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2008.01.24
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カテゴリ: lovesick
「陶芸だけじゃなく、楓のことも愛してるんですね」
俺の言葉に、フジシマくんは、ゆっくりとこちらを向いた。
「陶芸だけでなく、楓のことも、、、、か。」
俺の質問を、小さな声で独り言のように繰り返したあと、
「愛してるって、女性として?」
確かめるように俺のほうを向いてたずねるフジシマくん。俺が、
「もちろん」
というと、
「ん~、ごまかしても仕方ないよね。確かに愛してる。たぶんこの先も、楓以上に愛せる人は出てこないだろうな。」

「だけど、だからといって、どうこうと言うことはないから、それは安心してて欲しいな。そんなこと楓に伝えたことも、伝える気もない。なんといっても俺は、楓の中の陶芸家の部分を、一番愛しているからね」
「でも、」
フジシマくんは、口を開こうとする俺を制して、
「俺がもしも、楓と恋人になりたい思っていたなら、そうだな、こういう言い方は語弊があるかもしれないけど、悟が死んだ時が一番のチャンスだった。でも、その時も、俺は楓が陶芸をまた始められるように、とばかり祈っていた。自分のものにしたいとか、そういうことは考えなかったな。というか、仕事の時間も、プライベートも楓を、、と考えると、俺は俺の人生を生きられなくなるよ」
と笑い、
「ただね、楓をサポートすることに関しては、俺は誰にも負けないという自信がある。もちろん、陶芸という分野に限っての話だけど。楓の望む材料の調達から、管理、教室の経営。それと、今のとこ楓は覆面陶芸家として作品を発表しているけど、覆面でいつづけられるような環境作り、そのマネジメント。楓には到底できることじゃないからね。そして楓のためのそれは、誰にでもできることでもない。陶芸家としての楓には、間違いなく、俺が必要だよ。その自負がある、ただそれだけで、十分なんだ。」
フジシマくんは、何かを確かめるように、空の湯飲みを眺めながら、
「何といっても、出会ったときからずっと、楓のそばには悟がいたし、これからは君がいる。俺なんて楓の眼中にはないし、そういう意味では必要とされていない。」
特に残念そうな響きもなく、淡々と続けるフジシマくん。俺は黙って聞いていた。
「楓はね、非常に素直だから、精神的なことが、すぐに作品に反映されるんだ。ある意味、未熟な点でもあり、逆にそこがまた魅力でもある。ここ1週間、引き出物を作る合間に作っていた作品を見て、君とのことは、何も聞かなくても分かる気がした」
と彼は、俺をその鋭い目で見て、

フジシマくんは湯飲みを置き、
「いずれ楓は、君を愛して、愛されるようになるはずだよ。ただ、まだ悟とつないだ手を離すのが怖いんだと思う。その手があったから歩いてこれたようなもんだからね。もうないとわかっていても、認めてしまうことには、ためらいがあるんだろう。まだ少し時間がかかるかもしれない。ただ、どれだけ時間がかかっても、君はあきらめないで欲しい。必ず、楓は、君を」
そこで、フジシマくんは言葉を切って、外を指差す。
「あ、終わったみたいだね。」
窓の外を見ると、フジシマくんと、同じような、作務衣をきて、頭に赤いバンダナを巻いた楓が歩いているのが見えた。いい仕事ができたのか、清々しい表情をしている。フジシマくんが、窓を開け、声をかける。

楓は驚いたようにこちらを向いたが、すぐに大きく微笑んでくれた。急いで教室の中まで来る。待たせてごめんね、という顔でこちらを見る。
「いいんだよ、勝手にきたんだから。フジシマくんが話し相手になってくれたから、あっという間だったよ。」
というと、フジシマくんは、
「もう終わったんだろ?着替えて来いよ。後は俺がやっとくから。先生はもう帰られたし」
楓は、フジシマくんにありがとうという感じで、ぴょこんと頭を下げ、飛び出して行った。フジシマくんは、そんな様子を微笑ましいもののように眺めながら、俺のほうを向き、
「楓をよろしくお願いします。君との恋愛に夢中になって、早く暗い過去を吹っ切れるように、祈ってるよ。大切にしてやって」
フジシマくん自身の楓への想いがひしひしと伝わってくる。
「いいんですか?俺で」
「もちろん。安定した精神状態で作られた楓の作品に会えるのを楽しみにしてるよ。この2年の作品も作品としては面白かったけれど、やっぱり楓には明るい作品を作ることが向いている。もう2度と見られないのかと思ったりもしたけど、希望が出てきた」
と笑った。

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最終更新日  2008.01.24 07:57:28
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