Kanaris mieux.txt.
2024
2023
2022
2021
2020
2019
2018
2017
2016
2015
2014
2013
2012
2011
2010
2009
2008
2007
2006
2005
2004
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
全1件 (1件中 1-1件目)
1
白い象に乗せられ湖を渡る。地平線に積まれた桃色と紫の雲がたなびく空。フリンジの付いた青と赤の小さな三角旗に囲まれた砂粒でざらつく白いテントをたたみ、二人の侏儒が旅の後を追いつこうと急いでいる。オレンジの香りを抱きながら、海の風が遠くから吹いている。それは、たぶん錯覚。そんな、音がするだけ。この王国を何度何周しただろう。変わるわけではない風景と知りながら、風吹く、音の聞こえる方向の微妙の違いを愉しみに、飽きずにパレードを続ける。憎悪を諦念に昇華させようと、見知らぬ場所へ行くことをその身に課す。それは何かをしてしまう、きっと、してしまうんじゃないかって思うことへの甘美な果実のような贖罪。まだ存在しない罪への罰。それは我が愚母の教え給いしことゆえかも。彼女の世界の99.9%は自己が独占する。汝、愛を乞うことなかれと、我が母は身を以て教えてくれた。同じ距離と同じ目で私は人を見る。そして憎悪に変わらないようにと、同じ場所にとどまらないことを自分に課する。そうだった。子供の頃に神さまにオーダーした鋼の体と心はもう上手に鋳造されたのだろうか。鍵をかけて自分の意思でそれを捨てる堅牢な鋼のケージ。自由になりたがる鳥、私のからだから抜けていかないで。私が私から自由であるために、お前だけは一緒にいて。
March 30, 2012
コメント(0)