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西田典之(橋爪隆補訂)『刑法各論』(弘文堂、第7版、2018年)と比較してみる。頁数は、前掲・西田各論よりやや少ないが、文章は柔らかく、前掲・西田各論よりも言葉を尽くして説明しようとするところがある。前掲・西田各論よりも、更に進んだ議論を展開しており、論争的で、難易度はやや高い。アカデミックな講義で、アカデミックに使用されてこそ、真価を発揮する本だと思う(逆に言うと、講義で教科書指定されていないにもかかわらず、独自に本書を選んで勉強を進めるのは、学習段階によってはかなり辛いかもしれない)。なお、著者は、必ずしも独自の見解を採用してばかりというわけではない。前掲・西田各論と同じく、条文を逐一紹介してくれるのが嬉しい。法学部はもとより法科大学院でも、本書を基本書にしている学生は、少なくとも私の周りでは一人も見かけなかったが、関西では状況が異なるのであろうか。
Mar 31, 2019
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印象を一言でまとめると「法学部生向けの教科書」。頁数は、宇藤崇ほか『刑事訴訟法』(有斐閣、第2版、2018年)より100頁ほど少ないにもかかわらず、少年手続について、まるまる1UNITを費やして解説するなどしており、読者が刑事手続にまつわる知識をバランス良く(受験対策一辺倒ではなく)身に付けることを期待しているようである。もっとも、共著者全員が「相当な期間(8年から18年)司法試験考査委員を務めた」(はしがき)とアピールしているとおり、近年の司法試験で問われた論点にはことごとく言及している。論点に関する解説は、総じて主流派を意識した穏当な内容にまとまっている。時折、渥美東洋が見え隠れするものの、せいぜい複数ある学説のひとつといった趣にとどまっている。学説の引用元などの文献を明記しているのがとても嬉しい。最近の代表的な教科書である前掲・宇藤ほかや、酒巻匡『刑事訴訟法』(有斐閣、2015年)では、これらが全て省略されているため、発展的学習が困難になっている。教科書の宿命ともいうべき問題だが、著者がある結論を採用する根拠が十分に記述されていないことがあり、そうした箇所は、講義などで補われることが望ましい。
Mar 31, 2019
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ネットで検索しても書評をあまり見かけないので,売れ行きが心配になるが,個人的にはとても面白く読めた本。同じ著者の『刑法総論』(新世社,2014年)と対照すると,説明ぶりが微妙に異なっているように読める部分があった,と思う(実際は同じだったのならごめんなさい)。それが,本書の入門書としての性質上,厳密な説明をはじめから差し控えたからなのか,それとも,著者がこの2年間で微妙に見解を変えたからなのか,私にはわからない。いずれにせよ,著者の独自の世界に引きずり込まれるようなことは,心配しなくていいと思う。真っ当なことしか書かれていないよ。せっかく図表を挿入するのなら,もっとふんだんにやればよかったと思う。頁数の割合は,総論部分の方が大きい。逆に言えば,各論部分の分量は,非常に物足りない。したがって,本書を司法試験まとめ用テキストとして用いるのは,無理があると思う。
Feb 17, 2019
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現在の司法試験の刑訴法には,幸か不幸か,択一試験がないので,いわゆる論点を順番に潰していくのが有効な学習法であると思う。なお,ここでいう「論点を潰す」というのは,判例や学説(東大系の主流派の考え方が良いと思う)をしっかりと掘り下げて学習し,具体的な事案を解決できるようにきちんと消化していくということを意味している。旧酒巻連載(法教283~306)は,簡潔であり,それでいてかなりの論点をカバーしているので,今でも入門的な教材として大変お勧めできると思う。旧酒巻連載をそれなりに理解できたら,古江・事例演習「及び」川出・判例講座に取り組むのが良いと思う(この2冊は是非とも両方読むべき!)なお,初学者向けの教材として,三井ほか・入門を推す声を見かけるが,個人的にはかなり退屈な本だと思うので,あまりお勧めしない。判例学習は,よく言われるとおり,百選(もちろん最新版!)と過去数年分の重判を潰す。「解説まで読むべきか」といった質問を受けることがあるが,当然読むべきである。ただし,答案の添削などをしていると,残念ながら,百選の解説以前に,そもそも判例の事案の内容からして把握できていないと思われる受験生の方がしばしば見受けられる。判例学習に際しては,いかなる事案で,なぜ,どの条文の解釈・適用が問題になり,最高裁はどんな判断をして,その射程はどこまで及ぶか,といった点をきちんと頭に入れていく必要がある。ところが,受験生の皆さんは,判決文の一部を暗記することばかりに腐心して,上記のうち特に,「いかなる事案で,なぜ」の部分が疎かになりがちのようだ。ここが頭に入っていないと,判例の射程を分析しようがないのだが……。百選の解説を読んでもよくわからない判例にぶち当たったときには,別の研究者が書いている旧版の百選の解説とか,裁判当時の重判の解説も併読してみると良いかも。まぁ,川出・判例講座を読めば,大抵は解決すると思うけれど。司法試験の過去問は,あまり勿体ぶらず,どんどん挑戦した方が良いと思う。ただ,重要なのは,挑戦そのものよりも,その後に出題趣旨と採点実感を精読することだろう。特に最近のものは本当に親切な内容になっていて,拾うべき事実とかあてはめの手順を細かく教えてくれる。実際の刑事訴訟の現場をその目で見なくても,結構,何とかなると思う。だけど,もし法科大学院のカリキュラムなどで,弁護士に付いていって捜査段階から判決まで一通り見せてもらえるチャンスが得られるなら,見ておいた方が良いと思う。
Feb 1, 2019
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副題のとおり,明らかに弁護士をターゲットにしている一冊。裁判官や検察官は,読者としてはあまり想定していない模様。証拠法の知識や,比較的新しい弁護実践を踏まえた記述が散見され,読んでいて面白い。公判でも黙秘する被告人(それを実践する弁護士)なんて,当地のような田舎では全く耳にしないけれど,東京の最前線の先生は結構やっているらしいからね。私も機会があればやってみたいと思っているのだけど……。刑事事実認定の総論的な部分について,繰り返しを厭わず,丁寧に解説してくれるので,見かけのボリューム以上に応用がきく一冊だと思う。ただし,空中戦のような議論も目立つので,初心者が一読するだけで直ちに使える知識を習得できるような本ではないと思う。当たり前か。各論的な部分は『50選』ということで。
Jan 30, 2019
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