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cozycoach @ Re:徳川忠長 兄家光の苦悩、将軍家の悲劇(感想)(11/20) いつも興味深い書物のまとめ・ご意見など…
2011.05.17
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カテゴリ: カテゴリ未分類
 ハインリッヒ・シュリーマンは1822年にドイツで生まれ、若い頃移り住んだロシアで藍の商売を手がけ巨万の富を得て、1864年世界漫遊に旅立ち翌65年に日本に立寄り、1871年に世界的なトロイア遺跡の発掘に成功し、以後、ミケナイなどの発掘を続け、1890年ナポリにて急死しました。

 ”シュリーマン旅行記 清国・日本”(1998年4月 講談社刊 ハインリッヒ・シュリーマン著)を読みました。

 トロイア遺跡の発掘に先立つ6年前、世界旅行の途中に中国と幕末の日本を訪れたときの旅行記です。

 石井和子さんは、東京生まれ、仏英和高等女学校、東京音楽学校卒業、シュリーマンに強い関心を持っていた息子さんが旅の途次にパリ国立図書館で発見して持ち帰った原本のコピーの訳を頼まれ、国内外の各地に足を運び、幕末の日本についてもいろいろ調べたといいます。

 清国と日本はヨーロッパ人にとっては遠い国であり、あこがれの国でもあったようです。

 シュリーマンは、これまで方々の国でいろいろな旅行者に出会い、みな感激した面持ちで日本について語ってくれ、かねてからこの国を訪れたいという思いに身を焦がしていたそうです。

 3ヵ月という短期間の滞在にもかかわらず、江戸を中心とした当時の日本の様子を、なんの偏見にも捉われず、清新かつ客観的に観察しました。

 上海から東洋蒸気船会社の船で横浜に向かい、鳥島の近くを通り九州本島に沿って進み、やがて富士山が見えてから横浜に着きました。

 税関を抜けてからホテルに落ち着き、横浜の町を見物しました。



 横浜滞在中にはあちこちに遠出をしましたが、中でも八王子の旅についての印象が深いといいます。

 その後、神奈川宿を通って江戸の町に入り、麻布の善福寺にあったアメリカ公使館に着きました。

 そして、愛宕山を通って江戸城を一巡したり、伊皿子の長応寺にあったオランダ公使館や品川の東禅寺にあったイギリス公使館を訪ねました。

 その後、日本橋を渡り、浅草寺を訪れ、おいらんの肖像が飾られている事実に驚愕します。

 大名屋敷の中では、日本一の金持ちである前田加賀守の広大な屋敷が目立ったといいます。

 団子坂を通って王子の茶屋で食事して、浅草に向かってから善福寺のアメリカ公使館に戻りました。

 深川八幡宮から州崎弁天、赤羽の寺の公園も訪ねています。

 その後、横浜からサンフランシスコへ向かいました。

 来日前に、清国を旅して万里の長城や紫禁城などの歴史的遺産に驚嘆しつつも、当時の退廃的な社会や人間たちに落胆しています。

 そして、北京の町の不潔さ、人々の堕落しきった姿を観察し、中国に対して批判的に描写しているのと対照的に、日本に対しては絶賛といえるぐらいの高い評価をしています。

 当時の日本は幕末の激動期で、1865年には第二次長州征伐が行われ、1867年に幕府は大政を奉還し、江戸時代は終焉を迎えました。



 人々の勤勉で誠実で清貧なところ、町の清潔さ、工芸品の巧みさ等におどろき、この国には平和、行き渡った満足感、豊かさ、完璧な秩序、そして世界のどの国にもましてよく耕された土地が見られると書いています。

 そして、家具のたぐいがいっさい無い、機能的な暮らしに驚き、ヨーロッパで必要不可欠と見なされていたものの大部分は、元々あったものではなく、文明がつくりだしたものであることに気がついたと書いています。

 簡素ながらも清潔で気品のある庶民の暮らしを絶賛し、彫り物や陶芸・玩具などの精緻さに驚嘆し、演劇やこま廻しのような芸能を楽しみ、賄賂を受け取らず毅然とした諦観をもつ役人たちに好感を覚えています。

 一方、当時の江戸幕府の外交手法に対する痛烈な批判、各藩の大名たちの離反、外国人排斥の気運などについても書き記しています。

 面白くて、一気に読むことができました。






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Last updated  2011.05.17 19:08:53
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