梅林庵

梅林庵

2020年08月16日
XML
カテゴリ: サイクリング
Sunday, August 16, 2020
 午前2時起床。晴れ。
 目の覚めて、すぐに珈琲を入れました。書斎に持ち込み、窓を開けたら、昨日までの虫の音と違いました。
 机に向かいましたが、ペンは遅々として進まず。取材不足です。
 放り出し、オッターバを聞きました。クラシック垂れ流しのインターネット放送です。聴いていて、勃然、先日読んだ本の中に小林秀雄の読み方に関する記述があったのを思い出しました。それを読んで後悔に似たものを覚えました。以下にそのことを書いておきます。
 高校時代、現代国語の問題と言えば小林秀雄の文章から、というのが定番でした。理詰め(そのような読み方のあるかどうか知りません。私が勝手に付けた名称です)、読み進めても、言わんとすることは漠然。分かったようなそうでないような。設問に対する回答も要領を得なかった記憶があります。私の中では、小林秀雄は難解につき避けて通るべし、でした。
 それが先日、森本毅郎氏の本を読んで、妙に得心がいきました。氏が山本健吉にインタビューした折、山本の小林秀雄に言及した内容をして、です。以下に引用します。
「私共の世代はね、小林秀雄さんという人がいなかったら多分文芸評論等やらなかった者も多いでしょう。小林さんはね、文芸評論というものは他人の作品を出(だし)にして、論(あげつら)っているばかりの商売ではなくて、結構創造的な仕事だという事を御自分の仕事で私共に示してくれたんです。(中略)小林さんは理屈は嫌いだと言っておられるでしょう。批評家は理屈ではなくて完成が大事で、情緒的な要素が非常に大きいのです。本当に批評するという事はね、ただ頭で考えるのではなくて、やっぱり心で受け止める事なんです。その人の感性が受け取って初めて評論になる。小林さんも、批評家には沈黙というものが大切で、作品を見てべらべら喋るような批評は駄目だと言っておられる。作品を前にして、言葉に絶して黙り込んでしまう。その、何もことばが言えないという中から何とか自分の気持ちを表そうとして、一言二言ことばが出てくる、それが本当の批評なのです。ですから批評家には、何も言わない沈黙というものが大事なのだという事になるんでしょうね」
 眼から鱗でした。「理屈ではなく」「情緒的要素」「心で受け止める」「感性が受け取る」のだそうです。私、幼少から高校時代まで放し飼いの田舎者(今も半分そうですが)でした。情緒とか感性という文字は辞書にありませんでした。小林の文章、分かろうはずがありません。今、この歳になって、文学作品を多少なりとも読んで来たこともあり、朧気ながら山本の言うそれが判るようになりました。「本居宣長」を手に取って見ようか。
 小林の読み方、それを高校時代に知っていたら、山本の話を訊いていたならば、酔散の道に進まなかったかもしれません。笑い話半分ですが、酔散の道とは人の道ではなく魚の道です。放し飼いにはそれを辿るしか選択肢はありませんでした。
 写真はキャノンデールを抱え、玄関を出た折の空です。有明月が金星と並んでいました。



 今日は日曜日。午前5時過ぎ、この時刻です。田舎県道田舎国道は滅多と車に行き遇わせません。10km走ってすれ違ったり抜かれたりは10台に満たず、でした。次の写真は番匠川河口です。太陽の昇る前です。四国・南予の山並みシルエットがはっきりと見えました。


 太陽が顔を出したのは5時53分。昇るにつけ、愛媛の山々が光に霞んでいきました。



 暫し佇んで荘厳を楽しみました。



 よし、折角だから港のほうに廻ってみよう。葛港方面に向かいました。写真は三国橋から撮した海上自衛隊佐伯基地分遣隊の建物です。戦前戦中は此処に佐伯海軍航空隊の建物がありました。その遺構跡に10年ほど前まで海上自衛隊が入居していました。建物の老朽化に伴いそれを解体。ほぼ同じ形状を新築しました。写真がそれです。



 国道を挟んで、造船所があります。佐伯市は水産のまちですが、造船のまちでもあります。5万トン級まで建造可能と聞いたことがあります。ばら積み船、フェリー、ケミカルタンカーなどを造っているようです。いつか進水式を取材したいと考えています。



 次の写真は恐らくばら積み船でしょう、船尾にMONROVIAとありました。リベリア船籍の船です。船名はSUSANOO。日本書紀に出てくる素戔嗚尊(スサノオ)です。何と申しましょうか、です。



 葛港に至りました。正面の建物は魚市場です。遊漁船の係留が目立ちます。



 次の写真はその一隻に備わった集魚灯です。この時期、剣先烏賊が釣れます。それを狙うのでしょう。沖に出てみたいな。



 道路を隔て、シンエイマルの牡蠣小屋がありました。岩牡蠣を焼いて食べさせます。コロナ禍にあって、お客さんの入りはどうなんだろう。



「春から夏にかけての海は穏やかだった。欠航したのは1便だけ。霧があまりに深かったためだ。コロナの影響で盆の帰省客は少なかった。荷物も疎ら。船員は皆元気にやっている。事務方もだ。また顔を見せて」



 そこでUターン。街中を走って家路に。次の写真は番匠川に架かる新佐伯大橋からの眺めです。上流方向は左に煙草山、右に佐伯のランドマーク城山を見て取れます。




 下流は堅田川との合流点です。手前の水管橋は興人ライフサイエンス(株)の使う工業用水です。遙か彼方のピークが九州百名山の一つ、元越山です。頂上からは豊後水道を隔て南予と西土佐を望むことが出来ます。北から西に目をやると九州山地、手前に祖母・傾の両岳、遙かに久住の山並みを見て取れます。南は日向灘と太平洋。国土地理院の測量技師をして全国にある一等三角点中、屈指の眺望と言わしめた眺めが広がります。文豪国木田独歩の登った記録もあります。荒ら家の拙宅はその麓、梅林の中にあります。



 ん?一人の男をやり過ごして、あれ、Mじゃーないか。停まり、ふり返って声を掛けました。高校の同級生です。久闊を叙しました。中学の教師を昨年退職。残された時間を楽しみたいと言うことで再任用せず、自適とのことでした。写真は私の乗るキャノンデールと彼です。互い、頭が白くなりました。毎日焼酎を飲んでいるとのこと。一献を約し、別れました。



 家に戻っての朝食は磯蜆の味噌汁。得も言えぬ風味、味わいでした。



 ん?トラが朝、妻が収穫の空芯菜をワシワシ。



 次の写真は空芯菜と一緒に収穫のオクラです。始末に負えません。



 昼にこれをこさえてくれました。うん、これはいける。



 午前午後とも屋内に過ごしました。撮りだめたビデオの中からナベツネのインタビュー(NHK)を見たり、本を読んだり、でした。午後、書斎に書き物をしていて、母からTELあり。父が狢の西瓜攻撃に閉口、全部を収穫するとのこと。手伝えとの指令が下りました。写真はそれを積んだリアカーです。バレーボールより一回り小さい玉ばかりになりました。熟れているか否か不明。多分半熟でしょう。



 まだ青いとはっきりわかるそれを畑に残し、全部を収穫。納屋に運び込みました。やれやれ。



 汗をかきついで、昨日耕耘した畑の石寄せを、松葉掻きでしました。畑の石、抜いても抜いても次から次、湧き出てきます。始末に負えません。野菜に水を遣り、この春、梅林の端に植えた柚子の苗に施肥。まだ50cmほどの背丈です。生り始めるのは何年後かな。桃栗3年柿8年、柚子のバカは18年と言われています。私の生きている内に実を付けるかどうか・・・。次の写真は、それとは関係ありません。収穫の際、妻の切り捨てたゴーヤです。熟れるとこんな色になります。



 ランの恰好に着替えました。妻が散歩しようというので、走るのを止め、それに付き合いました。友人への葉書をもって郵便局のポストまで歩きました。以下はその切り取りです。出発前の庭に藪蘭の花が咲き始めました。



 行き遇わせた犬です。初めての顔でした。2歳。名を聞いたのですが失念。



 元越山の裾野を陽向と日陰の境が登っていきました。



 向津留を廻りました。小中尾集落の入り口に栗林があります。そこの早生が早くも弾け始めていました。最前の虫音といい、秋です。



 妻が、友人のNのCさん宅方面に廻ろうと言いました。そうしました。彼女は花に水を遣っていました。妻と暫し立ち話。私はその間に彼女夫婦の菜園を覗きました。やっ、何だこれは?訊くとマンゴーとのこと。へーっ、花は白いんだ。Cさんに熟れ頃は泥棒に注意、と言ってやりました。いえ、その泥棒、私なんですが。



 1時間を越えて歩きました。家の近所に戻って西の空を仰ぎました。この色合いはまさにマジックアワーです。



 シャワーを浴びてプシュッ。今夜の当てはこれでした。残り物を併せたトマト煮。バゲットとワインを合わせました。



 お勤めを終え、カープの試合を観戦。タイガースと分けました。残念。野球のことをして、今日は嬉しいことがありました。甲子園交流戦、常連校健大高崎に帯広農業が勝ったのです。甲子園雀の前評判は高崎のワンサイドゲームでした。判官贔屓の杣夫です。いいぞいいぞ。試合後のインタビュー、高崎のキャプテンと監督が敗戦の弁を語りました。口に出した言葉は相手への敬意と自らの力不足でしたが、言外に、21世紀枠のチームに負けるはずのないのに、悔しさが滲み出ていると感じました。翻って帯広農業の二人は爽やかさ、清々しさ一杯の顔。高校野球はこうでなくっちゃ。
今日の一句
焦がされて離島航路を通いけり
朋潜り採りたる蜆秋立ちぬ
今日のラン
輪行25km
今日の酒
SAPPOROゴールドスターレギュラー缶2 赤ワイングラス3









お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2020年08月17日 07時02分22秒
コメント(4) | コメントを書く
[サイクリング] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Comments

シミ君 @ Re:老いが進むと風呂嫌い?(09/17) おはようございます。 お父さんのお世話…
禁玉減酒 @ Re:老いが進むと風呂嫌い?(09/17) こんばんは~。 わが母も、一人暮らしの…
スローライフmama @ Re:老いが進むと風呂嫌い?(09/17) こんばんは🌛 毎日お疲れ様です。 お風呂…
nkucchan@ Re:老いが進むと風呂嫌い?(09/17) 父上のお家、古い家だと、お風呂の床材は…
作業員@ Re:老いが進むと風呂嫌い?(09/17) >風呂を勧めると、滑って転ぶのが怖い…
一人親方杣夫 @ Re[1]:野良と水道メーターの検針(09/16) 山本晴望さんへ おはようございます。 …
一人親方杣夫 @ Re[1]:野良と水道メーターの検針(09/16) 禁玉減酒さんへ おはようございます。 …
一人親方杣夫 @ Re[1]:堤防の草刈り(09/15) シミ君さんへ おはようございます。 そ…
一人親方杣夫 @ Re[1]:堤防の草刈り(09/15) nkucchanさんへ おはようございます。 …
一人親方杣夫 @ Re[1]:堤防の草刈り(09/15) 作業員さんへ おはようございます。 は…

Keyword Search

▼キーワード検索

Favorite Blog

ニタリくじら New! 亮おじさんさん

久しぶりの刈谷市若… New! nkucchanさん

特別な旅 備忘録 New! スローライフmamaさん

パスタデココで、あ… New! 禁玉減酒さん

「隠された遺体」怖… シミ君さん

栗焼酎 ダバダ火振 ヘイカケさん

こよなく…のブログ こよなく…さん
♪命短し恋せよ乙女★5… ゴーゴーあっこたんさん

Category

カテゴリ未分類

(150)

日記

(4173)

出来事

(18)

徒然

(242)

(123)

随筆

(12)

音楽

(166)

映画

(99)

(204)

(251)

グルメ

(183)

(218)

写真

(85)

思い出

(14)

メモ

(24)

ゴシップ

(7)

オーディオ

(20)

手紙

(11)

(27)

(7)

(16)

出張

(66)

(93)

大会

(17)

人の話

(63)

(41)

事務連絡

(3)

野良仕事

(77)

逸品

(18)

言葉

(5)

法螺話

(1)

どうでもいい話

(38)

テレビ

(4)

新聞記事

(32)

あれこれ

(38)

サイクリング

(51)

野良

(31)

築地

(5)

珍味

(3)

舞台

(1)

挨拶

(6)

料理

(9)

雑学

(3)

ショートショート

(10)

Amazonビデオ

(2)

法螺、虚言

(1)

ポカ休

(4)

悪口

(3)

ドジ

(1)

トラです

(1)

オビです

(1)

無聊

(1)

(4)

© Rakuten Group, Inc.
X
Mobilize your Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: