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2008.01.22
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カテゴリ: lovesick
浮風窯と書かれた看板のかかった門の前につくと、宗太郎は、慣れた手つきで門を開け、中に入る。
後ろからついて入るとすぐ、広い中庭があった。誰もいない。庭の向こうには古い平屋建ての学校の校舎のような窓と廊下のついた建物。その建物の右手に通路があり、奥にいけるようだ。宗太郎は、
「ちょっと声かけてくるから、ここで待ってろよ」
とその通路を抜けていく。しばらく待っていると、宗太郎が、頭に白いタオルを巻き、青い作務衣を着た、色白で、目の鋭い背の高い男の人と戻って来た。彼がフジシマくんだな、と思う。
宗太郎は、俺を手で呼び寄せる。近づいていくと、
「フジシマくん、これが、広川悠斗。で、悠斗、こっちがフジシマくん」
フジシマくんは、手を出し、
「初めまして、藤嶋です。って、こっちは初めましてな気がしないな。テレビで拝見してるから。」
と言う。俺も、握手をしながら、

フジシマくんは、手を離して、
「楓は、そうだなあ、まだ小一時間かかると思います。」
と後ろの建物を指差し、
「そこにある教室の方で待っててください。僕、ちょうど手が空いたから、お話しましょうか、広川さん。」
宗太郎は、フジシマくんに、
「ああ、ああ、いい、いい、フジシマくん。悠斗に敬語なんて使わなくて。呼ぶのも名前で呼んでやって。」
俺も、それには賛成だったので、
「そうですよ。たしか俺、年下ですから」
というと、フジシマくんは、ちょっと笑って、
「そう?じゃあ、悠斗くんで。悠斗くんも、俺のことも、フジシマくんって呼んでよ」
とすっかり砕けたしゃべりになった。宗太郎は満足そうに、

といい、
「ああ」
というと、フジシマくんにじゃあ、と手をあげて、帰っていきました。
フジシマくんは、
「コーヒーか紅茶どっちがいいかな?日本茶もあるけど」


フジシマくんが、教室に案内してくれ、お茶を淹れにいってくれている間、俺は、壁際にたくさん並べられた、様々な焼き物を眺めて歩く。小さな子供たちのクラスもあるのだろうか。とても小ぶりで小さな指先の跡を残したものもある。
そして、ある一角で否応なく足を止めることになる。陶芸に、なんの興味も知識もない俺にも、染み込んでくる、圧倒的な才能。楓の作品だ。柔らかいラインに、淡い彩色が特徴的だ。見入っていると後ろから、声がかかる。
「どれも素晴らしいよね?」
振り返ると、湯のみを盆に乗せて、フジシマくんが立っていた。
「こっちにどうぞ」
お茶を机においてくれる。俺が
「ありがとう。いただききます」
と座ると、フジシマくんは、自分も座り、湯のみを包み込むように、持って飲みながら、
「楓は、天才だよ」
と言う。
「俺も、もちろん、陶芸をやってるけど、あんな才能はない。間近で、天才の才能を見せられるということは、最初は、特にまだ子供の頃だったから、かなり、つらかった。何を作ってもむなしい気がしてさ。ただ、やはり、これほどの作品をこんなに沢山、それも作っているところから、焼き上がりすぐの瞬間さえ、間近に見られるというのは、幸せだと言うべきだと思ってる」
そういって、俺の方を見て、
「悠斗くんは、原田好司と仕事をしているから、きっと理解してくれるよね。あ、こういう言い方は失礼になるかな」
俺は首を振り、
「いえ、よく分かります」
好司と仕事をしていると才能に、圧倒される。天才なのだ、彼も。
フジシマくんは、
「俺は、天才ではないけど、陶芸を愛してる。だから、努力でどこまで才能を補えるか、日々チャレンジみたいなもんなんだ」
楓の作品を眺めながらそういうフジシマくんの横顔を見ていると、つい、口に出してしまっていた。
「フジシマくんは、陶芸だけじゃなく、楓のことも愛してるんですね」


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最終更新日  2008.01.22 00:12:17
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