐金屋にいいます。その座敷の前庭の草むらに隠れ話を聞いていた伊勢屋のおちかがいました。 続きます。🎬『若さま侍捕物帖』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。若さま侍捕物帖・・・(1)若さま侍捕物帖・・・(2)若さま侍捕物帖・・・(3)若さま侍捕物帖・・・(4)若さま侍捕物帖・・・(5)若さま侍捕物帖・・・(6)若さま侍捕物帖・・・(7)
2024年10月13日
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若さま「英明院」と呟くやくざ風の男達を外へ出し、若さまも行こうとしたとき、お蝶が若さまに、「あいつら金が欲しいんですよ、いくらか包みゃ帰りますから」というと、若さま「いやあ、包まなくても帰る」お蝶とお澄の心配をよそに、笑って外へ出て行きます。 若さまが外へ出ると、待ちかまえていた男達がかかってきます。若さまは小気味よいテンポでかかって来る男達を痛めつけて行きます。途中見ている娘達が「すてき」というとそちらを見たりと、 また、お若い矢の娘達が喜ぶと、手をあげて答えたりと、楽しく暴れます。敵わないと逃げ帰るのを見て大笑い。 佐々島と小吉がやってきました。奥の部屋を借り、極秘の話というのを聞きます。若さま「町奉行や鈴木采女が、御用商人を取り調べられないことぐらい、子供だっ て知ってる。老中に届けろというのだ。老中は堀田一人ではないぞ」それに対し、佐々島がこう言ってきます。佐々島「いえ、それがそのう、奉行のいいますところでは、堀田様がいる限り手も 足もでないっつうんですな」若さま「堀田がいる限り?」 ある夜、堀田の乗った駕籠行列が屋敷から出て行くのを見て、あとをつけて行くと、入って行った屋敷を見て・・・そこは・・・若さま「英明院」と呟きます。 続きます。🎬『若さま侍捕物帖』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。若さま侍捕物帖・・・(1)若さま侍捕物帖・・・(2)若さま侍捕物帖・・・(3)若さま侍捕物帖・・・(4)若さま侍捕物帖・・・(5)若さま侍捕物帖・・・(6)
2024年10月05日
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お前達は喧嘩を売っているんだなあ唐金屋総右衛門は身の回りにおいているやくざ風の松造から、部屋住みらしい侍が伊勢屋に現れたり、目明しに何か話していたことを聞くと、少し脅かしておくようにいいます。小吉と別れ、ひと風呂浴びた若さまはお若い矢に向います。(お若い矢の娘達が「若さま風来坊」の歌にのって開店の用意をしています。)そこに若さまが店にやって来ました。 そこへ「あら、若さまの旦那」とお澄が声をかけ、今日宿に伺ったことを話しますと、若さまは、若さま「それはもちっともしらなかったなあ」お澄 「ねえ、ちょっと、若さまの旦那、あの船宿の娘、あれなあに」若さま「なにって、ただの娘だが」お澄 「いえ、違うわ、あの目つき、あの人若さまを狙ってんのよ、きっと」若さま「なあんだい、泥棒だなあ、まるで、あはっ」 楽しく弓を引いているところに入って来たのは松造はじめやくざ風の男達でした。女将のお蝶が「いらっしゃいませ、お遊びですか、お酒?」と声をかけられた男達が近づいて来るのをにゃっとした顔をして待つ若さまです。 松造 「おう、おめえ様は何処の若さまだ」若さま「さあなあ。店の者は知ってるが」松造 「ほお、御自分の口からはおっしゃれねえんですか。へっへっへっへ、よっ ぽど、お高い御身分とやら」 松造は、若さまの素性を話せとお蝶とお澄のほうに、すると、お澄が「石川五右衛門様の若さまです」と返答、それに対し若さまも「お澄坊、その通りだ」と笑っていると、 松造の隣りにいる男が、「部屋住み、おめえ皆がてめえの屋敷ん中のようにちやほやすると思ったら大間違いだぞ」若さま「どういう意味だね」 松造 「のんびりしてやがら、なら教えてやらあ。てめえはさっさと屋敷へけえ れ。おやじに隠れて女中のけつでも追ってな」若さま「あいにく、そんな趣味は持たないよ」 すると、若さまの態度に我慢できなくなって「なら、こうしてやらあ」と殴りかかってきたところを交わすと、 若さま「要するに、お前達は喧嘩を売っているんだなあ。しかも押し売りだ。わし は買わんからさっさと帰れ」短刀を抜きかかって来る男達を若さまは弓であしらいます。 若さまは、面白そうに笑うと、「お前達、狂犬というのを知っているか」といいます。松造が「狂犬?」というと、若さま「やたらに牙をむいて噛みつきたがる、一番嫌われる野良犬だ」男達が一斉に若さまに噛みつこうとするのを見て、若さま「騒ぐない、店のものを壊せば、それだけで人は迷惑する。表へ出なさい」「よーし、出ろ」と松造がいい男達は外に出て行きます。 続きます。🎬『若さま侍捕物帖』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。若さま侍捕物帖・・・(1)若さま侍捕物帖・・・(2)若さま侍捕物帖・・・(3)若さま侍捕物帖・・・(4)若さま侍捕物帖・・・(5)
2024年09月21日
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伊勢屋の酒が好きだった侍さある日、喜仙に若さまを訪ねて来てお澄とおいとの女同士の冷たい火花が散っいます。そのころ、若さまの足は日本橋の伊勢屋の店に向いていました。伊勢屋では小納戸役の山田文五郎が、伊勢屋周兵衛に家財没収の上獄門、家族一同、使用人に対し遠島を申し付ける、という書状を読み上げ、おちかに、鈴木様にお願いしようと思えばおちかの覚悟一つだというのです。立ち去る山田を追う弥平に「番頭さん」と肩をたたき止めたのは若さまでした。若さまは弥平に若さま「いまは無理だな。・・・やあ、落ち着くんだ」 弥平 「あ、あなた様は」若さま「伊勢屋の酒が好きだった侍さ」 若さまは弥平と店の中へと入ると、周兵衛が息を引取ったところでした。その様子を見ていた若さまに、弥平が弥平 「お侍様、私共のお酒に毒が入ってたなんて、誰がそんな馬鹿なことを」 そんな弥平をいたわり、若さま「番頭さん、・・・何か、思いあたることはないのかい」弥平 「あ・・・ございます」 若さま「袖の下が足りなかったのかい」若さまはさっきから、店の中を見ているやくざ風の男達に目をやりながら、話を続けます。弥平 「それもございましょう。しかしそれよりも、鈴木様が、前々からうちのお 嬢様を」若さま「なに」 弥平は、泣き崩れているおちかに、しっかりしてください、今も、通りすがりのお侍様が、ちからを落すなとおっしゃってくださいました、といったのです。若さまが伊勢屋を出て途中で、喜仙で若さまの行き先を聞いて来た小吉と出会います。若さまは、この間殺された城の番士は、あの晩何処の見回りだったか調べることと、それと頼みがある、といって、若さまは辺りを見まわして、小吉の耳元で話をします。その様子を物陰から見ているのは、伊勢屋でも見たやくざ風の男です。小吉は与力佐々島のところへひとっ走り、若さまはお若い矢で待っているといい別れます。 続きます。🎬『若さま侍捕物帖』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。若さま侍捕物帖・・・(1)若さま侍捕物帖・・・(2)若さま侍捕物帖・・・(3)若さま侍捕物帖・・・(4)
2024年09月15日
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関係なくなったってどういう意味だい野暮用で来たのかと思った若さまに、与力の佐々島と目明しの小吉が野暮用を取り消しに来たといいますと、若さまは腑に落ちない様子で「取消し?」といいます。小吉が、今朝ほどの伊勢屋の店のことは、手前どもには関係がなくなったので気になさらないようにといいますと、若さまの表情が険しくなり、若さま「関係なくなったってどういう意味だい」それについて、佐々島から、御老中堀田様からのお声がかりで、御老中様直々に御決着をつけられるそうで・・・と聞いた若さま、若さま「老中直々」若さまは、そのことがひどく気になったようです。 若さま「ときに佐々島、いま小納戸役頭取はたしか、鈴木采女だったな」よくご存じでと佐々島の返事を聞くと、若さまは厳しい表情を見せ、「そうか」と呟きます。 老中堀田加賀守の屋敷では、鈴木采女が来ていて、伊勢屋を取りつぶして家財を没収するという計画が練られていました。そのとき、采女が庭の方での物音を感じたようです。堀田が見回りのものだろうといいます。だが、そのとき、庭には若さまが侵入して、部屋での二人の様子を窺っていたのです。 唐金屋の件を話していたとき、堀田と采女が同時に庭の方の物音に気がつき、庭を見たときには、気を失っていた見回りの者は、着流しの侍が・・・といいます。その若さまは、堀田の屋敷を出て、喜仙に帰ってもなかなか眠れませんでした。 続きます。🎬『若さま侍捕物帖』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。若さま侍捕物帖・・・(1)若さま侍捕物帖・・・(2)若さま侍捕物帖・・・(3)
2024年09月08日
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そりゃあ、なつかしいやな店を閉めている伊勢屋をやくざ者たちが見張っています。奥座敷には主人の周兵衛が病の床に就いています。番頭の弥平が周兵衛の娘おちかに奉行所にも行き、御納戸役のところへも行ったがダメだったと話します。分かっていると弥平がいいます、「どうせあの鈴木様が・・・」と、おちかも「やっぱり・・・」と。鈴木采女との間に何かがあるようです。若さまは琉球踊りを見ての帰り、頓平と平吉に誘われ、浅草近くの矢場の”お若い矢”に行って遊んでいます。お澄が勝ったら、若さまの名前と屋敷を白状させるという矢の的当てをやっています。お澄が勝ったので、若さま名前をいわなければなりません。石川五右衛門といい加減なことをいうと、頓平と平吉が分ったといって、平吉 「石川様ちゅうのはやっぱり、青山の石川様でしゃろ」若さま「えっ、・・・ううん、そうだい、・・・その青山の、石川の・・・せがれ だい」やっぱりと頓平はいうと、こちら様は、青山で800石、西の丸御書院の番士小頭を務められる石川様の若様だと、若さまは唖然としています。 それを聞いていた矢場の主人お蝶が、5年前まで石川様のお屋敷に奉公していたと、嬉しそうにしゃしゃり出て来ます。お蝶 「まあ、お懐かしい」若さま「ううん、ああぁ、・・・石川に奉公していたね、ああっ、(小さな声で) そりゃあ、なつかしいやな」 殿様にはすっかり御恩を受け、店を開くときにも世話をしていただいた、・・・あらそういえば、お父上様にそっくりといったのには、若さまも驚き、若さま「えぇっ、・・・似てるかい?」お蝶は、ええ、そっくりといいかけたとき、「あら、ちょっと変じゃない。・・・・・あら、今年19じゃないの、19の殿様の若さまにしちゃ年が合わないんじゃない」そんな話になった頃、若さまは、いつの間にかお若い矢から逃げだしていました。 店から急いででてきたところで、「若さまっ」と呼び止める声がします。若さま「野暮用二人お迎えか」 続きます。🎬『若さま侍捕物帖』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。若さま侍捕物帖・・・(1)若さま侍捕物帖・・・(2)
2024年08月31日
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若さまの鋭い視線が唐金屋と鈴木采女に注がれる若さまがおいとを連れて出掛けたところは琉球踊りの舞台でした。舞台を見つめている若さまにおいとが話かけます。おいと「若さま、・・・初めて」若さま「あっ、ああ、初めてだ。ああ、これから、ちょいちょい来るかな」若さまのその言葉に、「まあうれしい」おいとはうれしくなりました。そして、おいと「こうしていれば、若さまを知っている人なんか、一人もいないしね」若さま「うーん、そうだな」 後の席にやって来た頓平と平吉の声かけでせっかくの若さまとの二人っきりの時間もだいなしです。若さまは「風呂屋の職人か」といい、「まあこっちへ来ねい」と気安くいったのです。 「あれ、きれいな姉ちゃん連れて、旦那もすみにおけませんな、へへへ」と平吉がいうと、「ほんと」と頓平が気安く若さまの肩をたたいたのを見て、おいとは言いかけて・・・黙ります。 その様子から何を思ったか、平吉が「大丈夫、大丈夫、わいら二人は口が堅い」、頓平は「若さまがお忍びで遊べるのも松の内、松があければ、裃付けて、姉ちゃんも腰元に戻って、何でもなかったような顔をして三つ指ついて、いってらっしゃいませ、とかなんとか、ちゃんと分かってんだから」と、若さまは聞いていて笑い、おいとは「何もわかってないわ」と呟き、「ああよかった」と安心します。 舞台を見ていた若さまは頓平が喋ってきたことに興味を持ったようです。「何しろ、琉球から初めてて来た芸人なんでっせ」そして、平吉が二階を指さし「あれが、この一座を琉球から呼んだ胴元でっせ、唐金屋とかいう商人で」と、若さまは「唐金屋?」といい見つめ目を一瞬外しますが、そこに入って来た鈴木采女に目がいきます。若さまの鋭い視線が二階の二人に注がれます。 続きます。🎬『若さま侍捕物帖』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。若さま侍捕物帖・・・(1)
2024年08月24日
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いよう、お二人揃って何の用だい江戸御毒見役の死に端を発し奇怪な波紋を拡げて行く難事件が起り、目明し遠州屋小吉を初めそんな中で途方に暮れていたとき、若さまの名推理で御用商の看板をエサに老中、お納戸役、商人の悪者一味の奸計の核心が絵ときのように解決されて行きます。橋蔵十八番”若様シリーズ”3年ぶりの登場で、若さまシリーズ第8作目になります。撮るのは佐々木康監督。橋蔵さんのデビュー作品「笛吹若武者」は佐々木監督の撮ったもの、それからずっと橋蔵さんを見てきた監督が、橋蔵さん主演ものを撮るのは久しぶりのこと、そして「若さま」シリーズを撮るのは初めてになります。でも、橋蔵さんを知り尽くしている監督ですから、お正月にふさわしい作品の中に橋蔵さんの魅力も満載。作品「若さま侍捕物帖」はお正月映画なので、明るく、派手で、映画館で途中から入って見ても分かる映画にしたと語っています。そこで華やかにと、橋蔵さんの若さまが着る衣装も一着20万円位するものを何回ととっかえひっかえして私たちの目を楽しませてくれるようです。そして、何といっても、舞台が江戸の両国に戻って来たことです。◆第69作品目 1960年12月27日封切 「若さま侍捕物帖」 若さま 大川橋蔵おいと 桜町弘子おちか 三田佳子月美香 藤田良子お花 円山栄子お澄 花園ひろみ鈴木妥女 山形勲佐々島俊蔵 千秋実唐金屋総右衛門 三島雅夫お蝶 清川虹子英明院 花柳小菊堀田加賀守 坂東好太郎山田文五郎 加賀邦男弥平 沢村宗之助松造 吉田義夫頓平 茶川一郎遠州屋小吉 本郷秀雄熊谷民部 戸上城太郎平吉 笑福亭福郎おとそ気分の松の内、奇怪な事件が持ちあがった。御用商酒問屋伊勢屋の清酒で、毒見役が命を失い、見廻り役も何者かに暗殺される。正月そうそうは野暮用お断りと事件にかかわるのを断っていた若さまが腰をあげその真相を探ります。スクリーンに表題「若さま侍捕物帖」が映しだされた時の音楽は何か起りそうなと重々しい感じであったが、スタッフ、キャストの画面になると、明るい軽快な「若さま風来坊」の歌にのって流れていきます。江戸城内の伊勢屋の清酒が収めてある蔵のところで、鈴木采女が蔵の見張り役に何かを頼んだようで金子を与え立ち去ります。その見回り役は家に帰ったところを待ちかまえていた賊に殺されます。年の初めの祝いをやっていた御用商酒問屋伊勢屋に、城に納めた清酒に毒が入っていたと役人がやってきていました。目明し遠州屋小吉が慌てた様子で船宿喜仙にやってくるや、「若さま二階か?」と、おいとにたずねます。「どうしたんです、お正月そうそう」と呆気にとられるおいとに、「ちょいと上がらせてもらう」といい二階の部屋に行くと、”今年より野暮用一切お断り 佐々島旦那 小吉親分へ 若”と貼り紙が貼ってあります。なんでもかんでもここへ走り込み若さまについつい甘えてしまう、今年は反省しても俺一人でやってみよう、と反省して帰ろうとしたところへ、与力の佐々島俊蔵も若さまのお知恵を借りようとやって来たようです。その若さまは、丹前風呂が気に入って通っているようです。大広間で大勢の人達がおしゃべりをしている中の職人らしき4人ずれが、伊勢屋の件、そして見廻り番が殺された件の話をしている向こう側に一杯やって楽しそうにしている若さまが居ます。 「おう、お勘定」といった若さまの声を聞いて、頓平と兵吉がやってきます。「黙って聞いてちゃずるいや、あっしの情報は瓦版より早いんで」という頓平に、若さま「ハハッ、だが、聞いていてあんまりうれしい話でもなかったな」といいながら、何となくその話に興味を持ったようです。 船宿喜仙では、若さまの帰りを待っていた与力の佐々島と小吉親分が腰をあげ店を出たところに、「いよう、お二人揃って何の用だい」と声をかけたのは丹前風呂から帰って来た若さまでした。 若さまのところに用があって来たとはいわずはぐらかす二人に、若さまは歩きだしながらこういいます。若さま「二人ともひどく呑気だな。今朝は見廻り役の侍が殺されたり、御用商人が お取りつぶしになったり、大変だぞ」佐々島と小吉は「あれっ」と顔を見合わせます。 若さまが喜仙の暖簾をくぐると、おいとが「お帰んなさい」と迎えに出て来ました。佐々島と小吉も店へ入ると、「若さま、もうご存じで」という佐々島についで「こいつは手っ取り早くていいや、若さまそれですよ問題は・・・」と小吉がいったところに、若さまが「おっと、親分」といってきます。「親分だなんて」と照れる小吉を佐々島が制し、小吉が何でしょうと聞くと、おいとがすかさず「野暮用はお断りですって」と、そうだったと反省する二人。 すると、若さまが、おいとに「おい」と笑顔を見せ、手でお金をくれ、という風にするが、おいとがそれに答えないので、若さま「おーいっ、貸してくれ」 それに対し、おいとが「またお出かけですか」ときたので、出した手を「うーん」といいながら引っ込めると、若さま「一緒に来るか」おいと「あら、どこへですか」気分よくそれに答えようとする若さまを、小吉の「あのう・・・」が遮ります。その小吉は若さまに事件の現場でも・・・、と聞いてきたので若さまも・・・・・若さま「ハッ、二人とも風呂屋に行ってみな、色々なことが聞けるってさ」そういって、おいとの方に笑みを見せるのです。 続きます。
2024年08月19日
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領民の幸せのために、この命をささげよう正人が城に帰って来ました。師景は祐吾が父直之進の仇討ちをすることを認めます。師景にしてみれば、正人を亡き者にするには好都合でした。正人は剣の達人、祐吾を勝たせるために祐吾にも内緒で策略をめぐらします。二人の家臣に一つは、果し合いの前に正人と祐吾に水瓶の水を飲ませるようにいい、毒を入れた方が正人に飲ます水瓶と、もう一つは、白い紐が巻きつけられた剣が正人で水色の紐が巻きつけられた剣が祐吾、決して間違えるなといい、祐吾の剣の切先に、これで正人を刺せば必ず死ぬという猛毒をぬります。師景は家臣達が集まっている広間で、祐吾に用意はよいかといいますと、祐吾は父の仇だいくぞ、といってきたが、正人は「お前とは闘いたくない」と拒んでいると、師景が「正人、叔父としてせめてものなさけじゃ、尋常に作法通りの立ち合いをさせてやる」というと、家臣が先程用意しておいた剣を正人の前に持っていき、白い方を正人に差し出しました。「やむおえん」正人は剣を取り抜きます。祐吾も剣を抜いたところで心静めてまず両名喉を潤し、と水瓶から盃に注がれます。注いでいる家臣が師景の方を見る様子から正人は何かを感じとったようです。そこへやって来た時子も、師景の様子を見ると、盃の水を飲もうとしていた正人に「正人、その盃はこの母が受けましょう」というと師景が正人のところに行こうとした時子の前に立ちふさがったのです。 正人とはこれが根性の別れになるかもしれない・・・という時子を「ならんというたらならんのじゃ」と激しい口調で止めるのです。それをじっと聞いていた正人は、師景の方を見ながら、盃の水をこぼします。師景は祐吾に「祐吾何をしておる、早くたてい」と声をあげると、正人も盃を投げ、祐吾との勝負になります。 皆が息を呑んで見ている中、二人の息づかいと剣のぶつかる音だけが響きます。二人に疲れが見えてきたとき、祐吾が正人めがけ向けていった剣は正人にはらい飛ばされ柱に刺さってしまいます。 剣をなくした祐吾は負けたと同じでどうでもできるのですが、正人はちらっとに笑みを見せ、自分が使っていた剣を祐吾に投げ与え、自分は刺さっている剣をとります。師景はまずいと思ったでしょう。 再び剣を交えたが、正人の剣に祐吾が手傷を負います。すると、師景が無言で合図をすると次の間にいた鉄砲隊が正人を狙います。 時子「正人、危ない」と叫び正人の方へ駆けだしたとき、鉄砲の弾は身を低くした正人ではなく、時子に当ってしまいます。師景は正人を斬れと命令します。祐吾は傷口からの毒がまわり正人の前で倒れていきました。母と祐吾に気を取られたすきに、槍で太ももに傷をおった正人は、母にいわれ、師景を追って行きます。 師景は城の外で待ち伏せています。正人が姿を現したとき、矢は正人に向けられました。「師景卑怯な」と叫び正人が倒れます。微塵も動かない正人。その正人をかたずけようとしたとき急を知らす法螺貝が鳴り、正人はそのまま放置されます。 宗恵を先頭に、松明をかざし城に向かってくる領民達の一揆の大軍がやって来ていました。そして、その騒ぎの中命を亡くしたかと思った正人が息を吹き返し、立ち上がり天守閣へと上って行きます。ゆく手を阻む家臣達を倒し、残るは師景一人になりました。 城は領民達により、火の海となり、天守閣も燃える中、正人は師景との一騎打ちの末、一刀の下に倒しました。王見城が焼け落ちて行きます。宗恵は正人を探します。 翌朝、焼け落ち燻ぶる王見城後に、生き残った領民達が集まって来た中に、宗恵に助けられ正人がやってきます。領民達の歓声に迎えられていると、戸板に乗せられ運ばれてくる光景が目に入ります。 運ばれてきたのは、雪野でした。 正人は雪野に話しかけます。正人「雪野、お前だけは殺したくなかった。お前だけは・・・許してくれよ」雪野に頬ずりし、正人は涙を溜めながら泣き声で雪野に話かけます。正人「愚かな俺には、他にとる道はなかったのだ。・・雪野、俺はお前の純な魂を ただ一つの心に、領民の幸せのために、この命をささげよう。許せ・・・、 許してくれよ・・・」 (完)🎞️『炎の城』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。炎の城・・・(1)炎の城・・・(2)炎の城・・・(3)炎の城・・・(4)炎の城・・・(5)炎の城・・・(6)炎の城・・・(7)炎の城・・・(8)炎の城・・・(9)炎の城・・・(10)
2024年08月05日
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どうしても果たさなければならぬ仕事がある領内の一揆は手には負えないほどに拡がっていると、城に帰って来た祐吾は、父直之進の仇正人を討つという復讐の念を固く誓い、直之進の眠る墓前に行くと、毎日花を添えている雪野の姿がありました。必ず正人を探しだし斬るという祐吾に、雪野はどんなことがあっても正人が好きだと答えます。そこへ正人を城下で見た者があるという知らせが祐吾に届き立ち去った後、泣き崩れる雪野が背後を振り返ると、正人が立っています。雪野の「正人様」の声に、正人は駆け寄り、二人はしっかりと抱き合います。 やっぱり帰って来てたと喜ぶ雪野に正人「俺は間違って直之進を刺した。許してくれるか」 そんな正人に、雪野は雪野「私を連れてどうぞ何処かへ、知らない人ばかりいるとこへ逃げてください」正人「俺もそうしたい・・・そうしたい」雪野「父はあなたに殺されました。でも私はそれを忘れます。兄はあなたを父の仇 とねらっております。でも私は兄を捨てます。あなたと共に暮らせるのなら ・・・」正人「雪野」 雪野「あなたから頂いたやさしいお言葉の数々、私はそれを一日とて忘れることは できません。忘れることはできません」正人「雪野、その心は俺とて変わりはない。・・・だが、・・・許せ・・・」そういって、雪野と握り合っていた手をほどいて立ち上がります。 雪野は正人の真の心を見たのです。雪野「それでは正人様、正人様は私のために帰って来てくだすったのでは・・・」正人「そう聞かれたら・・・俺は、そうではないと答えねばならん」では、何のために・・・と言いたそうな雪野に、正人「父上の子として、どうしても果たさなければならぬ仕事があるのだ」 雪野「そのためには、この私はお邪魔なのでしょうか」正人「答えねばならぬのか」じっと正人の方から視線を外さずいる雪野、しかし正人は振り向かず、その様子から精一杯耐えていると、正人は「・・・許せ・・・」と一言いって立ち去るのです。 正人の言葉から絶望した雪野は、夕暮れの海に吸い込まれるように入っていきます。 続きます。🎞️『炎の城』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。炎の城・・・(1)炎の城・・・(2)炎の城・・・(3)炎の城・・・(4)炎の城・・・(5)炎の城・・・(6)炎の城・・・(7)炎の城・・・(8)炎の城・・・(9)
2024年07月29日
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城へ帰れと・・・早く立ち上がれと庄司が身を挺して逃がしてくれ、城下を駈け抜け小舟で海に出た正人は、ある島に打ち寄せられていました。その島の小屋に正人の姿がありました。陀七という男が、疲れはてている正人に大盛飯をもってやってきます。正人が助けられたところは倭寇と呼ばれた海賊達が集まるところでした。陀七が仲間に入れと誘います。正人が「帰るところが無くなった人間なんだよ」というと、陀七は頭に会えと正人にいいます。正人は「うん」と明るくいうのです。 正人は、陀七に海賊の仲間入りしたのか聞きます。陀七が話します・・・王見城に支配されていた百姓のせがれだが、年貢段銭の取立が厳しくて、親父が首を吊ったよ・・・正人は陀七に、正人「それじゃ恨んでいるだろう王見城を」陀七「当たり前じゃねえか、いずれはここの仲間に頼んで、あの城に攻め込んでえ くらいだよ」正人「復讐か」陀七「そうとも。百姓の長い間の苦しみを思い知らせてやらなきゃ気がすまない よ」 正人「お前達と同じ思いをしてる奴は多いだろうな」陀七「皆だよ。王見城領内の百姓皆だよ」 陀七「遠い国から帰って来た城の若大将は、百姓の味方だという奴がいたが、俺は そんなことは信用はしねえ。・・・どうせ口ではうまいこといったって、同 じ穴の貉だ。・・・俺はまだ顔を見たことはねえがねえ」 しけが襲来した小屋の中、陀七の言葉は正人にやるべき情熱を再び燃え上がらせるのです。小屋の中を動きながら心で呟きます。『領民達は救いの手を待っている、それを思うとじっとしてはいられない。絶望の領民達は復讐を始めるだろう、王見城に。それに、父上のこの復讐を成し遂げなければならぬ。王見城を支配しているあの男に・・・。領民の復讐と平和を好んだ前城主の世継ぎの復讐と、この二つの復讐は』、そして、声に出し「そうだ、二つの復讐はいま一つになるのだ、俺によって、この正人の中で」 城へ帰って復讐へとかきたてる気持ちに、雪野はどうしようと・・・もうこの腕に雪野を抱く資格はなくなってしまった・・・それを思うと、声をあげもだえ苦しみます。 そうしたとき、父勝正の幻影が現れます。正人は思わず「父上」と・・・勝正の幻影は正人の近くへ来ると、正人に手で合図をしたのです。「父上、城へ帰れと・・・早く立ち上がれと・・・」正人はそう理解したのです。 続きます。🎞️『炎の城』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。炎の城・・・(1)炎の城・・・(2)炎の城・・・(3)炎の城・・・(4)炎の城・・・(5)炎の城・・・(6)炎の城・・・(7)炎の城・・・(8)
2024年07月23日
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あなたは、気が狂ってるんではないんですね正人が呼ばれて行こうとしている母時子の部屋では、丁度六角直之進に時子が話をしているところです。王見勝正を殺したのは師景、そのことを知っているのは、師景とあたしと直之進の3人だけ、しかし直之進も知らないことがあると、勝正が長い病気の折師景が無理矢理自分を犯したことを話します・・・・・ひたすら正人の帰りを待っていた、正人の前に身を投げ出して許しをこい、正人の思うままにすればよいと、・・・その正人が気が狂って帰って来た、どうすればよいかと苦しんだ、・・・時子は正人に何もかも白状してしまいたいと直之進にいいますと、「それは・・・」という直之進に「どうして・・・」と聞く時子。「和子はニセ気違いではないかという噂がございます」という直之進に、時子は「それならあたしは、いっそううれしい」という言葉がかえってきたので、そのことで直之進が意見をしているところに、正人の来るのを察し直之進は屏風の奥に隠れるます。正人が常軌を逸した状態で部屋へ入って来ます。時子は正人の父勝正を殺したのは自分ではない、それだけは信じてほしいといいますと、正人は母の顔を見て突き放し、正人「けものだ」そして、敷いてあった寝具を持ち正人「けものの寝床だ、・・・汚いな」 老いゆく身になお情欲の火を消しかねて、見ろ、この牝め脂ぎった牡と睦言だ」 時子は耐えきれなくなり、「正人」と。正人「恥を知れ、・・・といっても、けものには恥はないのだな。アッハッハ、臭 いぞ、臭いぞ、どこもかも腐った臭い」時子「そうです、・・・あたしは、一番大事なことを、母であることを忘れていた のです」正人「けものめ」 正人は、師景の使っている箱枕を時子の目の前に示し、正人「この牡は、お前の前の夫に比べれば、ねずみやみみずほどにも値しない奴 だ」そういうと、箱枕を投げつけ、座り込みます。時子には、正人の一言一言が剣のように胸を刺すと、いいます。 ひどい言葉を時子に投げつけていた正人は耐えられなくなり、どうして、どうしてあんなけものの寝床に率いられて・・・というと、顔を埋めて泣き出します。時子がもっとひどい言葉を投げつけてと、・・すると正人が、正人「そうだ、俺はもっといいたい、ののしりたい。・・・でも、でも父上の声が 聞こうるのだ。・・・弱い者よ、それが女だ。お前の母上はあんなに苦しん でいる。もう助けてやれと・・・」そのとき、時子は正人の方に向きを変え、正人を見つめます。正人「そんな父上の声が聞こえるんです」涙を流している正人の顔をじっと見つめると、確信したのです。時子「正人、・・・あなたは、気が狂ってるんではないんですね」 時子が正人にそう言ったとき、背後の屏風が動いたのです。屏風の後ろに隠れていた直之進が驚いて動かしてしまったのです。それに気づいた正人は時子の手を振り払い「けものめ」と言い放つのです。 正人「その屏風が動いた。あの強欲なけものめ、そこにいたのか」というと、剣を抜いて屏風に向い力いっぱいに突き刺したのです。 屏風と一緒に倒れて出たのは師景でなく、雪野の父直之進でした。物音で駆けつけた家中の者達を前に、正人は直之進を部屋から引きづり出して行きます。そこへ、「正気の沙汰ではないぞ、手出しはならん」庄司に逃げるよう促され庭先へ出た時、父に泣きすがる雪野の声、追いかける侍達に立ちふさがり正人を守るため命を落とす庄司の絶叫を背に、正人は城下を駈け抜けて行きます。 続きます。🎞️『炎の城』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。炎の城・・・(1)炎の城・・・(2)炎の城・・・(3)炎の城・・・(4)炎の城・・・(5)炎の城・・・(6)炎の城・・・(7)
2024年07月14日
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もっともっと苦しめなければ復讐にはならない師景は、正人は気違いではない。なるべく早い機会に正人を倒そう・・・。自分の野望を妨げになる者はすべて打倒すというのです。祐吾が捕らえて来た百姓一揆の首謀者たる12名を領内の者達の見せしめのためにも死刑にすることに決ります。海に突き出た岩場に二人が一組に縛られ立っています。まずは一組に弓矢が放たれ二人の百姓は胸を射抜かれ海へ落ちて行きます。次は火縄銃が狙いをつけて引き金が引かれようとしたとき、「やめろ、散れ、その人達の縄をとけ」馬を飛ばし駈けつけたのは正人でした。「やっぱり正人様が助けに来てくれた」と大喜びする宗恵達です。復讐のためにも、領民を救うためにも、師景を討つこと、手段はそれ以外ないと、城に戻った正人は、出迎える庄司に目をやると、一目散に師景の寝所に足を向けます。庄司は黙ってその様子を見守ります。寝所近くまで行くと、ゆっくりと剣を抜き寝所に踏み込み剣を振り上げます。そのとき菩薩像が目に入り、師景を亡き者とする振り上げた剣は宙に止まったままになっていました。 正人は心で静かに叫びます。『ほとけに見守られた彼奴の眠りは極楽、さきに熟睡するこの極悪人をこのまま一瞬の苦痛であの世にやっていいのか、父上それであなたのこの世の妄執ははれるのでしょうか・・・そして、・・・』 正人は振り上げていた剣を静かに降ろしながら、『・・・この俺は仏の前で、この手を悪事にまぎらす卑怯な騙し討ちと人にはそしられ、王見正人の武士道は地に落ちる・・・それでいいのか』 正人が力なく師景の寝所から出てしばらく立止まって、離れて見守っていた庄司の前を黙って通り過ぎて行きます。その正人に庄司が「何故?」と、「もっともっと苦しめなければ復讐にはならない」と正人。正人が落ち着いたところで、先ほどから何度も奥方様から使いがあり、「お部屋の方へおいで願いたい」と申されているというと、正人の気持ちには動揺がありましたが、「母上が」・・・・・「いつかはあなたに・・・」・・・「・・・そのときが・・・」・・・「とうとう来ました」 母時子のところへ出向く決心をしました。 続きます。🎞️『炎の城』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。炎の城・・・(1)炎の城・・・(2)炎の城・・・(3)炎の城・・・(4)炎の城・・・(5)炎の城・・・(6)
2024年06月29日
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雪野、・・・すまん・・・許せよこの手で母上に復讐することはできない、と・・・どうして証拠をにぎろうと、どうして復讐など誓ったのかと、嘆き苦しみ、耐えきれなくなった正人は、その怒りを庄司にぶつけて行きます。正人「庄司、・・・何とか言ってくれ・・・」声を荒げて、庄司に救いを求めます。庄司「正人様は考えるお方です」正人「なにぃ」庄司「苦しむお方です。・・・しかし、一旦お心が決まったら、必ず実行されるお 方です。・・・強い勇気をもって・・・」静かな口調でいう庄司の言葉に、勇気づけられたのでしょう。正人「庄司、俺は祐吾のような男になりたいぞ。・・・今こそ、今こそ、あの男の ように・・・」 正人はそこまでいって、廊下を渡って来る雪野が目に入り、話をやめます。正人の母時子が今の方へ正人に来てほしいとのことで雪野が迎えに来たというのです。庄司は「申し上げてもお分かりになるかどうか」といい、正人に「お聞きになりましたか」というと、正人は無言で首を縦に振ります。 庄司「では、おいでになりますか、・・・母上様のお居間へ」正人「・・・母上は俺など、生んでくれなかった方がよかった」その言葉に雪野が驚きます。正人「人間はみんな悪い、悪者ばかりだなあ」 庄司が庭先に様子を窺っていた者を追って行きます。正人は、雪野に、お前も生まれて来ない方がよかった、といい、立ち上がり雪野の方に、雪野も正人の前に、気の触れた態度は崩さず、「寺へ行こうか」と話しかけると、正人「なっ、俺と一緒に寺へ行こう」雪野「正人様、ほんとに気が狂っておいでなのですか」 そのとき、正人の心が乱れるのです。雪野は、正人が明国へお発ちになるうれしい誓いの言葉と一緒に頂いた品でございます、お忘れではございますまい。「正人さま、この鏡の前でお聞かせください。本当のお心を・・・正人様」 正人の背にもたれかかる雪野に、正人「祝言をするなら、相手は阿保がいいぞ。世の中に馬鹿ほど幸せな者はいな い」私だけには、そのような言葉を・・・と悲しい顔で正人から離れる雪野に、追い打ちをかけるように、 正人「女は、紅や白粉を塗りまくるぞ、天から授かった顔を、もう一つの顔にこし らえるぞ。・・・化け物だなあ」雪野は、「私にだけはどうか真実のお言葉を・・・」 そこへ戻って来た庄司に、正人が気が狂っているとは・・・思えないという雪野、すると、正人が急に大笑いをしはじめます。「このとおり、これが正気の人の笑い声か」と、正人を援護します。正人「女は嫌いだ。女は汚い、娘も汚い、妻も汚い、母も汚い、女は嫌いだ・・・ お前も嫌いだ。・・・出てけ」 雪野が出て行ったあと、奥の間の正人は、・・・辛かったでしょう・・・、正人「雪野、・・・すまん・・・許せよ・・・」 続きます。🎞️『炎の城』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。炎の城・・・(1)炎の城・・・(2)炎の城・・・(3)炎の城・・・(4)炎の城・・・(5)
2024年06月23日
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母上にも復讐しなければならんのか城中広間では、正人が呼んだ猿楽の狂言が始まろうとしています。師景は直之進から一座を呼んだのは正人で、一座が古事記の一つを見せてくれるということ、・・・正人が何か企んでいるとしても、まことの気違いか、うその気違いか、探りをいれるのによい機会だ、と広間へ出向きます。途中から入って来た正人は、雪野のところに行き寝そべっています。 狂言は終盤を迎え・・・弟は兄の妻とよくない謀を企て、兄を倒して我等の天下にする。すなわち兄の妻に兄の命を奪うようにさせる・・・という場面になりました。時子の顔色が変わるのを正人が見てとります。そして、雪野にこうつぶやくのです。正人「雪野、母の後ろには、父上がお出ましになって見ておられるぞ」その言葉に、「はっ」として雪野は正人の方を振り向きます。狂言が妻が夫を殺す場面に入ろうとしたとき、「無駄な口上はたくさんだ、早く人殺しを始めろ」と正人の声が飛びます。 妻が夫を刺す場面になったとき、時子は顔をそむけるように、師景も驚きの顔をし、弟が最後の止めを刺した場面で、時子が悲鳴をあげると、「もうよい、やめろ」師景の声がしたのです。部屋に帰った正人は正人「庄司、見たか・・・叔父上、母上の様子を・・・」あれが動かぬ証拠だ、計画が図にあたったと喜び興奮しますが、「しかし・・・」と複雑な思いが去来するのです。 正人「父上の顔に涙をながしながら、母上は鎧通しを振り上げたのか・・・」庄司「でも、それを言いつけたのは殿ですよ、きっと」正人「言いつけた叔父上は憎い。父上をやっつけたのは叔父上だ。・・・だが、母 上はその言いつけを守って・・・俺は母上にも復讐しなければならんのか」それに対し、庄司はいう言葉がなかったのです。正人は、この手で母上に復讐することはできない、と・・・どうして証拠をにぎろうと、どうして復讐など誓ったのかと、嘆き苦しみます。 続きます。🎞️『炎の城』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。炎の城・・・(1)炎の城・・・(2)炎の城・・・(3)炎の城・・・(4)
2024年06月15日
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俺は心を決めたぞ時子の兄の六角祐吾が正人の帰りを待っていました。城のため、妹時子のために正人の帰りを心待ちにしていた祐吾にとって、気が狂って帰って来た正人は許し難かったのです。庄司に思いを話すと、「いつまでも未練は残さず、正人様は死んだも同様と思って出かけるぞ」という祐吾に庄司が「どこへ?」と聞くと、「領内の百姓に一揆の気配がある、殿の命令で倒してくる」といい、祐吾は「若殿」といい深く頭を下げると部屋を出て行きます。正人「祐吾が村々の一揆をおさえに出かけるといったが・・・庄司、俺は村の 者達と約束をした・・・」庄司「えっ?」苦しげな表情をする正人。 祐吾が時子は、父直之進と兄祐吾に、正人様は本当に気がくるっているのだろうか、とてもそうとは思えない、といい出します。「もしもニセ気違いだとしたら、こんなことをする理由が・・・」祐吾がそう思うわけは何か聞きます。雪野「目です、私を御覧になる、そして奥方様を御覧になる目です。あの澄みきった目がどうして気の狂った人の目といえましょう」居室で物思いに沈んでいた正人は何かの気配を感じ振り向きますと、亡き父勝正の幻影が現れたのです。そして、正人を促すように・・・音もなく部屋を出て去っていくのをみて、「父上」と夢中で勝正の幻影を追って行くと、幻影は師景が寝所まで導いたのです。 寝所に踏み込もうとした正人でしたが、見張っている者の姿が目に入り、気がふれている迷った風に廊下を戻って行く途中、正人を心配して来ていた庄司に「あそこはごみ溜めより汚いぞ」と呟きます。 一揆を起す百姓を何人でも斬るため、意気揚々と出発する兵の様子を見て、師景の野望が成し遂げられていることを確認し、正人は「村の人達との約束を守らなくてはならない・・・しかし城内でも仕事はある」と自分にいいきかせ、正人「庄司、俺は父上を見たぞ」庄司「えっ」正人「うつつではなかった。しかし夢でもない。父上は血にまみれ、無念そう な顔で、何か俺に話しかけていたようだ。確かにそう見えた」庄司「正人様は、それで」正人「俺を導いて行ったのだ。・・・叔父上と母上の寝所の前まで」庄司「えっ」正人「何か恐ろしい秘密があることはもう疑いない・・・庄司、俺は心を決め たぞ。秘密があるのなら、きっとそれを暴き出してみせる。・・・それ も近いうちに・・・どんなことをしても、きっと・・・」 続きます。🎞️『炎の城』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。炎の城・・・(1)炎の城・・・(2)炎の城・・・(3)
2024年06月06日
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証拠を掴んだら・・・復讐だ薄暗い天守への階段を上って行く正人の姿があります。正人「父上の死因は何だ・・・何かある・・・殺されたのか・・・そうとすれば誰 に・・・証拠をつかまなければならぬ・・・、証拠を掴んだら・・・復讐 だ」 呟きながら天守の階段を一歩一歩踏みしめ登って行きます。父上はいつも平和を願い、叔父上は野望のために・・・その叔父上と母上はどうして寝床を同じくしたのか、正人の心中に複雑な思いがこみ上げてきたとき、下から「正人・・・正人・・」と母の声がしました。 母時子は雪野と共に、正人を求め階段を上がります。天守の外に身を隠していた正人が笑い声をあげ中に入って来ます。「どうしたのです・・・」と問いかける時子に答えず、手をはらうようにします。 雪野が時子に促され正人に「雪野ですよ・・・どうなすったんです」と近づくと、雪野の顔を両手で持ち上げ不気味な笑いを浮かべながら見て、「空は日本晴れだ」というのです。そんな正人に雪野が「私達の望みです、たった一つの誇りです、・・・お気を確かに・・・」と話しかけます。 すると、正人が「雪野」といい話しかけてきたのですが、正人「雪野、見目うるわしい女か・・・操は正しいか・・・美しさは操を売って売 女にかえる商人だ。・・・・・怖い・・・海は怖いな、怒ると人を呑むぞ」というと、再び笑い声をあげ外へと出て行きます。 師景は正人が気が触れた理由を探り当てるため、正人から片時も目を離さず尾行の者を二人つけるのです。天守から出て来た正人のところへ多治見庄司が駆け寄ってきます。正人は何もいわず速足である程度距離を歩いたところで、庄司の方を振り向くと丁寧にお辞儀をします。正人は尾行されているのを分っていたのです。 そしてゆっくりと歩きだし、庄司に話しかけます。正人「ニセ気違いともならないと殺されるところだった」と。 続きます。🎞️『炎の城』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。炎の城・・・(1)炎の城・・・(2)
2024年05月27日
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「よし、約束しよう、必ず、力の及ぶ限り・・・」農民達が大勢集まっている場所に顔を出した正人は農民達が年貢で苦しめられていることを知り、正人「よし、約束しよう、必ず、力の及ぶ限り・・・」農民達から歓声が上がった。 その夜、城では正人が帰って来た祝いの宴が開かれた。師景「正人、よく無事で帰って来たのう、・・・みんなお前の帰りを待っていたの じゃ。・・・今日は、お前の無事を祝って、無礼講で祝おうというのじゃ」そういう師景の方をじっと見つめる正人に、直之進が異国の面白い話を聞かせてほしいと投げかけます。 その様子を目にしていた人々は、正人の気が触れていることを察しました。正人が口を開く。正人「明国は広い、海は青い」そんな正人に、師景「ええ、お前は、父の死を聞いて心乱れたのかも知らんが、これからはのう、 この叔父を誠の父とおもってくれよう、よいか」 師景に対しての正人の返事は、ただうつろな、不気味な笑い声でした。そしてふらふらと歩きだし。正人の目は雪野を探し、答えるように正人を見つめる雪野の目を見つめると、ふらふらと宴の席を抜けていきます。 続きます。🎞️『炎の城』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。炎の城・・・(1)
2024年05月18日
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シェイクスピアを翻案した時代劇というと黒澤明監督の「蜘蛛巣城」「乱」の二作品があることはご存じでしょう。ここで紹介する「炎の城」と黒澤監督の二作品に共通するところは、時代背景を戦国時代にしていることと、4大悲劇にもとづいていることです。加藤泰監督は、黒沢作品「羅生門」ではチーフ助監督をやっていました。「蜘蛛巣城」からはモノクロで水墨画を思わせる画面と力強さで描かれていますが、「炎の城」は華やかな美しい色彩感覚の映像の中に細やかな心理劇が展開されていきます。ラストの燃えさかる城の凄まじい変化の状態を描いていきますが、その中での殺陣の場面は東映時代劇の要素を見せないものになっているといえましょう。加藤監督は「炎の城」は”失敗作だ”と自戒の言葉を残した最大の理由には、ラストシーンにありました。当時のスター中心の考えの会社側との意見の違いから思うように撮影できず、不条理な結末にしてしまったことです。◆第68作品目 1960年10月30日封切 「炎の城」 王見正人 大川橋蔵六角雪野 三田佳子王見時子 高峰三枝子王見師景 大河内傅次郎多治見庄司 黒川弥太郎六角直之進 薄田研二六角祐吾 伊沢一郎相楽宗恵 坂東吉弥王見勝正 明石潮陀七 河野秋武シェークスピアの有名な「ハムレット」を時代劇風に脚色、1560年頃の瀬戸内海沿岸の玉見城を舞台に繰り広げられる復讐劇。留学先の明から帰国した王見城の若殿・王見正人を待ち受けたのは父・勝正の急死だった。叔父の師景が正人の母・時子を妻にして城主となり、悪政によって民を苦しめていることを知った正人は、乱心を装って周りの目を欺き、父の死は師景の謀略であることを追及、討とうとするが・・・。真相を確かめるのだ海岸沿いの映像・・・今から400年近く以前、瀬戸内海の沿岸に・・・場所は王見城、六角直之進に城主王見師景は、昨夜正人の乗っている船が嵐にあって沈む夢を見た、これが正夢ならわしは運がいい男だ、と話しているところへ、物集港から早馬で正人の姿を見たという知らせが届いたのです。その知らせを聞いた王見城の若い家臣達は正人の帰るのを希望をもって待ちこがれ、また、時子に仕える雪野もまた正人の帰りを喜んでいます。師景と直之進は正人の帰国をどう迎えるか考えている頃、多治見庄司が小舟でやって来た正人を出迎えていました。父上のこと、叔父師景の悪事と師景の妻となった母時子のこと等、変ってしまっている王見城の様子を教えてくれた庄司に正人は感謝するのです。 このままでは、叔父師景にも母時子にも会えぬという正人。庄司が、正人にこれからどうされるのかと聞くと、正人「真相を確かめるのだ、証拠をにぎるのだ。父上が急病で亡くなったというの は表向きのことで、その本当の死因については、いろいろなことをいう者が いると、お前いったではないか」ひとまず城へ帰らないと・・・という庄司に、明国へ連れて行った供の者達を先に返してある、といい父上が亡くなってお役御免になり国へ帰った老臣二人から何か聞けるかもしれない、と訪ねます。まずは一色主女を訪れたが。すでにこの世の人ではなくなっていました。お役御免になって帰って来ると、すぐ城からの使者が来て、先君の殉死を求め、その場で切腹させたというのです。「恐らく、主女殿は何か大事なことを知っていたのです」と庄司がいいます。 正人は庄司に先に城へ帰るように、そして、「雪野に俺も間もなく帰るからと伝えてくれ」海の向こうの新しい知識を得、誰も彼もが安穏に暮らせる天国にしたかった、しかしそのために父が一番自分を必要とした時にその場に居合わすことが出来なかった、と正人は悔やみます。正人は庄司に先に城へ帰るように、そして、正人「雪野に俺も間もなく帰るからと伝えてくれ」といい、もう一人の相楽伊賀亮を訪ねます。が、伊賀亮もこの世の人ではありませんでした。国へ帰って来た翌日、裏の沼で釣りをしているところに、急に矢が飛んできて胸板を貫いた、というのです。城へ訴えたが何の音沙汰もなく泣き寝入りで・・・それでいやになって百姓になった、という息子宗恵の気持ちを思い、正人「無理もないことだと思う・・・が、伊賀亮に聞きたいことがあって来たん だ」その言葉に宗恵が正人の方を振り返ったとき、「より合いだあ」という声が聞こえに、「何事だ」と聞くと、宗恵は正人を誘い村の話を聞いてほしい、と。宗恵「今村は大変なことになっている、みんな正人様の帰りを待っていたんだ」正人「・・・うん」 続きます。
2024年05月08日
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生涯を、八幡大菩薩の旗の下で暮らすのだ右衛門太夫の船では、今夜イスパニアの船に女達を売り飛ばす前祝いをやっています。青影丸と住吉丸が静かにニセめくら船に近づいていました。ニセめくら船がそのことに気づいたときには、大砲が打ち込まれます。そして、その大砲の音を聞き、対岸に待機していた鹿門は「いまだッ」というと、鹿門「それッ」といい、先頭で海に飛び込みます。 青影丸、住吉丸の攻撃に気を取られている間に、泳いでニセめくら船に乗りこもうというのです。 帆をあげている船員に気がつかれたので、鹿門は「潜れ」と指示します。海中めがけ飛んでくる銛をかわしながら船まで近づくと、投げたかぎ縄を伝って船に上ります。 ここから、双方入り乱れての船上での立廻りになります。青影丸や住吉丸が応援に来ると新蔵人の名を呼ぶ鹿門がいました。寿賀、与太夫、も応援に右衛門太夫の船に斬り込んでいきます。 大混乱のなかでの、鹿門と右衛門太夫の一騎打ちが始まります。色んな手段でかかってくる右衛門太夫に応戦する鹿門。右衛門太夫は剣を振り払らわれ追い込まれ、鉄砲を鹿門にむけますが、新蔵人により鉄砲も蹴落とされ、帆柱に上って行きます。鹿門は蹴落とされそうになりながらも、右衛門太夫が上りきったところで一刺し、仇を討ちました。右衛門太夫は海へ落ちていきます。 小静と五兵衛は助かり、無事会うことができました。 澄みきった青空のもと、八幡船団は帆にいっぱいの風を受けて、一路目的地に向かって進んでいきます。めくら船の先端に、大海原をじっと見つめている鹿門の姿があります。寿賀が鹿門に近づきます。鹿門と寿賀のにこやかな表情がとても素敵です。寿賀「とうとう、海の男、八幡船の男になってしまったわね」鹿門「寿賀さん、俺は入道殿や父君の意志を継ぎ、八幡船の頭領として働くぞ」寿賀は優しく鹿門を見つめます。鹿門「・・・生涯を、八幡大菩薩の旗の下で暮らすのだ」そういって、風になびく八幡大菩薩の旗を見あげる鹿門の顔には、海の男の力強い誇らしさが溢れています。 (終)🎞️『海賊八幡船』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。海賊八幡船・・・(17)海賊八幡船・・・(16)海賊八幡船・・・(15)海賊八幡船・・・(14)海賊八幡船・・・(13)海賊八幡船・・・(12)海賊八幡船・・・(11)海賊八幡船・・・(10)海賊八幡船・・・(9)海賊八幡船・・・(8)海賊八幡船・・・(7)海賊八幡船・・・(6)海賊八幡船・・・(5)海賊八幡船・・・(4)海賊八幡船・・・(3)海賊八幡船・・・(2)海賊八幡船・・・(1)
2024年04月27日
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鹿門・・・寿賀の気持ちを受止めます鹿門が先頭で三艘の小舟が密林の狭い流れを進んでいきます。その周りはもうバランガ族に囲まれているのです。鹿門がそれに気づき、黒白斎に鹿門「見張られているぞ」といいます。 バランガ族の目が光るなか、伐採の作業を遂行します。鳥らしき異様な鳴き声が響くなか、切り倒した材木を小舟に結び付けるため水辺まで運んで行きます。小舟に材木を結びつけていた者達が水の中へ放り出されたかと思うと、バランガ族は矢を放ってきす。その矢が鹿門をめがけて来たところに陳が立ちふさがり、鹿門に逃げるよういいます。 森の奥から「ワーッ」というこえが聞こえバランガ族の大群が押し寄せて来ます。鹿門、新蔵人、黒白斎、寿賀はじめ八幡船の乗組員達は石銛が飛んでくる中を必死で逃げます。そんななか寿賀と黒白斎が捕まって連れて行かれてしまいます。鹿門や新蔵人達も追い詰められて身動きが取れなくなったとき、負傷しておいて行かれた伝馬がやって来ていて、爆薬をバランガ族に投げつけ助かり、今度は反対に鹿門達がバランガ族に向かって追いかけていきます。 しかし、あるところまで追って行くと誰もいなくなり辺りは静寂に、恐る恐る前進したところに見たのは、捕らわれ木に縛り付けられた黒白斎と寿賀でした。 鹿門 「爺」新蔵人「寿賀」と叫びかけより縄を切ろうとしたとき、銛が背後から突き付けられます。 全員木に縛り付けられ、バランガ族の儀式のようなものが始まります。 黒白斎が、鹿門に、我々は右衛門太夫の一味と間違えられている、といいます。鹿門「なに、右衛門太夫と・・・」親や兄弟が右衛門大夫に皆殺しにされ、その仕返しをめくら船に乗っていた我々に仕掛けて来たのだ、というのです。違うといっても、黒船が証拠だと聞かないのだと。 恐怖に耐えられなくなっている寿賀に、鹿門が声をかけます。 鹿門「寿賀さん、ほかのところを見るな。俺の目を見ろ」そういわれた寿賀は、ゆっくりと顔を鹿門のほうに向けます。 銛が二人の間を・・・そのなか、少し落ち着いた寿賀が鹿門に話しかけます。寿賀「あたしのために・・・小静さんが探せなくなって・・・」鹿門「いうな・・・寿賀さん、・・・美しい因島の浜辺を、馬に乗って走っている と思え。・・・俺と一緒に並んでな」寿賀が、それに首を縦に振り答え、そして寿賀「鹿門様・・・好きよ・・・好きよ・・・」鹿門も寿賀の気持ちを受止めます。 同じ木の後ろに縛り付けられていた新蔵人が鹿門に声をかけ、新蔵人「お主だけは生かしておきたいなあ」鹿門 「何をいうんだ、ここまで来て仲間外れにするな。俺は八幡船の男ではない か」新蔵人「八幡船の男だから、生かしておきたいのだ」そんな二人を見ていて、「これが船の上だとな」と嘆きます。 かしらの合図で物音が止み、次の合図で槍を鹿門達に向けあわやというとき、右衛門太夫の手下で船の見張りをしていた男をみつけたといって連れてきました。その男の息をかしらが止めました。そして、鹿門のところへ行くと縄を切ったのです。 続きます。🎞️『海賊八幡船』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。海賊八幡船・・・(16)海賊八幡船・・・(15)海賊八幡船・・・(14)海賊八幡船・・・(13)海賊八幡船・・・(12)海賊八幡船・・・(11)海賊八幡船・・・(10)海賊八幡船・・・(9)海賊八幡船・・・(8)海賊八幡船・・・(7)海賊八幡船・・・(6)海賊八幡船・・・(5)海賊八幡船・・・(4)海賊八幡船・・・(3)海賊八幡船・・・(2)海賊八幡船・・・(1)
2024年04月21日
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頭領だからこそ行くのだ波を見つめ、決心に間違いないことを確かめたあと、月影のもれる密林をさまよっていた鹿門は、沼で水浴びをしている寿賀にきずき足を止めます。寿賀も鹿門に驚き、鹿門は目のやりどころに困り、急いでそこから立ち去ろうとしたとき、 寿賀が「鹿門様」と呼び止めます。寿賀のほうを見た鹿門に、「さっきは有難う、すっかり元気よ」と明るい寿賀に何もいえず、恥ずかしそうな表情をして行こうとする鹿門に、寿賀は「待って・・いま行くわよ」と声をかけます。 二人は楽しそうに歩いています。 鹿門「そなたは何でもできるんだなあ」寿賀「男勝りのお転婆といいたいんでしょ」鹿門「いや、褒めてるんだよ」鹿門「妹の小静も泳ぎが上手かった」寿賀「お可哀想に・・・早く見つかるといいのにね。・・・でも、小静さんが見つ かったら、鹿門様は堺に帰っておしまいになるんでしょ」 鹿門は笑みを湛え鹿門「・・・俺が帰ると思うか」といった鹿門に寿賀は嬉しそうに、寿賀「帰るような人だったら、・・もう、めっちゃくちゃに・・・」と、鹿門に寄っていくと、鹿門のほうも寿賀がすがって来るのをうれしそうによけながら、鹿門「ほれ、また激しいのがはじまった、・・・さっき褒めたばかりじゃないか」寿賀「・・・あたし・・・鹿門様に、もう・・・意地悪いえなくなっちゃった」 そのとき、鹿門は何かに気づいたようで、さっきまでの表情とは違い、険しさのある顔で寿賀に寄って行きます。 そして、寿賀を見つめると、鹿門「寿賀さん・・・・・」そういうと、寿賀を押し倒します。寿賀は「なにすんのよ」と突然の鹿門の行為に驚きと抵抗しますと、鹿門が寿賀に「見ろ」といった方向の木に矢が飛んできたのです。 二人は急いで安全なところに身を隠します。そして、鹿門が短刀を木の茂みに向かって投げますと、地面に咲いている花に血が垂れ、太鼓の音が聞こえたかと思うと死体が落ちてきました。周りを見て逃げます。太鼓の音が遠く鳴り響くなり響き、新蔵人、黒白斎はじめ八幡船の乗組員達は、バランガ族に囲まれていることがわかりました。 翌日、バランガ族が獰猛な土人だということを黒白斎から聞いても、鹿門「俺は、何としても行く」頭領の鹿門に万一のことがあっては、という黒白斎に、鹿門「いうな。頭領だからこそ行くのだ」新蔵人は、修理の材木がなくてこれから先の航海をどうするのだ、といった鹿門が気に入り一緒に行くといいます。「舟を出せ」と鹿門がいいます。 続きます。🎞️『海賊八幡船』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。海賊八幡船・・・(15)海賊八幡船・・・(14)海賊八幡船・・・(13)海賊八幡船・・・(12)海賊八幡船・・・(11)海賊八幡船・・・(10)海賊八幡船・・・(9)海賊八幡船・・・(8)海賊八幡船・・・(7)海賊八幡船・・・(6)海賊八幡船・・・(5)海賊八幡船・・・(4)海賊八幡船・・・(3)海賊八幡船・・・(2)海賊八幡船・・・(1)
2024年04月10日
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俺は海に来てよかったのか浜辺で焚火を囲んでの歌と踊りの宴会が開かれています。鹿門と黒白斎は少し離れた岩場にいます。海に向かって佇む鹿門に黒白斎が話かけますと、鹿門は黒白斎のほうを向きます。黒白斎「若、お父君丹後守様は、この島によくお立ち寄りになりましたぞ。この先 の泉で月明かりの夜など、笛を吹いておられたものじゃ」鹿門「爺、丹後守という人は、どんな人だ」黒白斎「・・・ようお聞きくださいました。爺はそのお言葉をどんなに待っており ましたか。・・・今そうして立っていられる若のお姿は、お父君に生き写 し、勇ましく、お優しいお心根まで、そのままでございます。・・・あな た様のお母上様は、幼いあなた様を抱いて、めくら船におわしました」 鹿門「お二人共、確かに右衛門大夫に殺されたのか」黒白斎「・・・・はい・・・」そのことを聞き、鹿門は海のほうを向くと、 鹿門「右衛門太夫が、めくら船に乗り現われたとき、俺は両親の仇を討つというよ り、奴らの非道ぶりを目の当たりに見て思わず戦った。・・・堺の船火事の 中死んでいった父、あの無残な死にかたをした父を、一日とて忘れたことは ない。・・・俺はめくら船に乗った。・・・小静を探すために船に乗った。 ・・・だが、この長い航海の間に、いつの間にか俺はめくら船、いや、八幡 船の男になっていた」黒白斎「若・・・」鹿門「・・・海が呼ぶ。・・・丹後守という父が俺を呼んでいるのだ」 黒白斎はそれを聞き、うんうんというように首を縦に、鹿門が黒白斎のほうを向き訊ねます。鹿門「爺、俺は海に来てよかったのか」黒白斎「よかったですとも、よかったですとも。そのお言葉で、道休もうかばれま しょう。亡き丹後守様も、どんなにお喜びのことか・・・」海の彼方に目をやる鹿門の表情からは、迷いが消え晴れやかでした。 続きます。🎞️『海賊八幡船』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。海賊八幡船・・・(14)海賊八幡船・・・(13)海賊八幡船・・・(12)海賊八幡船・・・(11)海賊八幡船・・・(10)海賊八幡船・・・(9)海賊八幡船・・・(8)海賊八幡船・・・(7)海賊八幡船・・・(6)海賊八幡船・・・(5)海賊八幡船・・・(4)海賊八幡船・・・(3)海賊八幡船・・・(2)海賊八幡船・・・(1)
2024年03月31日
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二人の間に恋の芽生え島に上陸し、負傷者達が木陰に運び込まれます。その中に伝馬もいました。鹿門が弾を取り出すことに。鹿門「いま荒療治をしてやるから、弱音を吐くなよ」と声をかけますと、「わてかて八幡船の勇士だ、弾ぬくぐらい蚊が止まっているみたいなものだ」と伝馬がやせ我慢。「よーし、はじめるぞ」と声をかけ、酒を吹きかけると、痛いと叫びもう終わったか聞く伝馬に「馬鹿、これからだよ」といい小柄を足に刺します。 その様子を遠くから寿賀も見ています。悲鳴をあげる伝馬に「それでも八幡船の勇士かい」といいながら弾をえぐり取り出し、「やっと出た」と汗を拭います。 笑いながら歩いていくと、ボーとして立っている寿賀の様子を見て、鹿門「おう、どうした、気分が悪いのか」と声をかけると、寿賀は気丈に振る舞い、寿賀「あんなことぐらい平気、あたしにだってできるわよ」と鹿門の手から小柄を取ると、鹿門に対抗するように、近くに横たわっている負傷者の腕から弾を取り出そうとします。鹿門はそんな寿賀が可愛く思っていたのです。何回も試みてやっと取り出せたのか、鹿門の「よーし、取れたぞ」の声で安心したのか、寿賀は気を失います。 鹿門は寿賀を抱き木陰によこたわせると、気がつき動こうとする寿賀に、鹿門「静かにしていた方がいい」寿賀「・・・・・」寿賀をじっと見つめやさしい笑顔を見せ去って行く鹿門に、寿賀「鹿門様」呼びかけられた鹿門が振り返ると、寿賀は優しい笑顔でじっと見つめ、寿賀「忘れものよ」と小柄を差し出します。このとき、二人の間には恋が芽生えていたのです。鹿門は寿賀のところに戻り、鹿門「なかなか上手かった。(小柄を受けとりながら)寿賀どのは名医だな」と話しかけているところに、「若~」という声がします。 島の様子を見て来た黒白斎と新蔵人達が帰ってきたのです。鹿門と寿賀は一緒に迎えに出ます。材木も見つかったと新蔵人から聞き、今夜は久しぶりに土の上で眠れると、みんな喜びます。 続きます。🎞️『海賊八幡船』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。海賊八幡船・・・(13)海賊八幡船・・・(12)海賊八幡船・・・(11)海賊八幡船・・・(10)海賊八幡船・・・(9)海賊八幡船・・・(8)海賊八幡船・・・(7)海賊八幡船・・・(6)海賊八幡船・・・(5)海賊八幡船・・・(4)海賊八幡船・・・(3)海賊八幡船・・・(2)海賊八幡船・・・(1)
2024年03月24日
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帆を下ろせ昼間の海戦が嘘だったような静けさの中謝花の歌声が流れ、各船の上ではそれぞれの思ひがありました。 鹿門が黒白斎に話しかけます。鹿門「爺、この港でも、小静の手掛かりはつかめなかったが・・・生きているだろ うか」生きている、気を落してはいけない、と黒白斎が、決して殺すようなことはない、琉球でダメなら次は台港です、と陳が励まします。 伝馬が謝花を見てみなさい、来る日も来る日も新蔵人のことばかり、そして「女の一生ほど怖いものはない」というと、何か思い当たる節があるのか?「バカ」と返す鹿門の顔を覗きこむのです。 熱帯特有の凄い豪雨がやって来たかとおもうと降り止み、視界が開けた先に右衛門太夫のめくら船がありました。大砲が鹿門のめくら船に打ち込まれます。雨で火薬のしめった鹿門の船の大砲は役にたたず、あの船に小静が捕らわれているかもしれない、ひきつけておいて斬りこむことにします。「帆を下ろせ」・・・相手の船も近寄ってきます。 そのとき、大砲が打ち込まれます。青影丸が来たのです、がもう少しで・・・というところで邪魔をされたため憤慨する黒白斎、鹿門は伝馬に指示を出します。しかし、相手の大砲に舵を壊されては動くことも出来ず、・・・修理のための木材を集めることと、負傷者の治療のため、近くの島に上陸します。 続きます。🎞️『海賊八幡船』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。海賊八幡船・・・(12)海賊八幡船・・・(11)海賊八幡船・・・(10)海賊八幡船・・・(9)海賊八幡船・・・(8)海賊八幡船・・・(7)海賊八幡船・・・(6)海賊八幡船・・・(5)海賊八幡船・・・(4)海賊八幡船・・・(3)海賊八幡船・・・(2)海賊八幡船・・・(1)
2024年03月18日
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わしはわしのやり方でいきたい「知らんとは言わさんぞ」という鹿門に「いいます、その代わり・・・そのかわり、俺はどうなってもいい、子分達の命だけは助けてやってください」との陳赤竜の言葉に、鹿門「よーし、助けてやるからいえ」陳がほんとに助けてくれるのかと、うれしそうな顔をします。鹿門「八幡船の男に二言はない」 黒白斎にも促され、陳が話し始めます。十日程前五島の沖で、瀬戸内海を荒していた明の船から日本人達を買ったというと、鹿門は陳に近づき、鹿門「その日本人達を何処へ売った」まだ右衛門太夫の船にいるという陳、・・・鹿門は、その中に小静という女がいなかったか、五兵衛という男はいなかったか、と迫ります。 陳が、堺の娘がいたことは確かだ、と聞いた鹿門は「それだ」と、黒白斎も「小静さんに違いない」と、希望が見えたのです。 そんな中、右衛門太夫の船を追う前に、陳をたたき斬るのが先決とめくら船に上って来た新蔵人を、鹿門が止めます。鹿門「斬るにはおよばん」新蔵人「なに、貴様初めての海戦でのぼせ上がったな」鹿門「のぼせてはおらん。すでに降伏した者を切ることは、八幡船の男のすること ではない」新蔵人「たわいもない盗賊達の命越えに、心を動かしたか。あはっはっは、先代の めくら船の首領とは大した違いだ」鹿門「違うかもしれん。わしはわしのやり方でいきたい。めくら船のことは、俺に まかしてもらいたい」「勝手にしろ」と怒った新蔵人に次いで、寿賀が鹿門にまた皮肉をいいますが、・・・そんな寿賀を鹿門はうとましく思わなくなっていました。寿賀「お情け深い頭領どの、・・・お気をつけなさいね」また寿賀も言葉とは違い、鹿門に対する気持ちの変化が生じていました。 右衛門太夫の船を追っていた住吉丸が戻ってきました。残念ながら逃げられてしまったようです。 陳赤竜は、頭領に惚れた手下にして欲しいと、いってきます。 続きます。🎞️『海賊八幡船』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。海賊八幡船・・・(11)海賊八幡船・・・(10)海賊八幡船・・・(9)海賊八幡船・・・(8)海賊八幡船・・・(7)海賊八幡船・・・(6)海賊八幡船・・・(5)海賊八幡船・・・(4)海賊八幡船・・・(3)海賊八幡船・・・(2)海賊八幡船・・・(1)
2024年03月10日
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幾日か経った日、右衛門太夫のニセめくら船を発見します。黒白斎「めくら船、お父上の仇、右衛門太夫のめくら船でございますぞ」鹿門 「なにぃ」 三隻の八幡船は、それぞれ配置について、全速力でニセめくら船のいる方向に向かって行きます。右衛門太夫のめくら船は奴隷に売るための女達を乗せて島を離れるところでした。その中に小静と五兵衛もいます。逃げる右衛門太夫の船を追いかけ大砲が飛びかいます。鹿門は右衛門太夫の率いる船団のうちの陳赤竜の船を挟み撃ちにし、先端に突っ込み乗りこみます。青影丸と住吉丸が火をつけた矢を放ち援護し、船上は壮絶な戦いが繰り広げられています。そこに、陳赤竜が「お待ちくださいませ」「どうぞお助けくださいませ」と、鹿門は「許してやる」といい、みんなにめくら船に乗るようにいいます。みんながめくら船に乗り移ったとき、陳の船は燃え落ちます。 続きます。🎞️『海賊八幡船』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。海賊八幡船・・・(10)海賊八幡船・・・(9)海賊八幡船・・・(8)海賊八幡船・・・(7)海賊八幡船・・・(6)海賊八幡船・・・(5)海賊八幡船・・・(4)海賊八幡船・・・(3)海賊八幡船・・・(2)海賊八幡船・・・(1)
2024年03月03日
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あなたには人の情けはわかるまい次の日、鹿門は青影丸の新蔵人に帆柱に上る競争をもちかけます。新蔵人は、来た早々の鹿門が競争するといい出したので相手にせず鼻で笑い、鹿門の「負けるのはいやか」に、「帆柱は小さいときからの遊び道具だ」といい返す新蔵人。鹿門 「そんなら来い」新蔵人「こいつのぼせやがったな」そういって鹿門の挑戦を受ける準備をする新蔵人を見て、ニヤリとし、鹿門 「俺が勝ったらどうする」新蔵人「何でも望みどおりにしてやるは」鹿門 「よーし、忘れんなよ」 黒白斎の合図で、帆柱登り競争がはじまりました。梯子の中間まで来たとき、鹿門はめくら船の方を指さし、鹿門 「おーい、謝花が来たんだ」鹿門のいったことに驚き、梯子を上っていた新蔵人が立止まってしまいます。めくら船に忍び込んでいた、といい、先に上って行くのです。 卑怯だそんなことがあるもんかと信用しない新蔵人に、「嘘なもんか、あれを見ろ」といい、新蔵人がめくら船の方を見ているすきに、てっぺんに上った鹿門は、鹿門 「約束だぞ、謝花をこの船に乗せてくれ」と。・・・しかし、女の情に溺れてこの船の頭領の役目が務まるか、追い返せ、と新蔵人はいってきます。鹿門 「女一人、どうして返すことが出来るんだ。見殺しにする気か」新蔵人「俺のいうことを聞かぬ馬鹿女だ、・・・死んでしまえ」 鹿門「そーか、よーし、俺の船に忍び込んだ女だ、俺が預かろう」 そういって、青影丸から小舟に乗り移ろうとしていた鹿門に、寿賀 「お情け深い、めくら船の頭領どの」皮肉な嘲笑を浴びせる寿賀に、鹿門 「あははっ、あなたには人の情けはわかるまい、あっはは」笑って下りて行く縄ばしごを寿賀が力一杯ゆすります。もう少しで小舟に乗り移るというところで海の中へ落ちてしまいます。 少しも動じず鹿門は笑顔を見せ、大笑いする寿賀に、鹿門 「ああ、いい気持ちだ。暑いからちょうどよかったい。あっはっはっは」 そんな鹿門に腹が立ち手裏剣を投げますが、簡単に受け止め立ち去って行く鹿門を寿賀は悔しさいっぱいで見ているだけでした。 続きます。🎞️『海賊八幡船』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。海賊八幡船・・・(9)海賊八幡船・・・(8)海賊八幡船・・・(7)海賊八幡船・・・(6)海賊八幡船・・・(5)海賊八幡船・・・(4)海賊八幡船・・・(3)海賊八幡船・・・(2)海賊八幡船・・・(1)
2024年02月27日
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暗闇で3里四方か夜空の下で、海を見つめている鹿門に黒白斎が声をかけます。黒白斎「若、左に見えるのが種子島でございますよ」鹿門 「俺の目には見えぬものが、年寄の爺にみえるのか?」黒白斎「見えるのかとは何事、爺は生まれついての船乗り、闇夜でも3里四方は真 昼も同然じゃ」鹿門 「暗闇で3里四方か」そういう鹿門に、黒白斎は笑い飛ばし、「何事も訓練、おいおい若にも見えるようになる」、先代の丹後守様も初めはそうであったといいます。鹿門の心にはまだわだかまりがあるようです。 そこへ、船底から駆けあがって来た伝馬達が「大変だッ」と騒ぎ、その様子に、黒白斎が「出たか?」と、すると「船蔵の中に出た」と伝馬が、「船蔵に?」と黒白斎が念を押し聞いていると、鹿門が笑い出します。 鹿門は大笑いをすると、鹿門「お前らほどの暴れ者が、何をいいだすのだ」この場所を通るときには決まって幽霊がでるという黒白斎のいうことには「迷信だ」といい、黒白斎はじめ乗組員達が本当のこと信じてくれというと、 鹿門「そんな馬鹿なことに自信をもつな」 そういうと、「よーし、俺が行ってみる」という鹿門を、海の神様が怒って船が波にのまれてしまう沈んでしまうと、みんなで止めますと、鹿門は「静かにしろッ」とみんなを制すると、鹿門 「この船が幽霊や海神に呪われてたまるか。あの八幡大菩薩の旗は何のため に背負ってるんだ」それを聞いて「その通り、八幡船に幽霊が出るわけはない。八幡船に幽霊が出てたまるか。八幡大菩薩の旗は何のために背負っているのか・・・しっかりしろ」と黒白斎がいい出したので、乗組員達は呆気にとられ、鹿門はその様子ににやりとしているのです。 船蔵を歩いていると鹿門が突如荷を崩します。すると奥の方に人が潜んでいたのです。「出ろッ」といいますが、なかなか出て来ないので、鹿門が覆っているものを取りますと、新蔵人を追って乗り込んでいた謝花でした。 続きます。🎞️『海賊八幡船』前回までの投稿掲載分は、ページ内リンクできるようにしてみました。下記のそれぞれをクリックしてご購読することができます。海賊八幡船・・・(8)海賊八幡船・・・(7)海賊八幡船・・・(6)海賊八幡船・・・(5)海賊八幡船・・・(4)海賊八幡船・・・(3)海賊八幡船・・・(2)海賊八幡船・・・(1)
2024年02月17日
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