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カルーア啓子さんサイド自由欄
しばらくすると、輸送ヘリで川本が到着した。日野とバーダンの間に川本が入り、やっと通訳付きの会話が成立する。しかし、実行されるのは、川本の指示であった。
まず、バーダンの集団の名称をリベルテ解放軍とし、リベルテ解放軍の勝利宣言をし、反抗している兵を投降させ、避難している市民を呼び戻すこと。日本は、リベルテ国の復興に干渉も関与もしない。
プロリ反乱軍も名称をプロリ独立軍と改め、すぐにプロリに勝利の伝令を走らせ、堂々と凱旋行進をして帰国すること。日本は、プロリの再興に干渉も関与もしない。
「それでは、二ホンの利が全くないではないか。」とバーダン。
バーダンだけでなく、プロリの将校たちもハイル総統の政権を倒したのは二ホンだと思っていた。
領土を1部取り上げられてもしかたがないとさえ考えていた。
「いえいえ、ちゃんと交易さえできるようになれば、お互いの利になります。あとは対等の交渉と言うことになります。」
対等の交渉と言ったが、言った川本もバーダンもそんな綺麗ごとの交渉などないことを知っていた。
「お願いですが、リベルテ国の復興のために、力をお借りしたいのですが、三木さんと言いましたか、あの方は?」
「三木?いったいどういう事でしょう。」
「この国で一緒に働いて欲しいのです。」
「そうですか、残念ですが、三木はもう日本に向かって出発しています。会う機会があれば、そう言ってたとお伝えしましょう。」
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護衛艦かがだけがトイヤ港沖に残り、護衛艦いずも、まや、もがみ、あぶくま、そして輸送艦しもきたは帰路についていた。日本では港湾工事や空港工事の民間の船やプロリ、スパン、ロマスクと交渉を行う外交官たちの乗った船などが東方に向かって出発していた。
三木は護衛艦いずもの指令室にいた。
「三木さん、これが最後の船旅になりそうです。」
「えっ、どういうことです?」
「私も若くないですから。」
「自衛官は退官がはやいと聞いていましたが 、そういえば佐川さんもはやかった。」
「佐川さんは有能でしたから仕事がありましたが、海しか能のない私は・・」
「いえいえ、その能があれば、しがみつけばいいのですよ。」
「あはははは、面白いことを。」
そんな話をしていると、通信員がやってきて、「至急、いつもの定時連絡を入れるように。」というメモを三木は受け取った。
三木は船室に戻り、黒いリュックから受信機を取り出し、日本と通信。
「どうしたんですか、至急とは?」
「海底調査の結果、ありました、宇宙センター。ロケットの発射台が沈んでいました。」
「そうですか、やっぱり。」
「で、箝口令です。政府に衝撃が走りましたが、ここは反地球。それが政府見解です。」
「どういうことですか。」
「いくら地球と似ていても、地球でないから外国人は国に帰るとは言わない。でも、ここが地球だと分かったら、もとの国土に帰ると言い出す。」
「好都合ではないですか、在日外国人の問題が一気に解決ですよ。帰っても何にもないが。」
「察しのいいあなたらしくないですね。でも、アメリカは違う。ここが地球だと分かったら、西方大陸の東岸地帯、油田地帯など日本の手によって開発された地域を返せということになります。日本が生き延びたのはこの地域の食料と石油のおかげ、手放すわけにはいかない。下手をしたら日本列島もアメリカの領海内の島ってことにも。そうなれば、在日アメリカ軍と戦争、これは非常にまずい。そこで、文部科学省が新惑星科学賞をつくり、反地球論の高瀬准教授を受賞候補に、そして彼を教授に推薦することになりました。」
「分かりました、室長。でも、マスコミはかぎつけますよ。」
「だぶんそうでしょう。でも、何が見つかろうと、反地球で押し切るつもり、いや覚悟でいます。」
「そうですね。私はこのまま古の民の調査を続けていいのでしょうか。」
「それも重要なこと、だが口外しないように、古の民の件も秘密事項です。必要なものは用意するから、調査を続けてください。新たな任務が生じたら連絡します。以上。」